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2010年3月11日 (木曜日)

Abdullah Ibrahim=Dollar Brand

ファンキーなジャズ・ピアノも大好きだ。モーダルなフリー一歩手前の自由度の高いジャズ・ピアノも大好きだ。ビ・バップ的な疾走感溢れる弾きまくりジャズ・ピアノも大好きだ。そして、フォーキーでワールドミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチックなジャズ・ピアノも大好きだ。

フォーキーでワールドミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチックなジャズ・ピアノを初めて体験させてくれたのは、キース・ジャレット。70年代のキースのピアノは、そんなフォーキーでワールドミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチックな響きが特徴のひとつだった。でも、それは、キースのジャズ・ピアノの一部。

このフォーキーでワールドミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチックなジャズ・ピアノを全面的に押し出して、ほんと、そのまんまのジャズ・ピアノをずっとイチ押しで弾き続けているピアニストがいる。Abdullah Ibrahim(アブドゥーラ・イブラヒム)、昔の名前は、Dollar Brand(ダラー・ブランド)。

1934年10月、南アフリカ連邦のケープタウン生まれ。63年にチューリッヒで、デューク・エリントンの目にとまる。65年に米国に渡り、68年にはイスラム教に改宗。セロニアス・モンクやエリントンの影響を受けつつ、独特な音世界を確立している。絵に描いた様な、フォーキーでワールドミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチックなジャズ・ピアノは聴いていて、ジャズの音の原風景を彷彿とさせてくれる。

そんなAbdullah Ibrahim=Dollar Brandなジャズ・ピアノを堪能させてくれるソロピアノ・アルバムが『African Piano』(写真左)。彼が生まれ育った街、ケープタウンでは民族色の強い宗教音楽がアメリカのゴスペルやジャズと並んで日常的に演奏されていたそうだ。そんな彼の音の原風景をピアノ・ソロで綴ったような、アーシーでビートの利いた、ファンキーでソウルフルなソロピアノが素晴らしい。
 

African_piano 

 
冒頭の「Bra Joe from Kilimanjaro」を聴くだけで、もうダラー・ブランドな世界に「どっぷり」である。緩やかな緊張感溢れるアーシーでファンキーな左手に乗って、力強いタッチで、右手がこれまたファンキーなフレーズを紡いでいく。時にフリーにブレイクしながら(雷が落ちたブレイクで、重低音バリバリで、LP時代には、ややもするとプレイヤーの針が飛んで、ビリビリいって困ったものだ)、力強くしっかりと鍵盤をたたきながら、印象的なフレーズを紡いでいく。

ラストの2曲「ジャブラニ」と「チンチャナ」も実に雰囲気で、実に力強いタッチと強力なリズムで、アルバムタイトルどうりの「アフリカン・ピアノ」を叩き出していく。この強烈な個性とこの強烈なリズムとダイナミックな展開。

このソロピアノ・アルバム『African Piano』には、硬派なジャズ・ピアノが満載。ダラー・ブランドのフォーキーでワールドミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチックなジャズ・ピアノの原点が、ここにある。

特に、アーシーでゴスペルチックな響きがたまらない。そして、時折垣間見る、セロニアス・モンク的なパーカッシブな響き。エリントン的な深みのあるマイナー調な音世界。この純ジャズの歴史を踏襲する部分が、このダラー・ブランドのピアノを、いかなる時も「ジャズ・ピアノ」として成立させている。

もともと、ジャズは黒人の音楽であり、アフリカが起源。アフリカン・アメリカンの音の原風景のひとつが、このダラー・ブランドのピアノにあるような気がする。フォーキーでワールドミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチックなジャズ・ピアノを愛でるには、Abdullah Ibrahim=Dollar Brandの諸作を聴くのが早道である。
 
 
 
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コメント

突然のかき込失礼しました。
9月下旬からAbdullahさん来日公演を行います。
特設ブログを開設致しましたので宜しくお願いします。
http://africanpianotokyo2010.blogspot.com/

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