「泣く子も黙る」凄まじいライヴ 『Shabazz』
ジャズは絶対にライブが良い。じっくり腰を据えて作成されるスタジオ・アルバムも良いが、ジャズ特有の、その場その場のアドリブ性やハプニング性を考えると、やっぱりライブの方がスリリングである。
もちろん、その場その場のアドリブ性やハプニング性ということからすると、ライブには「出来の良い」ライブもあれば、「出来の悪い」ライブもある。ライブ・ハウスに自腹を切って足を運ぶ場合、この「出来の悪い」ライブに当たると酷い目にあうことになる。
その点、正式な形でリリースされた「ライブ・アルバム」は、ライブ・レコーディングの後、その出来を吟味して、出来の良いライブ音源をアルバム化するのが通例なので、実際のライブよりは安心である。
まあ、後で、オーバーダビングや編集が出来たりするんで、本当の、そのままの生の姿を記録したライブ・アルバムは少ないんでしょうね。それでも、ジャズの場合、ジャズ特有の、その場その場のアドリブ性やハプニング性は十分に確保れたライブ・アルバムが多い。
最近、Billy Cobham(ビリー・コブハム)のアルバムを組織的に聴き直しているんだが、このライブ・アルバムを初めて聴いた時は唖然とした。Billy Cobham 『Shabazz』(写真左)1974年のリリース。
フュージョン界の「千手観音ドラマー」ビリー・コブハム率いるグループが、1974年7月4日、モントルー・ジャズフェスティバル(2曲目 :「Taurian Matador」のみ)と、同年7月13日、ロンドン・レインボーシアターで行ったライブを収めた作品。
その内容は「凄まじい」の一言。メンバーは、John Abercrombie(g), Michael Brecker(ts), Randy Brecker(tp), Glen Ferris(tb), Milcho Leviev(kb), Alex Blake(b), そしてBilly Cobham(ds) という構成。メンバーを見渡すだけで「眩暈がする」(笑)。よくこれだけ「トンガッた」メンバーが揃ったもんだ。
地鳴りのようなダイナミズム溢れるビリー・コブハムのドラムを筆頭に、ブレッカー兄弟のファンキーで躍動感のあるサックス&ペット。グレン・フェリスのトロンボーンが彩りを添える。そこに、捻れたギターのアバークロンビーが絡み、ジャズの文法からしっかり「はみ出た」キーボードとベースがガッチリとサポートする。
本来は、である。リーダーであるドラマーは、フロントをはじめとするメンバーの手綱をしっかり取ってコントロールするんだが、コブハムは違う。自分が真っ先に荒れ狂って叩きまくる(笑)。きっと、当時のこのバンドのライブって、出来不出来の差が激しかったんでしょうね〜。でも、このアルバムでのライブ・パフォーマンスは凄まじく、素晴らしいものがあります。
フュージョンもここまで来ると「バカテク自慢の、耳当たりの良い音楽」なんていう陰口が霞んでしまいます。「泣く子も黙る」って感じですね。これだけのノリと迫力は、当時のロックの世界でも、なかなかお目に(お耳に?)かかれない。
ジャズあがりのフュージョン奏者が本気を出すと、こんな感じになります。ということで、ジャズあがりのフュージョン奏者をなめると、痛い目に会うことがあります(笑)。ご注意あれ。
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