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2007年9月25日 (火曜日)

安易に触れてはいけない 『The Amazing Bud Powell』

ジャズの演奏には長い歴史がある。当然のことながら、色々なバリエーションがあって、どこから手をつけて良いのか判らないのが本音でしょう。そういう時に、初心者のジャズ鑑賞の指針となるのが、ジャズの入門書なるものなのだが、これが結構、曲者でして・・・。

最近は、様々な意見があって、初心者向けのジャズ入門書は、その内容は改善されたと感じている。一昔前までは、ジャズ評論家の身勝手というか、ジャズ・マニアの身勝手というか、ジャズを特別視して、「ジャズ道」なる言葉まで編み出して、ジャズを求道的な哲学的なものとして扱った時代が長く続いた。「このミュージシャンの、このアルバムが理解できないとジャズを理解できたとは言えない」などと平気で言い放っていた時代があったのだ。

そもそも、ジャズを理解するとは如何なる事か。音楽は、それぞれ聴く人にとって、心地良く、何かを感じることが出来れば良いと思う。人それぞれ感じ方が違う。その違う感じ方の中で、皆の共通項として「ジャズって良いなあ」という想いがあれば良いと思う。

しかし、ジャズを求道的に哲学的に解釈し、自分達と同じ感じ方が出来ないと、解釈が出来ないと、それはジャズをたしなむモノではないという風潮があったのは事実である。衰退したジャズ喫茶も然りである。その名残がまだまだ古いタイプの初心者向けのジャズ入門書にあるもの事実である。

その古いタイプのジャズ入門書で紹介されているアルバムの中で、ジャズ初心者の時代、決して触れてはならないものが幾つかある。その最右翼が『The Amazing Bud Powell Vol.1, Vol.2』(写真)の2枚。これは、ジャズ初心者の方々にとっては、大変危険なアルバムである。

このアルバム2枚は、怖いモノ見たさに、知人のジャズ・マニアの方か、良心的なジャズ喫茶(古いジャズ喫茶ではかけてくれないかもしれない)でリクエストをして聴くのは良いが、初心者の時代に購入してまで、聴き極めるモノではないと僕は思う。
 

The-amazing-bud-powell

 
まず、Vol.1での、冒頭「ウン・ポコ・ローコ」3連発にヤラれてしまう。トリオで演奏されるパウエルのオリジナル「ウン・ポコ・ローコ」は、彼のバップ・ピアノが満喫できる壮絶な演奏なんだが、その不思議な、イスラム文化の様な響きのする、奇妙な音階の響きと、聴き手に対するサービス精神一切無し、パウエルの思いだけの高速かつ超絶技巧な演奏。これは、ジャズ初心者の時代に聴くと何が良いかが全く判らない。

それでも、天下のブルーノート、ジャズ定番の1500番台、パウエルの代表作と言われたら、初心者の時代ほど、触手が伸びるというもの。なんか凄い演奏が詰まっているような気がして、このアルバムを所有するだけで、ちょっと格が上がったような感じがするんですよね。でも、ちょっと聴くのは良いですけど、理解しようとしてはダメですよ。理解できなくても何ら問題ないんですから・・・(笑)。

ジャズを聴き進めるうちに、そのうち、なんとなく判るようになると思います。僕も最初は全く判りませんでしたし、今でも、何をやってるか、何を表現しようとしているかは判りますが、愛聴盤として、純粋に音楽を楽しむモードで、この「ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.1、Vol.2」を聴くことはありませんね。ジャズの歴史を理解する、ビ・バップ・ピアノを理解する、バド・パウエルの個性を感じる為に聴くことはあっても、演奏をリラックスして楽しむモードで聴くことは全く無いですね。

でも、そんなこと、ジャズ入門書に書いてないんだよね。逆に、この「ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.1、Vol.2」が理解できないと、ジャズを聴くのに向いていない、なんて感じの書かれ方をしていたりするから始末が悪い(笑)。僕は、その古いタイプのジャズ入門書にヤラれました。この「ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.1、Vol.2」が理解できなくて、一時期悩んでしまいました(笑)。

ジャズ初心者の方で、もし、ジャズのアルバム鑑賞で悩んでしまったら、遠慮無くご相談下さい(笑)。自らの経験から、何か有益なアドバイスが出来るような気がします。
 
 
 
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コメント

うえーん!!
(one of the犠牲者)
だってamazonで安かったんだもん(T_T)

こんばんわ、yurikoさん。松和のマスターです。

泣かないで〜よしよし(笑)。う〜ん、yurikoさんも犠牲者でしたか〜。
なんだか、無性に買いたくなるんですよね〜、このバド・パウエル。
そして、聴いてビックリ(笑)。あぁ、やっても〜た、と・・・(T_T)。

でも、ビ・バップのピアノって、どんな感じか、と問われたら、この
アルバムを思い浮かべれば間違いなし。そういう意味で、ビ・バップ・
ピアノの最高峰の演奏が詰まっていることは間違いありません。

たま〜に聴いて、「おお、ビ・バップ・ピアノってこんな感じだった
よな〜」と確認用に聴くのが一番かと・・・(^_^;)。ビ・バップ・
ピアノを忘れないようにって感じで、僕もたまにしか聴きません(笑)。

でも、ジャズ・アルバムの基本コレクションであり、一度は聴くべき
アルバムではありますので、手放さないで下さいね。持っていることで、
聴いたことがあるということで、ジャズ仲間から一目置かれることは
間違いありません (^_^)v。

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