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2009年12月 5日 (土曜日)

第2期Return to Forever の船出

僕はチック・コリアの大ファンである。よって、彼の千変万化な音楽性の全てが許容できる。アコースティックもエレクトリックもOK。特に彼のエレクトリック・キーボードのテクニックとセンスについては、ジャズ界一だと思っている。

そんなエレクトリックなチックを初めて体験したアルバムが、第2期Return to Forever の第1作『Hymn of the Seventh Galaxy』(写真左)。邦題は『第7銀河の讃歌』(直訳やん・笑)。1973年8月レコードプラネットで録音。パーソネルは、Chick Corea (key, p, org), Bill Connors (g), Stanley Clarke (b), Lenny White (ds, per)。

そう、この時は、まだギターがディメオラではなく、ビル・コナーズである。第1期Return to Forever は硬派な楽園的フュージョン・ジャズ中心だったのだが、この第2期Return to Forever は、徹頭徹尾、ハード・フュージョン・ジャズ。とにかく、ハードである。ただ、旋律はキャッチャーでメロディアスなものが中心なので、ハードな演奏でありながら、聴き辛いものではない。70年代ロックで言うと、プログレ、例えばイエスとかクリムゾン、ELPの演奏が聴けるのならば、全く問題の無いハードさである。

第2期Return to Forever の中で、この『Hymn of the Seventh Galaxy』だけが独特の音の響きを持っているのだが、それは、「くすんだ音でちょっとラフな調子」というビル・コナーズのギターが主な理由くすんだような音が印象的なギターが実に個性的。そして、早いパッセージを弾く時、ビートを崩すというかラフな弾き回しになるんだが、これは彼がロック畑出身ということから来るのだろう (当初ロック畑のスタジオ・ミュージシャンとして働いてきた経緯がある)。というか、わざとロックっぽく弾いている雰囲気がある。

主役のチック・コリアのエレクトリック・キーボードについては、申し分無い。というか、これほどまでに、エレクトリック・キーボードを弾きこなせるミュージシャンはいないと思う。それぞれのキーボードに精通し、それぞれのキーボードの個性をしっかり踏まえた使い方については素晴らしい限り。キーボードを趣味にする方でしたら、この辺のところを十分に理解いただけるかと・・・。
 

Hymn_seventh_galaxy

 
もう一つ、チックの凄いところは、このアルバムに収録されている自作曲の出来の良さ。旋律はキャッチャーで、ロマンティックでメロディアス。スパニッシュ・フレーバーが隠し味。この様な「印象的な旋律」を持った曲を中心にこのアルバムが構成されているので、このアルバムは、とても聴きやすく親しみ易く、アレンジも良く考えられており、聴いていて「ノリ易い」。この辺りが、同時代、トニー・ウィリアムス率いたエレクトリック・ジャズバンド「ライフタイム」との違いだろう。

スタンリー・クラークのベースはブンブン唸りを上げ、レニー・ホワイトのドラミングは重爆撃機の様に、ドドドドドと重低音ベースを供給する。この超重量級のビート&リズムも、この第2期Return to Forever の特徴。あの千変万化のチックの重力級キーボードと、ビル・コナーズの重量級エレキギターを相手にするには、これくらいの「超重量級」リズムセクションで迎え撃たないと、バンド演奏全体のバランスが取れないだろう。

ギターがディメオラではなく、ビル・コナーズなので、なんとなく、第2期Return to Forever の諸作の中で、ちょっと評価が一段だけ低めのアルバムですが、どうしてどうして、収録された曲やグループサウンズ全体の雰囲気など、アルバムを総合的に見渡すと、なかなかに平均的の高いアルバムだと思います。ハードな演奏ではあるが、収録されている演奏の根幹をなす旋律は「キャッチャーでメロディアス」なものが中心という部分が高評価ポイントです。

でも、初めて聴いた時は、このエレクトリック演奏のハードさとハイ・テクニックにビックリしました。当時、エレクトリック演奏のハードさとハイ・テクニックさについては、プログレの演奏が最高だと信じていたんですが、その想いは、このアルバムとの出会いによって、粉々になりました(笑)。ジャズの世界ってスゲ〜、と心から感じ入った瞬間でした。  
 
 
 
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