美しきフラグメンツ・2
マイルス・ディヴィスが、黒人ボクサー、ジャック・ジョンソンをテーマとした映画のサントラのコンプリートBOX。1970年2月18日から6月4日の録音。今日はその2枚目を・・・。
ゆったりとした、どう例えたらよいか、そう、ゆっくり歩くテンポから、テクテク歩くテンポの演奏のみが詰まった『The Complete Jack Johnson Sessions [Disc 2]』。ゆったりとしたテンポなんで、流石に「緩いかなあ」と思って聴いてみたら「あらビックリ」。
この『The Complete Jack Johnson Sessions [Disc 2]』は、そのゆったりとしたビートをバックに、マイルス(Miles Davis)のペットとジョン・マクラフリン(John McLaughlin)のギターを心ゆくまで愛でる、セッション・テープの集まりである。
ゆったりとしたビートというのは、演奏するにも難しく、そのビートをキープするのは更に難しい。その難しい「ゆったりとしたビート」を、エレベとトラムが手に手を取って、神妙に、時に熱く刻み続けていく。これって、なかなかの「聴きもの」です。エレクトリック・マイルスは「ビートが命」なのですが、ここでも、マイルスならではの「クールなビート」を聴かせてくれます。
しかし、改めて凄いなあと感心し、聴き耳を立ててしまうのが、マイルスのトランペット。延々と続く、ゆったりとしたシンプルなビートをバックに、様々なニュアンス、様々な音色、様々なフレーズで、マイルスは、ペットの音を紡いでいきます。そのクールでカラフルな展開に、ついつい聴き入ってしまいます。
ギターのマクラフリンも、なかなか面白いエレギを聴かせてくれます。マイルスには「ジミ・ヘンドリックスの様に弾け」と言われていたみたいですが、確かにジミヘンが入っていますが、そのフレーズは、決して「ロック」では無い。あくまで「ジャズ」です。「ロック・ギター」は「リフ」で聴かせるが、「ジャズ・ギター」は、あくまで「フレーズ」で聴かせる、という違いでしょうか。
でも、これが、今の耳で聴いても、実にクールなんですよ。マクラフリンが全知全霊を込めて、マイルスの為にエレギを弾いている様が見えるようです。
このセッションが敢行されたのは、1970年2月18日から6月4日。1970年という時代におけるロックの演奏と比較すると、圧倒的に、このエレクトリック・マイルスの演奏の方が内容も濃く、テクニックにも優れ、なんといっても、底に流れる「ビート」の存在感が凄い。「ロック」なんて目じゃない。そんな、マイルスの矜持が強く感じられるセッションのフラグメンツである。
この『The Complete Jack Johnson Sessions [Disc 2]』は、そのゆったりとしたビートが前提のセッションの集まりなので、「絶対に途中で飽きるなあ」と思ったのですが、初めて聴いた時以来、何度も聴き直していますが、不思議と飽きません。というか、いつも最後まで聴き通してしまいます。これぞ、エレクトリック・マイルスは「ビートが命」の真骨頂でしょう。
そう感じるのは、マイルス者だけなのかなあ。というか、僕だけなのかなあ。でも、この2枚目のCDも、結構「イケます」。聴く方も、ゆったりとリラックスしながら、そのゆったりとしたビートが前提のセッションを愛でる。マイルス者だけが感じる「幸せ」かもしれません(笑)。
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