『The Poll Winners Ride Again!』
ジャズのアルバムには、演奏のニュアンスや雰囲気によって、良いステレオ装置で聴きたくなるアルバムがある。
録音状態が良くて、各楽器の音が生々しく聴こえるものや、演奏の強弱のメリハリが効いていて、静的な演奏の部分に微妙なニュアンスが垣間見えて、その微妙なニュアンスが聴きどころなもの、などは、どうしても良いステレオ装置で聴きたくなる。
今回聴いた『The Poll Winners Ride Again!』(写真左)の、そんな「良いステレオ装置で聴きたい」一枚である。Poll Winners(ポール・ウイナーズ)とは、バーニー・ケッセル(g)、レイ・ブラウン(b)、シェリー・マン(ds)の3人で結成されたトリオ。人気投票で各楽器ジャンルで一位に選ばれた3人による、所謂「ドリーム・トリオ」である。
ファーストアルバムは、2009年4月25日のブログ(左をクリック)でご紹介した『The Poll Winners』。スタンダード曲を中心に、3人の職人芸的な演奏が素晴らしい名盤である。この『The Poll Winners』の好評を受けて、この『Poll Winners Ride Again』は、ポール・ウイナーズのセカンド・アルバムである。
冒頭の「Be Deedle Dee Do」の3者のピッタリと息の合ったユニゾンを聴くだけで、決してファーストアルバムの二番煎じではない、二番煎じどころか、3者が本腰を入れて、十分にリハーサルを積んで、このポール・ウイナーズの演奏に取り組んでいる様子が良く判る。
その後に出てくるレイ・ブラウンのベースの「ゴリゴリ、ブンブン」と生々しく迫力のあるベースの音。今回のアルバムの収録において、レイ・ブラウンの気合いの入りようが音に現れている。アルバム全編に渡って、レイ・ブラウンのベースの音が凄い迫力で鳴り響く。
そして、バーニー・ケッセルが凄まじい疾走感を持って、ギターを弾きまくる。凄いスイング感、素晴らしいスピード感。バーニー・ケッセルのギターってこんなに凄かったっけ、とビックリするような「カッ飛び」ギターである。
そして、気合い入りまくりの二人をガッチリサポートし、お洒落な合いの手を入れる、職人芸的なシェリー・マンのドラム。繊細かつ硬軟自在なシェリー・マンのドラミングにも、気合いの入れようが感じ取れて、聴いていて、ドキドキ、ワクワクする。収録されたどの曲も素晴らしい演奏です。
3人3様に、硬軟自在、緩急自在、音の「強弱、濃淡、メリハリ」が実に効いていて、素晴らしいトリオ・インプロビゼーションです。このアルバム、1958年の録音なのですが、意外と録音が良いので、3人一体となって、素晴らしいテクニックに裏打ちされたインプロビゼーションのニュアンスを心ゆくまで楽しむには、是非とも「良いステレオ装置」で聴きたいアルバムです。
音の「強弱、濃淡、メリハリ」が、かなり効いた演奏ばかりですので、この『Poll Winners Ride Again』は、iPodで聴くにはちょっと物足りないと思います。特に、歩きながらとか電車の中では、細かい演奏のニュアンスが聴き取れない。勿体ないです。
是非とも「良いステレオ装置」で聴きたいアルバム。こんなアルバムは、本格的なジャズ喫茶でリクエストしたいですね。本格的なジャズ喫茶は、どこも「ステレオ装置」については優れたものばかりです(所謂、商売道具ですからね)。一度、有名ジャズ喫茶で、この『Poll Winners Ride Again』をリクエストしてみたいものです。どんな音で鳴るのでしょうか。
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