« 秋の夜長に素敵なデュオ 『Two Way Conversation』 | トップページ | RCA時代のロリンズを振り返る。 »

2008年10月31日 (金曜日)

枕草子の様なアルトサックス

ポール・デスモンドのアルトサックスが好きである。といっても、ジャズを聴き始めた若い頃は、デスモンドのアルトは「かったるしくて」仕方が無かった。デスモンドの柔らかで優しいメロディアスなアルトは、どうも刺激が少なくて、若い頃、どうしても好きになれなかった。

が、である。その柔らか優しいメロディアスなアルトには、しっかりと芯が通っていることに気が付いたのが30歳代半ば。芯が通っていて、実は、デスモンドのアルトは「硬派なアルト」なんだと理解した。彼のアルトの柔らかで優しい音色に惑わされてはならない。

実は、卓越したテクニックに裏打ちされて、チャーリー・パーカーにも相対できる「硬派な」アルトなのだ。チャーリー・パーカーと対極にあるアルトといっていいのかもしれない。硬軟の差はあれど、ジャズ界の中で、これだけハッキリとした「硬派な」アルトは、そうそうに無い。

さて、今日、聴いたデスモンドのアルバムは『Take Ten(テイク・テン)』(写真左)。パーソネルは、 Paul Desmond (as), Jim Hall (g), Gene Cherico (b),  Connie Kay (ds)。

大ヒット曲「Take Five」の二匹目のドジョウを狙ったのか、「Take Ten」という変拍子の曲を標題にしたデスモンドのRCA作品の佳作。「take five」と同じく4分の5拍子(タイトルからすると4分の10拍子?)。同じようなコード進行で、雰囲気も似ている。おいおい、ちょっとやり過ぎやろ(笑)。
 

Teke_ten_98

 
本作の聴きものは、まずは「ボサノヴァもの」。5曲目の「Theme from "Black Orpheus"」や、7曲目の「Samba de Orfeu」は、ベタな選曲だと判っていても「良いものは良い」。デスモンドのアルトは、ボサノバがよく似合う。

そして「スタンダードもの」も良い。なかでも、デスモンドの透明感溢れるアルトと絶妙にマッチする「Alone Together」が素晴らしい。「The One I Love」も良い。

雰囲気のある名盤だと思います。この雰囲気は今の季節、晩秋の夕暮れ時にピッタリ。ん?、いやいや、このアルバム、春たけなわの昼下がり、暖かな春風吹き抜ける中で聴くと、実に気分が良い。

いやいや、夏の朝も良い。まだまだ陽も低い夏の朝、涼しい朝風の中で聴くと、これはこれで雰囲気がある。そうそう、冬も良い。暖かい部屋の中、バーボン片手に、深夜の静けさの中で聴くと、これまた、しみじみして気分が良い。

ということで、ポール・デスモンドの『Take Ten(テイク・テン)』は、オールシーズンタイプの、四季折々で楽しめる、オールマイティな名盤だと言えます。春は「昼下がり」、夏は「朝」、秋は「夕暮れ」、冬は「夜」。なんだか、枕草子の様なアルトサックスの名盤です(笑)。
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 

« 秋の夜長に素敵なデュオ 『Two Way Conversation』 | トップページ | RCA時代のロリンズを振り返る。 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 枕草子の様なアルトサックス:

« 秋の夜長に素敵なデュオ 『Two Way Conversation』 | トップページ | RCA時代のロリンズを振り返る。 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー