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2017年8月23日 (水曜日)

Miles Reimaginedな好盤・2

マイルスの成果を振り返り再評価するジャズ本に『MILES : Reimagined 2010年代のマイルス・デイヴィス・ガイド』がある。このジャズ本って、今の時代を前提に、マイルスの音世界のフォロワーについて検討・検証しているところが実に参考になる。昔の盤のみならず、最近リリースされた盤にもスポットを当てているので、実に有り難い。

そんな「Miles Reimagined」なジャズ本で興味を持った盤の一つが、Perigeo『Abbiamo tutti un blues da piangere』(写真左)。この盤は1973年のリリース。イタリアのバンド、Perigeo=ペリジェオと読む。当時、ジャズ畑で活動していたメンバー達によって、1971年にローマで結成されたグループである。邦題は「感涙のブルース」だったらしい。酷いなあ。

聴いてみると実に面白い音世界である。マイルスのフォロワーというか、エレ・マイルスの影響をモロに受けている部分が聴いてとれる。というか、ブルージーなジャズ・ロックぽいフュージョン・プログレという雰囲気。リターン・トゥ・フォーエヴァーやマハヴィシュヌ・オーケストラをロック寄りにして俗っぽくしたフレーズが出てくる出てくる。
 

Abbiamo_tutti_un_blues_da_piangere

 
はたまた、中期ソフト・マシーンのシンプルではあるが、イマージネーション豊かなハイテクな演奏が出てきたり、どっしりとした重量感を感じさせながらの鬼気迫るスリリングな、ちょっとフリーキーな展開には、そこはかとなく「キング・クリムゾン」の様なイメージが漂ったりする。マイナー調のインプロで盛り上がる様は、ジャズロックというよりは「プログレ」。

プログレッシブ・ロックっぽいジャズ・ロック。リフと即興が印象的なハイテクかつ叙情的なエレジャズ。バンド全体の演奏力は高く、アルバム一枚を一気に聴き切ってしまう。アバンギャルドな展開も散りばめられていて、そういう面ではロックでは無く「ジャズ」寄り。こんな面白いエレ・ジャズロックな盤が、1973年にイタリアで生まれていたなんて、僕は知らなかった。

アルバム・ジャケットもプログレ風で秀逸。ジャケットだけみれば「プログレ」、出てくる音は「ジャズ・ロック」という落差が面白い。さすがはイタリア、欧州のジャズ〜ロックの音世界である。ジャズとロックの境界が実に曖昧。そんな「曖昧」ならではの音の成果。ロックでは「プログレ者」の方々、ジャズでは「エレジャズ者」の方々にお勧めの一枚です。

 
 

東日本大震災から6年5ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年7月26日 (水曜日)

マイルス・ミュージックの再現

この人のトランペットは気になりながらも、あまり聴く機会が無かった。Nicholas Payton(ニコラス・ペイトン)。1973年、ニュー・オーリンズ生まれ。音楽一家に育ったサラブレット。力感溢れる、それでいて流麗でブリリアントなトランペットは、明らかに、ウィントン・マルサリスに次ぐ、次世代トランペッターの代表の一人である資格は十分。

そんなペイトンも今年で44歳、中堅の年頃に差し掛かり、ジャズメン人生の中で、一番充実した時間を過ごしつつあるのではないか。そして、今年リリースされた新盤が、Nicholas Payton『Afro-Caribbean Mixtape』(写真)。ちなみにパーソネルは、Nicholas Payton (tp, p, vo), Kevin Hays (key), Vicente Archer (b), Joe Dyson (ds), Daniel Sadownick (per), DJ Lady Fingaz (turntablist)。

本作は、タイトル通り、アフロ〜カリビアンなカリプソな雰囲気漂うサウンドから、アーバンかつクールなモード・ジャズから、硬派なアコ・ジャズから柔軟なエレ・ジャズまで、基本的に「クールでコンテンポラリーなジャズ」を収録していて、ミックステープのような曲間の無い作りになっている。
 

Afrocaribbean_mixtape

 
ペイトンは基本的にはトランペッターですが、マルチプレイヤーの側面も持ち合わせていて、キーボードやドラム・プログラミング等の楽器や、はたまたボーカルもこなす。そんなマルチな個性を活かして、R&Bやヒップホップ、ワールドミュージックといった要素も織り込んで、フュージョン寄りのコンテンポラリーな純ジャズを展開する。

こういう音を聴いていると、マイルス・デイヴィスを思い出す。マイルスも常にその時代時代のクールな「音楽のトレンド」を取り込み、当時として革新的な「クールでコンテンポラリーなジャズ」を誰よりもいち早く展開していた。ペイトンの音世界は革新的ではないにせよ、現代の「音楽のトレンド」を積極的に取り込み、マイルス・ミュージックの現代版を表現している様で、とても意欲的だ。

収録された演奏はどれもが充実していて聴き応えがある。が、CD2枚組、トータル時間2時間以上の収録時間の長さはさすがに「トゥー・マッチ」。それぞれの演奏のメインテーマを整理して、2枚の異なったアルバムに収斂した方が良かったと思う。プロデュースしきれなくて「ミックステープ」風にアルバム化してしまうにはあまりに惜しい。それほど、個々の演奏の内容は濃いものがある。「トゥー・マッチ」ではあるが好盤。

 
 

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2016年10月13日 (木曜日)

Miles Reimaginedな好盤・1

今から40年ほど前、マイルス・デイヴィスのエレクトリック・ジャズについては、なかなか理解されることが少なかった。酷い時は、酔狂なマイルスの余興とか、マイルスの乱心とか、散々な言われようだった。

まあ、当時のジャズ者の方々は、ジャズと言えばアコースティックしか許さない、というのが主流だったので、エレクトリックな楽器を使ってのエレ・ジャズなど邪道中の邪道。そんな時代でした、今から40年ほど前のジャズ・シーンって。

ということで、あれから数十年経って、エレ・マイルスのフォロワーが多数現れ出でて、エレ・マイルスの音楽的要素が発展して、21世紀の新しいエレ・ジャズを生み出すなんて想像だにしなかった。なので、このアルバムを聴いた時はたまげた。

菊地成孔DCPRG『Report From Iron Mountain(アイアンマウンテン報告)』(写真左)。2001年のリリース。DCPRGとは「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン)」の頭文字を取って並べたもの。マイルスに私淑する菊地成孔 (sax) がリーダー。

菊地の私淑するエレ・マイルスを演奏コンセプトに据えつつ、アフロポリリズムや現代音楽などの要素を取り入れ、エレ・マイルスと同じ到達点、いわゆる「ダンスミュージック」を標榜した音世界。いや〜、この音世界にはビックリした。
 

Report_from_iron_mountain

 
見事なまでに、エレ・マイルスの忠実なフォロワーであった。しかも日本人のバンドがエレ・マイルスをやる。いや〜長年、エレ・マイルスの偏見に耐えてきた日々を思うと、思わず溜飲が下がる思いがした。とにかく、最初から最後まで良い。エレ・マイルス者であれば絶対に気に入る。思わず、ニヤニヤしながら聴いてしまう。

4曲目の「CIRCLE / LINE ~HARD CORE PEACE」を聴くと、思わず歓声を上げてしまう。1980年リリースの菊地雅章の名盤『ススト』に収録された名曲「Circle/Line」。dCprGのライブでは必ず演奏されているらしいこの名曲。実に良い感じでリニューアルされている。

僕もこの『ススト』というアルバムは大のお気に入りで、この「Circle/Line」も大好きな曲。この名曲を忠実にカバーしつつ、そこはかとなく新しい感覚、展開を織り交ぜて、ちょっとリニューアルした感じがとても良い。

エレ・マイルスを基本に、新しい響きを宿した「ダンスミュージック」を創造するDCPRG。エレ・マイルス者の我々にとっては、実に魅力的なバンドである。そして、この『アイアンマウンテン報告』は愛聴盤です。

 
 

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