唄うようにサックスを吹く 『Go』
昔から決まって、コルトレーンを真剣に聴くと、その反動だろうか、決まって、歌心溢れるサックスが聴きたくなる。僕にとって、歌心溢れるサックスの最右翼は「デクスター・ゴードン」である。愛称デックス。デックスの歌心溢れるサックスは、僕の心の友である。
『Go』(写真左)を聴く。ブルーノートの4112番。1962年8月27日の録音。ちなみに、パーソネルは、Dexter Gordon (ts) Sonny Clark (p) Butch Warren (b) Billy Higgins (ds) 。ピアノには、これまたお気に入りのソニー・クラークである。
冒頭の「Cheese Cake」の哀愁溢れ、インプロビゼーションの疾走感。デックスのテクニックは素晴らしい。でも、そのテクニックを遙かに凌駕するデックスの歌心溢れるサックス。デックスのこの演奏を聴く度に、ジャズはテクニックだけでは駄目なんだ、ということを強く感じる。といって、歌心だけでは駄目なんだなあ、これが。いやはや、ジャズって難しい。
でも、デックスのこの『Go』を聴くと、理屈では無く、耳でそれを強く感じる。歌心を支える確かなテクニック。確かなテクニックに裏打ちされた歌心。音楽って、音を楽しむ、って書く。やっぱり、テクニックだけでは「音楽」にはならない。歌心だけでは「説得力に欠ける」。
この『Go』に収録されているどの曲もどの曲も、デックスの独壇場である。歌心溢れるサックス全開である。とりわけ、まずは「Cheese Cake」は素晴らしい。哀愁溢れる、判りやすい旋律。若い時は、こんなに判りやすいって、なんだか俗っぽくていけない、なんて思ったこともある。でも、それは若さ故のこと。今では、そんなことは、これっぽっちも思わない。この「Cheese Cake」は絶品。
そして、唄うようにサックスを吹く、を本当に心から感じる曲。それがラストの「Three O'Clock In The Morning」。キンコンカンコンというチャイムをもじったソニー・クラークのピアノの音から始まる、ミッド・テンポの魅力的な曲。デックスが本当に、本当に唄うようにサックスを吹き上げていくのだ。この曲を聴いていると、いつでも、心から幸福感が湧き上がってくる。う〜ん、ええなあ、ええなあ。
この『Go』というアルバム。ジャズ者の皆さん、ジャズ初心者の皆さん、多くの人達に聴いて貰いたい名盤です。確かに歴史的名盤とは違うかもしれない。でも、ジャズの良さを感じることのできる格好の一枚だと思います。というか、松和のマスターである私が考えるジャズの理想形のひとつが「このアルバムにある」と思っています。
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