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2010年10月14日 (木曜日)

ロリンズの最初の代表盤『Worktime』

ソニー・ロリンズ。テナータイタン。今年で80歳になる、最後のジャズ・ジャイアント。ジャズ・サックスの巨人。豪放磊落、大胆かつ細心、歌心溢れ大らかなフレーズ展開は、決して、他の追従を許さない。孤高のテナーマンである。

さて、今日ご紹介するのは、リーダー作第3作目の『Worktime』(写真左)。有名な『Saxophone Colossus』の前年に録音されたアルバム。1955年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts) Ray Bryant (p) George Morrow (b) Max Roach (ds)。ジャズの時代は、ビ・バップの時代からハード・バップの時代へ急激に移り変わる時代。

収録された曲を眺めると、なかなかマニアックなスタンダード曲が並ぶ。そう、このアルバムは、「ショウほど素敵な商売はない(There's No Business Like Show Business)」と「It's Alright With Me」の名演で知られる、ロリンズの、最初の代表盤に挙げられる一枚。

そして、僕は、バラード曲「There Are Such Things」に限りない愛着を抱いている。このバラード演奏が絶品。ロリンズの数あるバラード演奏のなかでも屈指の出来だろう。当時、まだ弱冠25歳。その若々しいテナーの音色とパワーで押し切る様なフレーズが圧倒的。

このアルバム、ミッドテンポから、バラードとは言え、スローではない、ちょっとバラードにしては早めのテンポを採用、ロリンズのパワーと天才的な閃きテクニックが存分に楽しめる演奏が詰まっている。ワンホーン・カルテットというのも、ロリンズにとっては自由に吹き倒すことが出来て幸いした。とにかく、テナーを自由に吹き進め、テナーを自由に吹き倒し、テナーで自由に歌い続ける。歌心溢れるテナーが身上のロリンズの面目躍如である。
 

Sonny_worktime

 
バックのリズム・セクションは、まだまだ「ビ・バップ」の陰を引きずっている。かのドラムの名手、マックス・ローチではあるが、ビートの刻みは「スッチャー、スッチャー、スッチャー・・・」と単一リズムの永遠循環。ベースもただただコードのベースラインを押さえるのみ。ピアノもコードのコンプのみ。リズム・セクションのスタイルは、旧来の「ビ・バップ」のまま。

それでも、このアルバムがモダンに聴こえるのは、ロリンズの繰り出すフレーズが先進的が故。このアルバム、ロリンズだけが突出している。そりゃあまあ、ロリンズのリーダー作だから当たり前なんだろうが、それにしても、この『Worktime』でのロリンズは抜きんでている。一人で吹きまくっているみたいな、孤高な迫力。ワンホーン・カルテットの自由を満喫するような、自由奔放なロリンズは実に魅力的。

ただ、若干、とことんまで練られていない、とことんまで極めていない雰囲気が漂っているところが、このアルバムの不思議なところ。ロリンズが、これだけのアドリブを繰り広げているにも拘わらず、そこはかとなく、完成度の面でちょっと、と思わせるところが見え隠れする。

恐らく、Prestigeレーベルが、ほとんどリハーサルをせず(リハーサルのスタジオ代が勿体ないとの理由)、一発勝負のジャムセッション風録音がそうさせるのだろう、と想像している。BlueNoteレーベルの様に入念なリハーサルを積んでいたら、この『Worktime』、もっと凄い内容のアルバムになっていただろうと思う。

この後に録音される天下の大名盤『Saxophone Colossus』は、ロリンズのオリジナル中心、内容的にも結構マニアックなことをやっているので、ジャズ者初心者の方々には、ちょっと重荷かと思います。ラストの「Blue Seven」なんて、結構難しいことやってるし・・・。

でも、この『Worktime』は、スタンダード曲中心で、心ゆくまで、歌心溢れるロリンズを堪能できます。この『Worktime』は、ロリンズ入門盤として、ジャズ者初心者の方々に大推薦の一枚です。 
 
 
 
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