そぼ降る霧雨の日、ある喫茶店の想い出
朝から霧雨。今日は人間ドック。当然、朝ご飯は抜き。腹ぺこ状態で、東京まで。人間ドックは、朝9時スタートなので、腹ぺこ状態で、通勤ラッシュの電車に乗ることになる。腹が減っているので、日頃、通勤客のマナーの悪さにも、ジッと我慢していることも、あからさまに腹が立つ。プリプリしながら、健康センターへ。
最近の人間ドックは、結果が早々に出てくる。検診の結果、コレステロール値が高い、とのこと。このままだと、将来(何年後のこと?)、心筋梗塞または脳梗塞の可能性がある、と脅される(重々、承知しております)。コレステロール値を改善するには、薬を飲むか、5〜8キロ痩せるか、どちらかの選択になるらしい。薬を飲むというのは、当然、以降、飲み続けることになるので、健康的では無い。ということは、痩せるしかないのか。でも、体重も昨年に比べて、1キロほど減った。つまり、太り傾向に歯止めが掛かった状態。良い傾向である。中性脂肪の値も減った。この調子で頑張るしかない。
しかしながら、他の項目については、ほぼ、問題なく、クリア。さすがに、歳を取ってくると、なにか体調的に気になることがあると、悪い方、悪い方に考えがちなので、1年に1度の人間ドックは、緊張の一瞬となってくる。人間ドックの最後に、医者から検診結果の説明があるんだが、この結果を聞く部屋に入るとき、少し、ドキドキする。クイズ$ミリオネアのファイナル・アンサーの気分である。
閑話休題。人間ドックという、現実的な色気の無い話は、ここまでにして、もう少し、夢のある話(?)をしようではないか。今日は、朝から、そぼ降る霧雨だったのだが、この季節、そぼ降る霧雨に煙る風景を見る度に、大学時代のある喫茶店を思い出す。
その喫茶店を初めて訪れたのは、今日のような、そぼ降る霧雨に煙る5月の終わり。大学の小径を抜けて、細い路地のような坂道を、川に向かって降りていく。坂の途中に、真っ白な壁の洋館が建っており、その白壁の向こうには、青々とした芝生の庭があって、その一角、趣のある古木の扉の向こうに、その喫茶店はあった。その中は、古い木調の雰囲気に囲まれた、15人程度しか座れないコンパクトなスペースで、オシャレな観葉植物があしらわれたその雰囲気は、学生街の雰囲気ではなかった。シックな大人の雰囲気だった。この喫茶店は、粗雑な友人達とは決して訪れない、僕だけの秘密の喫茶店だった。
オーナーは、とても品の良い、美しい、物静かな妙齢の女性だった。なんで、こんな所で、こんな女性が、喫茶店をお守りしているかが不思議だった。しかも、その喫茶店で流れる音楽は、小粋なモダン・ジャズであったり、オシャレなフュージョンだったり、その趣味の良い、良く選ばれたアルバム達は、いつも、リッチな音空間を現出していた。
初めて訪れた時、喫茶店に流れていたアルバムが、クルセイダーズの「ラプソディ&ブルース」。このアルバムの、ウェットで、ちょっとくすんだ、ミッドテンポな、大人のフュージョン感が、その喫茶店にピッタリだった。ビル・ウィザースの男っぽく落ち着いたボーカル、ジョー・サンプルの叙情豊かなフェンダー・ローズ。優しく力強く語りかけるようなウィルトン・フェルダーのサックス。それは、そぼ降る霧雨に煙る風景とその喫茶店の雰囲気にピッタリだった。
今でも、そぼ降る霧雨の日、時に、ふと思い出す。もう名前も忘れてしまったけれど、あの喫茶店は、まだあるのだろうか。
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