ジャズ、今年の「聴き初め」・2
その音世界を愛でて、今年の音楽三昧の生活に幸あれ、と願う行事「聴き初め」。昨日、故あって封印していた、自分の一番お気に入りのアルバムをかけるという「お作法」を、6年ぶりに復活させた訳だが、同時に、エレクトリック・マイルスも解禁した。
昨日、Chick Coreaの『Return to Forever』に続いて、「聴き初め」に選んだアルバムが、Miles Davisの『Agharta(アガルタの凱歌)』(写真左)である。今年より、エレクトリック・マイルスを解禁して、本格的に聴き直そうと思い立った。
僕はエレクトリック・マイルスが大好きである。そして、エレクトリック・マイルスの中で、まずお気に入りとなったアルバムが、この『Agharta(アガルタの凱歌)』と『pangaea(パンゲアの刻印)』の2つのライブアルバム。どちらも、1975年2月1日、大阪フェスティバル・ホールでのライブ録音である。
最初は、当時、ライブ録音された音源をFMでエアチェックして聴いた。たまげた。その頃、プログレッシブ・ロックに填っていた僕は、このマイルスのライブを聴いた瞬間、プログレッシブ・ロックは耳に優しく聴き易い「ポップ・ミュージック」の類だ、と思った。アルバム化された時は「即ゲット」でだった。
ベースとドラム、そしてギターが紡ぎ出すビートが凄い。なんて複雑で心地良いビートなんだろう。そのご機嫌なビートに乗って、トランペットがソプラノサックスが、そしてギターが「直感的な旋律」を紡いでいく。
しかも、そのビートや旋律は決して事前に打合せされたものでは無い、ということが聴いていて良く判る。マイルスが、ペットと電子オルガンで、その場その場で、バンド全体の音を指揮し、統率している様子が実に良く判る。決して「完成され洗練された音」では無い。でも、そのライブ感が実にスリリングである。
ジャズはもとより、ファンク、ロック、ソウルすべての音楽要素を凝縮した様な、懐の深い音楽ジャンルである「ジャズらしい音」が実に頼もしい。そして、「一過性かつ再現不可能な」音の洪水は、本当にジャズらしい。
フリー・フォームで無いのに、圧倒的に自由度の高い演奏に、マイルスの真骨頂を感じる。エレクトリック・マイルスの一連の成果は、フリー・ジャズによる、従来の「音楽の本質」の放棄の後に必然として現れた、新しいモダン・ジャズの観念に基づいた「音楽の本質」の追求の一つの「大きな成果」だろう。
ジャズはもとより、ファンク、ロック、ソウルすべての音楽要素を凝縮した様な、空前の音楽的カオス。決して「完成され洗練された音」では無いが、ジャズの特質が直感的に感じることが出来る、数少ない演奏の記録である。横尾忠則が担当したジャケットも見事。
聴くならば『Agharta(アガルタの凱歌)』と『pangaea(パンゲアの刻印)』とセットで聴きたい。聴くならば出来る限り大音量で聴きたい。セットでかつ大音量とくれば、体調が良い時で無いと続けて聴くことは「ちと、しんどい」。でも、それだけ聴く価値のあるライブ盤であることは確かである。
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