ポップ・インスト・バンドの傑作
ザ・スクエア(1989年から「T-スクエア」)は、我が国が世界に誇るフュージョン・バンドの一つ。バンド・メンバーは自身を「ポップ・インストゥルメンタル・バンド」と称している。
独特の「融合音楽」志向、独特のアレンジや引用・カヴァーは、米国フュージョン・ジャズを志向していない、我が国のフュージョン・ジャズとしても、ユニークな存在。ポップでキャッチーな音世界は、通常のフュージョン・ジャズではない、唯一無二の「ポップ・インストゥルメンタル・バンド」としても、確かに違和感は無い。
THE SQUARE『うち水にRainbow』(写真左)。ちなみにパーソネルは、安藤まさひろ (g), 伊東たけし (as, lyricon), 和泉宏隆 (key), 田中豊雪 (b), 長谷部徹 (ds)。以上が「ザ・スクエア」。ゲストとして、仙波清彦 (conga), EVE (vo, "HELLO GOODBYE"), 伊藤広規 (el-b, "STINGRAY"), Nitta Group (horns, "HANK & CLIFF" 及び "黄昏で見えない")。
ザ・スクエアの「ポップ・インストゥルメンタル・バンド」な個性が確立された盤が、前作『脚線美の誘惑』だと思うのだが、この『うち水... 』は、この前作で確立した「ポップ・インストゥルメンタル・バンド」な個性を、確固たるものとして踏襲した傑作である。
ザ・スクエアの個性である、独特の「融合音楽」志向、独特のアレンジや引用・カヴァーに関しては、1曲目の「Hellow Goodby」はレノン&マッカートニーの名曲のカヴァー、6曲目「黄昏で見えない」は松任谷由実(ユーミン)作曲、というところからも良く判る。
「Hellow Goodby」は、インスト・ナンバーとして、かなり大胆なアレンジを施していて、ちょっと聴いただけでは原曲の雰囲気が感じられないくらい。しかし、フュージョン・インストとしては秀逸のアレンジ、秀逸の演奏になっている。ザ・スクエアの面目躍如だろう。
「黄昏で見えない」は、後にユーミンが歌詞を付けて、「幻の魚たち」と改題し、小林麻美がカヴァーしている。ボーカルの部分のフレーズをインストに置き換えての演奏になっているが、ザ・スクエアって、ポップス曲の歌唱のフレーズの「楽器での唄わせ方」が実に上手い。これも、他のバンドには見られない、ザ・スクエア独特の取り組みで、これも、ザ・スクエアの面目躍如と言える。
前述の2曲、レノン&マッカートニー曲のカヴァー、ユーミン曲のフュージョン化、というだけで、「スクエアは俗っぽい」と敬遠する向きもあるが、他のアルバム収録曲、安藤まさひろをはじめとする、ザ・スクエアのメンバーの手になるオリジナル曲については、聴きやすい、キャッチーな歌心溢れるフレーズを持った佳曲揃いで、演奏はテクニック抜群のビートの効いた爽快感溢れるもの。優れたフュージョン・ジャズ曲満載で、俗っぽさは微塵も無い。
2曲目の「君はハリケーン」はテクノ・ポップっぽい曲調とアレンジなので、思わず「ニヤリ」。3曲目の「Sabana Hotel 」は爽やかな夏曲。8曲目の「カピオラニの通り雨」は安藤のアコギが印象的な名曲&名演。8曲目「Barbarian」は、スクエアお得意のフュージョン・ロックなインスト曲。唄うリリコンが格好良い。
ちなみに、曲名、ジャケなど、それまでのザ・スクエアのテイストとちょっと違う雰囲気なのですが、これって、実は、ユーミンの仕業。ユーミンは楽曲の提供(黄昏で見えない)のみならず、曲のタイトルの命名からジャケット・デザインまで、コーディネーターとして関与しているんですね。こういう切り口でも、ザ・スクエア独特の「融合」志向が見え隠れして面白い。
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