エレ・ハンコックを遡る 『Fat Albert Rotunda』
暑い。蒸し暑すぎる。我が千葉県北西部地方。今日は、午後から、体の芯から悪くなりそうな、激しい「蒸し暑さ」である。といって、夕立の来る気配も無い。昼からは、もう外を歩けない。なんだか、体調も優れない。エアコンを効かせて、部屋の中でジャズを聴く。
さて、2009年7月16日のブログ(左をクリック)で、ハービー・ハンコックの『ヘッド・ハンターズ(Head Hunters)』のお話しをした。エレクトリック・ハービーの快進撃は、次作の『Thrust』から始まる訳だが、では、エレクトリック・ハービーの源はどの辺にあるのか。
1969年、BlueNote『The Prisoner』を残して、ハービーは、Warner Bros. Recordsに移籍する。『The Prisoner』で、エレピの手を染めたハービーは、Warner Bros.の第1作になる『Fat Albert Rotunda』(写真左)で、エレピを大々的に導入する。ハービーのソロキャリアを振り返ると、この『Fat Albert Rotunda』辺りが、エレクトリック・ハービーの源だろう。
『Fat Albert Rotunda』は、同名のアメリカの子供向け番組として作られた音楽をまとめたものである。が、演奏の雰囲気は、ファンキー・ジャズそのもの。今、改めて聴くと、これって、本当に子供向け番組のBGMだったのか、と疑いを持つほど、このアルバム全体を覆う雰囲気は「ファンキー」。
冒頭の「Wiggle-Waggle」。ギターのイントロからして、もう「ファンキー」そのもの。追って加わるブラスのハーモニーは、その「どっぷりファンキー」な雰囲気に拍車をかける。ここまで、ファンキー色を前面に押し出すと、曲全体の重心が低くなって、ちょっと重たい、曲の疾走感を損ねる雰囲気が漂うのだが、ハービーのアレンジは、そうはならない。
但し、アルバム全体の雰囲気は、まだまだハード・バップを源とする「メインストリーム・ジャズ〜ファンキー・ジャズ」の延長線上にあって、後の「ファンク・ビート」を全面的に導入した『ヘッド・ハンターズ』に直接つながるものでは無い。でも、当時のファンキー・ジャズの最先端として聴くと、実に優れた作曲、アレンジである。演奏も充実。ファンキー・ジャズの優秀盤として、お勧めのアルバムです。
ハービーのエレピが格好良く響き、フルートの音色と相まって、ソフト&ライトな「Tell Me A Bedtime Story」には、新しい響きが横溢している。ファンキーでありながら、メロウな雰囲気漂う「Oh! Oh! Here He Comes」もなかなかの出来。「Fat Albert Rotunda」の途中で出てくるフリーキーなサックス・ソロには、ちょっと苦笑い。そして、これまた、コテコテなファンキー・ジャズ「Lil' Brother」で幕を閉じます。
このアルバムでは、ファンキー・ジャズに、エレピを活躍させることで、より効果的にファンキー色を浮き立たせ、生楽器だけの演奏よりも、メロウな雰囲気を醸し出すことに成功しています。こういうアレンジ面でのエレピの導入に、ハービーの非凡な才能を感じます。
アレンジの面でのエレペの導入で、エレクトリック・ジャズへの橋頭堡を築いたハービー。後は、電気楽器の効果的な活かし方とビートの導入という宿題が残っているが、このファンキー・ジャズとして優れた内容の『Fat Albert Rotunda』で、ハービーの1970年代は始まったのだ。
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