Eliane Elias Plays Live
故あって、昨日まで2泊3日で大阪にいた。往き帰りの新幹線の中で、まとまって音楽を鑑賞できる時間がとれた。そんな中で、ある硬派なピアノ・トリオのライブ盤を聴いた。
そのライブアルバム名は『Eliane Elias Plays Live』(写真左)。昨年2009年のリリース。リーダーの女性ピアニストは、Eliane Elias(イリアーヌ・イリアス)。ブラジル出身の美貌の女性ジャズ・ピアニスト&ヴォーカリスト。伝説のブレッカー兄弟の兄ランディ・ブレッカーは元夫君。最近売出中の美貌若手の女子ボーカリスト、アマンダ・ブレッカーはランディとの間に生まれた娘。
このライブ盤『Eliane Elias Plays Live』は、2009年7月のリリース。邦題は『デサフィナード』。この邦題が良くない。この邦題だけ見れば、またまたボサノバ関連のボーカル集か(このところずっとボーカル中心なんですよね)、とちょっと敬遠しそうだが、このライブ盤は、かなり硬派なジャズ・ピアノ・トリオのライブが収録されている。ちなみにパーソネルは、Eliane Elias (p), Marc Johnson (b), Joey Baron (ds)。 ベースのマーク・ジョンソンは現夫君。
もともとイリアーヌはピアノスト出身。ピアニスト一本で勝負し、1989年暮れにリリースされた、イリアーヌならではの個性を十分に我々に知らしめた『Eliane Elias Plays Jobim』は実に優れたピアノ・トリオ盤であった。しかしながら、彼女のボーカルは、彼女のピアノの才能を凌駕して余りある力量である。特に、ボサノバ系の女性ボーカルとしては「ピカイチ」の才能である。
そんなイリアーヌが、このライブ盤『Eliane Elias Plays Live』では、得意のボーカルを敢えて封印して、ボーカルレスのピアノ・トリオのライブ盤として勝負している。もともとはピアニスト。では、最近の動向として、どのレベルまで、ジャズ・ピアノを弾きこなすことができるのか、その点に興味が集中する。
一言で言って「硬派」。激しく硬派なタッチで、指の回りも良く、インプロビゼーションの展開もダイナミックかつ広レンジ。超スタンダードからオリジナルまで、何でもこなす器用さも持ち合わせている。収録された7曲のどの曲にも、ピアノ・トリオとしての「魅力的な内容」がギッシリと詰まっていて、聴き応え抜群。
あまりに「硬派」で「真面目」なライブ盤なので、聴き終えた後、若干の疲れを感じることが「まま」ある。しかし、スタイルは安全運転志向なので、確かに「硬派」な内容のジャズ・ピアノ・トリオ盤なのだが、イリアーヌとしての個性が明確に表出されているわけではない。逆に、誰のピアノか判らないくらい。
イリアーヌはデビュー当時から、エバンス派と呼ばれたり、ハービー・ハンコックやチック・コリアのピアノ・センスとの関連が指摘されたりで、「イリアーヌはこれ」と言った個性が定着してはいない。逆に言うと、エバンス派直系では無く、ハンコック、チックのフォロアーでも無い。けど、どことなく、エバンスぽいところ、ハンコックぽいところ、チックぽいところが見え隠れしたりする。が、かといって、それを聴いただけで、イリアーヌだと聴き分けるだけの強烈な個性がある訳では無い。
この『Eliane Elias Plays Live』、内容は「硬派なピアノ・トリオ・ライブ盤」という観点では、実に優れた内容ではある。しかし、肝心のイリアーヌのピアニストとしての「個性的なタッチ」を披露している訳では無く、実に優等生的なダイナミズム溢れるピアノではあるが、確かに、評価の高いボーカルと比べるとやはり一歩劣るというところだろう。
それでも、バックのMarc Johnson (b), Joey Baron (ds) の好演に支えられ、煽られて、イリアーヌは近年聴くことの出来なかった、実にハードボイルドでハードドライブな純ジャズ・ピアノが堪能できます。イリアーヌの個性の表出という点では、ちょっぴり不満が残りますが、最近リリースのピアノ・トリオ・ライブ盤としては実に優れた内容となっています。適度にスタンダード曲も演奏されており、その聴きやすさという点からは、ジャズ者初心者の方々への推薦盤でもあります。
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