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2010年8月29日 (日曜日)

俗っぽさと充実が拮抗する2nd.

今日も引き続き「サンタナ(Santana)」の話題を。衝撃のファースト・アルバムに続いて、1970年にリリースされた2nd.アルバムである『Abraxas』(写真左)。

この「Abraxas」というタイトルを見ても、ピンと来ない70年代ロック者の方々は多いのではないか。邦題が『天の守護神』。これでピンと来るでしょう(笑)。当時、日本の大手レコード会社CBSソニーは、ロックのアルバムのタイトルや曲名について、実に奇妙な、良きにつけ悪きにつけ、かなり印象的な邦題を付けていることで有名。例えば、このサンタナのセカンド・アルバムのタイトル『Abraxas』が『天の守護神』。曲名に至っては以下の通り。

1. "Singing Winds, Crying Beasts"
    (風は歌い,野獣は叫ぶ)
2. "Black Magic Woman/Gypsy Queen"
  (ブラック・マジック・ウーマン~ジプシー・クイーン)
3. "Oye Como Va"
  (僕のリズムを聞いとくれ)
4. "Incident at Neshabur"
  (ネシャブールのできごと)
5. "Se a Cabo"
  (全ては終りぬ)
6. "Mother's Daughter"
  (マザーズ・ドーター)
7. "Samba Pa Ti"
  (君に捧げるサンバ)
8. "Hope You're Feeling Better"
  (ホープ・ユー・アー・フィーリング・ベター)
9. "El Nicoya"
  (エル・ニコヤ)

1曲目、3曲目、5曲目、7曲目には、今見ても「凄いセンス」の邦題が付けられている。特に、3曲目「のリズムを聞いとくれ」や、7曲目の「君に捧げるサンバ」は、どうしてこうなるのか、理解に苦しむ(笑)。若かりし時は、この邦題を声に出して言うのは、かなり憚られた。特に、お気に入りの女の子の前ではとても言えない(笑)。

このCBSソニーの付けた邦題だけでも楽しめるサンタナのセカンド・アルバム『Abraxas』。その邦題から受ける雰囲気として、また、アルバム・ジャケットのデザインから受ける雰囲気として、安直な俗っぽさとラテン・ロックとしての「充実」が拮抗した不思議なアルバムに仕上がっている。
 

Santana_abraxas

 
1曲目の「Singing Winds, Crying Beasts」は流石のインスト中心のナンバー。ラテン・パーカッションが炸裂し、サンタナの官能的なロングトーン中心の、攻撃的なエレギが泣きまくる。ロックな響きのオルガンも良い味だしている。が、2曲目の「Black Magic Woman」の俗っぽさ、猥雑な雰囲気に唖然とする。確かに、これは売れるかもしれないが、あまりに俗っぽい。日本における「ムード歌謡」を聴いているような雰囲気。

しかし、メドレーで続く「Gypsy Queen」が、その俗っぽさを払拭し、ラテン・ロックとしての素晴らしさを全面に押し出してくれる。この「Gypsy Queen」の存在は大きい。このアルバムをラテン・ロックの名盤たらしめているのは、この「Gypsy Queen」の存在があってこそである。

この2曲目の「Black Magic Woman/Gypsy Queen」のメドレーが、このアルバム全体の雰囲気を代弁している。安直な俗っぽさとラテン・ロックとしての「充実」の拮抗。「俗っぽさ」で一般的な人気を集め、ラテン・ロックとしての「充実」で、硬派なファンを納得させる。なかなかに戦略的なアルバム内容の構成ではある。

その安直な俗っぽさの極めつけは、3曲目の「Oye Como Va」。邦題からして「僕のリズムを聞いとくれ」(笑)。勘弁してくれ〜。この曲だけは、何時聴いても「ズッ転ける」。ラテン・ロックの猥雑さと俗っぽさが突出した、ラテン・ロックの良くない面が露出した「迷曲」である。

しかし、くじけてはならない(笑)。4曲目「Incident at Neshabur」以降は、あまり俗っぽい面に偏らない、ラテン・ロックとしての「充実」を、とことん聴くことができる。ラテン・ロックとして、あんまりネバネバせず、後のフュージョン・ロックにつながる「軽快で疾走感のある演奏」が、なかなかに聴かせてくれる。
 
サンタナのセカンドのアルバムにして、ビルボード・チャート1位も獲得。そんな人気盤としての成果も良く判る、実に良く考えられた内容のアルバムです。僕は、どうしてもこのアルバムの「俗っぽさ」について行けず、LP時代はB面ばかりを聴いていた思い出があります。このセカンド・アルバムの評価は、このアルバムの持つ「安直な俗っぽさ」について、どう感じるかによるかと思います。  
 
 
 
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コメント

こんにちは、jamkenです。サンタナに関しては、ウッドストックでの彼のプレイに魅せられてからと、「哀愁のヨーロッパ」のイメージがあまりにかけ離れている。2ndはウッドストックを見てから以後購入して感動した作品であります。3rdはその後だいぶん経ってから聞きました。
 結論わたしは2ndをよく聞いたのであります。オエコモバも抵抗無く聞きました。私の中では2ndがフェバリットなのであります。しかしマスターの意見を見て、音楽というものはタイミングや聞き方で評価が変わるものだなーとつくづく感じました。

お久しぶりです、今晩は、jamkenさん。松和のマスターです。
 
サンタナ者の中では、2nd.派と3rd.派に分かれるみたいですね〜。
キャラバンサライ派もいますが、4枚目以降は、サンタナの音世界が
大きく変化した最初のアルバムなんで、1st.〜3rd.までの世界とは
一線を画するものでしょうね。

おそらく、jamkenさんのおっしゃるとおり、「オエコモバ」を
抵抗なく聴けるか聴けないかが、で2nd.派と3rd.派の分かれ道
ですね〜(笑)。 
 
 

マスター、二度目の投稿になります。
 今日FMでピーターバラカン氏が、ブラック〜ジプシークイーン、オエコモバの原曲をオンエアしていました。特にピーターグリーン在籍時のフリートウッドマック演奏のブラック〜はブルース色いっぱいで秀逸でした。
 マスターが言う通り、サンタナのブラック〜と後の哀愁の〜は当時余りにラジオ等でかかり過ぎていたせいか、私も食傷気味です。
 サンタナは前から好きでしたがサンタナ初期のアルバム数枚を買い揃えたのは、ここ数年です。このアルバムがリリースされた1970と言えば、私がまだ中学に入学した頃ですから、このアブラクサスのラテンと言うよりアフリカ民族音楽に近いパーカッションを理解出来たはずもなく、半世紀後の今聴いてラッキーだと思います。
 私は次作のⅢとキャラバンサライが好きですが、オエコモバは抵抗なく聴けましたよ!
 また投稿しますのでよろしくお願いします。

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