2020年11月 3日 (火曜日)

テリエ・リピダルの陰謀・謀略

Terje Rypdal(テリエ・リピダル)。ノルウェー出身、ECMレーベルの看板ギタリスト。彼のキャリアにおいて、2〜3枚の例外はあるが、リーダー作については、ほぼECMレーベルからのリリースになる。リピダルは1947年生まれ。今年で73歳。初リーダー作が1968年なので、ジャズ・ギタリストとしてのメジャーなキャリアとしては52年。半世紀以上に渡って活躍する「レジェンド級」のギタリストである。

リピダルのギターについては、恐らく1〜2分聴き続けたら絶対にリピダルだと判るくらい、とても個性的な音である。幽玄で浮遊感のあるフレーズを多用した「ニュー・ジャズ」志向の音が得意で、ファンクネスは皆無であり、ブルージーな要素は微弱。そういう面では欧州ジャズ独特といえる。ジャズ・ギターというよりは、ロック・ギターと言った方が良いか、プログレ・ギタリスト的な音を出す。

浮遊感のある、ビートに乗らない、ロングトーンでフリーな独特とフレーズ。ジャズなのか、ロックなのか、どちらかにしろ、と詰問されたら、やはり「ジャズ」と答えてしまう。そんな不思議な音を持ったギタリスト。そして、リピダルは、半世紀を越えるメジャーなキャリアの中で「決してブレない」。ECMレーベルでのメジャー・デビュー盤『Terje Rypdal』の音が、マンネリに陥らず、ずっと今まで続いている。これって意外と凄いことだと思っている。
 
 
Conspiracy-terje-rypdal
 
 
Terje Rypdal『Conspiracy』(写真左)。2019年2月、ノルウェーはオスロのRainbow Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (el-g), Ståle Storløkken (key), Endre Hareide Hallre (b), Pål Thowsen (ds, perc)。プロデューサーは当然、マンフレッド・アイヒャー。ノルウェー出身のメンバーで固めた、リピダルの約20年ぶりのスタジオ録音作品になる。

このリピダルの新作は、リピダルのリピダルらしい個性満載。往年のメジャー・デビュー当時の、幽玄で浮遊感溢れるサステインの効いたエレクトリック・ギターが再現されている。しかし、フレーズの作りが現代的で、その音はノスタルジックでは無い、現代の新しい響きのするもの。キーボードの参加が目新しく、ハモンド・オルガンの音がリピダルのエレギに溶け込み、創造的で耽美的なユニゾン&ハーモニーを奏でる様は今までにリピダルには無い要素。

アルバム・タイトルの「Conspiracy」は「陰謀・謀略」の意。この盤を聴くと、リピダルはまだまだ深化している。この個性は全くブレていないが、この盤で聴かれる音はノスタルジーとは全く無縁。初期のリピダルの個性を現代のニュー・ジャズの要素と合わせてリコンパイルし、新しいリピダルの音世界を創造しようとしている様に感じる。それが「陰謀・謀略」であるなら、聴き手の我々としては全くウエルカムである。
 
 
 

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2020年10月19日 (月曜日)

TZB結成20周年記念ライブ盤

「結成20周年記念ライブ」の文字を見て、へ〜っ、東京ザヴィヌルバッハも結成20周年になるのか、と感慨深い思いがした。東京ザヴィヌルバッハは、キーボード奏者&コンポーザーの坪口昌恭のリーダーユニット。坪口=TZBO の頭文字に東京発、ジョーザヴィヌル、スイッチトオンバッハの意を込めて命名された、とのこと。ユニークである。

Tokyo Zawinul Bach・Reunion『20th Anniversary Live』(写真左)。2019年9月、東京・代官山の「晴れたら空に豆まいて」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、坪口昌恭 (key), 菊地成孔 (sax, rap), 五十嵐一生 (tp), 織原良次 (b), 守真人, 石若駿 (ds), 河波浩平 (vo)。いやはや、東京ザヴィヌルバッハの「オールスター・キャスト」である。

今回「リユニオン」と称し、盟友・菊地成孔と、初期に在籍した五十嵐一生が、2010年代以降、バンド編成に生まれ変わった「東京ザヴィヌルバッハ」に復帰、代表曲の数々を再演したライヴ盤。結成当初は、動変奏シーケンサーM を駆使したマン× マシーン・ランダム・コラージュ感で近未来ジャズのイメージだったが、2012年以降は若手メンバーを採用し、人系バンド編成に変更、ダイナミックなサウンド志向に変わった。
 
 
20th-anniversary-live_tzb
 
 
このライブ盤は、2012年以降のバンド志向を踏襲したもの。菊地- 五十嵐- 坪口という強烈な個性のフロント・トライアングルが凄まじいインタープレイを展開する。エレクトロ・ジャズユニットの面目躍如的なスリリングな展開は、現代最高峰の「エレ・ジャズ」の1つと言って良い。特にエレ・ジャズ者には堪らんですな、この演奏。織原良次 (b), 守真人, 石若駿 (ds)のドラム隊も素晴らしい。

特にシンセの使い方が絶妙。日本発のエレ・ジャズとして最高峰のものじゃないかと思う。この音世界って、ウェザー・リポートや、チック・コリア・エレクトリック・バンドに比肩するじゃないかと思うのだ。和ジャズらしい、乾いたファンクネス、端正で整った切れ味の良いパフォーマンス。キャッチャーなメロディーと毒のあるメロディーの融合。思わずウットリと聴き込む。

最後の曲「Drive Inn High」は菊地のラップで、9.11をテーマにしたワードが語られ、メンバー紹介然としたソロまわしでエンディング。このエレ・ジャズのラップが「今様」で良い感じ。ジャズとラップは合いそうで合わないと思っているのだが、この曲はなんとか健闘している。現代の、我が国の「今」のエレ・ジャズ。かなり充実した内容。好ライヴ盤です。
 
 
 

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2020年9月 2日 (水曜日)

GoGo Penguinの2年ぶり新盤

21世紀に入っても、ジャズの多様化、深化は進んでいる。ボーダーレスにジャンルを超えたリズム&ビートを採用したジャズや、クールで静的、耽美的な、今までに無いスピリチュアルなジャズや、インタープレイを排除し、流麗なアンサンブルとアドリブを採用したインスト・ジャズなど、新しいビートや展開を採用した、新しいイメージのジャズが出現している。

GoGo Penguin(ゴーゴー・ペンギン)。 2009年、英国のマンチェスターで結成された新世代ピアノ・トリオ。「踊れるジャズ」をアコースティック楽器でプレイするバンド・スタイルは「アコースティック・エレクトロニカ・トリオ」と評価されている。「新しいジャズのアンサンブル」を標榜しつつ、アコースティック楽器でのエレクトロニック・ミュージックを再現する、という実に面白いアプローチを採用している。

『GoGo Penguin』(写真左)。今年5月のリリース。ゴーゴー・ペンギンの新作。ちなみにパーソネルは、Chris Illingworth (p), Nick Blacka (b), Rob Turner (ds)。基本はピアノ・トリオである。ブルーノート3作目にして2年ぶり。セルフ・タイトルド・アルバムは自信の現れ、とのこと。現代の最新エレクトロニクスを使用した、アコースティック楽器での演奏スタイルは、より磨きのかかった印象。
 
 
Gogo-penguin  
 
 
「踊れるジャズ」として、従来のピアノ・トリオの特徴であった「三者三様の自由度のあるインタープレイ」は排除。クラシック的な印象的なピアノにアグレッシブなベースとドラム。演奏の中に感じ取れる「音的要素」は、クラシック、エレクトロニカ、ロック、ジャズと幅広。マイルスの開拓した「エレ・ジャズ」に、エレクトロニカを融合し、ファンクネスを引いた様な音。疾走感、爽快感は抜群。聴いていて「スカッ」とする。

シンセのようなディストーションのかかったニックのベースと、ロブが人力で叩くハウス・ビート、このリズム隊が、ゴーゴー・ペンギンの「肝」。このリズム隊の叩き出すリズム&ビートが曲者で、躍動感溢れ、実にダンサフル。従来のジャズ・ピアノ・トリオの枠に囚われず、従来のピアノ・トリオを感じさせない音作りは、実にユニーク。そして、違和感が全く無い。

現代の「ダンス・ミュージック」。新しいイメージの「ピアノ・トリオ」。演奏テクニックが確かなこともあって、鑑賞音楽としても十分に通用する。ヒーリング・ミュージックな要素も見え隠れし、ゴーゴー・ペンギンらしい、統制されたインタープレイが耳新しく響く。そして、空間のリヴァーブの処理の仕方が新しい。この「現在の新しいリヴァーブ感」も、ゴーゴー・ペンギン独特の個性だろう。実に癖になる音作りである。
 
 
 

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2020年5月 5日 (火曜日)

注目の「日本発エレ・ジャズ」

リーダーの名前を見て、どっかで見た名前だな、と思った。思わずググってみたら「2018年公開の映画「坂道のアポロン」におけるディーン・フジオカ演じる純兄(じゅんにい)の実際に流れる音のプレイ、及び5年前公開の同作アニメ版でのプレイ。星野源が昨年秋リリースした<さらしもの>でのトランペットソロでのフィーチャー等、ここ数年で評価がうなぎ上りのトランペッター」とある。そうか、どこかで見た名前だと思った。

類家心平『RS5pb』(写真左)。2019年11月23日、12月6日の録音。ちなみにパーソネルは、類家[るいけ]心平 (tp), 田中 “tak” 拓也 (g), 中嶋錠二 (p, key, Rhodes), 鉄井孝司 (b), 吉岡大輔 (ds)。ゲストとして、後関好宏 (ts, bs), 橋本歩 (cello), 高橋暁 (vln), 田中景子 (viola) がクレジットされている。先の「ここ数年で評価がうなぎ上りのトランペッター」、類家心平のリーダー作である。

実際に聴く前に、この盤の評を確認すると「スウィング、R&B、ロック、アバンギャルド、フリー、その他、あらゆる音楽的要素を包含しつつRS5pbと言うバンドにより昇華され繰り広げられる音世界」「更なる進化を遂げた鋭くもスペイシーでスケールの大きなバンド・サウンド」とある。何だか具体的イメージが湧かない評価で、これはもう実際に聴いて体感するしかない。
 
 
Rs5pb  
 
 
で、聴いてみたら、な〜んだ、と思う。エレクトリック・マイルス(エレ・マイルス)な音世界ではないか。音作りの根幹は明らかに「エレ・マイルス」で、エレ・マイルスでも、1970年代中盤、隠遁時代直前の『Dark Magus』から『Agharta』『Pangaea』の音世界から、黒いファンキーでダークな要素をそぎ落とし、硬派でシャープ、ソリッドで切れ味の良い音をマイルドにポップに変換し、とても聴き易い「エレ・マイルス」風の音世界を構築している。

類家心平の吹くトランペットもどこか「マイルス」を想起させる音であり、フレーズであり、エレ・マイルス者の僕として、聴いていて楽しい限り。エレクトリック・ジャズというのは、リズム&ビートの「キメ」が大変重要なんだが、このバンドのリズム&ビートについては、ブレ無く破綻無く、そして、淀みが無い、明快に「キメ」が効いている。重量感もあり、スピード感もあり、演奏全体にソリッドな躍動感を提供していて気持ちが良い。

オリジナルの新曲以外に、ローリング・ストーンズのバラード曲「Lady Jane」をカヴァーしており、こういうところも、現代のコンテンポラリー・ジャズの王道を踏襲していて、日本発のエレ・ジャズとして、コンテンポラリー・ジャズとして、心強い限りである。内容的にも十分にグローバル・レベルのレベルを維持していて立派だ。エレ・ジャズの好盤として注目の一枚である。
 
 
 

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  ・『Christopher Cross』 1979

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  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

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  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年4月 1日 (水曜日)

追悼 ウォレス・ルーニー。

ジャズ界からもコロナウィルスによる犠牲者が出てしまった。ウォレス・ルーニーが、昨日、新型コロナウイルス感染症の合併症により急逝しました。59歳(若すぎる)。マイルスが個人的に指導した唯一のトランペット奏者であり、アコースティック・マイルスの後継者の一人でした。しかし、よりによって、ウォレス・ルーニーがコロナウィルスにやられるとは。年齢的に共感を覚えていたルーニーなので、かなりショックである。

マイルスに認められた唯一のトランペッターであった、ウォレス・ルーニー。それ故、常に「マイルスのコピー」「マイルスの影がちらつく」「人の真似は絶対にしなかったマイルスとは似ても似つかぬ」とか、散々な厳しい評価に晒されてきた。僕は「マイルスに認められた唯一のトランペッター」の行く末を見守っていたくて、ずっとルーニーの演奏を聴いてきたが、そんなに厳しく指摘するほど、マイルスの音に似すぎていた、とは思わない。

テナー・サックスであれば「コルトレーン」。コルトレーン・ライクな演奏をするテナー・マンなんてごまんといる。ピアノであれば「バド・パウエル」。バドのビ・バップライクな演奏スタイルを真似るピアノ・マンは、これまた、ごまんといる。トランペットは意外と皆が真似るスタイリストがいない。第一人者であるトランペッターがマイルスで、あまりにその個性が突出しているので、真似するにも真似が難しい。
 
 
Blue-dawn_blue-nights
 
 
Wallace Roney『Blue Dawn - Blue Nights』(写真左)。2018年9, 10月、NYのルディ・ヴァン・ゲルダースタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、Wallace Roney (tp), Emilio Modeste (ts, ss), Oscar Williams II (p), Paul Cuffari (b), Kojo Odu Roney (ds, track=1, 4, 6–8), Lenny White (ds, track=1–3, 5), Quintin Zoto (g, track=1, 3, 5)。全編、アコースティックな純ジャズ路線の演奏である。

この盤が現時点でのルーニーの遺作となる。この盤では、サイドメンの選定が良かったのと、明確に現代のモード・ジャズを演奏するという志向が功を奏して、長年、厳しい評価の代表だった「マイルスのコピー」のイメージを完全に脱却している。モード・ジャズが基調であるが、そもそもマイルス存命の時代に、こんな「現代のネオ・ハードバップ」の様な演奏のトレンドは無かった。サイドメンを含めて、アコ・マイルスの影から完全脱却している。アコ・マイルスを踏襲しつつ「アコ・マイルスの先」を演奏したかったルーニーの面目躍如である。

前作まで「アコ・マイルスの踏襲」を洗練〜深化し続けていただけに、僕はこの最新作であるこの盤について、ルーニーの「目標」が達成された盤として評価していただけに、今回の急逝が実に惜しまれる。「アコ・マイルス」の先の演奏を実現した途端に、今回の急逝。ルーニーに代わって、無念の気持ちで一杯である。あの世でマイルスに会ったら、今度こそ、マイルスとトランペット2管で共演して下さい。ご冥福をお祈りします。
 
 
 

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【更新しました】2020.03.29
  ★ まだまだロックキッズ ・・・・ ELP「恐怖の頭脳改革」である

【更新しました】2020.04.01
  ★ 青春のかけら達 ・・・・ チューリップのセカンド盤の個性

 

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2020年3月 2日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・126

マイルスが始めた「エレクトリック・ジャズ(エレ・ジャズ)」。ジャズ本には、このマイルスが始めたエレ・ジャズが、クロスオーバー・ジャズに発展、フュージョン・ジャズに進化した、と書かれることが多いが、僕はそうは思わない。マイルスのエレ・ジャズは、あくまで「メインストリーム・ジャズ」であり、軸足はしっかりと「ジャズ」側にある。クロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズは、ジャズに置いた軸足が、どんどん他のジャンルの音楽の側に移動している。

Jack DeJohnette & Dave Holland『Time & Space』(写真左)。1973年6月16日、東京のイイノホールでの録音。トリオ・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jack DeJohnette (ac-p, el-p, org, Melodica, Marimba, vo, ds, perc), Dave Holland (ac-b, el-b, vo, perc)。パーソネルの担当楽器を見れば、この盤、多重録音でのエレクトリック・ジャズであることが想像出来る。

ジャック・デジョネットは、現代ジャズ・ドラマーのレジェンド。彼の叩き出すポリリズムと8ビートは唯一無二。マイルスのバンドに在籍し、マイルスのエレ・ジャズをしっかりと体験している。マイルスが欲しくて欲しくてたまらなかったドラマーの一人であるが、デジョネットは長期のツアーが嫌で辞退している。デジョネットは優れたドラマーであるが、優れたピアニストでもある。この盤では、ドラマーとピアニスト、一人二役をこなしている。
 
 
Time-space  
 
 
デイブ・ホランドは、英国出身のベーシスト。マイルスがエレ・ジャズを主宰した際、ベーシストとして参加し、『In A Silent Way』や『Bitches Brew』といった重要作に参加している。その後、チック・コリアと「サークル」を結成したりと、モードからフリーまで柔軟に適応する、演奏の底を押さえるテクニックが素晴らしいベーシストである。

さて、この『Time & Space』は、エレ・ジャズである。どこかマイルスのエレ・ジャズの雰囲気が漂う。マイルスのエレ・ジャズから「スリリングで高いテンション」を差し引いて、適度に脱力した遊び心が見え隠れする、穏やかで印象的なエレ・ジャズ。モーダルで時々フリー。あくまで「メインストリーム・ジャズ」の範疇でのエレ・ジャズ。デジョネットのキーボードが大活躍。ホランドのベースが演奏の底をガッチリと押さえていて、とても多重録音のアルバムとは思えない。

デジョネットのキーボードの腕前はさることながら、デジョネットとホランドのリズム隊って、やっぱり凄いなあと思うのだ。アルバム全編に渡って、硬軟自在、変幻自在、遅速自在のリズム&ビートは素晴らしい。ずっと耳で追っていて、やっぱり凄い。そんなリズム隊を得て、面白くて、どこかホノボノとするエレ・ジャズ。この盤、日本のトリオ・レコードからのリリース。もともとはデジョネット側からの企画だったそう。なんか納得。
 
 
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【更新しました】2020.03.02
  まだまだロックキッズ ・・・・ クールで大人な『トリロジー』

【更新しました】2020.03.01
  青春のかけら達 ・・・・ 荒井由実『MISSLIM (ミスリム)』 

 

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2020年1月24日 (金曜日)

ウェザー・リポートのフォロワー

エレクトリック・ジャズの最初のピークが、1970年代から1980年代前半。その時代の有名なエレ・ジャズなグループは、Miles Band であったり、Weather Reportであったり、Return to Foreverであったり、Hancock Bandであったり、Chick Corea Elektric Band であったりする。そして、今は21世紀に入って、その1970年代から1980年代前半の有名なエレ・ジャズなグループのフォロワーが出てきた。

3rd World Electric『Kilimanjaro Secret Brew』(写真)。2009年のリリース。ちなみにパーソネルは、Roine Stolt (g, rhodes, minimoog, clavinet, perc), Jonas Reingold (b), Lalle Larsson (p, rhodes, synth), Karl-Martin Almqvist (ts, ss), Dave Weckl, Zoltan Czörsz (ds), Ayi Solomon (congas, shakers, perc)。ジャケットからも感じる通り、ラテン〜アフリカン・ミュージックのエッセンスが満載。

で、1曲目の「Waterfront Migration」を聴いて、あれれ、と思う。アフリカン・ミュージックのエッセンスがベース。シンセサイザーの重ね方、ユニゾン&ハーモニーの展開の仕方、エレベの音、エレベのフレーズ、そして絡み方。ドラムとパーカッションが奏でるアフリカン・ネイティヴなリズム&ビート。テナーの絡み方と展開。これって、Weather Report(WR) やん。それも、リズム・セクションにジャコ・パストリアスとピーター・アースキンが在籍した絶頂期のWRのフォロワーの音。
 

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シンセの重ね方、ユニゾン&ハーモニーの展開の仕方はまるで「ジョー・ザヴィヌル」。ザヴィヌルのシンセの特徴をよく研究しているであろう、WRライクなシンセのユニゾン&ハーモニー。エレベの音、エレベの響きはまさに「ジャコ・パストリアス」。ジャコほど電光石火な高速フレーズは弾かないが、音そのものと響きは明らかに「ジャコのフォロワー」の音。

そして、テナー&ソプラノ・サックスのちょっと捻れて伸びやかなブロウは確実に「ウェイン・ショーター」。ドラムのポリリズミックな手数の多さは「ピーター・アースキン」を彷彿とさせる。ラテン〜アフリカン・ミュージックのエッセンスが濃厚で、フュージョン、ジャズロック風味のサウンド。WRのフォロワーの音。テクニックは優秀で歌心満載。ワールド・ミュージック風のエレクトリック・ジャズ。

1970年代から1980年代前半のエレ・ジャズ者の我々からすると、このバンドは実に良い。聴いていてとても楽しい。こんなアルバムが2009年にリリースされていたなんて。僕はつい最近まで知らなかった。WRもしくはザヴィヌル・シンジケートを彷彿とさせる、ワールド・ミュージック色満載な音世界。エレクトリックな音を複雑にこねくり回さずに、シンプルにストレートに押しだした、小粋で大人のフュージョン〜ジャズロック。良い音出してます。
 
 
 
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2019年11月20日 (水曜日)

日本人による「エレ・マイルス」

今を去ること40年以上前、FMでマイルス・デイヴィスの日本公演の実況録音を聴いた瞬間から、エレクトリック・ジャズがお気に入りである。今から振り返ると、あの実況録音の音源って、後の『アガルタ』だった。当時、一番尖った最先端のエレクトリック・ジャズを僕は耳にしたことになる。これは幸運なことであった。

Selim Slive Elementz『VOICE』(写真左)。先日、この盤の音を聴いた時、これは、と感じた。音のベースはエレ・マイルス。しかも、周到に準備され、優れたアレンジが施されたエレ・マイルス。洗練された、流麗な、それでいてインパクトのあるエレ・マイルス。それが、このSelim Slive Elementzというバンドの音である。では、この「Selim Slive Elementz」とは何か?

「Selim Slive Elementz」は、マイルス・デイヴィスと交流のあった音楽ジャーナリスト 小川隆夫が、quasimodeのリーダー平戸祐介と手を組み、マイルス・ミュージックの遺伝子を受け継いだ精鋭プレイヤーたちで結成したスーパー・ジャム・バンド(宣伝より)。ちなみにパーソネルは、小川 隆夫 (g), 平戸 祐介 (key), 元晴 (as, ss), 栗原 健 (ts), 小泉P克人 (elb), コスガ ツヨシ (g), 大竹 重寿 (ds), 西岡 ヒデロー (perc)。
 
 
Voice-1  
  
 
「2サックス、2ギター、4リズムが織りなす21世紀のエレクトリック・マイルス・サウンド」がキャッチ・フレーズ。確かにその通りで、この盤に詰まっている音は、確実に「エレ・マイルス」である。が、エッセンスは踏襲しているが、エレ・マイルスのコピー、カヴァーに全くなっていないところが良い。出てくる音は確実に個々のメンバーのオリジナリティー溢れるもの。

しかし、演奏として感じるのは「エレ・マイルス」。エレ・マイルスの音世界もこういう風に継承されていく時代になったんだなあ、と感慨深いものを感じる。そして音の傾向は「日本人」。エレ・マイルスの肝は「ファンクネス」なんだが、このファンクネスが乾いている。この乾いたファンクネスって日本人独特なものと僕は感じている。その乾いた「ファンクネス」がこの盤に詰まっている。

実はこの「エレ・マイルス」のエッセンスを踏襲した新盤、メンバーの中に「トランペット」がいない。トランペットを入れると、あまりにエレ・マイルスしてしまうのを避けた、とのこと。しかし、トランペットが不在で、これだけ「エレ・マイルス」のエッセンスを踏襲して、かつオリジナリティを最大限に発揮し表現できるとは。Selim Slive Elementzというバンド、末恐ろしいほどのポテンシャルを秘めていると見た。
 
 
 
東日本大震災から8年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年10月31日 (木曜日)

「カリブの風」が吹いている。

この新盤、ストックしておいたのだが、暫くその存在を忘れていた。このリーダーのサックス奏者は、その出身そのものズバリ、ラテン・フレイバーのジャズ演奏を得意とする。これって、僕の好みのど真ん中である。が、直ぐに聴かずにストックしていた。面目ない。そのサックス奏者とは「David Sánchez(デイビット・サンチェス)」。

デイビット・サンチェスはサックス奏者。1970年、プエルトリコ生まれ。今年で49歳。ルーツであるラテンの感覚を活かした音楽性で根強い人気を誇る。年齢的にも油が乗りきった頃であり、ジャズの中堅メンバーとして大活躍。そのルーツに根ざした二つの音世界、純ジャズとラテン・アメリカの伝統音楽の融合が個性。

David Sánchez『Carib』(写真左)。そんなサンチェスの最新作。2019年6月のリリース。ちなみにパーソネルは、David Sanchez (ts, barril de bomba, per, vo), Lage Lund (g), Luis Perdomo (p, rhodes), Ricky Rodriguez (b), Oded Calvaire (ds, vo), Jhan Lee Aponte (per, bomba barril), Markus Schwartz (haitian-per)。「bomba barril」や「haitian-per」という見慣れない楽器が入っている。
 
 
Carib-david-sanchez  
 
 
この見慣れない楽器は「カリビアン」な打楽器で、アルバムのタイトル通り、このアルバムには「カリブの風」が吹いている。リズム&ビートはラテンとジャズ。ラテンフレイバーのコンテンポラリーな純ジャズと硬派でモーダルな純ジャズ、この2つをミックスした「純ジャズ」の彩りが素晴らしい。爽やかな躍動感溢れる、陽光麗らかな、風の様なコンテンポラリーなエレ・ジャズの調べ。

暫く聴いていると「チック・コリア」のエレ・ジャズかなあ、なんて感じたりする。爽やかな風が吹くようなエレギのフレーズの展開に、何となく「パット・メセニー・グループ」かな、なんて思ったりする。カリビアンな打楽器のネイティヴなビートをバックに、流れる様なモーダルなサンチェスのサックスは、どこか「エレ・マイルス」のウェイン・ショーターを彷彿とさせる。

今までの「コンテンポラリーなエレ・ジャズ」を総括した様な音世界に思わず聴き惚れる。ラテン・フレイバーのジャズは「モード」が似合う。硬派でストレート・アヘッドなモード・ジャズとの取り合わせは絶妙なコントラストを表現する。聴き味は爽やかだが、なかなか内容的に濃く、奥が深いエレ・ジャズ。エレ・ジャズ者にとっては「マスト・アイテム」。好盤です。
 
 
 
東日本大震災から8年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年10月29日 (火曜日)

ザヴィヌルのトリビュート盤

最近の新盤を眺めていて、トリビュート盤が結構出ているのに気がついた。その中でもこのトリビュート盤を見つけた時は思わず「おおっ」と思った。ウェザー・リポートやザヴィヌル・シンジゲートでの活動、マイルス・デイヴィス『イン・ア・サイレント・ウェイ』『ビッチズ・ブリュー』といった作品に参加〜貢献、エレクトリック・ジャズのキーボード奏者でありレジェンドである「ジョー・ザヴィヌル」のトリビュート作である。

Scott Kinsey『We Speak Luniwaz : The Music of Joe Zawinul』(写真左)。今年10月25日のリリース。冒頭の「The Harvest」のキーボード・ワークを聴くだけで、「ザヴィヌル者(ザヴィヌルのファン)」であれば思わず「むふふふ」と思う。ザヴィヌルのキーボード・ワークを忠実に再現しているのだ。音色、音の重ね方、フレーズ展開の手癖。どれをとっても「お見事」なのだ。

このザヴィヌルのトリビュート盤、長年ザヴィヌルとスタジオで同じ時間を過ごした愛弟子スコット・キンゼイのリーダー作。そりゃ〜、ザヴィヌルのキーボード・ワークの再現性の正確さ、当たり前か〜、と思わず感心する。音のエッジのラウンドさ、重ねた音のくすんだ感、そして、独特の乾いた無機質でオフビートなグルーヴ感。聴いていて、とにかくワクワクする。
 
 
We-speak-luniwaz  
 
 
選曲もなかなか良く練られたもので、ザヴィヌルのキーボード・ワークの個性がハッキリ出るザヴィヌルの自作曲を厳選している。「Cucumber Slumber」や「Black Market」「Fast City」「Port Of Entry」など、何度聴いても痺れまくるザヴィヌルの自作曲ばかり。ただし、ザヴィヌルの音世界を再現するばかりではない。インド、エスニック、エレクトロニック・ミュージックなどでアレンジし、ザヴィヌル曲に新しい魅力を与えている。

もともとザヴィヌルのキーボード・ワークは無国籍で辺境的な響きを宿したもので、従来のジャズ、いわゆるアフリカン・アメリカンのネイティヴな響きとは一線を画するもの。この個性をインド、エスニック、エレクトロニック・ミュージックなどでアレンジすることで、現代のジャズのトレンドのひとつである「クールでスピリチュアルな」エレ・ジャズを現出している。

ジャコ・パストリアスの再来とも称されるアドリアン・フェロウ、イエロージャケッツのオリジナルメンバーであったジミー・ハスリップ、ウエザー・リポートのオリジナルメンバーのロバート・トーマス・ジュニアなども参加していて、ザヴィヌルのトリビュート作としての「再現性」や「既聴感」に貢献している。とにかく、このトリビュート盤、ザヴィヌル者、WR(ウエザー・リポート)者にとっては必聴アイテムである。
 
 
 
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