マイケル・ブーブレ「It's Time」
昨晩から今朝にかけてグッと気温が下がった。北東の風が「ぶぶぶぶ」とだらしなく吹き続いて、寒い朝の我が千葉県北西部地方。長袖のシャツに上着を羽織ってちょうど良い。いよいよ「秋深し」である。
秋深し 鐘の音一つ 帰り道
9月に大阪のお嬢が上京した折、マイケル・ブーブレの『It's Time』をプレゼントされた。「まあ、とにかく聴いてみて、絶対に気に入るから」という彼女の弁。マイケル・ブーブレって、どっかで聞いた名前やなあ、と思いつつ、感謝感謝。そして、毎度恒例、感想文の提出である(お嬢、どうやった?)。で、これが良く書けていると自画自賛。そのまま置いておくと勿体ない、ということでこのブログにもアップすることにした。
閑話休題。ジャズ男性ボーカリストの中で、僕にとって、一番好きな「声」の響きの持ち主が、フランク・シナトラ。フランク・シナトラは、1915年、ニューヨーク市近郊のニュージャージー州でイタリア系アメリカ人の家庭に生まれ、1998年没。アメリカのポップス史上の最高のジャズ・ポピュラー歌手、20世紀を代表する歌手の一人。その類い希なる素晴らしい歌唱力と魅力的な声を称え、「ザ・ヴォイス」と呼ばれた。
シナトラの歌唱は大好きで、「My Way」や「A Foggy Day」などの歌唱には惚れ惚れする。シナトラの声は「判別しやすい」。どんな再生装置でも、どんな騒がしい場所で流れていたとしても、何故か「シナトラだ」と判る。「ザ・ヴォイス」と呼ばれる所以である。
さて、マイケル・ブーブレの『It's Time』(写真左)の2曲目「A Foggy Day (In London Town)」を聴いて、思わず、「これってフランク・シナトラの再来やん」と大感激。絶品である。もともと、この2曲目の「A Foggy Day」は、フランク・シナトラの名唱で有名な曲で、このブーブレの歌声を聴いて、本当に嬉しくなった。「シナトラの後継者現る!」って感じですね。
9曲目の「Try A Little Tenderness」、12曲目の「I've Got You Under My Skin」にも、ニヤリとする。いずれの曲もシナトラの十八番なんだが、マイケル・ブーブレは、伝説的な「シナトラの歌唱」を意識しつつも、決してコピーに走らず、偉大な「シナトラの歌唱」にビビらずに、しっかりと個性を発揮しつつ、スタンダードを歌い上げていく姿勢は立派だ。他の収録曲も良い歌唱です。全編、若々しく、瑞々しい、スタンダード歌唱が溢れています。
マイケル・ブーブレは、1975年、カナダで生まれ、祖先はイタリア系。現在祖父母はイタリアに近い、クロアチアのトロジルに住んでおり、その祖父はジャズ・レコードのコレクターで、幼いときからマイケルはそのレコードを聴いて育ったのこと。これだけ、ジャズ・ポピュラーな曲を歌いこなせるのは、その影響なんでしょうね。
ブーブレは、イタリア系カナダ人、シナトラは、イタリア系アメリカ人。この「イタリア系」の部分でも、ブーブレとシナトラとの不思議な「縁」を感じます。またこのCDはシナトラが自ら創設したリプリーズ・レコードの制作です。これまた不思議な「縁」。しかも、この『It's Time』は、全編に渡って、往年のシナトラを偲ばせる、ゴージャスなジャズ・フル・オーケストラをバックにした歌唱ですから、否が応でも、シナトラを彷彿とさせます。
しかも、まだまだ若さが先行しているとは言え、ブーブレの歌唱は「シナトラ譲り」と言っていいでしょう。とにかく「声」が良い。惚れ惚れする。歌唱テクニックも若さ優先のストレートなもので好印象。かのシナトラが、中年以降に身につけたパンチのある 歌唱法を既に持ち合わせている。この若さで「恐るべし」である。
こういう面でも「シナトラの後を継ぐ者」という形容は実に言い得て妙と言えると思います。決して言いすぎではない。このまま素直に伸びていけば、今世紀の男性ジャズ・ボーカルは、当面、ブーブレの時代になるのではないでしょうか。他のアルバムも聴いてみたいですね。
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