「ハードバップ」ど真ん中
昨日は、ハード・バップ黎明期のお話をした。今日も続いて、ハード・バップのお話。今日は「ハード・バップ」ど真ん中、隠れた小粋なアルバムをご紹介したい。
そのアルバムとは、サド・ジョーンズ『デトロイト・ニューヨーク・ジャンクション』(写真左)、ブルーノートの1513番。パーソネルは、Thad Jones (tp)、Billy Mitchell (ts)、Tommy Flanagan (p)、 Kenny Burrell (g)、Oscar Pettiford (b)、Shadow Wilson (ds)、デトロイト出身者を中心としたセッション。
1956年3月13日の録音。1956年と言えば「ハード・バップ」ど真ん中である。ビ・バップのような、エキセントリックな派手さは無い。超絶技巧な「芸」を見せつける訳では無い。「鑑賞されること」を意識した、ジャズらしい落ち着きとスウィング感が溢れている。
特に冒頭「ブルー・ルーム」、3曲目「リトル・ガール・ブルー」の様なスローな演奏が美しい。アレンジの勝利。ハード・バップは「鑑賞されること」を意識したアレンジが、その鍵を握る。良く練られたテーマ部での「ユニゾン、ハーモニー、チェイス」。そして、それに続くインプロビゼーション。「鑑賞されること」を意識し、「芸術性」を追求した「プロ」の仕事。
面白いのは、ラストの「ゼック」の速いテンポの演奏。ここでは、未だ「ビ・バップ」の名残を感じることが出来る。ベースとドラムは、リズムをキープすることに徹し、フロントのインプロビゼーションはテクニックのみを優先する。1956年、「ハードバップ」ど真ん中の時代、まだ「ハードバップ」として改善の余地があることを感じる。
サド・ジョーンズはカウント・ベイシー楽団で人気No.1のトランペッターとして1953年から活躍、1965年、メル・ルイスとの有名なサド・メル楽団を立ち上げ、作編曲者・バンドリーダーとしての力量が評価されることになります。その兆しが、このアルバムのアレンジに感じることができて、至極納得してしまいます。
この『デトロイト・ニューヨーク・ジャンクション』、ジャズ入門書にあまりでてこないアルバムですが、「ハードバップ」をしっかりと感じることができる、なかなかの佳作だと思います。
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