枕草子の様なアルトサックス
ポール・デスモンドのアルトサックスが好きである。といっても、ジャズを聴き始めた若い頃は、デスモンドのアルトは「かったるしくて」仕方が無かった。デスモンドの柔らかで優しいメロディアスなアルトは、どうも刺激が少なくて、若い頃、どうしても好きになれなかった。
が、である。その柔らか優しいメロディアスなアルトには、しっかりと芯が通っていることに気が付いたのが30歳代半ば。芯が通っていて、実は、デスモンドのアルトは「硬派なアルト」なんだと理解した。彼のアルトの柔らかで優しい音色に惑わされてはならない。
実は、卓越したテクニックに裏打ちされて、チャーリー・パーカーにも相対できる「硬派な」アルトなのだ。チャーリー・パーカーと対極にあるアルトといっていいのかもしれない。硬軟の差はあれど、ジャズ界の中で、これだけハッキリとした「硬派な」アルトは、そうそうに無い。
さて、今日、聴いたデスモンドのアルバムは『Take Ten(テイク・テン)』(写真左)。パーソネルは、 Paul Desmond (as), Jim Hall (g), Gene Cherico (b), Connie Kay (ds)。
大ヒット曲「Take Five」の二匹目のドジョウを狙ったのか、「Take Ten」という変拍子の曲を標題にしたデスモンドのRCA作品の佳作。「take five」と同じく4分の5拍子(タイトルからすると4分の10拍子?)。同じようなコード進行で、雰囲気も似ている。おいおい、ちょっとやり過ぎやろ(笑)。
本作の聴きものは、まずは「ボサノヴァもの」。5曲目の「Theme from "Black Orpheus"」や、7曲目の「Samba de Orfeu」は、ベタな選曲だと判っていても「良いものは良い」。デスモンドのアルトは、ボサノバがよく似合う。
そして「スタンダードもの」も良い。なかでも、デスモンドの透明感溢れるアルトと絶妙にマッチする「Alone Together」が素晴らしい。「The One I Love」も良い。
雰囲気のある名盤だと思います。この雰囲気は今の季節、晩秋の夕暮れ時にピッタリ。ん?、いやいや、このアルバム、春たけなわの昼下がり、暖かな春風吹き抜ける中で聴くと、実に気分が良い。
いやいや、夏の朝も良い。まだまだ陽も低い夏の朝、涼しい朝風の中で聴くと、これはこれで雰囲気がある。そうそう、冬も良い。暖かい部屋の中、バーボン片手に、深夜の静けさの中で聴くと、これまた、しみじみして気分が良い。
ということで、ポール・デスモンドの『Take Ten(テイク・テン)』は、オールシーズンタイプの、四季折々で楽しめる、オールマイティな名盤だと言えます。春は「昼下がり」、夏は「朝」、秋は「夕暮れ」、冬は「夜」。なんだか、枕草子の様なアルトサックスの名盤です(笑)。
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