ジャズ喫茶で流したい・5 『The Jazz Messengers (Columbia)』
関東甲信越地方は梅雨が明けた。平年より6日、昨年より5日早いそうだ。確かに晴れている。確かに暑い。う〜ん梅雨が明けたかぁ。夏だ、本格的な夏だ。実は夏は大好き。でも、通勤の暑さは大嫌い。会社に行かなくていいなら、こんなに素敵な季節は無い。
で、ジャズの話。今日は、「ジャズ喫茶で流したい」シリーズの第5弾。自分が本当のジャズ喫茶を持っていたなら「こんなアルバムを流したい」というような、ちょっとマニアックだけれど、ジャズ者初心者の方々にも楽しめるアルバムをご紹介している。その5枚目である。
これは、なかなか面白いアルバムである。Art Blakey『The Jazz Messengers (Columbia)』(写真左)。じっと聴けば、バックのドラムはアート・ブレイキーなのは直ぐに判る。ということは、ジャズ・メッセンジャースのアルバムなんだろうと想像はつく。
音を聴くと収録年はかなり古い時期のものだということも判る。音の様子から1950年代前半〜半ばの音の雰囲気である。演奏のトレンドは、ハードバップ初期。未成熟ではあるが、ハードバップ演奏の骨子はしっかりと組み込まれている。ハードバップ初期のジャズメッセンジャースか、と「あたり」をつける。
ピアノは、そこはかとなくファンキー香る、ホレス・シルバーだと判る。だとすると、ブレイキー&シルバーが席を同じにした、初期のジャズ・メッセンジャースの演奏と確信する。ちなみに、ベースはダグ・ワトキンス。しかし、この溌剌としたトランペットは誰なんだ。このガッツのあるテナーサックスは誰なんだ? という疑問がわく。
とにかく、全編に渡って、はちきれんばかりのブラスの響きを煌かせながら、溌剌とした、テクニック溢れるトランペット。この頃には、既にブラウニー(クリフォード・ブラウン)はいない。逆に、ブラウニーのような天才的な驚嘆もののトランペットとは、ちと違う。誰だ?
パーソネルを見ると、ケニー・ドーハムとある。「ええっ〜」と思う。これが、ケニー・ドーハムのトランペットなのか? ドーハムのペットって、もっと穏やかで、テクニック的にも、もうちょっと、ふらつきがあるんじゃあなかったっけ。このセッションでのドーハムは違う。吹きまくっている。ここまで吹けるトランペッターだったことに、ちょっと驚く。
同様に、このガッツ溢れ、ガンガン吹きまくるテナーは誰だ? といって、テクニック的には超絶技巧とまではいかない。超絶技巧とまではいかない、ということは、ロリンズでもコルトレーンでもない。でも、音も太く、勢いで吹ききるその様は、絵に描いたようなハードバッパーそのもの。誰だ?
パーソネルを見ると、ハンク・モブレーとある。「ええっ〜」と思う。これが、ハンク・モブレーのテナーなのか? モブレーのテナーってもっと穏やかで、もっと細身の音色ではなかったか。特に、音の太さには驚く。モブレーって、ここまで吹けるテナー奏者だったことに、ちょっと驚く。
このアルバムの面白さは、絵に描いたようなハードバップ的な演奏が、よどみなく、全編に渡って繰り広げられていること、 そして、溌剌としたケニー・ドーハムのペット、とガンガン吹きまくるハンク・モブレーのテナーの存在。これ、ジャズ喫茶でかかったとしたら、このペットとテナーって誰だ?って、絶対にジャケットを確認にいってしまう。
意外や意外、初期ジャズ・メッセンジャースの「隠れ名盤」だと思います。ジャズアルバムの紹介本、ましてや、初心者向けの案内本には、全くといってよいほど、取り上げられることの無いアルバムなんですが、これって、ドーハムとモブレーの意外性もあって、お勧めのアルバムです。
絵に描いたようなハードバップ的な演奏が、よどみなく、全編に渡って繰り広げられていて、聴き進めていくうちに元気が出てくる、ポジティブな内容のアルバムです。夏の暑さを吹き飛ばすように、大音量でジャズ喫茶でかけたいアルバムのひとつです。
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