夏が来れば思い出すフュージョン
なんだか昨日より、異様に蒸し暑い「我が千葉県北西部地方」。暑い、蒸し暑い。とても蒸し暑い。体力がどんどん奪い取られる。寝付きが悪く、それでも無くサッカーWCで「累積寝不足」で体調が思わしくないところに、この蒸し暑さは「堪える」。
さて、夏が来れば思い出すフュージョンがある。Native Son(ネイティブ・サン)。渡辺貞夫音楽学校の卒業生達中心に結成された日本の代表的フュージョン・バンド。この「ネイティブ・サン」の誕生は1978年3月。ジャズ界の時代は「フュージョン全盛期」。
バカテク、名うてのスタジオ・ミュージシャン達で結成された、伝説のフュージョン・バンド「Stuff」のデビューアルバムに驚愕し、遡って、ビリー・コブハムのバンドのブレッカー兄弟のパフォーマンスに驚愕し、リアルタイムに、ナベサダさんやヒノテルさんのフュージョンに感じ入っていた時代。「ネイティブ・サン」は、そんな時代に、日本のバカテク、名うてのスタジオ・ミュージシャン達で結成された「純日本産」のフュージョンバンドである。
その「ネイティブ・サン」のデビュー作(写真左)、1978年の録音。ちなみにパーソネルは、本田竹曠(kbds,perc)、峰厚介(ts,ss)、大出元信(el-g)、川端民生(el-b)、村上寛(ds)。純国産のフュージョン・バンドである。
恐らく、ネイティブ・サンとの出会いは、テレビのコマーシャルだったと思う。日立マクセルのカセットテープの宣伝のバックに流れるキャッチャーなテーマを持った、完全フュージョンな演奏。そう、ネイティブ・サンの「スーパー・サファリ」である。1回聴いて、これは、と思った。ちょうど、FM誌にネイティブ・サンの紹介記事が載っていた。恐らく、それが「ネイティブ・サン」との出会いである。
この「スーパー・サファリ」が気に入ったので、この曲が入ったアルバムを探しに行った。あるにはあったんだが、このジャケット・デザインに「引いた」。むくつけき男性ミュージシャンが上半身裸で水遊びに興じる姿。このジャケットに「ドン引き」した(笑)。仕方が無いので、なんとか友人に購入させ、カセットテープにダビングさせて貰った。もちろん、カセットテープは「マクセル」である(笑)。
ちなみに、このデビュー作の『ネイティブ・サン』、名うてのバカテクなスタジオ・ミュージシャンの演奏なんだが、確かにバカテクだけど、響きは「アナログ」。後に追ってデビューしてくるカシオペアやスクエアの様に、デジタル色が強く、切れ味鋭いシンセサイズした音に比べると、ネイティブ・サンの音は、完璧にアナログチックで、バカテクの割に、そこはかとなく「野暮ったい」、垢抜けない人間味溢れる演奏が特徴。収録されたそれぞれの曲のテーマも、キャッチャーなんだが、そこはかとなく大衆的で俗っぽい。そんな、当時の「純日本的」なバカテク・フュージョンが、ネイティブ・サンの最大の特徴である。
先行してフュージョン化していた、ナベサダさん、ヒノテルさんのフュージョンは、その演奏の底に、そこはかとなく「純ジャズ」的な音の響きと、ジャズ的なビートが流れていて、完璧にフュージョンの演奏とは言え、その底に「ジャズ」的な雰囲気がしっかりと漂っているところが特徴だったんだが、ネイティブ・サンは違う。
特にこのファースト・アルバム『ネイティブ・サン』には「ジャズ的」な音の響きが希薄。どちらかと言えば、ロック的なフュージョンの雰囲気が強い。英国で言う、Brand XやBrufordやAllan Holdsworthのような「ロックよりのフュージョン」に近い響きが特徴。ジャズ的な雰囲気が希薄なところが、僕にとっては減点対象。でも、このアルバムは売れましたねえ。フュージョン・ジャズのアルバムとしては異例の、30万枚を越える空前のヒットとなりました。
若々しい吹っ切れたパワーとドライブ感は、やはり当時の勢いを感じます。完璧にアナログチックで、バカテクの割に、そこはかとなく「野暮ったい」、垢抜けない人間味溢れる演奏は、今の耳にも良い意味で「親近感」を感じます。デジタル以前のアナログな音。このネイティブ・サンのファースト・アルバムには、フュージョン・ジャズの良き時代、人間が演奏するバカテク・フュージョンの心温まる世界がここにあります。
さすがにジャケット写真には今でも「引き」ますが、日本のフュージョン時代を代表する、良いアルバムだと思います。フュージョン・マニア必聴、必携のアルバムでしょう。
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