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2009年9月29日 (火曜日)

コルトレーン・ジャズの最高峰

昨日、インパルス時代の第1弾『Africa / Brass』について語ったわけだが、このインパルス時代の前半部が、コルトレーン・ジャズの完成への急速な進歩を記録している訳だが、では、このインパルス時代のコルトレーン・ジャズの最高峰はどのアルバムか。僕は『Coltrane』(写真左)だと思っている。

1962年4月・6月他録音。ジョン・コルトレーン、マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、そしてエルビン・ジョーンズという伝説の「黄金のカルテット」のメンバー揃い踏み、初めてのアルバムが本作である。

それまでのベーシストは、レジー・ワークマンであった。レジー・ワークマンは麻薬癖が問題で、ライブ活動に結構支障をきたした、という噂があるが、アルバム録音の時には、レジー・ワークマンは欠かせなかった。というか代わりがいない。

ポール・チェンバースみたいな凄腕はそうそういない。レジー・ワークマンのベースは、太くてしなやか、そして迫力満点。決して、コルトレーンのサックスに負けない、しなやかな鋼のようなベース。代わりはいないのか。ようやく見出した「ジミー・ギャリソン」。

この「ジミー・ギャリソン」のベースを迎えて、黄金のカルテットの揃い踏みである。この『Coltrane』の冒頭「アウト・オブ・ジス・ワールド」から凄い迫力である。6/8拍子のアフロ・リズム。アフリカン・ミュージックをベースにした、当時最先端のジャズ。モード+フリーの、怒濤のようなインプロビゼーションの嵐。吹きまくるコルトレーン。凄い。最高だ。
 

Impluse_coltrane

 
2曲目の、心に染み渡る、珠玉のバラード「Soul Eyes」。歌心溢れるコルトレーンのサックス、マッコイ・タイナーのピアノ、このバラードの伴奏を聴いて、ジミー・ギャリソンを採用した、その本当のところが理解できた気持ちになる。そして、バラードのドラム伴奏はこうやるんだ、と言わんばかりのエルビン・ジョーンズの繊細なドラミング。エルビンがこんなに繊細なドラミングをするとは思わなかった。美しいドラミング。溜息がでる。

魂に染みるような「Tunji」、モード+フリーが吹き荒れる「Miles' Mode」。とにかく凄いの一言に尽きる。ポップ性、大衆性を全く無視して、テナーのテクニックとジャズのテクニック、ジャズの奏法を極めんばかりの、嵐のような「モード+フリー」な展開、そして、コルトレーンの十八番「シーツ・オブ・サウンド」なテナー・ブロウ。

僕は、この『Coltrane』が、コルトレーン・ジャズの最高峰だと思っている。純粋にジャズの演奏を追求し、ジャズのイディオムを追求したアルバム。ここには、宗教色も無く、フリーへの傾倒も無い。音楽として十分に鑑賞に耐える、「芸術」としての、ジャズ演奏の「最良の記録」のひとつがここにある。アフロ・アメリカンのアフリカン・ルーツ・ミュージックへの「強い想い」を強く感じる。

アフロ・アメリカンの、ジャズにおけるひとつの成果がここにあるような気がする。アフリカン・ルーツ・ミュージックの要素が散りばめられた各々の演奏は、実に味わい深い。実に凄い迫力である。凄いアルバムだと思います。ジャズの「硬派な部分」を感じるには、最適なアルバムのひとつだと思います。
 
 
 
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コメント

こんばんは
いつも楽しくロムしてます


最近 コルトレーンが支持されるのがわかってきたような気がします


楽器は違いますがウイントン・マリサリス


彼は素人の自分が聞いても相当 上手いのがわかります


マイルスよりテクニックは上ではないでしょうか


マリサリスのアルバムは何枚か買いましたが すべて綺麗過ぎて飽きてしまうのです


ただ スタンダード・タイム・1の キャラバンは最高にイカしてますが


さてコルトレーン


アフリカン・ルーツ・ミュージック・・・そうですよね


ちょっと泥臭い感じがいいんですよね


味があるんですよね


少しづつよさがわかってきました

いらっしゃい、ケンさん。松和のマスターです。
 
ウィントン・マルサリス。そのうち、当ブログで語ってみたいと思っています。

確かに、ウィントンのペットのテクニックは天才そのものですね。スタジオ
録音では、考えすぎるというか、やり過ぎでしまうみたいで、ちょっと
カッチリし過ぎて、隙がないというか、遊びが無い、といったところが
弱点みたいですね。よって、ウィントンはライブが良いです。ケンさんが
ご指摘の『 スタンダード・タイム Vol.1」の「キャラバン」は、そのライブ
の雰囲気に近いです。また、このブログでご紹介したいと思います。
 

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