「ジャズ・ピアノの父」を愛でる
暑い。先週の金曜日から「ピーカン」な、我が千葉県北西部地方。朝から日差しは強く、南風は強く、空気はことのほか澄んでいて、紫外線が強烈。我が家は東南に窓があるので、その方角の部屋は、朝の6時で既に30度を超える。暑い。酷暑、猛暑の類である。
これだけ暑いと体力が消耗する。しかも、歳をとって、最近、朝が早い。昼食を摂って満ち足りると、いきおい睡魔が襲ってくる。よって昼寝をすることになる。せっかくの昼寝の時間、寝室のステレオでジャズを聴きながらの「お昼寝」と洒落込む。
この酷暑の3連休。しっかりと昼寝をとった訳だが、3日間共通のジャズが、Earl Hinesの『Here Comes』(写真左)。1966年1月録音の録音。ちなみに、パーソネルは、Earl Hines (p), Richard Davis (b), Elvin Jones (ds)。今から、44年前の録音。当時の若手のホープが、ジャズの「父」アール・ハインズ(当時、63歳になる)と共演した佳作。
アール・ハインズ(Earl Hines)は、1903年生まれ、1983年没。1927年ルイ・アームストロング・ストンパーズに参加。28年ニューヨークに進出。シカゴに移りクラブ「グランド・テラス」を拠点にしつつ、1940年まで活動。出演終了後もバンドは存続、1943年にはディジー・ガレスピー、チャーリー・パーカーらを擁しバップの誕生に重要な役割を担った。スイング時代〜ビ・バップ時代にかけて、ピアノ演奏に新しい表現力をつけ加えた功績は大きく、「ジャズ・ピアノの父」と呼ばれる。
この「クソ暑い」猛暑の中、もう難しいジャズは聴く気力も無い。ましてや昼寝をする段である。ビ・バップの激しさは暑苦しくてパス、ハード・バップのファンキーな「ねちっこさ」も暑苦しくてパス、電気楽器中心のフュージョンも音の厚みが暑苦しくてパス。ここまで暑いと、モードだのコードだのファンキーだのフュージョンだのややこしいことは抜きにして、シンプルでベーシックなジャズが聴きたくなる。じゃないと、この暑さの中、昼寝にならない(笑)。
ということで、アール・ハインズ(Earl Hines)の『Here Comes』が最適という判断に至る。アール・ハインズのピアノはスイング・ピアノが中心の、実にオールドファッションなスタイル。ビ・バップやハード・バップなピアノ・スタイルとは全く異なる、トリオの演奏とは言え、全くのところピアノが中心、ピアノが主役の、スイング・スタイルのピアノ演奏が心地良い響きを残しながら、延々と続く。
そんなオールドファッションなピアノのバックで、若手精鋭のリズムセクション、ベースのリチャード・デヴィスとドラムのエルヴィン・ジョーンズが、モダンなビートを叩き出し、そのモダンなビートに乗って、アール・ハインズは、心地良く、気持ち良く、軽快にスイングする。決して、最先端を行くスタイルではないが、実にジャジーな演奏に感じ入るばかり。
とにかく、バックを支えるリチャード・デヴィスのベースは凄い。若さに満ちたビート感に溢れ、ブンブンと軽快に「唸っている」。そして、しっかりと地道にビートのキープをしつつ、時にポリリズムを折り込み、実にモダンで、力強くも軽やかに踊るエルヴィン・ジョーンズのドラムも素晴らしい。どちらも、結構、ビシバシやっているが、決して、親分のアール・ハインズのピアノの邪魔になっていない。どころか、アール・ハインズのピアノをしっかりと引き立てているところが立派であり優秀。
このアルバムを聴くと、ジャズには「スタイルや奏法からくる相性」はあまり関係無いということが判ります。ジャズの基本は旋律とインプロビゼーションとビート。演奏のベースとなるスタイルが決まれば、ビートが決まる。ビートが決まれば、そのビートを基に旋律を歌わせ、そのビートを基にインプロビゼーションをかましていく。本当にジャズって柔軟性のある演奏フォーマットですよね。
このアルバムでも、「ジャズ・ピアノの父」アール・ハインズのバックで、当時若手精鋭、ジャズ界最先端のリズムセクションを担うベースのリチャード・デヴィスとドラムのエルヴィン・ジョーンズが、全く違和感無しに、息のピッタリ合ったトリオ演奏を展開しています。
酷暑の昼下がり、昼寝の時間にピッタリな「シンプルでベーシックなジャズ」。「ジャズ・ピアノの父」アール・ハインズの、スイング・ピアノが中心のオールドファッションなスタイルのピアノが、実に心地良い。そして、バックに若手精鋭のリズムセクションの切れ味の良いビート。このアール・ハインズ(Earl Hines)の『Here Comes』も暑気払いの一枚と言えますね。
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