初リーダー作は元気溌剌 『Stan "The Man" Turrentine』
午後から雨。今年の夏のバケツをひっくり返した様な雨はどこへやら、秋らしい「しとしと」した雨。まだ、冷たい雨では無い。少し暖かみのある、風情のある雨。う〜ん、秋たけなわ、である。
さて、秋たけなわ、となると、音楽の世界全開である。「ジャズ聴き」全開の毎日。合間に耳休めに「70年代ロック聴き」全開。音楽を聴くのが実に楽しい毎日である。
秋の「ジャズ聴き」については、やはり「純ジャズ」。気楽にユッタリと「純ジャズ」と言えば、やはりハード・バップに落ち着く。それも、ハード・バップど真ん中、ど「ハード・バップ」が聴きたくなる。しかも、秋たけなわ、蕭々と降る雨もなんとなく風情のある秋たけなわ、そんな気分の良い午後は、元気溌剌なハード・バップが聴きたくなる。
ということで、今日のスペシャルは、Stanley Turrentine(スタンリー・タレンタイン)の『Stan "The Man" Turrentine』(写真左)。1960年の録音。パーソネルは、Stanley Turrentine (ts) Tommy Flanagan (p) Sonny Clark (p) George Duvivier (b) Max Roach (ds)。ピアノは、 Tommy Flanagan (3曲)、Sonny Clark (4曲)と分担している(詳細割愛)。
スタンリー・タレンタイン(以下略してスタン)といえば、70年代、イージー・リスニング、エレクトリック・フュージョン、といった時勢の中で、「ムード・フュージョン」「ブルージー・フュージョン」という雰囲気を前面に出した「純ジャズ+フュージョン」が音の特徴。「伝統」を重んじつつ、フュージョンの流行にのった、ハード・バップをベースにしたジャズ・フュージョンの担い手として活躍したサックス奏者である。
スタンのテナーはムード満点。スローバラードなどは、男性的で太くどっしりとした音で、時にセクシーに官能的に、ボボボボとすすり泣くように吹く。このセクシーで官能的な音が、若かりし頃は、なんとなく、気恥ずかしくて、大きな音で聴くのには勇気がいった。それほど、ブルージーでムード満点な、男性的で骨太なテナーなのだ。
そのスタンの初リーダー作が『Stan "The Man" Turrentine』。初リーダー作とはいえ、男性的で骨太なブルージーでムード満点なテナーは、既にこの初リーダー作で完成されている。どの曲もスタンのテナーの魅力満載。太い音で、ブイブイ言わしながら、ムード満点な骨太テナーで疾走する。
この初リーダー作を聴いていて思うのは、後の「男性的で太くどっしりとした音で、時にセクシーに官能的に、ボボボボとすすり泣くように吹く」という「ムード・フュージョン」というよりは、初リーダー作で、テナーを吹くのがたまらなく楽しいという「喜び」満載の、元気溌剌なテナーが聴ける。音のベースはブルージー。出てくる音は、爽快感抜群の若々しい元気一杯のテナーである。
そして、後の「ムード・フュージョン」の萌芽は、6曲目の「Time After Time」に聴ける。実に美しいバラード。敢えて、ビ・バップ調のMax Roachのドラムを抜いて、ベースとピアノの変則トリオ。スタンのバックを支えるのは、フラナガンのピアノ。スタンを歌い手に見立てた様な、歌伴のピアノ。聴き終えた後、感嘆の溜息しか出ない。
6曲目の「Time After Time」、このバラード演奏を聴く度に思うのだ。「ハード・バップ万歳」。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
« クオン・ヴー『残像』 | トップページ | クイーン+ポール・ロジャース »
コメント