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2009年8月29日 (土曜日)

電気楽器+純ジャズ『Love At First Sight』

暑さがぶり返した、我が千葉県北西部地方。それでも湿度は高くなく、カラッとした暑さなので、とりあえず過ごし易い。が、昨日まで涼しい日が続いて、今日いきなり暑い日が戻ってきたので、体調が悪い。どうも気温の激しい変化は苦手である。

さて、プロデュース側から見た純ジャズというのは、アコースティック楽器が前提、という変な思いこみがあるように思う。とにかく、ジャズ者は、純ジャズは生楽器じゃないと許せない、という思いこみがあると勝手に感じているらしく、電気楽器をバックにした純ジャズを企てるレーベルはほとんど無い。

これが理解できないんだなあ〜。別に純ジャズは生楽器じゃないと駄目とは思っていないんだがなあ。逆に、何故、純ジャズ=生楽器なんだろうか。1970年代、フュージョン全盛時代、純ジャズの世界でも、電気楽器がバックのセッションが相次いだ。フュージョンの波というより、1970年代は「電気楽器の波」が押し寄せた時代だったような気がする。

例えば、このソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の『Love At First Sight』(写真左)というアルバムがある。1980年のリリース。パーソネルは、Sonny Rollins (ts, lyricon), George Duke (p, el-p) Stanley Clarke (el-b), Al Foster (ds), Bill Summers (conga, per)。テナーのロリンズ以外は、フュージョンの中核ミュージシャン、フュージョンのスター・ミュージシャン達ばかりがズラリと並ぶ。

このセッションが行われた、そもそもの動機は、元リターン・トゥ・フォーエバーのエレベ奏者スタンリー・クラークが「是非とも一度で良いから、ソニー・ロリンズと共演してみたい」という強い希望がロリンズに届いたからである。当然、スタンリー・クラークはエレベである。でも、ロリンズはそんな事には拘っては全くいない。

冒頭、ロリンズお得意のカリプソ・ナンバー「Little Lu」から始まる。バックは当然エレベ・エレピ。それでもロリンズは全く変わらない。ガンガンにロリンズ節全快で、テナーを吹き飛ばしていく。
 

Love_at_firstsight

 
途中、スタンリー・クラークのエレベ・ソロがある。憧れのロリンズとの共演、ちょっと最初は緊張気味だったのか、出だし、固くてぎこちないソロで「これはまずいなあ」と思うんだが、徐々に盛り上がり始め。ロリンズが「フリフリフッフ〜」と激励の軽いブロウを飛ばすと、ラストには、人が変わったように、躍動感溢れ、テクニック優れたエレベ・ソロに早変わり。このエレベ・ソロは素晴らしいの一言に尽きる。

バックのジョージ・デュークのエレピのバッキングもなかなか心地良い。エレピの音の特性を知り尽くし、ロリンズのテナーの特性を十分に考慮した、ジョージ・デュークのエレピのバッキングには感心する。全編を通じて見直したのは、ジョージ・デュークの生ピアノ。ファンキーで、右手シングルトーンがシンプルなジョージ・デュークの生ピアノ・ソロは実に爽やかで躍動感があって、これは「聞きもの」である。

2曲目の「The Dream That We Fell Out Of」は、ドラム、エレベもバッキングで入っているが、ジョージ・デュークのシンセサイザーとロリンズのテナーとのデュオが聴きもの。シンセサイザーとテナー・サックスがこれだけ効果的に絡めるとは思わなかったので、この演奏を初めて聴いた時には、いたく感心したのを思い出した。叙情的で印象的なシンセとテナーの絡み。聴きものです。

3曲目は、昔、ロリンズの大名盤『サキソフォン・コロッサス』で演じた「Strode Rode」を、電気楽器をバックに再演しているが、これも見事。なんだか、この「Strode Rode」を聴くと、「純ジャズは生楽器じゃないと許せない」=「純ジャズはアコースティック楽器が前提」って、ちょっと柔軟性に欠けるんじゃない、というロリンズの問いかけが聞こえてくるようである。

「ジャズはジャズさ、楽器の種類、構成なんて関係ない」とロリンズが教えてくれているようだ。1980年、このアルバムがリリースされた当時は、この電気楽器ばバックの「Strode Rode」は賛否両論、というか、否定的な評論の方が多かった。ジャズの評論って保守的だなあ、というか柔軟性に欠けるなあ、と思った。

このロリンズの『Love At First Sight』を聴く度に、「電気楽器+純ジャズ」の可能性について考える。電気楽器をバックにしても、テナーのブロウはロリンズ節の何者でも無く、電気楽器がバックでも、この『Love At First Sight』での演奏は「純ジャズ」の何者でも無い。ロリンズは実にのびのびブロウしていますし、バックのメンバー全員、好演に次ぐ好演である。

つまりは、「純ジャズは生楽器じゃないと許せない」=「純ジャズはアコースティック楽器が前提」は思い込みに過ぎないってこと。「ジャズはジャズさ、楽器の種類、構成なんて関係ない」ってことですね。
 
 
 
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