ビル・エヴァンス『Interplay』
ビル・エヴァンスというピアニストは、トリオ編成の時が一番素晴らしい、というような「フォーマット限定」のピアニストではない、と昨日書いた。
昨日は、キャノンボール・アダレイと組んだ「Know What I Mean?」をご紹介したが、今日はトランペットのフレディー・ハバード、ギターのジム・ホールと組んだ、クインテット構成のリーダー・アルバムをご紹介したい。そのアルバム・タイトルは『Interplay(インタープレイ)』(写真左)。
1962年7月の録音。パーソネルは、Freddie Hubbard (tp) Bill Evans (p) Jim Hall (g) Percy Heath (b) Philly Joe Jones (d)のクインテット構成。当時、若き精鋭トランペッターのフレディー・ハバードをフロントの管に添え、バッキングの彩りに、ジム・ホールのギターを加えた、ちょっと異色とも言えるクインテット構成である(普通は、もう一本、サックスなどの管を加えるんだけど)。
ドラムに、フィリー・ジョー・ジョーンズが座っており、このアグレッシブなバップ・ドラミングを供給するフィリー・ジョーの存在が、このアルバムの全体トーンを決めている。それというのも、以前、このブログでも書いたが、エヴァンスは演奏の時、組むドラマーの特性に合わせた弾き方をする。フィリー・ジョーの時には、実に楽しそうに、アグレッシブにピアノをドライブさせる傾向にある。
恐らく相性が合うんだろう。そして、良く聴いてみると、アグレッシブで荒くれっぽいという先入観のあるフィリー・ジョーのドラミングだが、4曲目のタイトル曲「Interplay」では、意外とセンシティブなドラミングも披露していて、フィリー・ジョーのドラマーとしての特性を見直したりするのだから面白い。
『Undercurrent』『Intermodulation』の2枚の傑作デュオ・アルバムの存在を見ても判るとおり、ギターのジム・ホールとエヴァンスの相性は「抜群」。
ギターもピアノも、コード楽器とリズム楽器の両面を持つ、ある意味、厄介な楽器なんだが、エヴァンスとホールは、コード楽器として、音を重複させることなく、「ギター+ピアノ」での相乗効果が出るような、効果的な弾き方を披露し、バンド演奏の裾野を拡げている。そして、リズム楽器としては、ドラムのビートをベースに、役割分担よろしく、ギターが旋律を奏でる時はピアノがリズムを、ピアノが旋律を奏でる時はギターがリズムを担当している。この役割分担が、このアルバムでは絶妙である。
フレディー・ハバードは、当時、若き精鋭、マイルスや亡きクリフォード・ブラウンの後を継ぐものとして、テクニック抜群、歌心抜群、将来を嘱望されたトランペッターである。
確かに上手い。確かに、必要最低限の歌心も備えている。基本的に不満は無い。でもなあ〜。ハバードのソロを聴いていると、マイルスそっくりなのが、どうも気になる。オープンもミュートもマイルスの影がつきまとい、歌心を見せる面でも、マイルスの「歌い方」そっくり。このハバードの存在が、不満と言えば不満かな。もう少し、癖のある、中堅トランペッター(ヶニー・ドーハムとか)をもってきたほうが、面白かったと思う。
それでも、このアルバムには、ジャズの楽しさが、一杯に詰まっています。どの曲も実にスインギーに、実に楽しそうに演奏されていて、これぞ「インテリジェンス溢れるハード・バップ」って感じで、スタンダード楽曲を中心に、理知的に、ドライブ感溢れる演奏を繰り広げています。
僕も、ジャズ初心者の時代には、大変、お世話になったアルバムで、意外と録音状態やバランスも良く、何度聴いても聴き飽きない、優れた内容のアルバムです。ジャズ初心者の方には、お勧めの佳作だと思います。
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