2022年12月 1日 (木曜日)

ジョーダンとファーマーの共演盤

デューク・ジョーダン(Duke Jordan)。欧州に渡った後、1970年代に、スティープルチェイス・レーベルに残したリーダー作は良好盤ばかりで駄盤が無い。スティープル・チェイスの総帥ディレクター、ニルス・ウィンターがデューク・ジョーダンの才能を高く評価していたこと、そして、なにより、双方の相性が相当良かったのだろう。

Duke Jordan『Duke's Artistry』(写真)。1978年6月30日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Art Farmer (flh), David Friesen (b), Philly Joe Jones (ds)。フロント管にアート・ファーマーのフリューゲルホーン1管のカルテット編成。ファーマーのフリューゲルホーンが優しく唄い上げ、ジョーダンのピアノのバッキングの巧みさ、そして、ジョーダンの書く曲の良さが、とても良く判る盤である。

全曲デュークによりオリジナル曲で占められており、これがまた、どの曲も出来が良い。作曲家としてのデューク・ジョーダンの才能を改めて認識出来る内容。この良き曲に恵まれて、ファーマーの暖かくて丸みのある、それでいて、相当にテクニカルで力感溢れるフリューゲルホーンが映えに映える。
 

Duke-jordandukes-artistry

 
デューク・ジョーダンのピアノ、デイヴィット・フリーゼンのベース、フィリー・ジョーのドラムによるトリオのバッキングがこれまた見事。特に、ジョーダンの伴奏上手なピアノには感心する。フリーゼンのベースは厚みのある骨太な音で堅実、そして、フィリージョーは意外と整ったバップ・ドラミングで、リズム&ビートを供給する。

ジョーダンの曲はどれもが「ユッタリ&シットリ」していて、どの曲も良好。5曲目の「Lady Dingbat」はバラード曲。ジョーダンのバラード曲は絶品。ジョーダンのピアノがイントロから映えに映える。ファーマーの丸いフリューゲルホーンによるアドリブ展開も優しくて良し。そうそう、ブルース曲も良いですね。ラストの「Dodge City Roots」など、小粋で格好良くて、気品溢れる展開が聴き応え十分。

この盤、裏面の解説を紐解くと、ファーマーが当日夕刻のフライトで移動するという、相当タイトなスケジュールの中の録音だった様です。そんな中、リーダーのデューク・ジョーダンの周到な準備によって、メンバー集まり次第、即、録音に臨むことが出来、1曲当たり多くても2テイク、トータルで2時間で録音を完了したとのこと。そんなタイトな録音環境を全く感じさせ無い、とても充実した内容のアルバムです。
 
 

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2022年3月24日 (木曜日)

ジョーダンの曲の良さを愛でる

ハードバップ時代、ジャズ曲の作曲の名手というのが幾人かいる。デューク・ジョーダンなどは、そんな名手の1人。「Jordu」「No Problem(危険な関係のブルース)」など、完全にスタンダード曲化した名曲は数知れず。どっぷりマイナーで哀愁滲む泣き節フレーズがてんこ盛りのジョーダンの自作曲の数々は、とにかく「ジャズらしい」のだ。

Duke Jordan『Duke's Delight』(写真)。1975年11月18日、NYの「C. I. Recording Studios」での録音。スティープルチェイス・レーベルの1046番。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Richard Williams (tp), Charlie Rouse (ts), Sam Jones (b), Al Foster (ds)。リチャード・ウィリアムスのトランペットと、チャーリー・ラウズのテナー・サックスがフロント2管のクインテット編成。

2曲目の「(In My) Solitude」のみ、スタンダード曲であり、ジョーダンのピアノのソロ演奏。その他全て、デューク・ジョーダンの作曲。このジョーダンの自作曲の出来が非常に良い。同じ編成の名盤、ブルーノートの『Flight to Jordan』もそうだったが、ジョーダンの手になる曲は、どれもが内容があって素晴らしい。マイナー調で攻めまくり、哀愁感だだ漏れ、それでいて、フレーズは凛としていてキャッチャー。思わず引き込まれてしまうほどのブルージーでジャジーな旋律。
 

Dukes-delight_duke-jordan

 
そう、ジョーダンの書く曲はどれもが「ジャズらしい」のだ。これぞ「ジャズ曲」という雰囲気が濃厚に漂う、ジョーダンの自作曲。ジョーダンのリーダー作には、ジョーダンの書く曲が一番フィットする。当然、ジョーダンのピアノは、ジョーダン曲にピッタリとマッチする(当たり前か)。ジョーダンの端正で骨太なタッチに、ジョーダン作の凛としてキャッチャーな楽曲が良く似合う。

ジョーダン作の曲のフレーズが美しいので、恐らく、それを吹いたらきっと楽しいんだろう。リチャード・ウィリアムスのトランペットと、チャーリー・ラウズのテナー・サックスのフロント2管は活き活きとして、実に楽しそうに吹きまくっている。特に「隠れ名手」のリチャード・ウィリアムスのトランペットが、流麗かつ凛とした音色で活き活きと吹きまくっているのが印象的。

そうそう、渋う渋いテナー・マンのチャーリー・ラウズも何時になく楽しげにサックスを吹き上げてます。サム・ジョーンズも何時になくモダンなベースをブンブン弾きまくってるし、アル・フォスターのドラムもジャジーの極み。そう、このアルバム、ジョーダンの自作曲を渋い渋いパーソネルでの演奏によって思いっ切り引き立たせ、ジョーダン作曲の曲の良さを思いっ切り愛でまくることが出来る、そんなアルバムです。
 
 

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2022年2月 7日 (月曜日)

遅れてきた「才能」の秀作です

Andrew Hill(アンドリュー・ヒル)は、ブルーノート・レーベルの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンが見出した「最後の才能」であった。時は1963年、ジャズの多様化とポップ化が進み、ヒルのアーティステックでモーダルなピアノは、あまりに硬派で先進的でウケなかった。

当時から、ライオンは、アンドリュー・ヒルを第一線に送り出せなかったことを後悔しており、1980年代にブルーノートが復活した時、ライオンがまず始めたことはアンドリュー・ヒルを再び売り出すことだった。

Andrew Hill『Divine Revelation』(写真)。スティープルチェイス・レーベルのSCS1044番。1975年7月10日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), Jimmy Vass (fl, ss, as), Chris White (b), Leroy Williams (ds)。ジミー・ヴァスが1管のカルテット編成。北欧のスティープルチェイスであるが、NYでの録音になる。

オール・アメリカンのメンバーで、NYでの録音。スティープルチェイスは、デンマークのコペンハーゲンから、わざわざ、NYに単身飛んで、同様なNY録音を前作『Invitation』と続けて実施している。
 

Divine-revelation

 
この録音環境には意味がある。スティープルチェイス・レーベルの総帥プロデューサー、ニルス・ウインターは、ヒルの才能を買っていて、このヒルのピアノを記録することに、レーベルとしての使命を感じていたと思うのだ。

内容的には、ヒルのピアノの個性が充満している。「新時代のセロニアス・モンク」。判り易いモンクという感じの、予測可能な範囲で飛んだり跳ねたりするピアノ。そんな「癖の強いピアノ」で、思いっ切りモーダルなフレーズをガンガン弾きまくる。

非常にストイックで硬質なモード・ジャズが、実にヒルらしい。タッチも力強い、飛んだり跳ねたりするフレーズにスピード感が加わって、適度なテンション漲り、爽快感は抜群。ポップな響き、コマーシャルなイメージとは全く無縁。ファンクネスもかなり控えめで、スティープルチェイス独特のエコーと相まって、欧州らしい純ジャズな雰囲気が特徴的。

1975年は、ジャズ界ではフュージョン・ジャズの大流行が始まる頃。そんな時代に、こんな硬派でストイックなモード・ジャズが記録されていたとは、スティープルチェイス・レーベル恐るべしである。純粋に良質なジャズを記録し、真のジャズの歴史を記録に留める。そういうところが、スティープルチェイスが優れたジャズ・レーベルとして認識される所以だろう。
 
 
 
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2022年2月 5日 (土曜日)

70年代のメアリー・ルー再評価

メアリー・ルー・ウィリアムス(Mary Lou William)は、ジャズ界のレジェンドたちからの敬愛を一身に集めた女性ピアニストの草分け、作曲・編曲家である。彼女の経歴を紐解けば、米国では著名で実績豊富な、ジャズ史にその名を留めるべきジャズ演奏家であることが判る。が、我が国では「我が国におけるマイナーなジャズ演奏家」の1人。

Mary Lou Williams『Free Spirits』(写真左)。スティープルチェイスのSCS1043番。1975年7月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Mary Lou Williams (p), Buster Williams (b), Mickey Roker (ds)。リーダーのメアリー・ルー・ウィリアムスが録音当時65歳、バックのリズム隊、ベースにバスター・ウィリアムス、ドラムにミッキー・ローカーという名手を従えてのピアノ・トリオの演奏になる。

メアリー・ルー・ウィリアムスの風貌、この盤のジャケットを見れば、何処か、映画女優の「ウーピー・ゴールドバーグ」に似ている感じがして、確か、端正でエレガントで流麗な、そこはかとなくファンキーで、ゴスペルチックな和音もところどころで聴くことができるピアノだった印象があって、この盤もそうかと思って聴き始めたら、これがまったく違う。
 

Free_sprits

 
内容的には、クールでアーティスティックで、静的なモード・ジャズがメイン。音を厳選して、音と音の間を活かしつつ、どこか内省的な内容で、当時のメインストリーム系ジャズの最先端を行く印象。これにはビックリした。初めて聴いた時、思わずジャケットを見直した、そして、最後はCD本体のラベルの名前を見直した位である。

現代の「静的なスピリチュアル・ジャズ」に通じる響きもあり、フリーっぽくなるところも格好良く、トリオ演奏に漂う適度な緊張感が実に心地良い。欧州ジャズ独特のクリスタルでクラシカルな音の響きが、ウィリアムスの持つファンクネスをアーティスティックな響きに「浄化」している。ティモンズ作のファンキー曲「Dat Dere」が、趣味の良いファンキー・ジャズに変化しているのが面白い。

さすが、海外の評価の「ジャズ界のレジェンドたちからの敬愛を一身に集めた女性ピアニスト」であることを、この盤でしっかりと再認識させてもらった。録音当時、ジャズ界はクロスオーバー〜フュージョン・ジャズが流行していて、この盤の様なメインストリーム系の純ジャズは商売にならない、と敬遠されていた時期。いやはや、当時の欧州ジャズ、スティープルチェイスのジャズに対する懐の深さを思い知った。
 
 
 

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2022年2月 2日 (水曜日)

スピリチュアルなディッカーソン

ウォルト・ディッカーソン(Walt Dickerson)は、1928年に米国フィラデルフィア生まれのヴァイブ奏者。1962年にはダウンビート誌がベスト・ニュー・アーティストと選出されるくらい、将来を嘱望されたヴァイブ奏者であった。活動期間は1961年〜1985年辺りまで。2008年に鬼籍に入っている(享年80歳)。

ディッカーソンは従来の4ビート基調のスインギーなハードバップ基調では無く、ポスト・バップのヴァイブ奏者である。モーダルでスピリチュアルな展開が持ち味。「ヴァイブのコルトレーン」と呼ばれることもあるほど、ヴァイブの音の広がりを活かした幻想的なフレーズや、フリー一歩手前の限りなく自由度の高いモーダルなフレーズ、感覚的で印象派の様な音の広がりのある無調のフレーズが特徴。

Walt Dickerson『Peace』(写真左)。 1975年11月14日、NYでの録音。SteepleChaseレーベルのSCS 1042番。ちなみにパーソネルは、Walt Dickerson (vib), Lisle Atkinson (b), Andrew Cyrille (ds)。管もピアノも無い、ディッカーソンのヴァイブが唯一フロント楽器のトリオ編成。正式な収録曲が僅か2曲のみの大作である(CDには短いボートラが1曲加わる)。
 

Peace_walt-dickerson

 
ディッカーソンは、1965年から10年間ジャズシーンから離れていたが、この1975年録音のアルバムから、SteepleChaseレーベルより、優れたリーダー作をリリースする様になり、1985年までに11枚のリーダー作をリリースしている。欧州の「ブルーノート」と呼ばれた、バップなジャズがメインのスティープルチェイスのカタログの中では、ちょっと異質な「モーダル&スピリチュアル」な内容のリーダー作が異彩を放っている。

この盤の内容も一言で言うと「スピリチュアル」。適度なテンションの下、限りなく自由度の高いフリーキーなフレーズを繰り出しながら、ヴァイブの音の伸びを活かした幻想的なフレーズで、スピリチュアルな雰囲気を増幅している。ヴァイブって、こういう演奏にも使えるんやなあ、と妙に感心する。硬質でクリスタルな響きが充満した、如何にも欧州的な「スピリチュアル・ジャズ」である。

ブルーノート・レーベルが、エリック・ドルフィーやセシル・テイラーのフリー・ジャズを録音し、残したのと同じ感覚で、スティープルチェイス・レーベルは、このディッカーソンのスピリチュアル・ジャズを録音し、残したのだろう。さすがスティープルチェイス、1970年代の欧州ジャズのトレンド&歴史を、しっかりと残してくれているのだ。
 
 
 
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2022年2月 1日 (火曜日)

前進しチャレンジするデックス

デクスター・ゴードン(Dexter Gordon、愛称「デックス」)は、北欧の老舗ジャズ・レーベル、SteepleChase Labelの看板テナーマンの1人だった。ゴードンが渡欧して、主にパリとコペンハーゲンに滞在した14年間の間に、SteepleChaseにて、30数枚分のリーダー作を録音している。恐らく、総帥プロデューサーのニルス・ウインターとの相性がかなり良かったのだろう。

Dexter Gordon『Stable Mable』(写真左)。1975年3月10日、コペンハーゲンの「Rosenberg Studio」での録音。SteepleChase LabelのSCS1040番。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts, ss), Horace Parlan (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Tony Inzalaco (ds)。デックスのサックスがワン・ホーン・フロント管のカルテット編成。

ワンホーン・カルテットなので、デックスのサックスの個性と歌心が心ゆくまで楽しめる。この盤でのデックスは、サックスを真摯にストイックに吹き上げている。引用などのお遊びを極力控え、硬派に力感溢れるサックスを聴かせてくれる。そんなストイックなサックスで吹くのは「スタンダード曲」。そう、この盤はデックスの「スタンダード曲集」。
 

Stable-mable

 
チャーリー・パーカー作の「Red Cross」や、マイルス・デイヴィス作の「So What」などの、ミュージシャンズ・チューンズを吹きまくるデックスは意外と珍しい。特に、マイルスの「So What」などは、モード・ジャズの名曲なんだが、デックスがモーダルなフレーズを吹き上げるなんて、やはり、デックスはまだまだ「進歩する」サックス奏者だったことが、この盤を聴けば良く判る。

バックのリズム・セクションも優秀。デックスと同じく、NYから渡欧したホレス・パーランがピアノを担当。パーランのファンキーかつモーダルなピアノが、スティープルチェイスに「米国ジャズ」の雰囲気を持ち込んでいる。ベースのペデルセンは、北欧ジャズの至宝ベーシスト。ガッチリとビートの底を押さえ、演奏全体のリズムを整える。ドラムのインザラコは、渡欧組だがドイツ在住。堅実なドラミングで大健闘である。

ジャズ盤紹介本などでは全くタイトルが挙がらない盤であるが内容は濃い。特に、ジャズマンとして「前進する」姿を、音と選曲で教えてくれるデックスは実に頼もしい。そうそう、この盤ではデックスって、ソプラノ・サックスも吹いているみたいなんですよね。チャレンジ精神も旺盛な「欧州のデックス」である。
 
 
 
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2021年12月29日 (水曜日)

NHØペデルセンの好リーダー作

Niels-Henning Ørsted Pedersen(ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン)。デンマーク・ジャズの至宝。ジャズ・ベーシストのレジェンド。1946年5月生まれ、2005年4月、58歳にて心不全で急逝。まだまだ中堅の働き盛りだったので、逝去の報に接した時には、かなりビックリした。

ペデルセンのベースは硬質で骨太で、しなり豊かなブンブンなベース。しかも、ピッチがバッチリ合っている。テクニックは抜群、ベース・ソロなどはギターの様に唄う様なフレーズは、なかなか他に無い。それでいて、フロント楽器の邪魔をすることは絶対に無い。逆にフロント楽器を引き立てるベースなのだ。見事という他は無い。僕はこの人のベースが大好きだった。

Niels-Henning Ørsted Pedersen『Jaywalkin'』(写真左)。スティープルチェイス・レーベルのSCS1041番。1975年9月と12月、コペンハーゲンの「Rosenberg Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Philip Catherine (g), Ole Kock Hansen (el-p), Billy Higgins (ds)。

リーダーはもちろん、ベースのペデルセン。ドラムは柔軟なユーティリティー・ドラマーのビリー・ヒギンズ。ギターは、ベルギー出身のフィリップ・カテリーン、エレピは、デンマーク出身のオーレ・コク・ハンセン。ほぼ欧州ジャズなラインナップ。
 

Jaywalkin

 
ピアノはアコースティックでは無く、エレクトリック、ギターもエレクトリック中心なので、アルバム全体の音作りは、ガッチガチの純ジャズでは無く、ちょっとポップでコンテンポラリーな、いかにも1970年代らしい「ニュー・ジャズ」な雰囲気。ペデルセンの考える「クロスオーバー・ジャズ」な雰囲気が聴いていてとても楽しい。

それにしても、ペデルセンのベースは「ヤバい」。ウッド・ベースが持つウッディーな重厚さや温みを失わず、凄まじい重低音をブンブンしならせて、ピッチをバッチリ合わせながら、唄う様にソロ・フレーズを弾きまくっている。これがとにかく凄い。

エレベの伝説的レジェンド、ジャコ・パストリアスに通ずる「凄さ」。ジャコより骨太で硬質なので、これはこれで唯一無二。逆に、クロスオーバー・ジャズ的な、ポップでエレクトリックな音世界の中で、ペデルセンのベースは実に「目立つ」。

欧州ジャズに珍しい、クロスオーバー・ジャズ風な、フュージョン・ジャズ風な音世界が実にユニークで聴き易い。そこに、良い意味で目立ちに目立つペデルセンのベース。ベーシストのリーダー作としても、白眉の出来だと思います。
 
 
 
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2021年12月23日 (木曜日)

マッキンタイヤーの充実の好盤

コペンハーゲンが拠点の欧州ジャズ・レーベルの老舗のひとつ「スティープルチェイス・レーベル」。このレーベルには、米国のレーベルではパッとしなかったが、このスティープルチェイス・レーベルにてリーダー作を制作し、なぜか頭角を現した、不思議なジャズマンがいる。例えば「Ken McIntyre(ケン・マッキンタイヤー)」はそんな1人である。

Ken McIntyre(ケン・マッキンタイヤー)は、1931年9月、米国はボストンの生まれ。基本はアルト・サックス奏者。その他、フルートなども吹き、他の楽器、ベースやピアノも弾く「マルチ・インストルメンタル」なジャズマンである。

1960年代前半に4枚のリーダー作を残したがパッとせず、1970年代は、スティープルチェイスに移籍して、5枚のリーダー作を残したが、これがどれもが好盤揃い。恐らく、スティープルチェイスの総帥プロデューサー、ニルス・ウインターの手腕の賜だろう。

Ken McIntyre『Home』(写真左)。1975年6月23日、NY出の録音。スティープルチェイス・レーベルのSCS1039番。ちなみにパーソネルは、Ken McIntyre (as, fl, bassoon, b-cl), Jaki Byard (p, el-p), Reggie Workman(b), Andrei Strobert (ds)。ケン・マッキンタイヤーのアルト・サックスがワンホーンのカルテット編成。マッキンタイヤーの通算6枚目のリーダー作。
 

Home_ken-mcintyre

 
内容的には、1960年代後半、米国NYで流行した、自由度の高いモーダルなジャズ。ストレートでモーダルな吹きっぷりは、アルト・サックスを吹くコルトレーンの様でもあり、時々、アブストラクトにスピリチュアルに捻れるところは、エリック・ドルフィーの影を強く感じる。

全ての曲が、マッキンタイヤーの自作曲であるということ、そして、ワンホーン・カルテットということもあって、伸び伸びとポジティヴにアルト・サックスを吹きまくっている。フリーにアブストラクトに、ブロウに様々な色づけをしつつ、フリー&アブストラクトに傾くのはほんの少しなので、フリー嫌いのジャズ者の耳にも十分に鑑賞に耐える。

バックのリズム・セクションも良い感じ。幾何学模様のモーダルなバイアードのピアノが、マッキンタイヤーのアルト・サックスにバッチリ合っていて、ワークマンのこれまた重量級モーダルなベースが、演奏の底をガッチリ支えている。

マッキンタイヤーの、演奏家として充実してきた40歳代の「中堅ジャズマン」の記録として、充実の好盤である。
 
 
 
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2021年12月22日 (水曜日)

スティープルチェイスの異色盤

スティープルチェイス・レーベルは、1970〜80年代を中心に、ジャズ史に残る名盤を数多く生み出した欧州ジャズ・レーベルの老舗。比較的、米国系のレーベルに近い演奏の色や雰囲気を持っていて、ハードバップ系の演奏に秀作が多い。さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫。

そんな「欧州発ハードバップ」の宝庫にも、1970年代、当時にして新しい「コンテンポラリーな純ジャズ」なアルバムがあったりするから面白い。

Michael Carvin『The Camel』(写真左)。1975年7月8日の録音。スティープルチェイス・レーベルのSCS1038番。ちなみにパーソネルは、Sonny Fortune (as. ss), Cecil Bridgewater (tp, flh), Ron Burton (p), Calvin Hill (b), Michael Carvin (ds)。リーダーは、ドラムのマイケル・カーヴィン。フォーチュンのサックス、ブリッジウォーターのトランペットが2管のクインテット編成。

欧州ジャズの世界に、バリバリ、エレ・マイルスの世界で吹きまくっていたサックス奏者と、マックス・ローチの長年の右腕トランペッター、セシル・ブリッジウォーターを迎えてのレコーディング。
 

The-camel

 
冒頭「Osun」から、カリプソチックでトロピカルな雰囲気の、ワールド・ミュージック志向な「ニュー・ジャズ」が展開される。フォーチュンとブリッジウォーターがノリに乗って、陽気に吹きまくっているのが面白い。どう聴いたって「欧州ジャズ」の雰囲気じゃない(笑)。リーダーのカーヴィンのドラムもノリに乗っている。

2曲目の「Naima」は、コルトレーンのバラードの名曲。ゆったりと展開するリズム&ビートをバックに、フォーチュンが素敵なソプラノ・サックスを披露する。静的なフレーズから、ラストはサイケデリックでスピリチュアルなフレーズで締めくくる。コルトレーン・ジャズへのオマージュ的演奏。

アルバム全体の雰囲気は、当時の米国ジャズの最前線のコンテンポラリーな純ジャズ。ワールド・ミュージック志向のニュー・ジャズあり、コルトレーンのオマージュあり、スピリチュアルなバップ曲あり、で、当時の欧州ジャズのトレンドからは逸脱した、1970年代の米国に流行っていた「コンテンポラリーな純ジャズ」な雰囲気が面白い。

スティープルチェイス・レーベルの諸作の中では異色盤でしょう。ジャケット・デザインも「強面」なので、あまり人気が無いみたいですね。それでも、一度聴けば、意外と時々引っ張り出して来て聴く「息の長いヘビロテな盤」になるのではないでしょうか。意外と充実した内容の好盤です。
 
 
 
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2021年12月 6日 (月曜日)

マクリーンの息子のリーダー盤

1970年代の欧州ジャズは、メインストリームな純ジャズ路線を頑なに守っていたフシがある。エレクトリック・ジャズへのアプローチは必要最小限に留め、アコースティック楽器中心のハードバップか、新しいジャズの響きを求めた「ニュー・ジャズ」がメインだった。スティープルチェイス然り、エンヤ然り、ECM然り、である。

René McLean『Watch Out』(写真)。1975年7月9日、NYでの録音。スティープルチェイス・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、René McLean (sax, fl), Danny Coleman (tp, flh). Nathan Page (g), Hubert Eaves III (p), Buster Williams (b), Freddie Waits (ds)。名アルト・サックス奏者、ジャキー・マクリーンの息子、ルネ・マクリーンの初リーダー作になる。

ルネ・マクリーンは1946年生まれ。マルチ・リード奏者。ワールド・ミュージック志向の純ジャズがメイン。教育者、プロデューサーとしての「顔」もあり、リーダー作は現在まで3枚に留まる。そんな寡作のリーダー作の一枚になる。脇を固めるサイドマンは米国のジャズマンで占められてはいるが、さすがジャズが斜陽の時代、名前がメジャーなサイドマンはベースのバスター・ウィリアムスくらいかな。
 

Watch-out

 
エレギが入ったコンテンポラリーな純ジャズ志向のエレ・ジャズになる。音の志向はあからさまではないが「ワールド・ミュージック」志向。アフリカやカリブやラテンなど、ワールドワイドな音の要素が色々と混ざっている。リズム&ビートの基本はハードバップ。モード・ジャズであるが、アフリカン・ネイティヴな音の雰囲気がそこかしこに感じられて、1970年代ならではのエレ・ジャズがこの盤に詰まっている。

ルネのサックスは「コルトレーンのフォロワー」の音であり、モーダルなフレーズ、シーツ・オブ・サウンドなアドリブ展開など、コルトレーンほど重厚では無いが、フットワーク良く軽快なブロウで、「コルトレーン・ライク」なサックスが展開される。バックがエレ・ジャズ志向なので、コルトレーンが1970年代も生きていて、エレ・ジャズをやるなら、こういう音になるのかな、という雰囲気。演奏テクニックも優秀で、収録されたどの楽曲も、良い感じの「力作」に仕上がっている。

このワールド・ミュージック志向のエレ・ジャズって、当時、意外と珍しく、ルネ・マクリーンについても、この志向のリーダー作が、続いて制作されなかったことは残念である。もっと突き詰め深化させていけば、なかなか面白いワールド・ミュージック志向のエレ・ジャズが成立したと思うのだがどうだろう。冒頭の「Bilad as Sudan (Land of the Blacks)」からタイトル含め、演奏にも力が入っていて、なかなか聴かせてくれる。
 
 
 
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