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2010年1月19日 (火曜日)

チェット&ペッパー若かりし頃 『Picture of Heath』=『Playboys』

米国西海岸ジャズは、東海岸とは全く違った味わいがある。クールでスマート、端正、良く練られたアレンジ。この3つが、西海岸ジャズの特徴と言えるだろう。

東海岸の様な熱気溢れる、エモーショナルな演奏とは正反対の「クールでスマート」な演奏。東海岸の一発勝負的なジャム・セッション風では無い「リハーサルを積んだ端正」な演奏。職人芸的な「あうん」の呼吸一発のユニゾン&ハーモニーでは無い「良く練られたアレンジ」。西海岸ジャズは、東海岸とは正反対のジャズの雰囲気である。

そんな米国西海岸ジャズは、昔からどうも日本では分が悪い。クールでスマート、端正、良く練られたアレンジなんて特徴は「日本人好み」ではないかと思うのだが、どうも品行方正、優等生的なところが、どうも駄目らしい。日本では、ジャズはちょっと不良チックな音楽、という偏った見方をされることが多いので、品行方正、優等生的なんてことは許されないんだろう。

でも、そんな評価の米国西海岸ジャズも、CDの時代になってから続々と再発されるようになり、最近では、西海岸ジャズの基本的なアルバムは殆ど再発されていて、コレクションに事欠かなくなった。西海岸ジャズって、これはこれで良いもんです。

昔から良く聴くアルバムで『Picture of Heath』(写真左)というアルバムがある。1956年10月の録音。パーソネルは、Chet Baker (tp) Art Pepper (as) Phil Urso (ts) Carl Perkins (p) Curtis Counce (b) Lawrence Marable (ds)。Chet Baker (tp) と Art Pepper (as)、米国西海岸ジャズの両雄の「若かりし頃」の録音である。
 
 
Picture_of_heath
 
 
1970年代、カムバック後、シワシワのおじいちゃんとなってしまったチェットではあるが、そのシワと引き替えに、チェットは、演奏家としての「円熟味」を手に入れた。でも、1950年代の若かりし頃は、それはそれは、絵に描いたような「美男子トランペッター」で、女性ファンをブイブイ言わせていた。

この『Picture of Heath』の演奏を聴いて判るように、チェットのペットは溌剌として、テクニックも素晴らしく、ガッツのある、歌心の溢れるフレーズを連発している。なるほど、東海岸のマイルスと双璧の、西海岸のトランペットの雄であった、ということが本当に良く判る。これで端正な顔立ちなんだから、そりゃ〜女の子にはもてただろうなあ。ただし、ジャンキーであったことが誠に残念ではある。

ペッパーも同じ。この『Picture of Heath』での、ペッパーは好調にアルトを吹き鳴らしており、テクニックはもとより、流麗ではあるが、しっかりと芯のある、程良くマイルドで味わい深いアルトは聴きものである。ペッパーもチェットに負けず劣らず、端正な顔立ちで、女の子にはモテモテだったそうだ。しかし、ペッパーもまた、チェットに負けず劣らず、ジャンキーであったことが誠に残念ではある。

ちなみに、チェットもペッパーも麻薬に溺れて、西海岸ジャズの第一線からの撤退を余儀なくされました。ミュージシャンとして、一番良い時代を麻薬で棒に振ったところまで、この2人はそっくりです。まったく困ったもんです(笑)。

この『Picture of Heath』は、米国西海岸ジャズの良いところを一枚のアルバムに凝縮して伝えてくれる良いアルバムです。ちなみにこれ、昔は、LPのA面、B面を入れ替えて『Playboys』(写真右)というアルバム名で発売されていました。

ちなみに僕は、こちらの『Playboys』の方が馴染みがあります。ジャケット写真も『Playboys』の方が秀逸でしょ(笑)。『Playboys』ジャケのCDも是非とも手に入れたいのですが、日本でも米国でも廃盤みたいで至極残念です(笑)。 
 
 
 
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