2020年1月13日 (月曜日)

リラックスした演奏が魅力です

ケニー・ドリューは、1960年の『Undercurrent』以降、リーダー作が途絶えたが、1973年の『Duo』を SteepleChaseレコードからリリースしてカムバック。以降、SteepleChaseレコードの諸作をメインに1970年代は絶好調。1970年代のドリューは、デンマークのコペンハーゲンでの録音をメインに欧州でプレイしていて、欧州出身のメンバーには希薄な、濃厚なファンクネス漂うピアノ・タッチに人気があった、とのこと。

Kenny Drew『In Concert』(写真左)。1977年2月3日、西ドイツでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Drew (p), Philip Catherine (g), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)。この盤は珍しい「ドラムレス」のギター・トリオ盤。ドラムの代わりにギターが入ってのトリオ編成。初期の頃のピアノ・トリオの編成は、この「ピアノ + ギター + ベース」だったそうだ。

SteepleChaseレコードのドリューのトリオ盤はどれも内容が良い。このトリオ盤はギターとのトリオ盤であるが、内容はバッチリである。ファンクネス漂う上質のハードバップ・ピアノでガンガン弾きまくっている。ドリューのピアノのフレーズは基本的に典雅なので、ガンガン弾いても耳につかない。タッチは硬質で明快、ドライブ感も豊かで、典型的なバップ・ピアノである。
 
 
In-concert-kenny-drew
 
 
この盤はドラムが無く、ギターに変わっている分、ピアノとベースのアドリブ・フレーズが聴き取り易く、細かいニュアンスまで耳が届く、という利点がある。ダイナミズムと音のメリハリに欠ける面はあるが、ピアノが典雅なドリューであり、ベースが骨太でテクニック豊かなペデルセンであることを考えると、意外とこの「ピアノ + ギター + ベース」は彼らにとって、良いフォーマットではと思うのだ。

フィリップ・カテリーンのギターが良い。1942年生まれのベルギーのギタリストらしいが、欧州らしい、ファンクネス希薄でスインギーな硬質ギターが良い感じ。典雅で明快なタッチのドリューのピアノと、鋼の様なしなりの良い硬質なペデルセンのウォーキング・ベースとの相性も良い。3者とも、スインギーな演奏が身上ゆえ、ノリの良い展開がこの盤を魅力的なものにしている。

ペデルセンの硬質でブンブン唸るウォーキング・ベースが強烈で、ギターのストロークとピアノの左手と合わせて、演奏全体のリズム&ビートは十分に供給されているので、この3者についてはドラムが不要でも問題無いのだろう。我が国ではほとんど紹介されることのない盤だが(僕は見たことが無い)、リラックスした演奏が魅力の「隠れ好盤」。
 
 
 
東日本大震災から8年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年12月18日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・156

いや〜良い盤を見つけた。ロニー・キューバーの新作である。ロニー・キューバーはバリトン・サックス(以降「バリサク」)奏者。僕はこのバリサクの音が大好きで、バリサクのアルバムを見つけたら必ず聴く様にしている。特に、バリサク奏者の中でも、このロニー・キューバーは昔からお気に入りのバリサク奏者である。彼のリーダー作は見つけたら、即ゲットである。

Ronnie Cuber『Four』(写真左)。今年の最新作である。ちなみにパーソネルは、Ronnie Cuber (bs), Ed Cherry (g), Brian Charette (org), Adam Nussbaum (ds)。SteepleChase Recordsからのリリース。SteepleChaseが未だに元気に活動しているのが実に嬉しい。パーソネルを見渡しても知らない顔ばかり。どんな音が出てくるのか、ワクワクである。

ロニー・キューバーは1941年12月生まれなので、今年で78歳。ジャズの世界でも、もはや「レジェンド」「仙人」の域である。この新作では年齢の割にバリサクを吹き切っている。バリサクは一番低音を担当するサックスで、とにかくでかい。当然、重たいし、肺活量もかなり必要。曲によってはちょっとヨレっているところもあるが、これはご愛嬌。
 
 
Four-ronnie-cuber  
 
 
ロニー・キューバーのバリサクの吹きっぷりは「ストレート」がメイン。重低音が出せるので、この部分でブリブリブリとビブラートをかましたり、ブリッと捻れた音を出したりしがちなのだが、ロニーのバリサクはそのパフォーマンスは必要最低限に留めている。コルトレーンの吹きっぷりの様な「ストレート」な音出しなので、ロニーのバリサクはとてもモダンな香りがする。

バックのギター、オルガン、ドラムも好印象。特に、ブライアン・チャレットのオルガンが良い。職人芸的に地味に小粋なテクニックを偲ばせて、とてもファンキーにそして、ジャジーにロニーのバリサクを際立たせる。味のあるオルガンとはこのこと。エド・チェリーのギターも好演。バリサク、オルガンとコッテコテにもっこりファンキーなフロントの音を、シャープで切れ味の良いエレギがグッと引き締めている。

昔ながらのスタンダート曲、ミュージシャンズ・チューンズな曲、いわゆるハードバップ期からファンキー・ジャズ期に皆が得意としたスタンダード曲をメインにバリサクを吹きまくるロニー・キューバーは実に楽しそう。僕がロニー・キューバーを知ったのは、1987年の『The Gadd Gang』での好演だった。あれから32年。未だ、ロニー・キューバーのバリサクは僕のお気に入りである。
 
 
 
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2019年10月15日 (火曜日)

テテの個性が集約された好盤

スペインのカタルーニャ地方が不穏である。カタルーニャ独立派幹部に長期禁錮刑。バルセロナで抗議デモ。カタルーニャ地方の事情を察すれば納得できる出来事ではある。何とか円満に解決する方策は無いものだろうか。

スペイン、カタルーニャ地方出身のジャズマンと言えば「Tete Montoliu(テテ・モントリュー)」。盲目のピアニスト。1933年生まれ。1997年、64歳で没。生まれた時から盲目であった。テテはTHE Conservatori Superior de Musica de Barcelona音楽学校でジャズと出会う。彼のピアノ・スタイルは、特にアメリカのジャズピアニストのアート・テイタムに影響を受けている。

テテのピアノは「超絶技巧」。超光速「速弾き」。限りなく端正なフレーズの連続。破綻は全く無い。確かにアート・テイタムを彷彿とさせるが、テイタムの超絶技巧な弾きっぷりよりも、より歌心が溢れている。スペインの出身であるが、スパニッシュな要素は殆ど無い。フレーズは限りなく硬質で、あくまで「クール」。それでいてスインギー。
 
 
Tete  
 
 
Tete Montoliu『Tete!』(写真左)。1974年5月28日の録音。SteeplechaseのSCS1029番。ちなみにパーソネルは、Tete Montoliu (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert 'Tootie' Heath (ds)。この盤でのテテのパートナーは、これまた「調節技巧」ベーシスト、ペデルセン、これまた「職人芸」ドラマー、アルバート・ヒース。

胸の空くような快演の数々。冒頭の「Giant Steps」は、かのコルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」の名曲なんだが、テテはピアノで、光速「シーツ・オブ・サウンド」を弾き切ってみせる。演奏が終わって思わず「スタンディング・オベーション」。3曲目の「Body and Soul」も高速フレーズの連続。こんなに硬質でクールでスクエアにスインギーな「Body and Soul」は聴いた事が無い。

5曲目の「I Remember Clifford」は絶品。硬質でクールで端正なタッチで、情感溢れるバラード曲を弾き切ってみせる。クールでスクエアなスイング感の中に、仄かに漂う歌心と情感。これがテテの真骨頂。テテのピアノの個性が集約された名演である。

このアルバム『Tete!』は、テテの個性を体感するに最適な好盤である。「カタルーニャの秘めた激情」。
 
 
 
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2019年8月25日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・119

ジャズ者ベテランの方々の中でも、ジョー・オーバとニー(Joe Albany)というピアニストの名前を知る方は少ない。ジョー・オーバニーとは「パウエルに次ぐ名ピアニスト」とパーカーに言わしめた、将来を嘱望されたバップ・ピアニスト。しかし、ジャズメンの性なのか、例によって1950年〜60年代、重度のヤク中&アル中で刑務所や療養所を行ったり来たり。大した成果も残さず、忘れ去られた存在に・・・。
 
1970年代になって、ようやく更正してカムバック。精力的に録音するようになったが、Steeplechaseレーベルという欧州のジャズ・レーベルやマイナーなレーベルからのリリースがほとんどだったので、あまり、我が国では知られることは無かった。しかし、このSteeplechaseレーベルからリリースされた2枚のアルバムは、オーバーニーの個性を確認するのに欠かせないアルバムです。
 
Joe Albany & Niels-Henning Ørsted Pedersen『Two's Company』(写真左)。1974年2月17日の録音。スティープルチェイスのSCS1019番。デュオ編成の録音なので、パーソネルは、Joe Albany (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)。北欧の伝説のベーシスト、ペデルセンとのデュオ。雄弁なバップ・ピアニスト、オーバニーとの相性は、と興味津々。
 
 
Twos-company
 
 
チャーリー・パーカーとの共演歴もある、ビ・バップ時代から活動する白人ピアニスト、オーバニーと、欧州ジャズを代表するベーシスト、ペデルソンとのデュオ。こういうセッションをマッチ・メイクするスティープルチェイス、さすが「欧州のブルーノート」と呼ばれる所以である。いい意味でのカドが取れた、往年のスター・プレイヤー達をピックアップした録音を数多く手掛けているが、この盤もその一枚。
 
オーバニーのピアノの個性が良い形で記録されている。ちょっと前懸かりのバップ・ピアノ。フレーズの典雅さ、フレーズの音の響きの良さ、硬質なタッチでの端正な弾き回し。そして、どこかテンションの高い部分が妙に耳に残る。アドリブ・フレーズの底に潜んでいる「研ぎ澄まされたような狂気」。決して気楽に聴くことは出来ないが、聴けばしっかりと集中して最後まで聴くことの出来る充実した内容。
 
ペデルセンのベースは当然「素晴らしい」の一言。正確なピッチと躍動感溢れるリズム&ビートで、デュオの相棒、オーバニーのピアノを支え、鼓舞する。ペデルセンの伴奏は決して前に出ず、しっかりとバックで相棒を支える、という、実に品の良い、小粋な伴奏が特徴。多弁なオーバニーのフレーズに被ること無く、しっかりと演奏のベースをリードしていく。デュオ好盤、ご一聴をお勧め、です。
 
 
 
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2019年8月24日 (土曜日)

印象的なデュオ演奏が良い。

スティープルチェイス・レーベルは「欧州のブルーノート・レーベル」と呼ばれる。カタログを見れば、その喩えが良く判る。まず、ビ・バップ時代やハードバップ時代から活躍しているジャズメンの録音が沢山ある。決してトレンドに流されない。1970年代からの活動ではあるが、クロスオーバー〜フュージョンには一切手を出さない。

あるのは純ジャズばかり。誠に硬派なジャズ・レーベルである。純ジャズを専門に、編成はソロからデュオ、トリオ、カルテット、クインテットが殆どで、小規模構成のジャズがメインである。ビッグバンドなど大編成のジャズは無い。恐らく、予算の問題があったのではないか、と思っている。しかし、この小規模編成のそれぞれの演奏が実に見事に録音されている。

Lee Konitz & Red Mitchell『I Concentrate On You』(写真)。SteeplechaseのSCS1018番。1974年7月30日、デンマークはコペンハーゲンの録音拠点「Rosenberg Studio」での録音。 ちなみにパーソネルは、この盤はデュオ演奏なので、Lee Konitz (as), Red Mitchell (b, p)の2人。コニッツは録音時は44歳。ミッチェルは47歳。油ののった中堅である。
 

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ビ・バップ時代のクール派でならしたリー・、コニッツがデュオ演奏にチャレンジしているところがミソ。コニッツは、1950年代、クール派のアルト・サックス奏者である。どれだけクールなブロウを聴かせてくれるのかと思いきや、結構ホットに吹いている。ハードバップ風のメリハリのある「味のあるブロウ」で、淡々と数々のスタンダード曲を吹き上げていく。
 
そして、この盤を聴いて、ちょっとビックリするのが、レッド・ミッチェルのベース。デュオなので、淡々とアルト・サックスのバックに回って、ウォーキング・ベースを弾き続けるのかな、と思ったら「とんでもない」。非常にイマージネーション豊かに唄うが如く、旋律に抑揚、緩急を効果的に付けつつ、コニッツのアルトに「リズム&ビート」を供給する。
 
大向こう張った、大仕掛けの吹き回しは全く無いが、淡々と適度にテンションを張りつつ、印象的なデュオ演奏を繰り広げる。このデュオ盤、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されているのを見たことが無い。しかし、とても良い内容のデュオである。コニッツのアルトの個性、ミッチェルのベースの個性、それぞれ良く表現されていて、意外とこの盤「買い」である。スティープルチェイス・レーベル侮り難し、である。
 
 
 
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2019年8月20日 (火曜日)

欧州での純ジャズの「深化」

1970年代、メインストリーム・ジャズ(純ジャズ)は欧州で深化していた。米国ではジャズのポップス化、いわゆるクロスオーバー〜フュージョン・ジャズがメインとなり、メインストリーム・ジャズは絶えずに深化してはいたが、1960年代前半までの様に活発な状況では無かった。米国のジャズメンも米国では仕事が無くなり、欧州へ移住する者も少なくなかった。

ジャズを聴き始めた1970年代後半、いろいろと数少ないジャズ本を読んで、欧州にもジャズが根付いていることを知って、驚いた事を覚えている。そうか、ジャズって米国と日本だけのものじゃ無かったんだ、欧州にも広がっていたんや、と妙に感動した。その時に知った欧州のレーベルが、ECMレーベルであり、Enjaレーベルであり、Steeplechaseレーベルであった。
 
Jackie McLean featuring Gary Bartz『Ode to Super』(写真)。Steeplechaseレーベルの「SCS1009番」。1973年7月17日、デンマークはコペンハーゲンの「Soundtrack Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean, Gary Bartz (as, vo), Thomas Clausen (p), Bo Stief (b), Alex Riel (ds)。
 
 
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このSteeplechase盤を聴けば、メインストリーム・ジャズが欧州、それも北欧で深化していたことが良く判る。リーダーのマクリーンはもともと進化を旨とするジャズマン。ブルーノート・レーベルでの諸作を聴けば、リーダー作を重ねる毎に自らのジャズを進化させているのが良く判るのだが、1970年代のSteeplechaseでの諸作でも、マクリーンは絶えず「深化」している。常に新しいイメージのマクリーンを聴かせてくれる。

この『Ode to Super』でも、マクリーンは、フリーでスピリチュアルなアルト・サックス奏者のゲイリー・バーツとガッチリ組んで、バーツと比べても遜色ない、スピリチュアルなブロウを聴かせてくれる。スピリチュアルな響きが魅力の「Ode To Super」、ばっちり決まったファンキー・チューン「Great Rainstreet Blues」、モダンでスインギーな「Red Cross」など、全編に渡って、新しい響きのメインストリームなジャズを聴かせてくれるのが嬉しい。
 
1970年代のメインストリーム・ジャズの「深化」については、欧州のジャズ・シーンの貢献度が高い。1970年代のジャズの「深化」を追体験するには、SteepleChaseレーベルの諸作は欠かせない。そう言う意味でも、SteepleChaseレーベルって、あって良かったなあ、と思うのだ。
 
 
 
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2019年8月18日 (日曜日)

マッキンタイヤーの個性と実力

SteepleChaseレーベルは「北欧のブルーノート・レーベル」と呼ばれるだけあって、カタログを眺めていると、こんなジャズマンのリーダー作を録音しているんやなあ、と感心することがしばしば。1960年代後半より、米国から欧州に移住してきたジャズマンや米国在住のジャズマンが、北欧はデンマークのコペンハーゲンに演奏ツアーに来た時にピックアップして録音しているのだ。これがカタログの充実に大いに貢献している。

Ken McIntyre『Hindsight』(写真左)。SteepleChaseレーベルのSCS1014番。 1974年1月13日、デンマークはコペンハーゲンのRosenberg Studioでの録音になる。ちなみにパーソネルは、Ken McIntyre (as, fl ,bassoon, b-cl), Kenny Drew (p), Bo Stief (b), Alex Riel (ds)。SteepleChaseレーベルのお抱えピアニスト、ケニー・ドリューと、地元のコペンハーゲンのジャズマン2人のリズム・セクションがバックについている。
 
この盤を聴けば判るが、実に良い内容のハードバップ盤である。リーダーのアルト・サックス奏者、ケン・マッキンタイヤーの優れた演奏がしっかりと記録されている。ノーマルに旋律を悠然と吹く様子や、時にフリーキーに時にアブストラクトに演奏を展開したり、激情の赴くままに吹きあげる様や、ほど良く抑制されコントロールされた吹きっぷりなど、マッキンタイヤーの演奏の全てを記録している。選曲も良い。しっかりとスタンダード曲が選ばれている。
 
 
Hindsight
 
 
2曲目の「Lush Life」、4曲目の「Body and Soul」、7曲目の「'Round About Midnight」。いずれも良い演奏だ。フリーにアブストラクトに、ブロウに様々な色づけをしつつ、従来のスタンダード曲に新しいイメージを与えている。フリー&アブストラクトに傾くのはほんの少しなので、フリー嫌いのジャズ者の耳にも十分に鑑賞に耐えると思料。ミュージシャンズチューンも選曲していて、コルトレーンの「Naima」はオーボエのみに情緒豊かに吹き上げていく。ロリンズの「Sunnymoon for Two」は本業のアルト・サックスで、マッキンタイヤー節全開で吹きまくる。
 
バックのリズム・セクションもマッキンタイヤーの好演をしっかりとサポートしている。もともとドリューのピアノって、バップなピアノなので、メリハリが効いた、明快なタッチが持ち味。当然、フロント楽器の演奏のサポートも、供給されるリズム&ビートは明確そのもので気持ちの良いもの。地元出身のベースとドラムも優れたパフォーマンスを供給していて、このマッキンタイヤーのリーダー作を更に内容の濃いものにしている。
 
米国のレーベルに残したNew Jazzでの2枚とUnited Artistsでの2枚は、マッキンタイヤーの活動初期のものしか無い。ジャズマンとして充実してきた40歳代の記録は、SteepleChaseレーベルに集中している。ケン・マッキンタイヤーというアルト・サックス奏者の実力と個性を理解するには、SteepleChaseレーベルの諸作は欠かせない。そう言う意味でも、SteepleChaseレーベルって、あって良かったなあ、と思うのだ。
  
 
 
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2019年8月15日 (木曜日)

ブラックストンの本質を聴く

SteepleChase(スティープルチェイス)レーベルは「北欧のブルーノート」と呼ばれる。カタログを眺めていると、確かに様々なキーとなるジャズマンの演奏を録音している。しかも、それぞれのアルバムで、そのジャズマンの個性が判り易くなる様な、個性が活性化される様なプロデュースを施している。当然、良い内容のアルバムが目白押しである。

Anthony Braxton『In the Tradition』(写真左)。SCS1015番。1974年5月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Anthony Braxton (as, bcl), Tete Montoliu (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert Heath (ds)。アルト・サックス+バスクラのフロント1管にピアノ・トリオがリズム・セクションのカルテット構成。

リーダーのブラックストンは、フリー・ジャズの猛者。フリーキーに吹き、アブストラクトに吹く。本来は自作の曲を心ゆくまで吹きまくらせたい訳だが、ここではそうはプロデュースしない。フリー・ジャズの猛者だからこそ、伝統的なスタンダード曲を吹く。まず、その企画性だけで、このアルバムは「買い」である。
 
 
In-the-tradition-vol1  
 
 
ブラックストンは必要最低限の決め事、スタンダード曲の旋律をどこかにしっかりとおる混ぜる、という決め事を守りつつ、限りなくフリーにアブストラクトの吹きまくる。これが実に味がある。スタンダードを限りなくフリーにアブストラクトに崩していくと、こういう表現になるのか、と思わず感心して聴き込んでしまった。
 
そして、リズム・セクションに意外性が溢れていて、思わず心から感心した。ピアノもベースもドラムも「純ジャズの人」である。ブラックストンとは「水と油」の様な個性の持ち主。これ、どうやってブラックストンのバックでサポートすんの、と不安に思っていたが、この盤を聴いてビックリ。一流のジャズメンって、応用力、適用力、柔軟性が非常に高いんやなあ、と改めて思い知った。
 
ブラックストンについては、この盤のブロウを聴いて、彼の能力の高さを確信した。チックとのサークルでのブロウはちょっと考え過ぎか、と思っていてたが、この盤ではブラックストンは伸び伸びとフリーを、アブストラクトを吹いている。恐らく、バックのリズム・セクションが純ジャズ出身で、フリーの猛者からすると自由度が高かったのではないか、と睨んでいる。つまりはプロデュースの勝利である。
 
 
 
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2019年6月 7日 (金曜日)

北欧ジャズの端正で硬質なバップ

昨日、北欧ジャズについて「透明度の高い、エッジの効いた音の響き。深いエコー。ミッドテンポがメインの落ち着いたアドリブ展開。耽美的であるが甘さに流されない。凛とした音の美しさと切れ味。北欧ジャズは世の中に現れ出でてより、現代まで、この音の傾向をしっかりと引継ぎ、維持している。」と書いた。とは言え、北欧にジャズが根付いた時代、最初からいきなり、耽美的で凛とした音世界が存在した訳では無い。

Bent Axen『Axen』(写真左)。録音時期は、Tracks A1 to A4が1959年12月29日の録音。Tracks A5, B1 to B5が1961年1月17日の録音。パーソネルは、Bent Axen (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b, tracks: A5, B1 to B5), Ole Laumann (b, tracks: A1 to A4), Finn Frederiksen (ds), Bent Jædig (ts, tracks: A1 to A4), Allan Botschinsky (tp, tracks: A1 to A4)。
 
デンマークのジャズ・レーベル「SteepleChase」からのリリース。サブタイトルが「Bent Axen Trio, Quintet & Sextet」。3種類の編成で聴かせてくれるのは「北欧のハードバップ」。どの曲を聴いても「バップ」だらけ。しかし、米国のバップのコピーでは無い。ファンクネス皆無、飛び散る汗と煙は全く見えず、クールに燃える、端正で硬質なハードバップ。決して乱れることは無く、決して暴走することは無い。
 
 
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リーダーのベント・アクセンのピアノは耽美的なバップ・ピアノ。どこかビル・エヴァンスの響きがする。端正に硬質に透明度を上げたビル・エヴァンス。特にトリオの演奏にその傾向が顕著。いわゆる「北欧ピアノ・トリオ」の原型がここにある気がした。ストイックにバップ・ピアノを追求する修道僧のような演奏。クールだが熱く濃厚な節回しが魅力。

それぞれのサイドマンの演奏を聴いていると、米国のハードバップを良く研究し、確実に自らのものに昇華しているなあ、と感じる。特にリズムセクションにその傾向が顕著。ベースはチェンバースの様であり、レイ・ブラウンの様でもあり。ドラムはブレイキーの様でもあり、フィリージョーの様でもあり。でも、コピーするのでは無く、そのエッセンスを取り込んで、欧州ジャズっぽい音に昇華している。
 
北欧ジャズも、先ずはモダン・ジャズの基本である「ハードバップ」をしっかり押さえていた。その記録がこのベント・アクセンのリーダー作『Axen』である。さすが「SteepleChaseレーベル」である。実に素敵な北欧ジャズの記録を残しておいてくれた。北欧ジャズの「端正で硬質なバップ」演奏である。
 
 
 
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2018年12月 3日 (月曜日)

SteepleChaseのコルトレーン

最近、SteepleChaseレーベルの盤をあれこれ聴いている。SteepleChaseレーベルは、マイルス・コレクターとして有名な、デンマークのニルス・ウインターが、1972年立ち上げたジャズ・レーベル。1970〜80年代を中心に、ジャズ史に残る名盤を数多く生み出した欧州ジャズ・レーベルの老舗である。

SteepleChaseレーベルは、欧州のレーベルとしては比較的、米国系のレーベルに近い演奏の色や雰囲気を持っていて、ハードバップ系の演奏に秀作が多い。さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫。それでも欧州のレーベルなので、カタログを眺めていると「これは誰だ」という感じのジャズメンが名を連ねているから興味津々。

例えばこの盤など、その良い例だ。Frank Strozier Quintet『What's Goin' On』(写真左)。1977年11月5日の録音。SteepleChaseレーベルからのリリースではあるが、録音場所はNY。わざわざ、ニルス・ウインターが渡米しての録音である。

ちなみにパーソネルは、Frank Strozier (as, fl), Danny Moore (tp), Harold Mabern (p), Stafford James (b), Louis Hayes (ds)。もともとこの盤に着目したのは、タイトル曲の「What's Goin' On」。この曲、R&Bのレジェンド、マーヴィン・ゲイの大ヒット曲で、僕はこの曲が大好き。

 

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へ〜、こんなR&Bのヒット曲をジャズ化カヴァーしてるんや、と軽いノリで盤をゲット。ラスト曲の「Psalm for John Coltrane」を見て、おっこれはもしや「コルトレーン・トリビュート」な盤か、なんて予想を立てる。で、聴いてみると、明らかに「コルトレーン・トリビュート」な演奏がギッシリ。

コルトレーンはテナー・サックスの中高音を上手く使ってフレーズを吹く人だったのだが、ちょうどアルト・サックスの中低音がコルトレーンのテナーの音域にフィットするみたいで、リーダーのフランク・ストロジャーのアルト・サックスが、まるでコルトレーンが吹いている様に聴こえる。

ハロルド・メイバーンのピアノは、マッコイ・タイナーの様に「ガーンゴーン」とハンマー奏法を繰り出し、ルイ・ヘイズのドラムは、エルビン・ジョーンズの様に複合リズムを叩き出す。何気なく聴き流していると、本当にコルトレーン・カルテットの音と間違えそう。

この盤、あまりにコルトレーンに追従しているので、個性が無いとか単調とか、否定的な評価も目にするが、録音当時は、サックス吹きはこぞってコルトレーンを追いかけた訳で、何もストロジャーだけが特別では無い。そういう観点で先入観無くこの盤を聴くと、コルトレーン・トリビュートの盤としてはまずまずの出来ではないか、と思うのだ。「あっさりとしたコルトレーン」という感じで、ライトな気分で聴ける。 

 

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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
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  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
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