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2008年10月 7日 (火曜日)

ドラムなんていらない?

セロニアス・モンクのアルバムを2〜3枚、集中して聴くと、普通のジャズ(?)が聴きたくなる。そりゃあそうだろう。あれだけ個性的な、というか唯一無二の、ジャズ界でとびきり極端に尖ったジャズ・ピアノである。集中して聴くと、ちょいと疲労感を感じるのは、当たり前だと思っている。

さて、そんなこんなで今日選んだのは、トミー・フラナガンの『Three For All』(写真左)。enjaから27年前に出た作品なんだが、最近まで知らなかった。パーソネルは、Phil Woods (as,cl) Tommy Flanagan (p) Red Mitchell (b) 。なんとドラムがいない。

ドラムがいない、ピアノとベースのデュオは、10月3日のブログ「職人同士の素敵なデュオ」で、ご紹介した『Ballads & Blues』があった。これも、ピアノはトミー・フラナガン。

『Ballads & Blues』では、ベースは、George Mraz (b)。この『Three For All』では、ベースは Red Mitchell (b) 。まあ、どちらのベーシストも、職人中の職人なので問題無い。この『Three For All』は、Tommy Flanagan (p) Red Mitchell (b) の職人デュオをバックに、フィル・ウッズのアルトが心地良く歌う。
 

Three_for_all

 
フィル・ウッズのアルト・サックスは、ブラスが鳴っている、と実感できる、心地良い金属音が特徴の歌心溢れるアルト・サックスである。ウッズのアルトを聴いていると、ウッズも職人だと実感する。この心地良い金属音は、そうそう出せるものではない。アルトを吹ききる技術。ブラスを鳴らせる技術。これぞ、プロの技。それぞプロのテクニックである。

そんな職人3人衆が、楽しそうに、心地良く、職人技の応酬で、素晴らしいインプロビゼーションを繰り広げる。ドラムが無くても、ドラムが鳴っているような、ドラムが無くても、全く違和感のない、上質のモダン・ジャズを繰り広げる。

この3人の職人芸に聴き入っていると「ドラムなんかいらないよな〜」なんて、一瞬、思ってしまうくらい、説得力のある演奏である。でも、このドラムレスの演奏って、プロの世界でも、誰にでも出来ることでは無い。

相当高度なリズム感覚と、それぞれの楽器でビートを生むことの出来る、それぞれの楽器で、お互いにタイム・キープの奏法を供給することが出来る、そんな高度な職人芸を持ったミュージシャンだけが演奏することの出来る、実に高度な演奏である。

うっかり「ドラムなんていらない」と思わせてしまうほどの職人芸。このアルバムには、そんな最上質のジャズ演奏が詰まっていて、ついつい聴き惚れてしまうのだ。
 
 
 
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