« 時にはこんな「異色作」はいかが? | トップページ | 気になるジャケ『Ole Coltrane』 »

2009年5月11日 (月曜日)

若かりし頃のアルバムは・・・

一流のジャズ・ミュージシャンというのは、とにかく、若い頃から天才、秀才の類の輩ばかりで、凡百なミュージシャンは、知らない間に駆逐されていく。

そして、一流のジャズ・ミュージシャンは、必ずと言っていいほど「個性」というものも持ち合わせている。その「個性」というものは、若い頃から変わらない。「栴檀は双葉より芳し」。一流の、名を留めるジャズ・ミュージシャン達は、初リーダー作を始めとして、若かりし頃のアルバムは、そのジャズ・ミュージシャンの「個性」を強烈に感じることが出来る。

今日久しぶりに聴いた、Kenny Drew (ケニー・ドリュー)の『Kenny Drew Trio』(写真左)を聴いて、そのことを改めて強く思う。1956年9月の録音。パーソネルは、Kenny Drew (p) Paul Chambers (b) Philly Joe Jones (ds)。

冒頭の「Caravan」を聴いて思う。ドリューは、この初リーダー・トリオ作にて、一流ジャズ・ミュージシャンの仲間入りである。彼の個性が煌めいている。明らかに、バド・パウエルの影響は色濃い。でも、バドと違うのは、バドの場合、どんなロマンティックな曲を演奏しても、厳しさというか、ストイックというか、切れ味ある尖ったテンションが溢れているが、ドリューはそうではない。

切れ味あるテンションはあるが、そんなテンションの中に、ほのかに優しさというか、丸さというか、ロマンチックな雰囲気がそこはかとなく感じるところが、ドリューの「個性」。そこ「個性」を「甘い」と評価するか、「ロマンティシズム」という「個性」と評価するかで、ドリューの評価は分かれる。
 

Kenny_drew_trio

 
改めて、冒頭の「Caravan」。とにかく、超絶技巧なテクニックで弾きまくる、弾きまくる。バックのチェンバース=フィリー・ジョーを向こうに回して、ガンガンに弾きまくる。んだけど、音の雰囲気に、そこはかとなく、丸さというか「優雅」という雰囲気が見え隠れする。これが、このシビアな「Caravan」という曲を、上手く聴きやすくしている。

その丸さというか「優雅」という雰囲気を強く感じることができるのが、3曲目の「Ruby, My Dear」と、6曲目の「When You Wish Upon a Star」。手癖は明らかにバド・パウエルなんだが、バドの手癖に比べて、かなり丸くて優雅。職人芸的なビ・バップ的ピアノ・トリオが、シビアであるが、ポップス的な優雅な雰囲気芳るピアノ・トリオに変わりつつある。しかし、時代は1956年、ハード・バップ全盛時代に入ったばかり。ちょっと早すぎたか。

1970年代以降、メロディアスかつ優しいタッチで、ヨーロッパ及び日本で人気を博した訳だが、これって、別にドリューは宗旨替えした訳じゃあない。既に、初リーダー作を録音する頃から、その丸くて優雅な所(=メロディアスかつ優しいタッチ)は、明快にあったんだよな。

しかし、1956年の頃は、ハード・バップ全盛期。その丸くて優雅、ロマンティックでやや聴き易いドリューのピアノは、結論として「受けなかった」。そして、彼はヨーロッパに渡る。ヨーロッパに渡った後の大活躍は、ジャズ・ファンの多くが知るところ。

この『Kenny Drew Trio』でのドリューのピアノは、ちょっと早かった。でも、1970年代以降、再評価されて良かったよな〜。ドリューは幸運なミュージシャンであった。
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 

« 時にはこんな「異色作」はいかが? | トップページ | 気になるジャケ『Ole Coltrane』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 若かりし頃のアルバムは・・・:

« 時にはこんな「異色作」はいかが? | トップページ | 気になるジャケ『Ole Coltrane』 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー