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2008年6月11日 (水曜日)

「スペイン!」

チック・コリア作の「スペイン」という曲が大好きである。大好きというか、フリークというか、マニアというか、「スペイン」が収録されているアルバムと判れば、躊躇いなくゲットする位である(笑)。

今回、購入した新譜は、デビッド・マシューズ総帥率いる、マンハッタン・ジャズ・オーケストラ(以下MJOと略す)の『スペイン』(写真左)。チック・コリアの名曲「スペイン」を筆頭に、「アルハンブラの思い出」「恋のアランフェス」など、郷愁を誘うメロディー〜「スペイン」の雰囲気を存分に配した、ジャズ・ビッグ・バンドのアルバムである。

そりゃ〜あなた、「スペイン」が入っていたら、ゲットするしかないではないか(笑)。日本盤で、2,800円とちょっと割高だが、「スペイン」収録の魅力に勝てず、即ゲットである。

このMJOの新譜『スペイン』の収録曲は以下の通り。

1.スペイン
2.恋のアランフェス
3.剣の舞(組曲「ガイーヌ」より)
4.ラプソディ・イン・ブルー
5.アルハンブラの思い出
6.闘牛士の歌(歌劇「カルメン」より)
7.フィエスタ・デ・エスパーニャ
8.アメージング・グレイス

こりゃまあ、ジャズ・ビッグ・バンドで演奏するには、ちょっと難しそうな曲ばかりを選んでいる。デビッド・マシューズの面目躍如。どの曲も、かなり工夫してアレンジした跡が、実に良く判る演奏である。
 

Mjo_spain

 
チック作の「スペイン」は、ビッグ・バンドでは演奏しにくい曲だと思う。テーマ部だけでも、音程の高低がドラスティックで、跳んだり跳ねたり、高いキーから低いキーに飛び跳ね、テンポも途中小休符が散りばめられ、ビッグ・バンドでは、各楽器がピッタリと息のあったアンサンブルの実現が実に難しい楽曲である。

確かに、MJOは苦労している。それでも、このビッグ・バンドとしては難しい楽曲を、実に上手く演奏している。MJOのメンバーの力量と心意気を強く感じる演奏である。ビッグ・バンドとしては、実に良く演奏している。努力賞。

郷愁を誘うメロディー〜「スペイン」をテーマにしている割りには、「ラプソディー・イン・ブルー」とか、「アメージング・グレイス」が収録されているのは疑問符。徹底的に「スペイン」的雰囲気で押すべきだっただろう。「ラプソディー・イン・ブルー」は健闘しているが、特に「アメージング・グレイス」の収録は疑問。出来は良くない。

収録曲は、僕にとっては、ちょっと俗っぽい曲ばかりなので、聴く立場としては食傷気味。でも、演奏する側としては、結構楽しめる、デビッド・マシューズ総帥のアレンジ。デビッド・マシューズ総帥のアレンジは良い。苦労の跡が忍ばれる。

結論。このアルバムは、ジャズ初心者の方々には、ちょっとお勧めできません。ジャズ中級者、ジャズ・ビッグ・バンドに興味のある方々には、お勧めです。デビッド・マシューズのアレンジの妙は、ジャズ・ビッグ・バンドに興味のある方々には必聴でしょう。しかしながら、ジャズ・ビッグ・バンドの演奏を純粋に楽しむなら、この『スペイン』よりも、気軽に楽しめるアルバムは他にある。

でも、僕にとっては、チックの名曲「スペイン」が収録されているだけで、このアルバムはOK。しかも、ビッグ・バンドとしては難度の高いこの曲を、MJOという職人ジャズ集団が、ほんとうに工夫して、なんとか高い水準にまで引き上げている。それだけでも、僕はこのアルバムを手にして、満足である。
 
 
 
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