« ニューヨークの「ピアノ・マン」 | トップページ | 蘭プログレ発のフュージョン »

2010年9月26日 (日曜日)

ビリー・ジョエル「NYらしさ満載」

土日は、70年代ロックの特集を。今日も昨日に引き続き、故あって、ニューヨークにまつわる「70年代ロック」について語ってみたい。

昨日のブログで書いたが、僕にとって、70年代の米国東海岸、ニューヨークをイメージさせるロック&ポップス・ミュージシャンは、ビリー・ジョエル、ブルース・スプリングスティーン、そして、ポール・サイモンの3人。その3人の中でも、ビリー・ジョエル。米国東海岸のロック&ポップスで、ニューヨークを強く感じさせてくれるミュージシャンの最右翼である。

70年代のビリー・ジョエルのアルバムの中で、NYを一番想起させてくれるのは、昨日ご紹介した『ストレンジャー』。これがダントツでNYらしさを感じさせてくれる。それでは、その「NYらしさ」が満載なアルバムは何か。『ストレンジャー』の次のアルバム、ビリー最大のヒットアルバム『ニューヨーク52番街(52nd Street)』(写真左)である。

このアルバムは全米チャート1位を獲得。同年度のビルボードの年間アルバムチャートでも一位となった。加えて、グラミー賞では、最優秀アルバム賞と最優秀ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス賞の二部門を受賞するなど、アルバムの売上と共に、その内容・質も高く評価されたアルバムである。

確かに良くできたアルバムではある。が、1曲1曲の出来映えを細かくチェックすると、やはり前作の『ストレンジャー』に軍配が上がる。『ストレンジャー』はアルバム全体のトーンがNY賛歌であり、ニューヨーカーの日常を写し取った、私小説的な曲が秀逸。

この『ニューヨーク52番街(52nd Street)』は、その『ストレンジャー』の大成功の後を受けて作成されただけに、やはり目に見えないプレッシャーもあっただろうし、ビリーの当時の演奏の特徴だった「ロックンロールなテイストとジャジーなアレンジ」が成熟し、ややマンネリに陥りかけた時期でもあったと思う。

Billyjoel_52ndstreet

どう聴いても、『ストレンジャー』で強く感じた、キラキラと輝く様な躍動感というか、瑞々しさが希薄なのだ。出来が悪いと言っている訳では無い。出来が良い分、逆に「手慣れた感」や、頂点を極めた故の「停滞感」が、そこはかと漂っているように感じるのだ。

しかし、収録された曲はそれぞれ、さすがビリーと思われるものばかり。アレンジも行き届いており、起用されたミュージシャンも一流どころばかりで非の打ち所がない。が故に、なんだか、アルバム全体に「満腹感」の様な「膨満感」の様なものを感じる。逆に、この「満腹感」や「膨満感」が、世界一の大都会であるNYの「ダルな雰囲気」を醸し出している様な気がする。躍動感としての大都会というよりは「倦怠感としての大都会」が、この『ニューヨーク52番街(52nd Street)』に漂っていると感じるのは僕だけか?

そう言う意味で、NYを表現する、NYらしさを強く押し出す、上質のロック&ポップスのアルバムとして、ビリーの『ストレンジャー』と『ニューヨーク52番街』は、表裏一体、兄弟の様な「ペアをなす」アルバムだと僕は評価している。

とにかく、この2枚は、ビリーの70年代のアルバムのキャリアの中で、ダントツの2枚で、他にも曲としては優れた曲があるにはあるが、アルバム全体の「NYらしさを感じる」「NYらしさが満載」という点では、この『ストレンジャー』と『ニューヨーク52番街』を凌駕するアルバムは無い。

このアルバムは、「ザンジバル」ではフレディ・ハバードが間奏とエンディングでトランペット・ソロを担当している。また、シカゴのピーター・セテラとドニー・デイカスが「マイ・ライフ」でゲスト参加と、ジャズ・フュージョンという観点で聴いても、なかなかに面白い。

ちなみに、日本では『ストレンジャー』より、この『ニューヨーク52番街』の方が売れたし、評価が高かったのでは無いか、と記憶している。確かに、この『ニューヨーク52番街』の2曲目「オネスティ」は、街中のどこかで必ず流れていたような記憶が・・・。

米国本国やヨーロッパではシングルとしてはあまり売れなかったんだが、この曲には、何か日本人の感性を刺激する何かがあるんでしょうね。ちなみに、この「オネスティ」は、遠く大学時代に既に耳タコで、今でもまともに聴くことはありません(笑)。 
 
 
 
★Twitterで、松和のマスターが呟く。友だち検索で「松和のマスター」を検索してみて下さい。

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。   
 
 

« ニューヨークの「ピアノ・マン」 | トップページ | 蘭プログレ発のフュージョン »

コメント

そっか。
明日にでも52番街に行ってみようかな。
ふふ(^^)
Billy Joelが感じられるかも。
NYもあと3週間です~

おぉ、ニューヨーカーのひとんちゃん、元気にしてますか〜。
松和のマスターです。今は夜中の0時を回ったところ。ちょっと夜更かし
しとります。

このビリーのアルバムタイトルは、マンハッタン52丁目のA&Rスタジオで
レコーディングされたことにちなんでいます。単純な理由ですね。ひねりは
全くありません(笑)。

ジャズの世界では、ニューヨーク52番街は、かつてのジャズの中心地です。
ジャズの曲にも「52丁目のテーマ」なる曲もあります。

特にビ・バップの時代、1940年代後半から1950年代にかけて、52丁目に
あるバードランドなどの著名なジャズクラブに大物スターなどがやって
くるようになり、ジャズの新しい時代を支えるエリアとして有名でした。

そうか、ニューヨーカーもあと3週間か。早いもんやね〜。こちらは
ここ3日ほど、肌寒い陽気で、10月末〜11月上旬の陽気でした。
残り3週間、体調に気をつけて、貴重な経験を積み上げていって下さい。
 

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ビリー・ジョエル「NYらしさ満載」:

« ニューヨークの「ピアノ・マン」 | トップページ | 蘭プログレ発のフュージョン »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー