素晴らしい変則トリオ 『Power of Three』
暫く話題にしなかったが、順調に、ミッシェル・ペトルチアーニのアルバムを聴き進めている。ブルーノートの時代、ドレフュス時代、と並行して気に入ったアルバムを順に聴き進めているんだが、どのアルバムもどのアルバムも、なかなか良い出来で、改めて、ミッシェル・ペトルチアーニの偉大さを再認識している次第。
最近聴いた中で、一番感心したアルバムは『Power of Three』(写真左)。ブルーノートのBT 85133番。Jim Hall (g), Michel Petrucciani (p), Wayne Shorter (ss,ts)の変則トリオのライブ演奏。第20回Montreuxジャズ祭のBlue Note Nightに出演した時のライヴ盤です。トリオ演奏と、ジム・ホールとのデュエット演奏が交じって、その変化が楽しめる秀作です。
これが良いんですね。まず、トリオ演奏が秀逸。テナーのウエイン・ショーターが良いんですね。ショーターって、ちょっと捻くれた、ミステリアスな、宇宙人的なインプロビゼーションが特徴なんですが、このライブでは、意外や意外、オーソドックスな正統派テナーを聴かせてくれています。さすがショーター。基本中の基本はしっかり押さえいるんですね。素晴らしいテナーです。
ジム・ホールとペトの二人が、デュオで演奏する曲は、ビル・エヴァンス&ジム・ホールの『アンダーカーレント』をイメージしてしまうのですが、これがそうはならない。
ペトのピアノ演奏は、ビル・エヴァンスの音数を整理した、モーダルな演奏とは違って、タッチにメリハリがあって硬質、インプロビゼーションの展開が、エヴァンスよりダイナミックかつワイド。確かに、ペトはエヴァンスの流れを汲むピアニストではあるが、個性の部分が異なる。
ピアノの個性が異なるので、当然、ジム・ホールの演奏も、ビル・エバンスの時とは異なる。ペトのピアノと重ならないように、ペトのピアノを柔軟に受け止めている。この変幻自在なジム・ホールのギターも聴きものです。こんなにジム・ホールが柔軟なギターを弾くとは思わなかった。特に、伴奏に回った時が素晴らしい。ピアニストのトミー・フラナガンに通ずるものがあります。
収録されたどの曲も、どの演奏も素晴らしい。心地良い緊迫感と躍動感が全編に渡って漲っている。ライブの聴衆も興奮してる様子が良く判ります。そして、ラストのカリプソ・チューン「Bimini」が実に楽しい。思わず踊り出したくなるような躍動感。ソニー・ロリンズの「セント・トーマス」を思い出す。
直前まで、丁々発止と緊張感溢れるトリオ演奏、デュオ演奏を繰り広げてきた後、ガラっと雰囲気を変えて、カリプソを演奏する。そんな「ガラっと曲想が、明るく躍動感あるものに変化する」というところは、ペトの選曲の特徴でもあります。ちなみに、僕は、ハッピーで躍動感溢れる演奏でのペトが一番好きです。ということで「Bimini」は外せない。いつもこのラストの「Bimini」を聴き終えて、心からハッピーな気分になります。
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