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2008年11月27日 (木曜日)

やっと再会できたアルバム

70年代ロックのアルバムの中で、昔、CD化されたんだが、その後、権利関係や収録メンバーのOKが出ないとか、レコード会社が売れないから再発しない、とかで、長らく再発されないアルバムが幾つかある。特に日本では、レコード会社が「きっと売れないから」という理由だけで再発しないアルバムがあるのは、言語道断だろう。音楽を娯楽、快楽の類と認識している日本のレコード会社は、文化がなんたるかを理解していない証拠だろう。

逆に、欧米の方が、70年代ロックを「文化」と認識している「ふし」があって、「えっ、こんなアルバムがリイシュー」なんてアルバムが多々あって、コレクターとしては非常に感謝している。で、今回、やっとのことで「再会」できたアルバムがある。Dave Mason(デイブ・メイソン)のスタジオ録音での5枚目のアルバム『Dave Mason』(写真左)である。本当に、やっとのことで「再会」できた。

デイブ・メイソンとの出会いは、高校卒業時、現役で受験した大学を全部すべって、予備校に通い出すまでの、世間的に所属の無い、今までの人生の中で、一番辛かった時代に遡る。なにもやる気が起きなくて、ふとレコード屋に立ち寄って、何気なく手に取ったアルバムが、デイブ・メイソンのライブ盤『Certified Live(邦題:情念)』である。

この『Certified Live(邦題:情念)』は、浪人決定の心に、何もかも無くした心に、染みに染みた。男気溢れるボーカル、図太くテクニック抜群のギター、歌心溢れる自作曲の数々。浪人時代から大学卒業まで、僕の人生の中で、一番自分に自信が持てなくて、実に情けない、実に頼りない時代を過ごした時期に、このデイブ・メイソンのライブ盤は、僕にとっての「応援歌」だった。

大学に入って、貸レコード屋が流行りだして、デイブ・メイソンのアルバムを物色し出して、彼のオリジナル・アルバムを見つけては借り、見つけては借り、カセットにダビングしては、コレクションを増やしていった。この 『Dave Mason』は、その中の一枚である。

Dave_mason

実は、大学生の頃は、この『Dave Mason』の内容については、ちょっと「たるい」とか、ちょっと「ぬるい」とか思って、ちょっと敬遠していた節がある。ライブ盤の疾走感に比べると、かなりリラックスした、かなりソフト&メロウな雰囲気だったので、刺激を好む若かりし頃からすると、そう感じたんだろう。

今回、本当に久方ぶりに「再会」し、久方ぶりにゲットした『Dave Mason』。今の耳で聴くと、そのかなりリラックスした、かなりソフト&メロウな雰囲気が、実に心地良い。良い感じなのだ。歳はとってみるものである。やっぱり、デイブ・メイソンは良い。

同時期に活躍した、よく似たタイプである、エリック・クラプトンと比べて、安易にブルースやレゲエを基調とせず、オリジナリティを持ったスワンプから発して、独自のソフト&メロウ感覚を自家薬籠中としていた分、デイブ・メイソンの方が優れていると僕は思う。でも、日本ではマイナーな存在だった。これって、当時のロック評論家、レコード会社の「売れ線」でなかったせいだろう。当時の日本のロック・マーケットって見識が狭かった。

実は、この『Dave Mason』って、大学を卒業してから暫く聴くことがなかった。この『Dave Mason』を聴くと、辛くて情けなかった、自信が無かった、若かりし頃の自分の思い出が甦って、どうしても、冷静になって聴く気が起こらなかった。この『Dave Mason』を再び、聴くことが、楽しむことができるようになったのは、40歳を過ぎて、親友の急逝に接してからである。

「残された時間は、自分が思っているほど多くはない」ということを、高校時代からの親友の死に接して思い知った。それからである。この『Dave Mason』が、楽しんで聴けるようになったのは。恐らく、辛くて情けなかった、自信が無かった、若かりし頃の自分の思い出を、やっと慈しんで振り返られるようになったんだろう。

いろいろあった、今でも思い出すと後悔だらけの浪人時代から大学卒業までではあるが、『Dave Mason』を聴き直すにつけ、それはそれで仕方が無く、この歳になって、『Dave Mason』のアルバムの良さが判るようになって、それはそれで幸せなことではないかと、今日はつくづく思うのであった。
 
 
 
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