衝撃的なデビュー作『Santana』
今日は久しぶりに「70年代ロック」のお話しを・・・。久しく「70年代ロック」のお話しは御無沙汰でしたね。
さて、1970年代、日本でのロックの評価は偏ったものが多かった。日本では、まずは「Beatles」が絶対とされた。そして、多数の日本人ロック評論家が「正統派ロック」と認めたものが「ロック」とされ、その他は「蔑まれた」。
「Beatles」は絶対、「The Rolling Stones」は不良のロッカー。ハードロックは「真の正しきロック」とされ、プログレッシブ・ロックは「思索的で芸術的なロック」と、もてはやされた。米国西海岸ロックは「お洒落で洗練されたロック」として崇め奉られ、サザン・ロックは「米国の真のロック」としてマニアックなものとされた。日本でのロックの評価は、ロック音楽を何らかの特徴を持って分類し、分類されたジャンル全体を何らかの評価をしてから、個々の評価をする。つまり、ジャンル全体の評価が、その何らかの基準を持って分類された個々のバンドの評価の総評であり、ジャンル全体の評価に注力していたとも言える。
1970年代の日本でのロックの評価は、こぞって経験の浅い「にわか評論家」達によって、適当に考えられたジャンルに従って分類され、個人的感情と「右にならえ」的な感覚で、適当になされてきた。中には、今の時代に通用する「正統な評論」を展開していた「真の評論家」をいるにはいるが、大多数は「エセ評論家」だった。しかし、1970年代、ロックに関して、評価の指針となるものは全く確立されておらず、その「曖昧な」評論家の意見をまずは鵜呑みにするしかなかった。いわゆる「黎明期」である。
そんな、日本における1970年代ロック、その真の実力に比して、大きく割を食ったバンドも多々ある。その代表格にひとつが「Santana(サンタナ)」。サンタナは、ラテンのリズム、ブルース、パップ、ストレートなロックの要素をすべて持った、日本人評論家からすると「分類不能」なバンドであった。しかも、当時、日本ではラテンな響きは「俗っぽいもの」とする風潮が強く、「分類不能」な音楽性は、どっちつかず、曖昧模糊とした「潔さのない」バンドとされた。当時の「サンタナ」は、その「俗っぽいもの」と「分類不能」な音楽性の両方に当てはまるので、一方で熱狂的なファンはいるものの、一般的には正統な評価を得ていなかった。
一方、我々「聴く側」からすると、この「曖昧な」評論家の意見をまずは鵜呑みにして、「聴かず嫌い」な面が強かったと思う。自分としても反省している。しかし、この「サンタナ」については、高校時代、熱狂的なファンが友人にいて、無理矢理、彼から聴かされたからこそ、この「サンタナ」について、かなり早い時期から、正統な評価をすることが出来た。「サンタナ」の音楽を楽しむことが出来た。ラッキーだったと今でも思っている。
その熱狂的な「サンタナ」のファンから、無理矢理、聴かされたアルバムの一枚が、サンタナの記念すべきデビュー作『Santana (1st Album) 』(写真左)である。この白黒の適当なライオンのジャケットにまずは「疑義」を抱きたくなり、特に財力のない高校時代、自ら「手を出す」ものでは無かった。友人に無理矢理、聴かされなければ、このアルバムを耳にするのは、ずっと後になっていたと確信している(笑)。
しかし、このアルバムの中に詰まった演奏は、当時、衝撃的なものだった。イルドなラテン・パーカッションを取り入れ、ファンキーでストレートなオルガンの響き、そして、ロングトーンとチョーキングを大々的に活用し、そしてアタッチメントを効果的に取り入れた、官能的なエレギ。全面に押し出てくる、ラテンでファンキーで官能的で疾走感溢れる、当時「聴いたことが無い」ロック。インストナンバーを積極的に取り入れていたことも、当時、珍しいことだった。
デビュー作の1曲目にも関わらず、インスト曲「Waiting(ウェイティング)」から始まるところが、実に新鮮で、実に格好良かった。とにかく、グレッグ・ローリーのオルガンが効いている。このオルガンの響きで全体の音のトーンが決まって、そこにラテン・パーカッションが味付けをし、そして、最後にサンタナの官能的ギターが炸裂。この1曲目の「Waiting(ウェイティング)」で全てが決まった。そして、高校時代の僕は、この1曲目の「Waiting(ウェイティング)」に心からたまげて、このバンドの演奏は素晴らしいと思った。
1曲目の「Waiting(ウェイティング)」以下、サンタナのラテンでファンキーで官能的で疾走感溢れる演奏が、ラストの「Soul Sacrifice」まで続く。ちなみに、今のCDのラスト3曲のボーナス・トラックはウッドストックでのライヴ音源で、かなり聴き応え抜群。基本的に、過去のロック名盤にボーナストラックを付け加えることは避けて欲しいのではあるが、このデビュー作『Santana (1st Album) 』については、サンタナのデビュー当時の「勢い」というものを追体験できるライブ音源ではあるので、まあ良しである。
サンタナは、ラテンのリズム、ブルース、パップ、ストレートなロックの要素をすべて持った、日本人評論家からすると「分類不能」なバンド。このデビュー作『Santana (1st Album) 』より、サンタナは独特なポジションを維持しつつ、日本の「エセ評論家」の耳を翻弄し続け、一般のロックファンをも戸惑わせ続けていく。「百聞は一見にしかず」というか「百聞は一聴にしかず」。そんな当たり前の体験をしっかりとさせてくれた、サンタナのデビュー作である。
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マスター!お久しぶりです!
サンタナ懐かしいデビューアルバムですね。
このジャケットはライオン?騙し絵ですよね?なかなか凝ってますよ。
私にとっては、このデビューアルバムというか、ウッドストックの「ソウル・サクリファイス」のM・シュリーヴのドラムが大変印象的でした。まさにウッドストックとこのデビューアルバムがダブります。
ちょうど中学生の頃で、CBSソニーレーベルのファクトリーシールの中に詰まっている音楽にわくわくしたものです。A・クーパー、BS&T、シカゴ、フリートウッドマック・・・等々、私にとっては一番輝いていた時代だと思っています。当時はラテン・ロック?という枠に嵌めていたような記憶があります。
投稿: N1号 | 2010年8月31日 (火曜日) 18時46分
おお、お久しぶりです、N1号さん。松和のマスターです。
うふふ、懐かしいですね〜、CBSソニーレーベルのファクトリーシール(笑)。
A・クーパー、BS&T、シカゴ、フリートウッドマックも「懐かしい〜」(笑)。
確かにサンタナのウッドストックは衝撃的でしたね。映画館で初めて見た時、
唖然として、しばらく声が出なかったことを思い出しました。
投稿: 松和のマスター | 2010年8月31日 (火曜日) 20時27分