マイルスとギルのコラボ『Sketches of Spain』
3日前のブログ(6月30日のブログ・左をクリック)で、「マイルスとギルのコラボ・その1」として、『Quiet Nights』について語った訳ですが、このアルバム、私がジャズ者駆け出しの頃、実に気に入ったのですが、どうも評価が低い。当のマイルス自体がこのアルバムを評価しておらず、ジャズの紹介本を見ても、評価は芳しく無い。
ちょっと焦った。ジャズ者駆け出し故の弱さである。マイルスとギルのコラボの素晴らしさは、この『Quiet Nights』を聴いて実感していたので、やはり、ジャズ者駆け出し初心者の頃は、世間的にも覚え目出度い名盤の類を聴きたいし、所有していたい。で、ここで、ジャズ者駆け出し初心者は、ジャズの紹介本に走る(笑)。すると『Sketches of Spain』というアルバム名が浮かび上がる。
Miles Davis『Sketches of Spain』(写真左)。57年の『マイルス・アヘッド』、58年の『ポーギーとベス』に続く、マイルスとギルのコラボレーションの第3弾。
スペインの作曲家ロドリーゴの人気曲をギル独特のアレンジで再編した、アルバム冒頭を飾る「Concierto De Aranjuez(アランフェス協奏曲)」が目玉。クラシックの原曲を基に、ギルにアレンジされたブルージーでスパニッシュな旋律に、マイルスのモード・ジャズを基本としたインプロビゼーションが絶妙に絡む。
このアルバムに収録された曲は、殆どがいわゆるスパニッシュ・モードによる演奏と言って良い。当時、マイルスは、このスパニッシュ・モードに強い興味を持っていたらしく、マイルスのスパニッシュ・モードの解釈、スパニッシュ・モードをベースとした演奏は、それはそれは非常に優れたものだと思います。
ギルのアレンジは、その音の重ね方に独特の個性がありますが、原曲に対しては意外に忠実です。「アランフェス協奏曲」は、原曲の構成をほぼ忠実になぞっています。恐らく、それがジャズ者以外の、クラシックのファンや一般の音楽ファンに人気のあるところかと思われます。そう、このマイルスの『Sketches of Spain』、ジャズ者以外の音楽ファンに絶大な支持を受ける不思議なアルバムです。
でも、正直に告白すると、僕は、この冒頭の「アランフェス協奏曲」が凄く苦手です。何故か眠くなるんですよね。ギルのアレンジが、意外と原曲の構成をほぼ忠実になぞっていくところが退屈に感じるんだと思います。ギルの音の重ね方は、確かに「ギルしていて」面白いのですが、別にそれが「アランフェス協奏曲」でなくてもねえ、って感じです。
流石に、マイルスのトランペットは、マイルスのモーダルな演奏は素晴らしいの一言。スパニッシュ・モードを自分のものにしつつ、どの曲の、どの場面でも、マイルスのトランペットが実に格好良く映える。ギルのアレンジによるスパニッシュな曲は、全てがマイルスのトランペットを惹き立たせる為にある。そのモーダルなトランペットだって、別に、スパニッシュ・モードに限らないしねえ。
どうも私の体質に合わないのでしょうか、この『Sketches of Spain』を聴く度に、激しい睡魔に襲われるんですね〜(笑)。進軍行進曲のような4曲目の「Saeta」あたりが「睡魔」のピークになります。この「Saeta」が最後まで聴けると、その時の体調は良し、です(笑)。体調が悪い時は「Saeta」の音の記憶がありません。微睡んでいるうちに、『Sketches of Spain』は終わっています。オート・リフト・アップのアームでは無かったので、LP時代は危険でした(笑)。
しかし、ジャズは猥雑、ジャズは庶民的、ジャズはアクロバット的と言われ、「クラシックの様な芸術性には無縁」と言われることが今でもあるが、このジャズというフォーマット、ジャズという音楽ジャンルが、これだけアーティスティックな側面を全面に押し出し、これだけ芸術性の高い音楽的成果を残すことが出来る、それを証明できる最高の一枚ではある。ジャズ者であれば、一度は聴くことが必要な名盤の一枚ではある。
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