ハード・バップの優等生 『At the Cafe Bohemia』
もう、9月20日だよね。でも、今日の東京は、夏真っ盛りという感じ。今年の真夏の時期の様に、湿気が高くなくて、いつもの夏ならこんな感じだったよね、って感じの一日。でも、もう、9月20日だよね。一ヶ月、後ろに季節がずれている感じ。よって、今日は、心地よく暑い一日。
さて、このところ、ロックを聴いて通勤していたので、そろそろ、ジャズの禁断症状がやってきた。朝は、ビートルズを聴いて会社にいったのが、帰りはもう我慢できない。ジャズだ。それも、バリバリのジャズだ。バリバリのジャズと言えば、ハード・バップだ。それも、絵に描いたような、優等生的な、ハード・バップの演奏が聴きたい。
選んだのは、 Art Blakey&Jazz Messengersの「At the Cafe Bohemia, Vol. 1&2」である。ブルーノートの1507番と1508番である。メンバーは、Kenny Dorham (tp) Hank Mobley (ts) Horace Silver (p) Doug Watkins (b) Art Blakey (ds)。1955年11月23日、ニューヨークのライブ・ハウス「カフェ・ボペミア」でのライブ録音である。
この2枚のライブアルバムには、絵に描いたような、優等生的なハードバップの演奏が詰まっている。ジャズ初心者の方に、ハード・バップとビ・バップの違いってなんですか、と訊かれることがある。そんな時、チャーリー・パーカーの「The Complete Savoy Sessions」や「Bird & Diz」を聴いてもらった後、このArt Blakey&Jazz Messengersの「At the Cafe Bohemia, Vol. 1&2」を聴いてもらうことにしている。
「At the Cafe Bohemia, Vol. 1&2」を聴くと、ビ・バップ時代のアクロバティックな、テクニック優先のエキセントリックな演奏と比べて、演奏時間が長く、演奏の構成がしっかりしていて、ソロの豊かさ、リズムの多彩さ、コードの複雑さが顕著で、演奏の抑揚、強弱など、メリハリがよく効いていて、聴衆の「ジャズという音楽を鑑賞し、楽しむ」というニーズに応える、アーティスティックかつエンタテインメントな内容になっていることが良く判る。
ビ・バップの特徴は、演奏のテクニックを第1に、演奏時間が短く、エキセントリックな演奏。ハード・バップの特徴は、演奏を「鑑賞し、楽しむ」ことを第1に、如何に楽しく、心地よく、時にはエモーショナルに聴いて貰うか、に力点が移っている。よって、演奏の構成もさることながら、アレンジも重要な要素になっている。
「At the Cafe Bohemia, Vol. 1&2」では、この特徴が実に良く判る。そして、改めて再認識することもあって実に楽しい。Kenny Dorhamのトランペットが、こんなにエモーショナルで、ハイノートをヒットしつつ、速いテンポのソロも滑らかで、こんなに上手いトランペッターだったのかと改めて彼を見直したり、 Hank Mobleyが、吹っ切れたような、躍動感溢れるテナーを聴かせてくれて、あの少し優柔不断的なテナーはどこへいったのか、などと嬉しくなったり、再認識したりで実に楽しい。
Horace Silver (p) Doug Watkins (b) Art Blakey (ds)のリズム・セクションの演奏は「言わずもがな」です。特に、Art Blakeyのドラムは、硬軟自在、緩急自在、フォービートあり、アフロあり、ナイアガラロールあり、カカカカカのドアノックあり、モダン・ジャズ・ドラムの最高レベルの演奏が聴けます。早逝したDoug Watkinsのテクニック豊かなベースが聴けるのも嬉しい。
1955年。ジャズにとっても古き良き時代。その古き良き時代の「絵に描いたような、まさに優等生的なハードバップの演奏」。こんな素晴らしい演奏をCDというフォーマットで、いつでも聴くことが出来る。まさに「音楽を聴く幸せ」とはこのことである。加えて、ジャケット・デザインも最高。言うこと無し。
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