クオン・ヴー『残像』
3連休も最終日。この3連休は、どこにも出かけずに近場でブラブラ。ちょっぴり体調が優れないこともあるが、ノンビリ、ユタッリの3連休である。
ノンビリ、ユッタリの3連休であるからして、ゴロゴロしながら、音楽については結構聴いたなあ。日頃、聴けないアルバムを中心に聴けたのは、この3連休の成果。
それでは、この3連休に聴いたアルバムで、印象に残ったアルバムについて語りましょうか。まずは、クオン・ヴーの『It's Mostly Residual(邦題:残像)』(写真左)かな。
そもそも、クオン・ヴーとは誰か。6歳の時にアメリカに移住したという経歴を持つ1969年ヴェトナム・サイゴン生まれのトランペット奏者。パット・メセニー・グループの正式メンバーに抜擢され、2002年の『Speaking Of Now』、2005年の『The Way Up』に参加、それぞれのワールド・ツアーで来日も果たしている。
そんな彼が、2005年12月にリリースした4枚目のリーダーアルバムが、この『It's Mostly Residual(邦題:残像)』。パーソネルは、Cuong Vu (tp) ,Tsutomu Takeishi (b) ,Ted Poor (ds) ,Bill Frisell (g)。
このアルバム、ジャケット・デザインのイメージと、パット・メセニー・グループの正式メンバーだという印象だけで聴くと、大きく期待を裏切られてしまうかもしれない。このアルバム全体に流れるのは、クオン・ヴーの叙情性と、それに相反するような先鋭性、凶暴性である。
冒頭の「残像 (It's Mostly Residual)」を通して聴けば良く判る。出だしはパット・メセニー・グループの演奏を彷彿させる叙情性豊かな演奏。でも、パット・メセニー・グループの様な、広く包み込む様な、包容力のある叙情性では無いのだ。
なにか奥に潜む「暗さ」というか、緊張を強いるようなドロドロした感情が底に流れる叙情性なのだ。そして、中盤に差し掛かる辺りから、クオン・ヴーの先鋭性、凶暴性が顔を出す。叙情性の中に感じる、緊張を強いるようなドロドロした感情が、この「先鋭性、凶暴性」の予告だったか、と理解する。
そして、2曲目の「Expressions of Neurotic Impulse」で、ブッたまげる。テンション溢れる、フリーな演奏。クオン・ヴーの先鋭性、凶暴性がタップリと体感出来る。それにしても、テンションの高い、実に高度なフリー・インプロビゼーションである。クオン・ヴーの演奏力とリーダー力に感心する。
以下、3曲目以降、ラストまで続く4曲についても、音の傾向は同じ。緊張を強いるようなドロドロした感情を内包した叙情的な演奏と、その後にやって来る先鋭的、凶暴的なフリー・インプロビゼーション。アルバム全体を通して鑑賞するには、ちょっと疲れる内容ではある。
このアルバムは、クオン・ヴーの音楽観、演奏スタイルを感じるには、格好のアルバムだと思います。でも、その内容は、実にタフな内容。ジャケット・デザインのイメージとパット・メセニー・グループの正式メンバーだという印象だけで手を出すと、ちょっと厄介なアルバムです(笑)。
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