ハンクの典雅なバップ・ピアノ
昨日の昼過ぎから、降る降る降る降る雨が降る。いや〜、よく降りますねえ〜。今日も会社からの帰り、最寄りの駅を出たら、どば〜っと雨。梅雨だから仕方がないとはいえ、やっぱり雨は好きになれないなあ。
さて、このところ、本業の方で、頭脳労働忙しく、土日休んでも、なかなか「脳の疲れ」が取れない。こんな時って、刺激的な音楽は駄目。脳が破裂する。脳が疲れた時は焦らず騒がず、柔らかで優しい、それでいて、ちょっぴり心地良い刺激のあるジャズが良い。
Hank Jones『For My Father』(写真左)。2004年、NYでの録音。パーソネルは、Hank Jones(p), George Mraz(b), Dennis Mackrel(ds)。ハンクの典雅なバップ・ピアノが冴え渡る、このところ、お気に入りなピアノ・トリオである。
ジャズ界で有名な「ジョーンズ3兄弟」の長男ハンク・ジョーンズがリーダー。弟のサドもエルビンも兄貴よりも先に天国に召されちゃって、さぞかし寂しい思いをしているんだろうな。順番、逆やもんな。特に、エルビンとはついこの前、何十年ぶりかに一緒にやっていたばかりなのに。ハンク・ジョーンズは1918年生まれなので今年で87歳。現役ジャズピアニストとしては最長老であろう。
で、この『For My Father』である。このアルバムでのハンクのピアノは、一言で言うと「典雅(てんが)」。「典雅」とは「正しく整っていて上品なさま」の意。これほどまでに「典雅」なジャズ・ピアノは聴いたことが無い
高速で超絶技巧なインプロビゼーションを展開する訳でもない。アブストラクトでフリーで尖ったフレーズで攻める訳でもない。全ての演奏をミッド・テンポからスロー・テンポで固めて、ピアノとベースとドラムが、平等にアドリブを交換する。なんの変哲も無い、どちらかというと地味なピアノ・トリオなんだが、実に味がある、玄人好みの演奏なのだ。
ミッド・テンポからスロー・テンポだからといって、弛緩は一切無い。逆に、演奏の底にピーンと張った「心地良い」テンション。ピアノ・タッチは、柔らかで優しいタッチながら、しっかりと鍵盤を押し切っている。自らの年齢とテクニックと、しっかりと折り合いをつけて、ハンクの年齢ならではの「典雅」で「ジェントル」なピアノを聴かせてくれる。こんなにしっかりとしたタッチの「典雅」なジャズ・ピアノは他に聴いたことが無い。職人ハンクの面目躍如。
ベースのムラーツも良い。太くてタイトな「ブンブン」となるベース。かといって、決して前に出て目立つことは無い。大人のベース。そして、このアルバムで感心したのが、デニスのドラム。Dennis Mackrelの名前には、あまり馴染みが無かったのだが、このアルバムでのドラムは素晴らしい。繊細ではあるが、確かなテクニックとタイム感覚に支えられた、そうハンクと同じ「典雅」で「ジェントル」なドラム。
良いピアノ・トリオです。高速で超絶技巧なインプロビゼーションで、ピアノとドラムとベースとが、三つ巴になって、丁々発止とやりあう、手に汗握るアドリブ合戦も良いが、大人のジャズとして、この『For My Father』みたいなアルバムが、意外と飽きが来なくて、愛聴盤になっていったりするのだ。この『For My Father』、「脳の疲れ」に実に良い感じです。
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