ドラムの音がズドドドドンッ・・・
昨日、イタリアの巨匠ドラマーのアルド・ロマーノの仕切りによる、人気者バティスト・トロティニョン(p)のフィーチュアされた連名トリオの「FLOWER POWER」をご紹介した。このアルバムのドラムが切れ良く、タイトでドスンと気持ち良く、「やっぱり、良いドラムは耳障りじゃないなあ」と再認識した。
今朝も、そのモードが続いていて、ジャズ・ドラムが良い感じの、いわゆる「切れよく、タイトでドスンと気持ちよく、ズドドドドンッ」って感じのピアノ・トリオって無いかいな〜、と考えていたら、ふと思い浮かんだのが、グレート・ジャズ・トリオ。
グレート・ジャズ・トリオといえば、1975年、トニー・ウイリアムスの発案で、ハンク・ジョーンズ(p)、ロン・カーター(b)と組んだ伝説のピアノ・トリオである。折しもその時代は、クロスオーバー・フュージョン全盛期。電気楽器中心のジャズが花盛り。アコースティックなんて時代の遺物、って感じの時代だった。そんな時代に、トニーは、アコースティックな伝統的なジャズがしたくなった。例に漏れず、トニーも「ライフタイム」というバンドを結成して、電気楽器ジャズをギュンギュンやっていた。それが、突如、アコースティック・ジャズがやりたい、である。
しかし、よくまあ、ハンク・ジョーンズも同意したもんだ。年齢的にも親子ほど離れている間柄である。しかも、ハンクは、根っからのバップ・ピアニスト。トニーが狙いとする、最先端のアコースティック・ジャズがハンクで大丈夫か。でも、これがですね、大丈夫などころか、今の時代でも通用する、それはそれは最先端のジャズになっているのだ。コテコテのバップ・ピアニストのハンクが、ここまで弾けるとは。当時、僕はビックリした。今聴いても、ただただ感心するばかり。
ハンク・ジョーンズ、トニー・ウイリアムス、ロン・カーターのグレート・ジャズ・トリオの代表的名盤が、ビレッジ・バンガードでの一連のライブ・アルバムで、「アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」(写真左)、「アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード VOL.2」(写真中)、「ヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン」(写真右)の3枚に分かれてリリースされている。
トニー・ウイリアムスの、切れよく、タイトでドスンと気持ちよく、バスドラ、ドスドス、ズドドドドンッって感じが素晴らしい。そして、そのドラムにのまれるどころか、トニーのドラムをしっかりとバックに従えて、ハンク・ジョーンズのアドリブは年齢を感じさせない流麗な指使い。とにかく、ヴィレッジ・ヴァンガードのライブでは、ハンクが素晴らしい。伝統的なジャズ・ピアノを踏襲しながら、トニー、ロンの最新感覚のリズム・セクションをしっかりと受け止め、伝統的なタッチで、最新感覚のピアノの響きを表出する。素晴らしい。ため息が出る。
このアルバムで気になることと言えば、ロン・カーターのベースの音。当時、ロンは、アコースティック・ベースに電気増幅のアタッチメントを付けて、「ボワンボワン」と趣味の悪い、電気増幅されたベース音を出していた。ここでも、そうである。トニーの驚異的なドラミング、ハンクの流麗なタッチのバックで、実に趣味の悪いベース音を出している。弾き出すフレーズは良い趣味しているのになあ。惜しいことだ。
1970年代半ば、電気楽器全盛時代のまっただ中、仕方のないことであるが、これだけは何とかして欲しかった。まあ、1枚目「アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」より、「アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード VOL.2」のほうが、ロンのぶよぶよのベース音は耳障りで無く、「ヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン」については、リマスタリングの効果もあるのだろうが、ロンのぶよぶよベースはかなり改善されている。
グレート・ジャズ・トリオのビレッジ・バンガード・ライブ。ロンの電気増幅のベース音を差し引いても、このライブは素晴らしい。クロスオーバー・フュージョン全盛期、このような素晴らしいアコースティック・ジャズがあったとは、なんともはや、ジャズは懐深く、奥深いものだなあ、と改めて感心してしまうのだ。
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