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2008年2月13日 (水曜日)

ジャズ暗黒時代に「この演奏」・『Heat Wave』

寒い。今年最大の寒波がやって来たとか。昨晩、夜半前から強烈な西風が吹き荒れ、台風のような雰囲気。そして、今朝、まだ、強い西風の余韻が残って、突き刺すような冷たい風。ちょうど、通勤の時、西に向かって歩くので、顔に、もろに冷たい西風が当たって、顔全体が痛い。

でも、こんな朝は、西の空の向こうに、雪をすっぽり被った、真っ白な富士山が綺麗に見える。これだけが、この凄く寒い朝の救いである。

さて、こんな厳しい季節の朝は、耳当たりの良いジャズやロックはいけない。気合いの入る、オーソドックスな熱い純ジャズが良い。今日は、最近、再発された、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャース(以下JMと略す)の『Heat Wave』(写真左)。JMの1977年6月、サンフランシスコのキーストーン・コーナーでのライブ録音。

1977年と言えば、純ジャズの暗黒時代の真っ只中。1970年代、ロックやR&Bの台頭、フュージョン・ブームの到来で、スイング〜ビ・バップ〜ハード・バップ、その発展系のフリー・ジャズ、ファンキー・ジャズなどのメインストリーム・ジャズ、いわゆる「純ジャズ」は廃退の一途をたどっていた。特に、1977年辺りは、ジャズの世界では「フュージョン全盛時代」。純ジャズは、古い昔の音楽ジャンルとして忘れ去られつつあった時代である。

そんな、1977年に、どっこいJMは活きていた。70年代は、フュージョン・ブームで、多くのジャズ・ミュージシャンはロック・ビートのエレクトロニクス路線になびいていたが、JMはハードバップ路線を堅持していた。

メンバー構成は、アート・ブレイキー (ds)、ボビー・ワトソン (as)、デヴィッド・シュニッター (ts)、ヴァレリー・ポノマレフ (tp)、ジョージ・ケイブルス (p)、デニス・アーウィン (b)と今から思えば、それぞれ、有名無名のメンバーであるが、これが、結構熱くて、素晴らしいハード・バップを展開しているのだ。
 

Jm_heatwave

 
収録曲は、1.Moanin'、2.Jody、3.Along Came Betty 、4.Autumn Leaves、5.Blues March、6.Round About Midnight、と、JMの十八番ばかり。ところどころ、ライブ演奏ならではのミスもあったりするが、それを差し引いても余りある、いずれも素晴らしいストレート・アヘッドなハード・バップ&ファンキー・ジャズである。

ボビー・ワトソン (as)、デヴィッド・シュニッター (ts)、ヴァレリー・ポノマレフ (tp)のフロント3人が良い。特に、アルトサックスのボビー・ワトソンが良い。フリー・ジャズ寸前のエモーショナル豊かな、確かなテクニックのアルト・ソロは、特筆に値する。

そして、ピアノのジョージ・ケイブルスは、彼独特の音符を敷き詰めたような「シート・サウンド・オブ・ピアノ」を展開する。コードを抑えるタッチは叩くようなタッチ、フレーズを紡ぐ右手は音符を敷き詰めたような右手。いやはや、これぞジョージ・ケイブルスそのもので、実に楽しい。そして、2曲目「Jody」の前半部で披露される、アート・ブレイキーの素晴らしいドラミング、そして、4曲目「Autumn Leaves」で、ソロを披露するデニス・アーウィンの堅実なベース。

1977年、純ジャズの暗黒時代に、これだけのストレート・アヘッドなハード・バップ&ファンキー・ジャズが演奏されていたなんて・・・。約40年の長きに渡って、数々のジャズ界の有望新人を育て上げてきた「ジャズ道場=JM」の面目躍如である。

特に、リーダーのブレイキーのドラミングは、ため息がでるほど素晴らしい。ジャズ初心者の方には必須のアルバムではないが、ジャズ中級者、ジャズ愛好家の方々には一度聴いていただきたい、含蓄のある内容のアルバムです。ある種、感動を覚えます。

ジャズの歴史の中で、史上最大の「純ジャズの逆風の時代」に、これだけの素晴らしいストレート・アヘッドなハード・バップ&ファンキー・ジャズを演奏するできるモチベーション。見習うべき、素晴らしいプロ根性である。
 
 
 
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