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2017年11月 2日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・65

The Great Jazz Trio (略してGJT)は、ハンク・ジョーンズがリーダーのピアノ・トリオのバンド名。1976年に結成、2010年5月、ハンク・ジョーンズが91歳で亡くなるまで続いた。ドラムのトニー・ウィリアムスの発案だったそうだ。ベースがロン・カーターなのは良く判る。ロンはトニーの親代わりであり兄貴分だからだ。しかし、なんでピアノはハンク・ジョーンズだったんだろう。

ハンク・ジョーンズは、スイングの時代からピアニスト。1918年生まれであるから、トニー・ウィリアムスと比べたら、37歳も歳の開きがある。これはもはや「親子」である。トニーやロンは当時、新主流派のメイン・ジャズメンで、演奏のスタイルも感覚も、ハンクとは全く異なった筈である。ぱっと見、完全なミスマッチだと思ってしまう。

が、これが全く違った。GJTは、1975年、ニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードでデビュー。そして『At The Village Vanguard』(写真左)と『At The Village Vanguard Vol.2』(写真右)をリリースする。このライブ盤こそが、僕の「The Great Jazz Trio」との初めての出会いであった。1977年2月19-20日、NYの"Village Vanguard"でのライブ録音。

改めて、パーソネルは、Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。まずは、トニー・ウィリアムスの圧倒的迫力のドラミングに耳を奪われる。圧倒的な技術から生み出される高速ドラミング。バスドラを強調した力強い響き。そして、ロン・カーターの変幻自在、夢幻幽玄なベース・ワークがそれに絡む。新しい、時代の最先端を行くリズム&ビート。明らかに個性的。一度聴けば、これはトニーとロンと直ぐ判る。
 

At_the_village_vanguard

 
しかし、このライブ盤では、この二人が主役では無い。この若手の優秀な、ジャズの明日を担う人材は、自らの演奏力をリーダーのハンク・ジョーンズのピアノを惹き立たせる為に活用する。献身的なバッキング、献身的なリズム&ビート。そんな素晴らしいバックを得て、当時、ほぼ還暦を迎えつつあったハンク・ジョーンズが、彼の典雅で流麗で歌心満点、しっかりとしたタッチでのピアノが、当時、先端を行くモーダルなフレーズを叩き出して行くのだ。

爽快である。ファンクネス漂う、黒く典雅なハンクのピアノ。そこに、トニーとロンのリズム隊が当時の新しいジャズの息吹を吹き込む。このライブ音源では、完全に「良い方向での化学反応」が起きまくっている。それまでには全く無かったピアノ・トリオのパフォーマンスがこのライブ音源にぎっしりと詰まっている。聴いていて惚れ惚れする、新しい感覚のハンクのピアノ。

僕がこのライブ盤を手に入れたのは、ジャズを本格的に聴き始めて2年目。1980年のこと。LPに針を降ろした瞬間にスピーカーから出てくるトニーの攻撃的なドラミングに度肝を抜かれた。そして、変幻自在なロンのベースに耳を奪われる。しかし、最後には、ハンクのファンクネス漂う、黒く典雅なピアノに耳を持っていかれる。

改めて、今の耳で聴いてみると、1977年の時代に、これだけ先端を行く、思いっきり尖ったピアノ・トリオのパフォーマンスが存在したということに驚く。今の時代にでさえ、これだけテンション高く、ポジティブでアクティブなピアノ・トリオの演奏は、ほぼ見当たらない。それだけ、この時代のGJTは「良い方向での化学反応」を起こしまくっていた。好盤中の好盤である。

 
 

東日本大震災から6年7ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年11月 1日 (水曜日)

晩年のハンク翁の秀作です。

今から思えば、ハンク・ジョーンズっていうピアニストは、鬼籍に入るまで、衰えをほとんど見せることなく、一定のレベルのパフォーマンスを維持し続けた、希有なジャズ・ピアニストであった。高テクニックで典雅、流麗で歌心満点、しっかりとしたタッチで、派手なパフォーマンスとは全く無縁。というところは、何時の時代も全く変わらなかった。

それとハンク翁の面白いところは、それぞれの時代の優秀な若手ジャズメンと共演すると、必ずと言って良いほど「化学反応」が起こって、実力プラスアルファの、普段のハンク翁には聴かれないパフォーマンスが展開されるのだ。若手ジャズメンと張り合うのでは無い。若手ジャズメンの良き個性に触発され、それを取り込み、自家薬籠中のものにして、自らのパフォーマンスに転化する。

1970年代後半の「The Great Jazz Trio」がそうだった。優秀な若手ドラマー、トニー・ウイリアムに触発されて、豪快なバップ・ピアニストに変身、ガンガンにモーダルなフレーズを弾きまくって、我々を驚かせた。僕は、ビ・バップ時代から活躍していたハンク翁がモードなフレーズを弾きまくるなんて、想像だにしなかった。ビックリである。
 

West_of_5th

 
そんな優秀な若手ジャズメンと共演すると「化学反応」が起きるハンク翁。このアルバムでも、実に好ましい「化学反応」が起こっている。Hank Jones, Christian McBride & Jimmy Cobb『West of 5th』。2006年1月に録音したトリオ作。ちなみにパーソネルは、Hank Jones (p), Christian McBride (b), Jimmy Cobb (ds)。ハンク翁は録音時87歳。

この盤での「優秀な若手ジャズメン」は、ベーシストのクリスチャン・マクブライド。現在のジャズ界におけるファースト・コールなベーシストである。マクブライドのベースは、重量感のある強靱な響きでありながら、ソリッドで爽快感抜群。そんなベースに触発されて、何時になく、切れ味の良い軽快なスイング感を撒き散らしながら、メリハリ感のあるソリッドなピアノを展開する。

そんな二人をベテラン・ドラマーのジミー・コブがしっかりと包み込む様に支える。決して、触発され合っている二人を鼓舞して刺激することは無い。シンプルに柔軟にリズム&ビートを叩き込み、二人をしっかりと支える。実に良い雰囲気のトリオ盤。当時87歳のパフォーマンスとは思えない若々しさ。好盤です。

 
 

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2017年10月31日 (火曜日)

ハンク翁の「白鳥の歌」です。

僕はこのピアニストがずっとお気に入りだった。ハンク・ジョーンズ(Hank Jones)。初めて聴いたアルバムが『At The Village Vanguard』。聴いた時期は1979年。それから約30年間。ずっとハンクのピアノを聴いてきた。高テクニックで典雅、流麗で歌心満点。派手なパフォーマンスとは全く無縁、それでいてタッチはしっかりとしている。

お気に入りのピアニストだったハンク・ジョーンズの「白鳥の歌」がこのアルバムになる。Hank Jones 〜 The Great Jazz Trio『Last Recording』(写真左)。2010年2月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Jones (p), David Wong (b), Lee Pearson (ds), Roy Hargrove (tp), Raymond Mcmorrin (ts)。

2010年5月16日に91歳で逝去したハンク率いるThe Great Jazz Trio(GJT)のラスト盤。しかし、この盤のハンクのプレイを聴く限り、この盤を録音した3ヶ月後に鬼籍に入るなど、全く想像も出来ない。どころか、この盤でのハンクのピアノは切れ味が良い。往年のハンクのピアノが甦っている様であり、これが生前最後のレコーディングだなんて、説明されないと判らないだろう。
 

Hank_jones_last_recording

 
ハーグローブのトランペット、マクモリンのテナーも好調。それもそのはずで、伴奏上手のハンクのテクニックが遺憾なく発揮されている。ハーグローブやマクモリンのブロウの個性を読み取って、フロントの管が吹きやすいように吹きやすいように、伴奏を紡ぎ上げていく。ロングのベース、ピアソンのドラムもハンクのピアノと相性バッチリで、聴いていて本当に心地良い伴奏だ。

選曲はスタンダード曲が中心。どれもが結構有名なスタンダード曲なんだが、何故か飽きを感じることは無い。ハンクのアプローチが新鮮なのだろう。このピアニストは91歳で鬼籍に入るまで、手を抜くなんてこととは全く無縁な、誠実で真摯なピアニストだった。同じスタンダード曲の演奏でも、アプローチが同じ手口になることは無かったと記憶する。

亡くなる直前の切れ味良いプレイが素晴らしい。常に新しい感覚、若い感覚を維持した、とびきりのレジェンドであった。ジャズの歴史と共に歩んだ音楽人生であり、暗記しているスタンダード曲は1000曲以上とも言われ、敬愛の念をもって「ミスター・スタンダード」と呼ばれたピアニスト。鬼籍に入って、既に7年以上の年月が過ぎ去ったが、彼のプレイを聴くと、未だに無念の気持ちが甦ってくる。本当に素晴らしいピアニストだった。

 
 

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2015年8月31日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・66

1970年代半ばから後半に渡って活動した「The Great Jazz Trio(以降GJTと略す)」は、ベースにロン・カーター、ドラムにトニー・ウィリアムス、そして、リーダーが、ピアノのハンク・ジョーンズ。リーダーのハンクとドラムのトニーとは親子くらいに歳が違う。

しかし、そんな異色の取り合わせではあったが、出てくる音は当時最先端のメインストリーム・ジャズの音だった。特に、当時57歳だったバップ・ピアニストだったハンクが、ここまでモーダルに、ここまで自由度を上げたハードバップなピアノを弾きまくるとは思わなかった。とにかくテンション高く、切れ味抜群なピアノ・トリオだった。

このハンク、ロン、トニーのGJTを解散し、第2期のGJTが結成された。1980年6月のことである。パーソネルは、リーダーのHank Jones (p) は変わらず、Eddie Gómez (b), Al Foster (ds) のトリオ構成。

ベースのゴメスは幅広い音楽性、幅広い適応力が持ち味。「エディ・ゴメスは弦に世界を持つ」と賞賛されるほどである。そして、アルはあの帝王マイルスが「みんなが好きなことを演奏できるリズム・パターンを設定して、そのグルーヴを永遠に保つことの出来るドラマー」と称賛する(Wikipediaより抜粋)ほどのドラマー。

しかし、この第2期のGJTのデビュー盤を聴くと、ピアノ・トリオと言うが、トリオの組合せとコンセプトを変えるだけで、これほどまでに音が変わるのか、と感心してしまう。そのデビュー盤とは、The Great Jazz Trio『Chapter II』(写真左)。1980年6月の録音。

あの第1期GJTの当時最先端のテンション高く、切れ味抜群なメインストリーム・ジャズが、一転、ポップで典雅なピアノ・トリオに変身している。イースト・ウィンドという日本のレーベル側からの要請もあったとのことだが、GJTの名前を使うことに違和感を覚えるほどに、GJTの音はこの第2期でガラッと変わった。
 

Chapter_ii

 
ポップで聴き易い、ややもすればイージーリスニング・ジャズにも取られそうな、ギリギリ「メインストリーム・ジャズ」の音展開を行く第2期GJTではあるが、良く聴き込めば、これはこれでなかなか良いピアノ・トリオなのだ。

まず、ドラムのアル・フォスターが凄い。確かにあの帝王マイルスが絶賛するだけある。ハンクの典雅なタッチ明快なピアノを意識した、しなやかなリズム&ビートを供給する。これが実に良い。決して、ピアノの前に出しゃばることは無いが、しっかりとハンクのピアノを際立たせ、サポートする。うむむ、素晴らしいドラミングに思わず聴き込む。

ゴメスのベースは弦の音が明快。硬質で粘りのある、ハッキリとした音の塊がブンブン唸りを上げてベース・ラインを形作る。このゴメスのベースがピアノ・トリオに躍動感を与え、明確で聴き易く典雅なピアノ・トリオに彩りを添える。

ハンクのピアノはあくまで典雅。タッチは明確、旋律はメロディアス。左手のビートは黒くファンキー。曲によってはエレピを披露するが、これはこれでやはり典雅。実に粋で趣味の良いジャズ・ピアノ。聴き味良く耳に馴染む。ハンクにはハードバップなピアノが良く似合う。

イースト・ウィンドという日本のレーベル側からの要請に乗った企画盤、企画的なピアノ・トリオではあるが、このトリオのパーソネルの組合せが良かった。日本のレーベルの企画ものにありがちな、頭でっかちのハードバップに陥らず、いわゆる「良い化学反応」が、このピアノ・トリオに起こっている。

ジャズって面白いですね。ジャズは「組合せの妙」とは言うが、このThe Great Jazz Trio『Chapter II』はその好例。このパーソネルのピアノ・トリオから、このアルバムの様な音が出てくるなんて、アルバムを聴くまで、想像すら出来ませんでした。

 
 

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2015年7月20日 (月曜日)

昼下がりSP・デュオ盤特集・1

暑いですね。こちら千葉県北西部地方は、昨日、梅雨明けしてしまいました。一昨日の土曜日から気温はグングン上がって、この二日間、思いっきり猛暑日です。もうエアコン無しには生活できません(笑)。今年の暑さはいきなりで厳しい。

さて、これだけ暑くなると、熱気溢れるダイナミックな演奏のジャズは絶対に駄目。エアコンの効いた室内で聴いてい ても、汗が噴き出てくる感じになります。これではバテてしまう。ボサノバ・ジャズの様な爽快感でライトなジャズか、シンプルで聴き心地の良いデュオ構成のジャズ辺りが一番良いかと思われます。

ということで、しばらく、デュオ構成のジャズ盤を追いかけてみましょう。意外とジャズにはデュオの好盤が多くあるんですが、何故か、日本では受けが悪いのか、なかなかジャズ本やジャズ盤の紹介本に載ることがありません。中には「こんなデュオ盤あったんや」とビックリするような発掘盤もあります。

さて、それでは「音楽喫茶『松和』の昼下がり」スペシャル、ジャズのデュオ盤特集の第1回目はこのアルバムから。Paul Bley and Niels-Henning Ørsted Pedersen『Paul Bley/NHØP』(写真左)です。1973年6月24日、7月1日の録音。スティープルチェイスからのリリースになります。

ちなみにパーソネルは、Paul Bley (ac-p, el-p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)。タイトルの「NHØP」は、Niels-Henning Ørsted Pedersenの略号(あまりに長い名前だからであろう)。
 

Bley_nhop_2  

 
ポール・ブレイは、ブルースやファンキーな雰囲気が全く皆無な、現代音楽的な硬質で切れ味鋭いタッチと幾何学的で切れ切れなフレーズが特徴のピアニスト。ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセンは、デンマーク出身の欧州ジャズを代表するベーシスト。硬質でタイトでブンブン唸りを上げ、ピッチがバッチリあったベース。僕の考える理想的なベーシストの一人である。

冒頭の「Meeting」を聴けば、このデュオ盤の雰囲気が一気に理解出来る。ピンと張った適度で心地良いテンション。そこに現代音楽的な硬質で切れ味鋭いタッチで切れ込んでくるブレイのピアノ。清冽な響き。ストイックなフレーズ。

ここに、硬質でタイトでしなるような響きのペデルセンのベースが絡んでくる。ペデルセンのベースもブルースやファンキーな雰囲気が全く皆無。このデュオ盤の雰囲気は、明らかに「欧州ジャズ」。即興演奏を旨とする純ジャズなデュオ演奏がここに繰り広げられている。

ブレイのフレーズは、幾何学的で切れ切れが個性。その切れ切れの隙間を埋めるように演奏の底を固め、支えるペデルセンのベース。逆に、ペデルセンのベースが旋律を歌う時は、ブレイのピアノは切れ切れのフレーズでリズム&ビートの様なアクセントを付ける。非常に相性の良いピアノとベースのデュオである。

ブルースやファンキーな雰囲気が全く皆無で、現代音楽的な硬質で切れ味鋭いインプロビゼーションが展開される。米国のジャズとは全く正反対な、欧州ジャズの雰囲気がこのデュオ盤にギッシリと詰まっています。

 
 

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2015年4月25日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・45

まず、ジャケットが良い。高速道路の標識のようなデザイン。そこに、トリオ名とアルバム・タイトルがあしらわれている。一言で言うと「格好良い」。スッキリ格好良いジャケットに惚れ惚れする。ジャズにおいて、ジャケットが優れているアルバムに駄盤は無い。

このアルバムは、The Great Jazz Trio『Milestones』(写真左)。1970年代後半、一世を風靡したピアノ・トリオ、グレート・ジャズ・トリオのスタジオ録音盤。1978年4月5日の録音。パーソネルは、当然、Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)の3人。

収録曲は以下の通り。有名なジャズ・スタンダード曲から、ミュージシャンズ・チューンの玄人好みの曲から、ボサノバの名曲まで、耳当たりの良い曲がズラリと並ぶ。うるさ型のジャズ者ベテランの型からすれば、この収録曲を見ただけで、通り一遍のどこにでもあるような、ジャズ・スタンダードをピラピラ弾き回すピアノ・トリオの企画盤を想起して、この盤はパスするだろうな。

1. Milestones
2. Lush Life
3. Wave
4. Eighty-One
5. I Remember Clifford
6. Hormone
7. Mr. Biko

 

Gjt_miletones  

 
しかし、このグレード・ジャズ・トリオは、そんな通り一遍な、どこにもであるようなトリオ演奏はしない。冒頭の「Milestones」を聴けば、それが良く判る。有名なコード・イントロのテンションからして、普通のトリオ演奏とは違う。トニーのドラミングのテンションが半端では無い。そこに、ハンクのピアノのコード・イントロが被さる。ハンクのタッチのテンションも半端では無い。

アドリブ部の展開になると、これがまた、創造力豊かな展開に思わず「唸る」。ピアノのタッチは典雅、ドラミングはテンション高く、ベースはガッチリとアドリブ展開の底を支える。このトリオ演奏は「Milestones」の演奏の最高のもののひとつだろう。5分18秒があっと言う間に過ぎ去る。 

甘くなりそうな、ボサノバ名曲の「Wave」も凛としていて聴き応え十分。ウェットでベタベタな「I Remember Clifford」も、ピアノ・トリオで、こういうアレンジでやれば、静謐感と繊細感が増して、良い意味でセンシティブな展開に思わず「おおっ」と身を乗り出す。

良いピアノ・トリオ盤です。いままで、唯一、1回だけ見たことがありますが、優秀なピアノ・トリオ盤の紹介に、この盤の名前が挙がることは殆どありません。有名なジャズ・スタンダード曲から、ミュージシャンズ・チューンの玄人好みの曲から、ボサノバの名曲まで、耳当たりの良い曲で占められているからでしょうか。

でも、それは「聴かず嫌い」としか言いようがありません。やはり、ジャズは自分の耳で聴いて、自分の感性で判断することが大切ですね。

 
 

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2015年4月 3日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・60

ジャズのアルバムには、歴史的名盤とか定盤なんかでは無いんだけれど、ジャズの紹介本とか雑誌の名盤コーナーに、その名が挙がったりはしないんだけど、何故かその内容が気に入って、何故かずっと愛聴しているアルバムがある。 

僕にとってのそんな一枚がこれ。Jackie McLean With The Great Jazz Trio『New Wine In Old Bottles』(写真左)。1970年代、メインストリーム・ジャズを扱った日本の伝説的レーベル「East Wind」からのリリース。 1978年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Ron Carter (b),  Tony Williams (ds), Hank Jones (p)。

1970年代後半、一世を風靡したメインストリーム・ジャズ・トリオ、ハンク・ジョーンズ率いる「グレイト・ジャズ・トリオ」をバックに、アルトのジャキー・マクリーンが吹きまくるという、いわゆる企画盤。しかも、1978年という、フュージョン全盛期の中でのメインストリーム・ジャズ。

これがまあ、実に気持ちの良い内容なんですね。懐古趣味が前提のメインストリーム・ジャズでは無いところが素晴らしい。このアルバムを制作した4人のジャズメンの矜持を強く感じる。まずはリズム・セクションを司る「グレイト・ジャズ・トリオ」の音が新しい。1970年代後半、最先端のメインストリーム・ジャズの響きを感じる。

そして、フロントのワンホーン、アルトのマクリーンが良い。最初の「Appointment In Ghana Again」でのマクリーンはちょっと大人しい。しかも、1950年代後半から1960年代のちょっとピッチが外れたストレートな音で、バリバリ吹きまくる姿とはちょっと違った、お行儀の良い、ピッチのほぼあったマクリーンがここにいる。
 

New_wine_in_old_bottles

 
マクリーン、衰えたかと危惧するが、どうして、2曲目の「It Never Entered My Mind」から走り始める。お行儀が良くなった、と感じるのは、年齢相応の落ち着きが備わったから。ピッチがほぼ合った感じなのは、テクニックが備わり、端正なインプロビゼーションが展開できる様になったから。アルト奏者として成熟したマクリーンを感じることが出来るのだ。

この成熟した落ち着いたマクリーンを「カンが戻らずにイマイチ」という評価もあるが、それはちょっと違うだろう。1950年代後半から1960年代のマクリーンは、若さと勢いに任せて、ピッチが少し外れようが、ポジティブにバリバリ吹きまくった。それはそれで良いことなんだが、じゃあ、それがマクリーンの絶対的スタイルかと言えば、そうでは無い。

1970年代後半、マクリーンのアルトは成熟した。落ちついた余裕のある吹き回しが、実に魅力的なんだが、そんな成熟したマクリーンのアルトを、この『New Wine In Old Bottles』では、心ゆくまで堪能することが出来るのだ。

バックを司る「グレイト・ジャズ・トリオ」のパフォーマンスは申し分無い。「グレイト・ジャズ・トリオ」の演奏としては、彼らのキャリアの後期に位置する、トリオとして十分にこなれた、十分に成熟したパフォーマンスである。じっくりと聴けば聴くほど、その良さがどんどん深く広く理解出来る、実に味のあるパフォーマンスである。

アルバム・ジャケットも魅力的。港の桟橋、お洒落な街灯、真っ赤なウィンチ。計算されたような桟橋の配置、海の部分と桟橋の部分との割合。どれもが新しいデザイン・コンセプト。そして、その盤の中に詰まっているジャズは、1978年当時の最先端のメインストリーム・ジャズ。良い盤です。

 
 

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2015年3月26日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・44

こういうアルバムは聴いていて、文句無しに楽しい。加えて音が良い。これまた、文句無しに楽しい。しかも、こんな純ジャズなアルバムが、1977年10月に録音されていたんだから、米国の音楽シーンは懐が深い。

そのアルバムとは、The Great Jazz Trio『Direct From L.A.』(写真左)。The Great Jazz Trio(以下GJTと略す)は、Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds) の3人の名うてのジャズ職人で構成されたピアノ・トリオ。

新主流派の最先端を走っていたベースのロンとドラムのトニーはともかく、この当時ジャズ界の先端を行くピアノ・トリオの主役、ピアノを担うのが、当時、既にベテランの域に達していたハンク・ジョーンズである。このGJTの演奏を聴く前には、どう想像したって、ハンクのピアノは時代遅れの音なんだろうな、って思ってしまう。

それじゃあ、なんで新主流派の最先端を走っていたベースのロンとドラムのトニーが、このベテラン、ハンク・ジョーンズと組んで、ピアノ・トリオとして演奏を繰り広げたのか、が判らない。日本のジャズレーベル独特の、ギャラを積んで一流ジャズメンを呼んだ、趣味の悪い企画セッションなのかと勘ぐったりする。

しかも、このアルバムの収録曲が「Night In Tunisia」「Round Midnight」「Satin Doll」「My Funny Valentine」の4曲。それも超有名なジャズ・スタンダード曲ばかり。これだけ超有名なジャズ・スタンダード曲を並べられると、胡散臭さに拍車がかかる。大丈夫なのか、このアルバムとも思う。
 

Gjt_direct_from_la  

 
しかし、一旦、このアルバムを聴き始めると、まずは思わずビックリ。聴き耳を立て始め、1曲目の「Night In Tunisia」のアドリブ部の展開の頃には、ドップリとこのアルバムの演奏に聴き入っている。

まず、時代遅れの音なんでしょう、と思っていたハンクのピアノが素晴らしく創造的で先鋭的。実に尖った当時最先端のモダンジャズなピアノの響きである。確かにタッチはハンクの典雅なタッチ。しかし、そのインプロビゼーションの展開はダイナミックで緊張感溢れる先鋭的なもの。

逆にそんな先鋭的なハンクのピアノに煽られて、ロンのベースがモーダルにブンブン唸りを上げ、トニーのドラムがマシンガンのように打ち付けられ、時にハイハットが飛翔する。凄まじいばかりのリズム&ビートのうねり。その「うねり」に乗じて、ハンクのピアノがスリリングなアドリブ・フレーズを展開する。

恐らく、この『Direct From L.A.』というアルバム、GJTのスタジオ録音の中でも出色の出来でしょう。収録時間は、LP時代のダイレクト・カッティングのアルバムなので、全体で29分弱と短いが、そんな短さが全く気にならない位に、このアルバムに収録された演奏は相当に充実している。

疾走感とスイング感を両立させつつ、ダイナミックな表現とセンシティブな表現を共存させる。そんな大変モダンなピアノ・トリオを実現しているところが凄いですね。全くもって脱帽です。ピアノ・トリオの常識を覆す斬新な演奏は今の耳にも新鮮に響きます。

 
 

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2014年2月19日 (水曜日)

GJTのヘビロテ盤の『K.J.L.H.』

やはり、ピアノ・トリオは良い。現代では、ピアノ・ベース・ドラムというセットが基本形。同じセットだと音も同じだ、と思ってしまうのだが、ジャズではこれがそうはならない。様々なジャズメンとの組合せの数だけ、音の個性がある。

ということで、どのピアノ・トリオをとっても、異なる個性を愛でることが出来るのがジャズの良いところ。僕は、ピアノ・ベース・ドラム、それぞれの楽器のお気に入りのジャズメンに注目して、そのトリオとしての組合せを楽しむことが中心になる。

そんな楽しみ方の中で、1970年代後半、ジャズを聴き始めてまだ3年位でお気に入りになったのが、The Great Jazz Trio(以降、GJTと略)。パーソネルは、Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。

1918年7月生まれで最年長のピアノのハンク・ジョーンズと、1945年12月生まれで最年少のトニー・ウィリアムスとの年齢差は「27歳」。真ん中のロン・カーターが1937年5月生まれだから、ハンクとの年齢差は「19歳」で、トニーとの年齢差は「8歳」。

年長の兄貴格のロンと弟格のトニー、その二人に君臨する父親格のハンクという図式になる。しかしながら、このGJT、発案は一番年下のトニー・ウィリアムス。マイルス・バンド出身、当時、ジャズ界で先進的なリズム&ビートの担い手であったロン&トニーと、モダンかつ典雅なタッチが個性のベテラン、ハンクのピアノの組合せが実に新鮮だった。

先進的なリズム&ビートの担い手、特にトニーのドラミングに触発された、ハンクのコンテンポラリー、スインギーかつバイタルなピアノが際立っていた。あの典雅で端正なハンクのピアノが、当時のジャズ界の最先端、モーダルで限りなくフリーに近いコンテンポラリーなタッチに変化して、ガンガン弾きまくるのだ。それでいて、どこか「典雅で端正な響き」を宿したところが堪らない。
 

Gjt_kjlh

 
そんなGJTの個性を心ゆくまで愛でることの出来るアルバムが、スタジオ録音第2弾だった『K.J.L.H.』(写真)。1977年10月の録音。ちなみに「K.J.L.H.」とは、"Kindness, Joy, Love & Happiness"を略したFMラジオ局のこと。とにかく、ジャケットが粋で格好良い(LPサイズだとなお迫力が出る)、僕にとっても、この『K.J.L.H.』は、GJTのヘビロテ盤の一枚。

このアルバムに収められた7曲は、今では恐らくほとんどのJazzファンには馴染みの深い、いずれも有名なスタンダード・ナンバーではあるが、どちらかと言えば、メカニカルで「ミュージシャンズ・チューン」的な、演奏者としてやって楽しいナンバーがチョイスされている。

これがまあ、どの曲も聴いていて楽しいこと楽しいこと。このGJTの個性である、ジャズ界で先進的なリズム&ビートの担い手であったロン&トニーのリズム&ビートに触発されて、どこか「典雅で端正な響き」を宿しつつ、モーダルで限りなくフリーに近いコンテンポラリーなタッチでガンガン弾きまくるハンクが「むっちゃ格好良い」。

トニーなぞ、喜々として全面に押し出て、バリバリに叩きまくっているのだが、それに触発されたモーダルで限りなくフリーに近いコンテンポラリーなハンクのタッチの方がより全面に押し出て、明らかに「目立っている」。ロンはその間に立って、どちらかと言えば、トニーのドラミングを柔らかくコントロールしている感じ。

このハンク、トニー、ロンのトリオの音がとにかく個性的なんですね。それまでに無かった響きでしたし、今の耳で振り返っても、唯一無二な響きを宿していて、それはそれは素晴らしい演奏を繰り広げています。録音も優秀。独特の個性で聴き応え満点、飽きの来ないピアノ・トリオの佳作です。

 
 

大震災から2年11ヶ月。決して忘れない。まだ2年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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2010年7月26日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・21

The Great Jazz Trio と言えば、ハンク・ジョーンズ (p)、ロン・カーター (b)、トニー・ウイリアムス (ds) のベテランピアニスト+中堅ジャズメン2人によるトリオ、となる。代表作としては、『At the Village Vanguard』3部作。

僕は、トニー・ウイリアムスの「ど派手」なドラミングについては、そんなに問題とは思っていない。ハードバップなドラミングを「ど派手」な方向に最大限に振ったら、トニー・ウィリアムスの様なドラミングになるだろう、と思う。

しかし、アタッチメントを付けて電気ベースの様な音に増幅された、ロンの「ドローン、ベローン」と間延びして、締まりの無いベース音が、どうしても好きになれない。しかも、ピッチが合っていない。せめて、楽器のチューニングはちゃんとして欲しい。気持ち悪くて仕方が無い(1990年代以降は徐々に改善されていくのだが・・・)。

よって、ハンク・ジョーンズのベテラン的な味のあるバップ・ピアノとトニー・ウイリアムスの「ど派手」なハードバップ・ドラミングは良いとして、ベースのロン・カーターのベースを何とかしてくれ、と思ったことが何度あったことか(笑)。が、これが「ある」から面白い。

1976年5月録音、The Great Jazz Trio単独名義のファースト・アルバムは『Love For Sale』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Hank Jones (p), Buster Williams (b), Tony Williams (ds)。なんと、ベースは、バスター・ウィリアムスなんですね〜。渡辺貞夫との共演盤でのThe Great Jazz Trioのベーシストは、ロン・カーターなんですけどね〜。つまり、ベーシストは固まっていなかったってこと。

このバスター・ウィリアムスのベースが実に良いんですよ。ブンブンと引き締まった重低音を、しっかりとピッチの合ったベースラインを、自然な生ベースの音を、実にアコースティックに聴かせてくれる。
 

Gjt_love_for_sale

 
ハンク・ジョーンズのベテラン的な味のあるバップ・ピアノとトニー・ウイリアムスの「ど派手」なハードバップ・ドラミング、そして、バスター・ウィリアムスの「しっかりとピッチの合った」ブンブンと引き締まったベース。これぞ、ピアノ・トリオって感じ。

僕は、このバスター・ウィリアムスがベースの The Great Jazz Trio を愛して止まない。けれど、この1976年5月録音の『Love For Sale』の一枚しか、このトリオでの The Great Jazz Trio の録音が無い。これが実に残念でならない。

ベースがバスター・ウィリアムスで、ビシッと決まっているお陰で、トニー・ウィリアムスのドラミングの素晴らしさが浮き出てくる。彼のドラミングは単に「ど派手」なだけではない。伝統的なハードバップ的なドラミングを、当時最新のドラミング・テクニックで再構築しており、実に斬新的な響きのするハードバップ・ドラミングが実に新しい。確かに「すべっている」部分もあるが、ここでのトニーのドラミングは「温故知新」。伝統的なハードバップ・ドラミングを最新の語法で、従来の4ビートのセオリーを打ち破って、1980年代以降のハードバップ復古の時代に続く、新しいハードバップ・ドラミングを提示しているところが凄い。

このアルバムでは有名なスタンダード・ナンバーを中心に演奏していますが、これがまた新しい響きを宿していて、ハンク・ジョーンズ侮り難しである。従来と異なったアレンジを採用したり、トニーとウィリアムスのバッキングを前面に押し出して、従来のハードバップなアプローチを覆してみたり、従来のスタンダード解釈に囚われない、そこはかとなく斬新なアプローチが、今の耳にも心地良く響く。とにかく、従来のハードバップに囚われず、逆に、トニーとウィリアムスの協力を得て、新しいハードバップな響きを獲得しているところが実に「ニクイ」。

良いアルバムです。良いピアノ・トリオです。The Great Jazz Trioの諸作の中では、あまり話題に挙がらないアルバムですが、このアルバム、結構、イケてると思います。バーチャル音楽喫茶『松和』では、結構、ちょくちょくかかる、松和のマスターお気に入りの一枚です。
 
 
 
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