ジャコは真の天才であった。
ジャコ・パストリアスは天才であった。1951年生まれ。1987年9月逝去。ジャズのエレクトリックベース奏者で、エレクトリックベースの奏法に革命をもたらした。彼が亡くなって、20年以上経った今でも、その信奉者は多い。
とにかく、凄いエレクトリック・ベースであった。僕が最初にジャコに接したのは、ウェザー・リポートの『ヘビー・ウェザー』。このアルバムに収録されていた「ティーン・タウン」のエレクトリック・ベース・ソロに度肝を抜かれた。最初はザビヌルのシンセサイザーだと思った。高速&超絶技巧のエレクトリック・ベース。歌心も十分。どうしよう、えらいもんを聴いてしまった、という気分になって、どっぷり暗くなった。
そもそも、それまで、ジャズの世界で、エレクトリック・ベースは「際物」だった。フュージョンの世界では、エレキ中心なので、エレクトリック・ベースも仕方がないかな、って位の扱いだった。が、ジャコは違った。メインストリーム・ジャズで、エレクトリック・ベースをアコースティック・ベース以上に、ジャズらしいフレーズでビートを供給したのだった。
そのジャコの伝記を綴ったのが、単行本として刊行されている『ジャコ・パストリアスの肖像』(写真左)。ビル ミルコウスキー (Bill Milkowski) 著, 湯浅 恵子 翻訳。 ジャコの生涯、音楽観、人間性を知る非常に良い本です。ジャコの生い立ちや音楽的背景が赤裸々に綴られていて、実に興味深い本です。是非、ジャズ者であれば、ご一読をお勧めします。
この単行本を読み終えて思った。ジャコは天才であった。そして、人間的にも優れた、人間味溢れる芸術家であった。彼の最後が、飲んだくれて喧嘩をして、その果てに殴打されて、のたれ死んだとしても、だ。彼の功績は残り、彼の素晴らしい功績は誰も否定できない。
でも、人間として、人として恵まれなかったことだけ、かえすがえすも無念に思う。人として恵まれていれば、彼は殴打されて死ぬこともなかったのでは、と思う。でも、彼はまだ幸せである。残された我々が、彼の天才としての芸術的成果をアルバムという形で、いつでも追体験できるからである。
ジャズのエレクトリック・ベースの世界で「革命」を起こした男。今では、数知れないフォロワーが、第一線で活躍している。ジャコは、エレクトリック・ベースの奏法の世界では、イノベーターとして、名を残したと言える。今でも、誰も、エレクトリック・ベースの奏法の世界で、ジャコを超える者はいない。
そして、ジャコのもう一つの側面が、作曲家、編曲家、プロデューサーとして側面。唯一無二な、実にユニークな編成のジャズ・ビッグ・バンドを主催していた、その才能はもっと評価されても良い位、傑出したものだと僕は思う。
デューク・エリントンやカウント・ベイシーなど、旧来の伝統形式でのビッグ・バンドではない、ギル・エバンスやマリア・シュナイダーと肩を並べる位の、実に先進的な、既に20年以上が経った今でも、現代のビッグバンド・ジャズと呼べる位に最先端のレベルを維持している、ジャコのビッグバンド。
その記録が幾枚かのアルバムに残っているが、その成果は多くない。あまりにユニークだったビッグバンドであったが故に、リリース当時は正統に評価されなかった。バンドの維持費も莫大なものだった。その内容はあまりに先進的で、今でもそのフォロワーは現れない。
芸術的成果とはいかなるものか。その天才的成果を継続してリリースし続けながら、一般の世界に広く浸透させ、時代を超えて伝承される対象となってこそ、真の芸術的成果と呼べるものだと思っている。ジャコのビッグバンドの成果は、真の芸術的成果だと認識はしているんだが、そのフォロワーが現れ出ないことを僕は遺憾に思っている。
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