Blue Note Plays the Beatles
今年は、ビートルズ・リマスターの年だった。ステレオ・ミックスが全てリマスターされて、CDとして出揃い、しかも、幻に終わるかと思っていた、モノラル・ミックスも全てリマスターされて、CDとしてリリースされた。まさか、この歳になって、ビートルズのアルバム三昧になるとは思わなかった(笑)。それほど、今回のリマスターは、素晴らしい出来だったと思う。
さて、ビートルズの楽曲は、早い時期から、ジャズではカバーされてきた。あの世界的に爆発的にブレイクしたビートルズの楽曲である。その爆発的な人気あやかりたいという、商業的な思惑もあっただろうし、ビートルズの楽曲のコード進行の面白さが、純粋にミュージシャン魂を揺さぶった、ということもあっただろう。
1960年代、様々なビートルズの楽曲のカバー・ジャズがあったが、しっかりと地に足付けて、ミュージシャンの特性を活かしつつ、硬派なジャズ・アレンジを施した、ビートルズのカバー・ジャズを量産したレーベルが「ブルーノート」。
1960年代のブルーノートのアルバムには、ちょくちょくとビートルズのカバーが収録されている。そして、これがなかなかの出来のものが多い。これを集めてコンピにしてくれたらなあ、と思っていたら、それが「出た」。2004年のことである。その名も『Blue Note Plays the Beatles』(写真左)。
でも、僕はブルーノートのビートルズのカバーと言えば、1996年にリリースされた『Strawberry Fields』(写真右)。このカバー・アルバム、ボブ・ベルデンのプロデュースで、なかなかいかしたアレンジ。 Cassandra WilsonやHolly Coleのボーカルを活かしたカバーが秀逸。
2004年発売の『Blue Note Plays the Beatles』には『Strawberry Fields』からの楽曲が、 Holly Coleの「I've Just Seen A Face」とCassandra Wilson & Dianne Reevesの「Come Together」の2曲のみ。しかも、当の『Strawberry Fields』は廃盤状態。う〜ん、なんだかなあ、と思っていたら、突如、『Blue Note Plays the Beatles』のデラックス・エディションが「出た」。
なんと今年、『Blue Note Plays the Beatles』が、ビートルズのリマスター発売を記念して、デラックス・エディションとして再登場である。しかも、あの『Strawberry Fields』から「Strawberry Fields Forever」「Fool on the Hill」「Hey Jude」を追加収録して、である。あの『Strawberry Fields』から半分の5曲がチョイスされた。しかも、これ、実は日本限定発売。いやいや〜、これは「買い」である。
収録曲は以下の通り。
1. Can't Buy Me Love - Stanley Turrentine
2. Yesterday - Lee Morgan
3. Norwegian Wood (This Bird Has Flown) - Buddy Rich
4. Hello Goodbye - Bud Shank
5. A Day In The Life - Grant Green
6. Eleanor Rigby - Stanley Jordan
7. Blackbird - Tony Williams
8. I've Just Seen A Face - Holly Cole
9. And I Love Her - Kevin Hays
10. Come Together - Cassandra Wilson & Dianne Reeves
11. Drive My Car - Bobby McFerrin
12. Strawberry Fields Forever - Cassandra Wilson
13. Fool on the Hill - Javon Jackson, Dianne Reeves
14. Hey Jude - Greg Osby
1960年代のカバーは、原曲の旋律を活かしたシンプルなアレンジが好印象。まだ、ビートルズの楽曲が持つ、独特のコード進行を活かした、ジャズならではのアレンジにはなっていない。でも、インプロビゼーション部は、しっかりと独特のコード進行を踏まえた、なかなかユニークな展開になっていて、聴いていて、とても楽しい。
6曲目のStanley Jordanの「Eleanor Rigby」は、1980年代、新生ブルーノートからのリリースだった。「ジャズ・ギターの革命児」と称賛される彼のギターによる「タッチ・テクニック」と呼ばれる驚異の両手タッピング奏法は、CDの音だけでは、どうやって演奏しているか判らないほど、今までに聴いたことのないギター演奏の音だった。今の耳で聴いても素晴らしい演奏、素晴らしいカバーである。
12曲目から14曲目の3曲は、Bob Beldenプロデュースの『Strawberry Fields』からの選曲。デラックス・エディションだけの「エクスクルーシヴ・ボーナス・トラック」である。これが、アレンジ良く、原曲の印象を残しつつも、完全にジャズ化している。『Strawberry Fields』は、1996年のリリースなので、ビートルズのカバー・ジャズも、アレンジ技術、演奏技術も、それぞれの年代で、着々と進歩しているのが良く判る。
今回の「エクスクルーシヴ・ボーナス・トラック」の追加で、『Blue Note Plays the Beatles』は、確実に内容がグレードアップした。これは「買い」でしょう。正統派のビートルズのカバー・ジャズを体験するには、うってつけのコンピです。
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