熱い!エレ・マイルス『Double Image』
1969年、エレクトリック・マイルスは飛翔を始める。1969年2月に『In A Silent Way』を録音、1969年7月に、フランス・アンティーヴでのライブの模様を収めた『1969 Miles: Festiva De Juan Pins』。1969年8月には、エレクトリック・マイルスの基本『Bitches Brew』を録音。凄まじい「前進に次ぐ前進」。
エレクトリック・マイルスはライブで、その真価を更に発揮させるのだが、そういう意味では『1969 Miles』は凄いライブ盤だ。分厚いユニゾン&ハーモニー、凄まじいポリリズムを叩きまくるドラム。怒濤のようなビートを支える太いベース。最高に自由に多種多様な音色を紡ぎ出すエレピ、そんなリズムセクションが叩き出すビートは、今の耳にも新しい、唯一無二な「マイルスのビート」。そのビートをバックに、マイルスがショーターが吹きまくる。フリーにモーダルに吹きまくる。
そんな「ロスト・クインテット」のライブ盤がもう一枚ある。実はブート盤(海賊盤)あがりのライブ盤なんだが、そのタイトルは『Double Image』。もともとはブートとして出ていたものを2枚のCDに分け、それぞれ『Gemini』と『Double Image』という2タイトルに分けて、正式盤としてリリース。日本盤もリリースされんだが、僕はその日本盤の『Double Image』(写真左)の方を手に入れた。
パーソネルは、当然、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ss,ts), Chick Corea (elp), Dave Holland (b), Jack DeJohnette (ds)。1969年10月27日の録音である。収録されているのはメドレーの演奏1曲のみ。そのメドレーとは、「Free Improvisation 〜 'Round About Midnight 〜 Masuqualero」。音質的には、ブートとしては「まずまず」。『1969 Miles』が出るまでは、貴重な「ロスト・クインテット」のライブ盤だった。
この『Double Image』では、もちろん「ロスト・クインテット」全体の演奏が凄まじいが、とりわけ、ウェイン・ショーターのテナーが凄い。火を噴くような、爆発するような、エモーショナルな、限りなくフリーな、素晴らしいハイテクニックで気合いの入ったショーターのソロが存分に堪能できる。録音バランス的にショーターのテナーの音がしっかりと真ん中に定位しているのも良い。
もちろん、マイルスも凄い。ショーターと同様に、火を噴くような、爆発するような、エモーショナルな、限りなくフリーな、素晴らしいハイテクニックで気合いの入ったソロが凄い。しかも、このブート盤では、マイルスのソロが『1969 Miles』と比べて、かなりメロディアス。決して同じ演奏は繰り返さない、そんな「ジャズ本来の在り方」を追求するような、様々なバリエーションでの、一期一会なライブが、当時、繰り広げられていたことを物語る。
ベースのホランドとドラムのディジョネットのリズム・セクションの凄さは「当然」。凄いテンションの高い、高密度な演奏。それでいて、激しく自由度が高く、硬軟自在、伸び縮み自由、緩急自在。「へヴィー&フリーキー」なビート。この類い希なビートを叩き出すリズムセクション。収録されているメドレー演奏1曲、36分22秒、聴き終えたら、もう「ヘトヘト」になる。心地良い疲労感に包まれる。
音はちょっと悪いけど、聴けないほどではないので気にしない。熱い夏に「熱いエレクトリック・マイルス」。今年の酷暑、もう既に精神的には「溶けてヘロヘロ」なんですが、そんな夏バテの心に「がつん」と響く、エレクトリック・マイルス。いわゆるロスト・クインテットのライブ演奏、いつ聴いても凄いですね。気持ちが沸き立ち、心がポジティブになります。
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