ニューヨークの「ピアノ・マン」
土日は、70年代ロックの特集を。故あって、ニューヨークにまつわる「70年代ロック」について語ってみたい。
70年代ロックは、当初はブリティッシュ・ロックが中心。そして、米国はというと、ヒッピー・ムーブメントに端を発した西海岸ロックが先行し、その後日本では、サザン・ロックと呼ばれる南部ロックがマニアックな評判を呼び、東海岸に至っては、なかなか頭角を現すことが少なかった。
そんな中で、70年代半ばくらいから、米国東海岸のロック&ポップスが頭角を現す。僕にとって、70年代の米国東海岸、ニューヨークをイメージさせるロック&ポップス・ミュージシャンは、ビリー・ジョエル、ブルース・スプリングスティーン、そして、ポール・サイモンの3人。
その3人の中でも、リアルタイムでアルバムを聴き、その音楽活動を見つつ、一番親近感があるミュージシャンが、ビリー・ジョエル。米国東海岸のロック&ポップスで、ニューヨークを強く感じさせてくれるミュージシャンの最右翼である。
ビリー・ジョエルは1949年生まれ。米国のニューヨーク州サウス・ブロンクス出身のロック歌手、ピアニスト、作曲家。出身からして、強くニューヨークを感じさせてくれる。そして、この「ミスター・ニューヨーク」の様なビリーを初めて聴いたアルバムが、5枚目のアルバム、Bily Joel『The Stranger(ストレンジャー)』(写真左)。
この『ストレンジャー』は、1977年のリリースで、ビリーを一躍スターダムへとのし上げた。フィル・ラモーンをプロデューサーに起用して制作されたこのアルバムは、全米2位まで上昇する大ヒットを記録。ビリーの特徴である「ロックンロールなテイストとジャジーなアレンジ」が満載の名盤中の名盤である。
とにかく、振り返れば有名曲ばかり。特にLP時代A面を構成する4曲、「Movin' Out (Anthony's Song)」〜「The Stranger」〜「Just the Way You Are」〜「Scenes from an Italian Restaurant」が圧倒的である。このLP時代のA面は当時「耳タコ」である。何百回聴いた知れないくらい。とにかく、毎日1回は聴いていたと思うし、ちょっと洒落た喫茶店などはこぞって、この「LP時代のA面」をかけていた。
特に、3曲目の「Just the Way You Are」は絶品中の絶品。邦題は「素顔のままで」。まず、この歌詞が泣かせる。この歌詞の内容に感動し、共感し、自分もこうありたいと思い、当時、この歌詞は暗記した位だ(笑)。とにかく「純粋愛」の世界は圧倒的に美しく、現代の「My Funny Valentine」と僕は密かに名付けている。この「素顔のままで」は全米チャート3位を記録、1978年度のグラミー賞で最優秀楽曲賞と最優秀レコード賞を受賞、ビリー・ジョエルのキャリアの中で最大級のヒット曲である。なお、曲中、印象的なアルト・サックスのソロは、フィル・ウッズ御大のブロウである。
このアルバムでのビリーの曲のアレンジは、どれも前奏からジャジーなテイストが特徴で、強くアーバンな雰囲気を、強くニューヨークを感じさせてくれる。特に前述の「素顔のままで」の前奏のフェンダー・ローズの音色は涙もの。それから、2曲目の「ストレンジャー」の前奏の口笛も懐かしい音色で、これまた涙もの(笑)。加えて、AOR的な柔らかさとソリッドさは、ビリーのバラード調の曲を特に際立たせている。
ちなみに、「ストレンジャー」は日本の70年代のディスコブームの中で、統一振り付けにて、皆で揃って踊った曲のひとつ。恥ずかしながら、当時、僕もちょっと踊った思い出がある。まあ、キャラじゃないんですが、当時、大学生、真っ只中。自らの持ち味も顧みず、なにかと暴走していた頃の話である(笑)。
このアルバムで、ニューヨーク=ビリー・ジョエルという図式が定着した、と思っている。それほど、アーバンな雰囲気に溢れ(それも夜)、ロックンロールなテイストとジャジーなアレンジが秀逸で、AOR的な柔らかさとソリッドさを包含した、この『ストレンジャー』時代が生んだ名盤中の名盤の一枚である。
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