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2018年12月29日 (土曜日)

ECMが考えるエレ・ジャズ

ジャズ盤鑑賞の今年のトピックの1つは、「ECMレーベル」のストリーミング解禁である。「静寂の次に美しい音(The Most Beautiful Sound Next To Silence)」を合言葉に、ジャズを主とした作品を次々にリリース。透明感のある音と洗練されたジャケット・デザインで人気を博したレーベルで、ストリーミングには難色を示したままであったのだが、突如、解禁に踏み切ったのだ。この報にはビックリした。

「ECMが推奨するメディアはこれまで通りCDとレコードですが、まず優先すべきことは音楽を聴いてもらうことです。CDやレコードなどのフィジカル・カタログと著作者は私たちにとって極めて重要なものです。しかし、近年、我々ECMとそのミュージシャンたちは、無許可のストリーミングやビデオのシェア、ブートレッグ、非合法ダウンロードなどに悩まされてきました。著作権が正しく尊重される範囲で、我々の楽曲にアクセスできるようにすることが重要だったのです」

以上がストリーミング解禁に至った公式見解。なるほど、著作権を守るにはこれしか無かった、ということか。納得。しかし、我々、ジャズ盤鑑賞者については、実に喜ばしいことであった。CDでは未リリースや廃盤状態にあるものがあったのだが、ECMレーベルのカタログに挙がった盤のほとんどがストリーミングで鑑賞できるのだ。こんな時代が来るとは思わなかった。早速、カタログの最初からECM盤を聴き直しである。
 

Drum_ode_ecm  

 
Dave Liebman『Drum Ode』(写真)。1974年5月の録音。ECMの1046番。ちなみにパーソネルは、Dave Liebman (ss, ts, alto-fl), Richard Beirach (el-p), Gene Perla (b), John Abercrombie (g), Bob Moses, Jeff Williams (ds)のダブル・ドラムのクインテット構成に、コンガやタブラ、ボンゴ、その他パーカッションが絡む。ボーカルも参加している。エレ・マイルスのグループに参加していたサックス奏者、デイブ・リーヴマンのECMでのリーダー作である。

ECMとリーヴマン、ってなんかイメージが合わないのだが、確かにこの盤の内容、ECMレーベルとしては「異色盤」である。タイトル通りリズムに重点が置かれ、パーカッション+ドラムだけで総勢8名が名を連ねている。ビートをメインに添えたエレ・ジャズ。当時のエレ・マイルスから、ファンクネスと重量感を落として、スッキリ判り易くした感じの内容。それをバックにリーヴマンがエレ・マイルスのグループに参加している時と同じイメージでサックスを吹く。

この盤では、デイブ・リーヴマンのサックスがしっかりと目立っている。吹くフレーズは今となっては「金太郎飴」なんだが、当時の「時代の音」であり、エレ・マイルスの傍らにいたリーブマンの「エレ・ジャズとしての回答」と感じている。意外とバイラークのエレピが良い響き。ECMレーベルが考える「エレクトリック・ジャズ」として、聴き応えのある内容である。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年12月26日 (水曜日)

先端を行くダンス・ミュージック

「ジャズの深化」の1つのキーワードが「エレクトロニカ」。従来のエレクトリック・ジャズがファンク・ビートやワールド・ミュージックなビートをベースにエレクトロニカと融合、新しい響きのフュージョン・ジャズが出現している。この新しい響きは印象的であり官能的であり、現代のスピリチュアル・ジャズにも通じる、新しい響きである。

Sons of Kemet『Your Queen Is a Reptile』(写真左)。今年のリリース。聴けば判るが、これは壮大な現代のエレクトリック・ジャズである。音的には、カリブやアフロなどのワールド・ミュージックなビート、ジャジーでエスニックな旋律、即興部分はニューオーリンズのストリートを練り歩くブラスバンドに近い雰囲気を醸し出している。

インパルス・レーベルからのリリースであるが、この盤は現代英国ジャズを代表する「サンズ・オブ・ケメット(Sons of Kemet)」のアルバムである。これが英国ジャズの「今」なのか。英国ジャズといえば、頑固にまでに、硬派な「ビ・バップ」もしくは「ハードバップ」のみをジャズとしているかと思っていた。これは現代の先端を行く「ダンス・ミュージック」である。
 

Your_queen_is_a_reptile_1  

 
Sons of Kemet(サンズ・オブ・ケメット)とは、ロンドンで活動するサックス奏者で、昨今のUKジャズの中心人物の一人、Shabaka Hutchings(シャバカ・ハッチングス)のテナー・サックスを軸に、テオン・クロスのチューバ、トム・スキナーとセブ・ロシュフォードによるダブル・ドラムで編成されたバンド。二人のリズム隊に2本の金管楽器だけというシンプルな編成で、圧倒的に疾走感のある演奏をする。

危険な香りのするテンション溢れる強烈なビート、ポジティヴに不穏なチューバの響き、華々しいテナー・サックスの輝き。この盤は新しい響きに満ちている。チューバとドラムによる分厚く揺らぐビート。自由自在に吹き上げるテナー・サックス。ニューオーリンズからカリブ、ロンドン、中東、ワールドワイドに拡がるワールド・ミュージック的な響き。

新しい。実に新しい響き。僕は思わず聴き入ってしまった。明らかに現代の先端を行く「ダンス・ミュージック」。即興演奏の妙を前面に押し出して、これもまた「ジャズ」。これは、フュージョン・ジャズが、ワールド・ミュージックなビートをベースにエレクトロニカと融合した「ダンス・ミュージック」である。いや〜素晴らしい内容である。今年の屈指の好盤であろう。

 
 
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2018年11月21日 (水曜日)

ECMの音に対する許容量

ECMレーベルは「ニュー・ジャズ」の宝庫。欧州ジャズの雰囲気濃厚な、ファンクネス皆無のニュー・ジャズなアルバムが満載。ファンクネス溢れるハードバップなアルバムは殆ど、というか、まず「無い」。創立者マンフレート・アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」がメインなのだが、この「美意識」には幅があるようで、意外と「こんなアルバムあったんや」とビックリする様な盤が、そこかしこに転がっている。

Terje Rypdal『Whenever I Seem To Be Far Away』(写真左)。1974年の作品。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g), Sveinung Hovensjø (b), Pete Knutsen (mellotron, el-p), Odd Ulleberg (French horn), Jon Christensen (ds, Perc), Südfunk Symphony Orchestra conducted by Mladen Gutesha。リーダーのテリエ・リピダルをはじめ、ノルウェー出身のメンバーがメインの構成である。

ノルウェーの硬派な「捻れエレギ」の使い手、テリエ・リピダルが大活躍のアルバムであるが、パーソネルを見渡すと面白い事に気がつく。キーボード担当のピート・ナッツセン(Pete Knutsen)がメロトロンを弾いている。メロトロンとは「アナログ再生式(磁気テープを媒体とする)のサンプル音声再生楽器」、いわゆる「テープ音源のオルガン」である。このメロトロンは、1960年代後半から1970年代前半に隆盛を極めた「プログレッシブ・ロック」によく活用された。ここでは、エレクトリック・ジャズの世界でメロトロンがメインで採用されている。
 

Whenever_i_seem_to_be_far_away_1  

 
冒頭の「Silver Bird is Heading for the Sun」からしてメロトロン全開。そこに捻れてくすんで暴力的なリピダルのエレギが入ってきたら、その音世界はまるっきり「プログレッシブ・ロック」。もともと欧州ではジャズとプログレッシブ・ロックの境目が曖昧なのだが、ノルウェーでもそうなんやなあ〜、とこの盤を聴いて妙に感心したのを覚えている。

メロトロンが唸りを上げつつ、暴力的であるが切れ味の良いリピダルのエレギが活躍するところは、なんか「キング・クリムゾン」を想起させる。しかし、スヴェイヌング・ホーヴェンシェー(Sveinung Hovensjø)のベースとヨン・クリステンセン(Jon Christensen)のドラム&パーカッションが醸し出すリズム&ビートが明確に「ジャズ」しているので、この演奏は辛うじて「ジャズ」のジャンルに軸足を残している。

3曲目の「Whenever I seem to be far away」でのクラリネットやオーボエ、弦楽アンサンブルが絡むところは幻想的で、明らかにECMらしい雰囲気ではあるが、どこかプログレ風の雰囲気が漂う。しかし、プログレ風の音世界がECMのアルバムに展開されるとはなあ。ECMの総帥、マンフレート・アイヒャーの音に対する許容量は計り知れないものがある。だからこそ、ECMレーベルは「ニュー・ジャズ」の宝庫たり得たのだろう。

 
 

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2018年8月 7日 (火曜日)

ジャズ・トレンドの分水嶺

1980年代のハードバップ回帰、いわゆる「ネオ・ハードバップ」のムーヴメントを捉えて、帝王マイルスは「昔のジャズを焼き直して、何が面白いのか」とバッサリ切り捨てたのを覚えている。「過去の音楽を再びやるなんて、俺には考えられない。常に自分がクールと思う新しい音を追求する」。この革新性こそ、ジャズなんだな、と心底感心したことを覚えている(俺の音をジャズと呼ぶな、と帝王に怒られそうだが・笑)。

確かに、1980年代の「純ジャズ復古」のムーブメント以来、過去の音のトレンドの焼き直し、深化はあったが、新しいクールな何か、がジャズに現れ出でたか、と問えば、答えは「ノー」。もはや、ジャズは深化はするが進化はしない、のでは無いかと思っていたら、この5年ほど前から、そんな「新しいクールな何か」がジャズに現れ出で始めた。

ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンを中心とするムーブメントである。ジャズがメインなんだが、R&B、ロック、ヒップホップ、レゲエ、ブルースまで様々なジャンルを融合、ボイスやノイズを新しいソロ楽器の様に扱い、ボーカルに意味を持たせて「スピリチュアル」な響きを前面に押し出す。そして、一番特徴的なのは「リズム&ビート」の扱い。従来のジャズの基本要素だった「スインギーなオフ・ビート」は全く見向きもせず、最終的にビートを排除。
 

Keyon_harrold_the_mugician  

 
これを僕は「リズム&ビートのモード化」と呼んでいるが、拡がりと緩やかな抑揚をベースとしたビートが特徴。その上に、緩やかで音を選び間を活かした、落ち着いたアドリブ・フレーズが展開される。今までのモダン・ジャズの「正反対」なアプローチの数々。2010年を越えて、やっと「新しいクールな何か」がジャズに現れ出で始めた。

Keyon Harrold『The Mugician』(写真左)。2017年10月のリリース。新世代のジャズ・トランペッター、キーヨン・ハロルドの最新アルバム。いや〜、クールである。まさに、「新しいクールな何か」がこのアルバムに詰まっている。ジャズがベースではあるが、リズム&ビートがジャズでは全く無い。全く新しいクールなリズム&ビート。全く新しい響きのモーダルなトランペット。

従来のジャジーなリズム&ビートからの脱却。新しいクールな響きのモーダルなフレーズ。ジャズではあるが、今までのジャズでは全く無い。ボイスやノイズをもジャズに取り込み、融合する。やっと、ジャズに「新しいクールな何か」が現れ出で始めた。従来のモダン・ジャズと、これからの「ネオ・モダン・ジャズ」。意外と2010年辺りが、ジャズのトレンドの分水嶺になっていくのかも知れない。

 
 

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2018年5月16日 (水曜日)

リピダルの先進的なエレ・ジャズ

暑くも無く寒くも無い。この5月の過ごしやすい季節は、ハードなジャズを聴くのに最適な季節である。まあ、今年の5月の意外と天気が悪く、天気が回復すると途端に夏日と暑くなる。過ごしやすい、というにはちょっと、という感じなのだが、それでも夏や冬の気候に比べたら、圧倒的に過ごしやすい。

この過ごしやすい季節によく聴くジャズのひとつが「ECMレーベル」のアルバム達。夏には暑さを我慢して聴くにはハードなフリー・ジャズや、真冬に聴くと更に寒さを感じる様な、静謐なニュー・ジャズなど、傾聴するに結構ハードな盤が多いレーベルである「ECMレーベル」。このレーベルのアルバムを聴くのは、過ごしやすい季節、初夏そして秋が一番なのだ。

Terje Rypdal『What Comes After』(写真左)。1973年8月の録音。ECMの1031番。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g, fl), Erik Niord Larsen (oboe, English horn), Barre Phillips (b), Sveinung Hovensjø (el-b), Jon Christensen (perc, organ)。ノルウェー出身のギタリスト兼作曲家、テリエ・リピダルのリーダー作である。リピダルのギターは、ジャズを中心にロックから現代音楽まで、その表現については幅が広い。
 

What_comes_after

 
特に、幽玄なフレーズを用いた「’ニュー・ジャズ」の音が得意で、ファンクネスは皆無であり、ブルージーな要素は微弱。そういう意味では、リピダルのギターは欧州独特のものだと言える。ギターのパッションな音色の特性を活かしたフリーな表現も得意としており、それまでの4ビート中心のジャズとは明らかに一線を画している。この盤では、そんなリピダルのギターを前面に押し出した「エレ・ジャズ」が展開される。

一聴すると「エレ・マイルス」かな、と感じるんだが、決定的な違いは「ファンクネスの有無」。あまりビートを強調しない、ファンクネス皆無な即興演奏をメインとした音世界は、独特なエコーも伴って、実にECMレーベルらしい。ジャズ、プログレ、クラシック、現代音楽と様々な音楽の要素を織り交ぜて、自由度の高いエレ・ジャズが展開される。今のジャズのトレンドで言うと、クールな「スピリチュアル・ジャズ」な雰囲気も濃厚。

ベースの音も生々しくて魅力的。この盤で聴かれるベースは、自由度が高く、ややサイケデリックな要素も見え隠れする、本場米国には無い、欧州独特、ECM独特のベースの音。リピダルの「エレ・ジャズ」の世界は他の「エレ・ジャズ」とは全く異なり、個性的である。そういう意味では、もう少し評価が高くても良いのではと思う。プログレッシブなエレ・ジャズの好盤。 

 
 

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2018年3月26日 (月曜日)

日本人による「ジャズで踊る盤」

元来、1960年代から、日本のジャズはなかなかの線を行っている。穐吉敏子や渡辺貞夫らがいち早く、バークリー音楽院に留学し、ジャズ演奏のノウハウを日本に持ち帰ったことが一番大きい理由だが、その頃、日本では戦後、あこがれの米国の環境に追いつくべく、クラシック中心に楽器演奏についての環境が急速に整いつつあったこともある。

今でも、ジャズの演奏については、日本の水準は西洋諸国と比肩するレベルを維持しており、毎月、なかなかの内容のジャズ盤がコンスタントにリリースされている。逆に、こんなに多くのジャズ盤がリリースされていて、はたして今の日本にそれだけの需要はあるのかしらん、と不安になるくらいである。

松浦俊夫グループ『LOVEPLAYDANCE』(写真左)。2018年3月のリリース。発売ホヤホヤのアルバムである。世界規模での活躍を続けるDJ松浦俊夫(写真右)、初の自己名義作品。 宣伝の触れ込みは「自身のDJキャリアにおけるマイルストーン的ナンバーをカバーしたアルバム」。ん〜? 松浦俊夫の役割と言えば、そうか、コンダクター、もしくはプロデューサーなのか、なるほど。
 

Love_play_dance  

 
立ち上がりから暫くは「エレ・マイルス」の様な音が続く。これが良い。エレ・マイルスというと、ノスタルジックな雰囲気が漂うのだが、この盤での演奏はそうはならない。しっかりと今の音を紡いでいる。とにかくリズム&ビートの響きが新しい。音の展開も決して1970年代では無い。明確に「ジャズでクールに踊る」という音作り。クラブ・ジャズの真骨頂である。

5曲目「KITTY BEY」の様に、サイケデリックの様なアブストラクトな展開がユニークなエレ・ジャズもある。8曲目の「AT LES」の様に、ユーロリズミックなエレ・ジャズもある。いづれも「ジャズでクールに踊る」ということを前提とした演奏で、さすが、DJ松浦俊夫のコンダクト&プロデュースである。

今回の楽曲はすべてロンドン録音で、英国のミュージシャンを起用している。録音された音の響きや楽器の音が米国でもなければ欧州でも無い。不思議な音やなあ、と思っていたが、なるほど英国のミュージシャンでロンドン録音なのね。妙に納得しました。スウィンギン・ロンドンの聖地で、明確に「ジャズでクールに踊る」という盤をコンダクト&プロデュース。これが日本人の手によるジャズ盤なのか、と思い切り感心した次第。日本のジャズのレベルは明らかに高い。

 
 

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2018年3月12日 (月曜日)

クロスオーバー・ジャズの深化形

ジャズはどんどん深化している。今から30〜40年前に流行ったクロスオーバー・ジャズやジャズ・ファンクが、今の感覚と今のテクノロジーを駆使して、新しく生まれ変わったりする。こういうのを聴くと、ジャズは深化してるな〜、って感じるし、ジャズって裾野が広いなあ、と改めて思ったりする。

Todd Clouser, John Medeski, JT Bates『You the Brave : Live at Icehouse』(写真左)。これが、凄いライブ盤なんですよ。2017年7月24日、ミネソタ州ミネアポリスでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Todd Clouser (g, vo), John Medeski (key), JT Bates (ds)。ギター+キーボード+ドラムのトリオ編成。

冒頭の「Whereas Her Money From」を聴いて、思わずぶっ飛ぶ。ヘビーなギター、うねるオルガン、強烈なファンク・ビート。テンポはゆったりしているが、ヘビーなエレ・ファンク。これって、マイルスやん。1970年代前半の強烈なファンク・ビートをベースにしたエレ・マイルスをゆったりとしたテンポに落とした様な音。僕達にとっては「どこかで聴いた音」。思わず、聴き込み体勢に入る。
 

You_the_brave  

 
すると、5曲目の「You Call When You Want Something」の様に、情緒的で官能的、加えて、バラード調で哀愁感漂う印象的な演奏もある。8曲目には「Amazing Grace」のカヴァーまでしている。こんな情緒的で印象的なエレギとキーボードの演奏を聴いていると、まるで、1970年代のプログレッシブ・ロックを聴いている様だ。

ジャズとプログレとの共存。有りそうで今まで無かった、ジャズとプログレとの「融合」。新しい感覚、新しい音世界。クロスオーバー・ジャズの深化形であり、新たな「フュージョン・ジャズ」の拡がりである。そうそう、クルーザーのボーカルは、まさに「今」である。ラップの様でもあり、語りの様でもあり、明らかに新しいジャズ・ボーカルの形である。

とにかく、1970年代のエレ・ファンク、クロスオーバー・ジャズ、プログレッシブ・ロックな要素が混ざり合った、今までに無い音世界である。リズム&ビートも重量級で、ジャズの軽快なスイング感など全く無い、あるのは重量級のファンクネス。反面、情緒的で官能的、加えて、バラード調で哀愁感漂う印象的な演奏をアンチテーゼにして、このライブ盤は全く飽きが来ない。隠れ好盤。

 
 

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2018年3月 9日 (金曜日)

ウルマーのジャズ・ファンク盤

1970年代後半、僕がジャズを聴き始めた頃は、ジャズの世界は「フュージョン・ブーム」真っ只中。FMのジャズの番組も、かかる演奏は基本的にクロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズがメインだった。深夜帯の僅かな番組だけが、純ジャズをかけていたなあ。これがまた、聴く耳にグッとくるんだよなあ。懐かしいなあ。

当時、貧乏学生にとって、FMは貴重な音源で、夜な夜なエアチェックしていて、翌日、小型のカセットテレコをカバンに入れて、小さなヘッドフォンで聴いて歩いていた。そう、まだ「ウォークマン」が出現する前の時代のことである(笑)。そんなFMエアチェック時代の1980年に入ってからのこと。突如、ステレオを通じて、ヘッドフォンに思いっきりジャズ・ファンクなエレ・ジャズが耳に飛び込んで来た。

James Blood Ulmer『Are You Glad to Be In America?』(写真)である。1980年のリリース。オーネット・コールマンのバック・バンド出身の ギタリストで「ハーモロディック理論」に影響されたジャズ・ファンク。ジャズ界のジミヘンと言われるJames Blood Ulmer=ジェームス・ブラッド・ウルマーのジャズ・ファンク盤。
 

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それはそれは凄まじいギターである。ハードではあるが、しっかりとファンクネスがドップリ染み込んでいて、リズム&ビートが効きまくっていて、グルーヴ感が半端無い。 オーネット・コールマンのバック・バンド出身のギタリストではあるが、音の雰囲気は、これって「エレクトリック・マイルス」である。エレクトリック・マイルスから、おどろおどろしい、ダークなファンクネスを差し引いて、あっけらかんとしたファンクネスを残したような音世界。

この「脳天気」なエレ・ジャズなところが、ジェームス・ブラッド・ウルマーの真骨頂。誰かが表現した「鉈で薪をガシガシ割っていくような」エレギは爽快感満点。混沌としたエレ・ジャズだけど、ビートがしっかりしているので、破綻したり拠れたりすることは無い。整然とキッチリとグルーヴする。躍動感溢れ、耳に心地良い。これもジャズ、である。

ウルマーのウネウネしたギターに、アリのブリブリなベース、さらにマレイの官能的なホーンが絡んで来て、呪術的なダブル・ドラムが乱入し渾然一体となり、1980年の頃は、これってフリー・ジャズなのかなんなのか、何となく隔靴掻痒な感があったのですが、これはもう、現代でいう、躍動感溢れスリリングな「スピリチュアル・ジャズ」です。 いや〜、今の耳にも爽快に響きます。

 
 

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2018年2月19日 (月曜日)

ECMレーベルの「異色盤」です

欧州ジャズ・レーベルの雄、ECMレーベルは懐の深いレーベルである。硬派なモード・ジャズやフリー・ジャズがメインではあるが、ファンクなエレ・ジャズや耳当たりの良いフュージョン・ジャズもカタログに含まれている。まあ、それらもきっちりと「ECMの音」には仕立て上げられてはいるんだけれど・・・。

Julian Priester『Love, Love』(写真左)。1974年の作品。実にECMレーベルらしいアルバム・ジャケットを見れば、この盤も硬派なモード・ジャズやフリー・ジャズなんだろうなあ、と想像するんだが、これが全く「違う」。しかし、である。38年前、この盤を初めて聴いた時、僕は「Julian Priester」というジャズメンを知らなかった。

Julian Priester=ジュリアン・プリースターは、アンダーレイテッドで、マニアックな人だけが知っているトロンボーン奏者。ハービー・ハンコックのファンク・グループで注目を集め、以降はビッグバンドを中心に活動。80年代以降はデイブ・ホランドのグループで活躍しているとのこと。1935年生まれなので、今年で83歳になる。
 

Lovelove

 
さて、この『Love, Love』という盤、長尺の曲が2曲のみの収録。LP時代のA面に「Prologue/Love, Love」、B面に「Images/Eternal Worlds/Epilogue」。その演奏を聴けば思わず「これって、エレ・マイルスやん」と思ってしまう。欧州独特の硬質で透明感のある、しなやかなファンク・ビートに乗りながら、エレクトリックなジャズが展開される。

ここでトランペットが入ると明らかに「エレ・マイルス」の模倣になるのだが、ここは代わりにシンセサイザーを上手く活用して、マイルスのエレクトリック・ファンクの影響を強く感じさせてはいるが、決して模倣に走らない、個性的な「欧州のエレ・ファンク」な音を聴かせてくれます。

時々、フリーキーな展開になるんですが、このフリーキーな雰囲気が欧州独特の雰囲気で、やはりこのエレ・ファンクはECMレーベルの音なんだなあ、と感心してしまいます。 クロスオーバー・ジャズな展開もあって、この盤はECMレーベルの中では、やはり異色盤です。でも、僕はこの「欧州のエレ・マイルス」な盤、お気に入りです。

 
 

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2018年1月24日 (水曜日)

井上銘の「リーダー作第3弾」

雑誌「ジャズライフ」のディスク・グランプリ、「ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を細かにチェックしていて、久し振りにこのギタリストのリーダー作を雑誌で見た。井上 銘(May Inoue)である。彼のデビュー盤の『First Train』を聴いて、これは将来、楽しみなギタリストやなあ、という印象を持ったのが、2011年のこと。

それから、2013年に、セカンド盤の『Waiting For Sunrise』をリリース。それから、昨年の2017年まで、リーダー作が途絶えている。6年間で2枚のリーダー作はあまりに少なすぎる。でも、Twitterを見ている限り、元気にプレイしているみたいで、なかなかリーダー作をリリースする機会に恵まれないだけか、とちょっと安心はしていた。

で、「ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」で、昨年、3枚目のリーダー作をリリースしていたことに気がついた。ほんま、知らんかった。その3枚目のリーダー盤とは、井上 銘『STEREO CHAMP』(写真左)。ちなみにパーソネルは、井上 銘 (g), 類家 心平 (tp), 渡辺 ショータ(key,p),  山本 連 (b), 福森 康 (ds)。
 

Stereo_champ_1

 
内容的には、ずばり「エレ・マイルス」。類家のトランペットが、ちょっとマイルスのトランペットに似ていて、バックのリズム&ビートが「エレ・マイルス」を想起させる。曲によっては、明らかに「ウェザー・リポート」を想起させる。エレギが活躍する「エレ・マイルス」もしくは「ウェザー・リポート」。いわゆる「エレクトリック・ジャズ」好きには「ツボ」な内容である。

しかし、このリーダー盤で、リーダーの井上はエレギを弾きまくる訳では無い。どちらかと言えば、バッキングに回って、フロントの類家のトランペットの惹き立て役に回っている感じなのだ。確かに、類家のトランペットが目立っている。というか目立ちすぎの様な感じがする。エレギとトランペット、フロントを分け合うには、音の線が細い分、エレギはちょっと分が悪い。

とは言え、井上のエレギは随所に光るものがある。このリーダー盤では、ギタリストというよりは、演奏全体を組み立て展開する、いわゆる「プロデューサー」的な、総合的なジャズメンとしての魅力の方が前面に出ている。エレギ+キーボード・トリオの組合せでやって欲しいなあ。井上のエレギは「ウェザー・リポート」的雰囲気の演奏が合っている様な感じがする。

 
 

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