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2007年9月 5日 (水曜日)

真実は小説より奇なりとは・・・

台風が近づいている影響だろう、今日は、急に強い雨が降ったかと思ったら、急に晴れたり、またまた、急に雨が降ったと思ったら、止んでどんより曇ったり。とにかく忙しい天気である。台風は予報によると、明日の昼過ぎから明後日の朝にかけて、関東地方を南から北へ進むとか。明日の通勤は憂鬱である。

そんな天気で、凄い湿気を含んで、ムシムシする。というか、不快指数100%の状態。ちょっと歩いただけで汗が噴き出てくる。ここは熱帯か? このままだと気力が萎えてしまうので、気力を回復すべく、今日の通勤音楽は、かなり刺激的なジャズを選択する。ジャコ・パストリアス(b・写真右)、ジョン・マクラフリン(g)、トニー・ウィリアムス(ds)、という物凄いメンツによるスペシャル・ユニット「トリオ・オブ・ドゥーム」(写真左)の企画盤。

以前、「Havana Jam I」、「Havana Jam II」というオムニバス・アルバムに3曲のみ収録されたThe Trio of Doomのライブ。これ、初めて聴いた時、凄いと思った。ジャコのベースは完全に早弾きギター状態。狂気の沙汰である。マクラフリンは完全にトンガっていて、ジャコに相対。ジャコに凌駕されないマクラフリンも凄い。そして、一番凄いのが、トニー・ウイリアムスのドラム。この狂気の沙汰状態の二人を向こうに回し、対抗するどころか、煽りまくり、あろうことか、なんとかコントロールすらしている。

が、である。なんと「Havana Jam」に収録されていた音源は、実は、スタジオ・セッションにオーバー・ダブして人工的にライブ音源に仕上げたものだったことが、今回、この企画盤で判明したのです。つまり、オムニバス・アルバムに収められていたのは、実はライヴ録音ではなく、NYで録られたスタジオ録音で、「Havana Jam」でのライヴ音源は今回初めて公にされる、という「事実」です。「え〜っ」というしかない、驚愕の事実。

The_trio_of_doom

確かに、今回、初出の本当の「Havana Jam」のライブを聴くと、なぜスタジオで取り直したかが判るような気がする。「Dark Prince」のライブ音源を聴くと、明らかにおかしい。ベースのキーがギターと合っていない。というか、ギターは正しいが、ジャコのベースは完全に「狂っている」。演奏が進むにつれて、ますますおかしくなって、しまいには完全にバラバラ。ほとんど「終われない状態」。最後は、とうとうマクラフリンが、無理矢理テーマに再突入し、なんとかエンディングという感じ。逆の意味で、凄い緊張感。

後に続く曲もいずれも壊滅状態で、特に、ジャコのベースは「いってしまっている」。マクラフリンとトニーは、個人技でなんとかしのいで「弾きつないでいる」状態。これって、類い希なミュージシャン、マクラフリンとトニーだから、何とか持っているが、普通のミュージシャンなら完全に終わってる。それほど、ジャコは「狂っている」し、逆に、マクラフリンとトニーの演奏技術は、突出して優秀なことが証明された。このライブのジャコは酷い。「狂っている」としか思えない。

要するに実際のライブでの演奏があまりにも酷かったので、あとでスタジオでやり直したのだということ。もう既に、この頃、ジャコの精神は病んでいたということですね。百戦錬磨、少々のことでは動じないマクラフリンが、ライブの後、ジャコをおもいっきり怒鳴り散らしたというし、あの温厚誠実で知られるトニー・ウイリアムスが、スタジオでの取り直し時にですら、ジャコの態度と発言に対して、ジャコの胸ぐらを掴んで壁に押しつけた、ということだから、相当な状態だったんだろう。その時のマクラフリンの回想録を読むと、ジャコは完全に常軌を逸していたとしか思えない。

とはいえ、実はスタジオ録音だったバージョン(「Havana Jam」に収録されていたバージョン)は、素晴らしい演奏ですね。スタジオ録音の時点でも、ジャコは常軌を逸していたにもかかわらず、です。とにかく、すべての記録が、あるがままの状態で公式リリースされたということは良いことだと思います。マクラフリンも音楽家としての良心が、ずっと痛んでいたんでしょうね。怒髪天を衝く状態だった、亡くなったトニーも同じ思いだったでしょう。

最後に、もう一度整理すると、この企画盤に収録された、ライヴ音源5曲と「Para Oriente」のオルタネート・テイクの2曲が、今回初めてリリースされる未発表音源になります。決して、スタジオ音源は初出ではありません(笑)。いやはや、「真実は小説より奇なり」とはこのことですね。
 
 
 
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コメント

こんにちは。私ハヴァナジャムの方も遠い昔に聞いただけで全く記憶になく、もちろん今回の新作(?)もきいていないのでコメントのしようもないのですが、そのムチャクチャな内容で"trio of doom"というタイトルはシャレにならんなあ、とちょっと思ったので書き込みました。それはそれでちょっと聞いてみたいです。あちこちのブログで本作のレビュー見かけますが、やはり散々ですね、、、

猫ケーキさん。いらっしゃい。松和のマスターです。

そうそう、そうなんですよ。このTrio of Doom、ライブ音源は気持ち悪く
なる位にぐちゃぐちゃです。特に「Dark Prince」は壊滅的状態です。
でも、マクラフリンとトニーは、よくこのステージをやり通したと思います。
やはり、相当高度なテクニックの持ち主達だったと改めて感心。

それでも、スタジオ音源、ライブ音源含めて、1枚のCDで、Trio of Doomの
演奏を通して聴けるメリットはあります。ハバナ・ジャムで聴き慣れた
「スタジオ録音音源」については、今、聴いてもなかなかの演奏です。
 

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