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2023年6月14日 (水曜日)

エレクトラ時代の最終作です。

「グローヴァー・ワシントン・ジュニア(Grover Washington Jr.)」。以降、略して「ワシントンJr.」。彼が「スムース・ジャズの父」と形容される個性を確立したのが、1980年から1985年にかけての、エレクトラ(Elektra)レコードの時代。このエレクトラ時代の5枚のリーダー作で、ワシントンJr. の音楽性と個性が確立された。

Grover Washington Jr.『Inside Moves』(写真左)。1985年の作品。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr.(sax), Richard Tee (Fender Rhodes), Eric Gale: Guitar (g), Marcus Miller (b), Ralph MacDonald (ds, perc), Buddy Williams (ds)。ゲストとして、Steve Gadd (ds, on A1), Anthony MacDonald (perc, on A3, B1 & B3), Anthony Jackson (b, on A3)。

ワシントンJr.のエレクトラ時代の5枚目、最終作になる。録音時のメンバーもある程度固定しており、アルバム全体の演奏の雰囲気の統一感が増していて、リーダー作としてしっかりとした内容に仕上がっている。ソフト&メロウなフュージョン・サウンドではあるが、仄かにR&B志向、ジャズ・ファンク志向の音作りが見え隠れする。

名盤『Winelight』の「Just The Two of Us」の二匹目のドジョウ的なボーカル曲が良いアクセントになっている。1982年にユランダが歌った「Watching You Watching Me」をカヴァーした3曲目と6曲目の「When I Look at You」。
 

Grover-washington-jrinside-moves

 
どちらの曲も、ジョン・ルシアンをゲスト・ヴォーカリストとして採用し、雰囲気良く唄い上げている。そして、ルシアンのヴォーカルに絡むワシントンJrのサックスがとても良い。ワシントンJr.は、ヴォーカルの伴奏役としても、素晴らしいサックスを聴かせてくれる。

続く4曲目の「Secret Sounds」、5曲目の「Jet Stream」、そしてラストの「Sassy Stew」は、ワシントンJr.のサックスがとってもソフト&メロウ。意外と力感溢れるブロウで、男気溢れる吹奏はまさに「ジャズ」。

マーカス・ミラーのエレベもキッチリ効いて、演奏全体の滑らかさは、明らかに後のスムース・ジャズの先駆け。バックの演奏はテクニック良く、しっかりまとまっているので、演奏全体が易きに流れない。決して、イージーリスニングにはならない。

そうそう、冒頭1曲目のタイトル曲「Inside Moves」は、後の、Steve Gadd『The Gadd Gang』の2曲目の「Strength」と同一曲です。この曲は「Steve Gadd, Ralph MacDonald, William Salter」の共作。この曲のバックのリズム隊には、スティーヴ・ガッドがドラムでゲスト参加しているので、この盤では曲名を「Inside Moves」として、ガッドが自らのバンドで録音時には、何故か曲名を変えて収録したものと思われます。
 
 

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2023年6月 4日 (日曜日)

エレクトラ時代のワシントンJr.

スムース・ジャズの父、フュージョン・ジャズにおけるサックスの帝王と呼ばれる「グローヴァー・ワシントン・ジュニア(Grover Washington Jr.)」。以降、略して「ワシントンJr.」。そのワシントンJr. が、その音楽性と個性を確立させたのが、エレクトラ(Elektra)レコードの時代。

アルバム・タイトルとして、『Paradise(パラダイス)』(1980年)、『Winelight(ワインライト)』(1982年)、『Come Morning(カム・モーニング)』(1983年)、『The Best Is Yet to Come(訪れ)』(1984年)、『Inside Moves(インサイド・ムーヴス)』(1985年) の5枚。この5枚で、ワシントンJr. の音楽性と個性の全てが理解出来る。

Grover Washington Jr.『Paradise』(写真左)。1979年のフィラデルフィア録音、1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (sax, fl, , el-p (7)), James "Sid" Simmons (p), Richard Lee Steacker (g), Tyrone Brown (b), Millard "Pete" Vinson (ds,),Leonard "Doc" Gibbs (perc), John Blake Jr. (vln)。エレクトラ・レコード時代の第一弾。この盤から、ワシントンJr. の伝説は始まるのだ。
 

Grover-washington-jrparadise

 
エレクトラ・レコードからのリリースと並行して、モータウン・レコードからもリーダー作をリリースしており、モータウンでは、アレンジの志向としては、ライトな「ソウル、R&B」志向のアレンジがメイン。こちら、エレクトラでは、ライトな「ソウル、R&B」志向以外の様々なアレンジにチャレンジしている。

ラテン風、ボサノバ風を含め、バラエティーの富んだアレンジではあるが、基本は「ソフト&メロウ」な、正統フュージョン・ジャズ。力感溢れる流麗サックスがブリリアントなワシントンJr.の真骨頂。特にLP時代のB面、CDでは4曲目「Asia's Theme」以降は、ソフト&メロウな正統派フュージョンのオンパレードで、このB面は聴きどころ満載。ワシントンJr. のフュージョン・ジャズが確立された瞬間を捉えている様で、演奏全体の雰囲気は素晴らしい。

ただ、バックのメンバーは、録音地の地元フィラデルフィアのミュージシャンを採用しているらしく(どうりでパーソネルを見て、知らない名前ばかりが並んでいる)、ちょっと洗練度に欠けるところが惜しい。それでも、ワシントンJr.のサックスは充実しまくりなので、良しとしましょう。そして、ワシントンJr. は、次作以降、この盤のLP時代のB面の演奏〜展開の洗練度を高めていく。
 
 

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2023年5月25日 (木曜日)

ワシントン・ジュニアの『訪れ』

グローヴァー・ワシントンJr.(Grover Washington Jr.、以下「ワシントンJr.」と略)。スムース・ジャズの父、フュージョン・ジャズにおけるサックスの帝王。

そんなワシントンJr.が一番ポピュラーなアルバムをリリースしたのが「エレクトラ時代」。作品的には1979~1984年のリリース。「スムース・ジャズの父」と呼ばれるに相応しいアルバムを5作品リリースしているが、かの有名な『Winelight』もそんな中の一枚。

この『Winelight』だけが突出して扱われるので、ワシントンJr.は「一発屋」と誤解されることが多いが、どうして、エレクトラ時代の他の4枚も、スムース・ジャズの父」と呼ばれるに相応しいどれもが出来は上々。

Grover Washington Jr.『The Best Is Yet To Come』(写真)。邦題『訪れ』。1982年の作品。ちなみにパーソネルは、であるが、この作品、曲毎にパーソネルが異なるので、詳細は割愛する。主だったところをピックアップすると、Richard Tee (key), Eric Gale (g), Marcus Miller (b), Ralph MacDonald (perc) 等々、フュージョン畑の強者どもがしっかり参加している。

内容的には前々作の大ヒットアルバム『Winelight』の路線を踏襲している。ビル・ウィザースの名唱入りのヒット曲「Just the Two of Us(クリスタルの恋人たち)」に味を占めた訳では無いだろうが、このアルバム『訪れ』には、ボーカル入りの曲が3曲も入っている。
 

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メロウでグルーヴ、パティ・ラベルの名唱入りのタイトル曲「The Best Is Yet To Come」。ブラジリアン・スタイル、ボビー・マクファーリンの名唱入りの「Things Are Getting Better」。アーバンでソウルフルな雰囲気濃厚、セドリック・ナポレオンの名唱入りの「I'll Be With You」。

いずれのボーカル入り曲も、フュージョン・ジャズの「ツボ」を押さえていて、なかなかの出来。特に、バックの、フロント管、リズム・セクション含め、ソフト&メロウな「R&B志向」のパフォーマンスがとても心地良い。特にベース、ドラム、パーカッションがそこはかとなく効いている。

他のインスト曲は充実硬派なフュージョン・ジャズ。決して、イージーリスニングに流れない、ソフトにライトに、がっつりジャズ・ファンクしたパフォーマンスは見事。

ワシントンJr.は、相も変わらず、ソフィスティケイトされたサックス・ソロを聴かせる。トロピカル色豊かな、ソフト&メロウなフュージョン・チューン「More Than Meets The Eye」が特に良い感じ。

『Winelight』ばかりがクローズアップされるので、ちょっと地味な印象のアルバム『訪れ』であるが、ワシントンJr.をはじめ、フュージョン畑の名手達が腕によりをかけて、素晴らしいフュージョン・パフォーマンスを披露している。聴けば聴くほどに味わい深くなる好盤です。
 
 

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2023年3月21日 (火曜日)

ソウル, R&B志向のワシントンJr.

Grover Washington, Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア、以降「ワシントンJr.」と略)の聴き直しと再評価を進めている。

ワシントンJr.は、あのソフト&メロウなフュージョン・ジャズの名盤『Winelight』のイメージが強くて、我が国では、軟弱でイージーリスニング志向の「スムース・ジャズ」なサックス奏者というレッテルを貼られて久しい。しかし、ワシントンJr.のリーダー作を初リーダー作から遺作まで聴き通すと「それは違うなあ」ということが良く判る。

Grover Washington, Jr.『Reed Seed』(写真)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (sax), James "Sid" Simmons, John Blake Jr. (key), Richard Lee Steacker (el-g), Tyrone Brown (b), Millard "Pete" Vinson (ds), Leonard "Doc" Gibbs (perc), Derrick Graves (arr)。

ワシントンJr. が、多くの好盤を残したkudoレーベルを離れて、モータウンからリリースした「移籍第一弾」。モータウンといえば、ソウル、R&Bがメインのメジャー・レーベルだが、ワシントンJr. は、意外と硬派な「フュージョン・ジャズ」で勝負している。
 

Grover-washington-jrreed-seed

 
が、アレンジの志向としては、ライトな「ソウル、R&B」志向のアレンジがなされており、他の「ソフト&メロウな」フュージョン・ジャズ盤とは一線を画する、ソウルもしくはR&B志向のフュージョン・ジャズがとても個性的。

内容的には実に充実して優れていると思うんだが、我が国では何故か「ソウルもしくはR&B志向のフュージョン」は受けが悪い。この盤も、ワシントンJr.のリーダー作紹介の中で、そのタイトル名が上がることは無い(僕は見たことが無い)。

しかし、である。この盤、ソウルもしくはR&B志向のフュージョン盤として、とても良い内容なのだ。後にサンプリングされている曲もあって、実にナイスな、ライトでアーバンなジャズ・ファンクな志向も見え隠れする。ラストのワシントンJr.作の「Loran's Dance」のファンクネスは実に芳しく、Billy Joelの「Just The Way You Are(素顔のままで)」のソウルフルなカヴァーはとても良い。

ワシントンJr. のサックスは、ライトな「ソウル、R&B」志向のアレンジの中、意外と力強くテクニカル。歌心は当然「抜群」で聴き応えがある。ワシントンJr. の好盤として、再評価すべき好盤だと思います。
 
 

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2023年3月 2日 (木曜日)

ワシントンJr.のリーダー作第2弾

Grover Washington, Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア、以降、ワシントンJr.と略)。クロスオーバー&フュージョン・ジャズの名サックス奏者。しっかりと情感が込めて、力感溢れエモーショナルでハードボイルドな吹きっぷりから、ソフト&メロウに囁くように吹く繊細な吹きっぷりまで、その表現力は高度で多彩。非常に優れたサックス奏者の1人だと思うのだが、何故か我が国では人気がイマイチ。

風貌が良くないのかなあ。クロスオーバー&フュージョン・ジャズの人気のあるジャズマンは、一様に「イケメン」揃い。そういう点では、ワシントンJr.はちょっと損をしているのかなあ。風貌はどう見ても、マッチョでガテン系の風貌で、どう見ても「イケメン」風では無いし、柔和な「優男」風でも無い。でも、良いサックスを吹くんですよ。ブリリアントで重心が低くてファンキーで、説得力があり、訴求力のあるサックスを吹くんだがなあ。

Grover Washington, Jr.『All The King's Horses』(写真)。1972年5ー6月の録音。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (sax), Bob James (key, arr, cond), Richard Tee (org), Gene Bertoncini, Cornell Dupree, Eric Gale, David Spinozza (g), Marvin Stamm (tp, Flgh), Gordon Edwards, Ron Carter (b), Bernard Purdie, Billy Cobham (ds), Airto Moreira (perc), Ralph MacDonald (congas)。ここに、ブラス・セクションとストリングスが加わるゴージャズな布陣。
 

Grover-washington-jrall-the-kings-horses

 
このワシントンJr.のセカンド盤もフュージョン畑の優れ者達が集結。特に、キーボードに、リチャード・ティー、エレギのコーネル・デュプリーとエリック・ゲイル、そして、ベースにゴードン・エドワーズと、後の伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」のメンバーがほぼ集結しているのが目を引く。このメンバーが中心の演奏は、グルーヴ感&ファンクネス漂う「R&B志向」の素敵な演奏に仕上がっている。そう、このワシントンJr.のリーダー作第2弾は「R&B志向」の音作りがメインになっている。

ソウル・エレジャズ、と形容したら良いかと思う。ビル・ウイザースの「Lean On Me」のカバーや、エモーショナルにファンキーに吹き上げる「Love Song」、ソフト&メロウでスムースな雰囲気が素敵な「Where is The Love」等が如何にもソウルフル&ファンキー。そして、極めつけは、ジャズ・スタンダードの「Lover Man」。この「Lover Man」のエレジャズ化は、メロウな序盤からファンキーに展開していく雰囲気は、とっても「ソウルフル」。これ、本当に良い雰囲気です。この盤でイチ推しの名演。

ワシントンJr.には「ソウルフル」が良く似合う。初リーダー作は、シンプルでストレート・アヘッドな、純ジャズ志向のエレジャズだったが、今回は、アルバムの雰囲気を「ソウルフル」&「R&B」に絞ったプロデュースが大正解。この盤が「全米・Jazzチャ-ト・第1位」に輝いたのも頷ける。クロスオーバー&フュージョン・ジャズも捨てたもんじゃない。
 
 

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2023年3月 1日 (水曜日)

ワシントンJr.の初リーダー作です

Grover Washington, Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア)。このサックス奏者は、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの代名詞『Winelight』が大ヒットしたが故、かなり誤解されているなあ、と感じることが多い。彼のリーダー作の全てを聴き直してみると、やっぱり、彼の評価に偏りがあるなあ、と感じることが多い。

グローヴァー・ワシントン・ジュニアと言うと、ベテランのジャズ者の方々は「ああ、あのソフト&メロウなサックス奏者ね」と冷ややかに反応することが多い。でも、ですね。このサックス奏者、意外と硬派で正統派なサックスを吹くんですよ。『Winelight』は、彼のサックスのテクニックと表現力が高い証明で、あの究極のソフト&メロウなブロウは、彼の表現パターンのひとつに過ぎないのだ。

Grover Washington, Jr.『Inner City Blues』(写真)。1971年9月の録音。 Kudu Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr.(sax), Bob James (el-p, arr, cond), Richard Tee (org), Eric Gale (g), Ron Carter (b), Idris Muhammad (ds), Airto Moreira (perc), Donald Ashworth (bs), Wayne Andre (tb), Thad Jones (tp, French horn), Eugene Young (tp, flh)。プロデューサーは、フュージョンの仕掛け人の1人、クリード・テイラー。

ということで、グローヴァー・ワシントン・ジュニア(以降、ワシントンJr.と略)の初リーダー作を聴いてみる。ジャズマンにおいて、初リーダー作は、そのジャズマンの個性と特徴をしっかり反映しているので、そのジャズマンの素姓を知るには、まず初リーダー作を聴くに限る。
 

Grover-washington-jrinner-city-blues

 
このワシントンJr.の初リーダー作、パーソネルを見渡すと、当時のフュージョン・ジャズの担い手ジャズメンがズラリと顔を揃えている。アレンジはボブ・ジェームス。プロデューサーはクリード・テイラー。1971年の作品だが、後のフュージョン・ジャズを見据えた、コンテンポラリーでクロスオーバーなエレ・ジャズに仕上がっていて、ちょっとビックリする。これ、硬派なフュージョン・ジャズそのもの、と言っても良い位の「内容充実」な盤である。

バックのボブ・ジェームス節をしっかり踏まえた、お洒落でクールで躍動感溢れるアレンジに乗って、硬派で正統派なワシントンJr.のサックスのエモーショナルで力強くて流麗なサックスが乱舞する。明らかにフュージョン志向のアレンジなんだが、ワシントンJr.のサックスは意外とブリリアントで重心が低くてファンキー。説得力があり、訴求力のあるサックスで、ソフト&メロウな軟弱さなんて、どこにも無い。

ワシントンJr.は唄う様にサックスを吹き上げる。力感溢れエモーショナルでハードボイルドな吹きっぷりから、ソフト&メロウに囁くように吹く繊細な吹きっぷりまで、その表現力は高度で多彩。それは決してテクニカルで無く、しっかりと情感がこもっている。後のフュージョン・ジャズのサックスの雰囲気を先取りしたかの様な、このワシントンJr.の表現力豊かなサックスは、当時としてはかなり先進的だったのでは無いか。

このワシントンJr.の初リーダー作は、ワシントンJr.のサックスマンとして、とても優れた資質と個性を持っていることが良く判る。我が国では、何故か「ソフト&メロウなフュージョン・サックス野郎」の位置づけで留まっているが、もっとワシントンJr.のサックスの本質を再評価して欲しいなあ、とこの初リーダー作を久し振りに聴いて、再び思った次第。お気に入りのフュージョン好盤です。
 
 

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2021年10月13日 (水曜日)

完全フュージョンなワシントンJr.

グローヴァー・ワシントン Jr. (以降、ワシントンJr. と略す)って、1980年の大ヒット作『Winelight』まで、全くマイナーな存在だった思い出がある。なんせ『Winelight』がヒットした時、僕は ワシントンJr. って新人だと思ってた。

いや〜凄い新人が出てきたもんだ、と感心して、ADLIB誌でワシントンJr. の経歴を見て、1972年に初リーダー作と知ってビックリした。それまで、レコード屋で ワシントンJr. のアルバムを見たことが無かったのだから無理も無い。Kuduレーベル時代のアルバムは、普通のレコード屋には置いてなかったのでは、と思っている。

Grover Washington, Jr.『A Secret Place』(写真左)。1976年10月、NYのVan Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (ss, ts), Dave Grusin (ac-p, Rhodes), Eric Gale (g), Steve Khan (g), Anthony Jackson, George Mraz (b), Harvey Mason (ds), Ralph MacDonald (perc), Gerry Niewood (as), John Gatchell (tp)。ホーン・アレンジに David Matthews。プロデュースは Creed Taylor。

この盤もKuduレーベル時代の好盤である。メンバーも前作とガラリと変え、基本編成が「西海岸フュージョン仕様」になった。特に、ディヴ・グルーシンのキーボードと、ハーヴィー・メイソンのドラムが効いている。ホーン・アレンジもマシューズの器用なアレンジで「西海岸フュージョン仕様」。西海岸フュージョンのライトでアーバンでちょっとラフなバックの演奏が、意外とワシントンJr. のソプラノ・サックスと相性が良い。
 

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全曲、通して聴くと、完全にイージーリスニングなエレ・ジャズから、フュージョン・ジャズへの移行が完了した、フュージョン・ジャズなられはの音作りがなかなか小粋である。冒頭のタイトル曲「A Secret Place」は、ソフト&メロウなジャズ・ファンク。マクドナルドのパーカッションやソウルフルなコーラスも上手く填まって、ワシントンJr. のソプラノ・サックスが映える。ソフト&メロウなフュージョン色満載である。

続くハービー・ハンコックの名曲「Dolphin Dance」が面白い。グルーシンの印象的なローズの前奏から始まるところから「ソフト&メロウ」。このグルーシンのローズを伴奏に、ワシントンJr. はソプラノ・サックスのソロを吹き続けて行く。ベースは純ジャズ志向のムラーツが担当。基本、ワシントンJr. のソプラノ、グルーシンのローズ、ムラーツのベースの変則トリオの演奏で、フュージョンでは無い、メインストリームな純ジャズ志向のパフォーマンスがとても良い。

3曲目「Not Yet」、ラスト「Love Makes It Better」などは、ソウル・ジャズの影が見えるものの、完全にフュージョン・ジャズなテイスト。こってこて「ソフト&メロウ」な演奏をバックに、ここではワシントンJr. はテナー・サックスを吹いていて、これがちょっと無骨な印象与えているのが面白い。後にアルト・サックスを追加したのも理解出来る。

この盤『A Secret Place』は、ワシントンJr. が「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズに完全移行を完了した好盤ですね。
 
 
 
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【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
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2021年10月12日 (火曜日)

kudu時代のワシントンJr. 再評価

10月に入って、季節外れの暑い日が続いているが、朝夜は涼しくなった。涼しくなると、決まってクロスオーバー&フュージョン・ジャズが聴きたくなる。これだけ涼しくなると、電気楽器の熱い音を、ホットな8ビートなリズム&ビートを汗をかきかき聴くこともない。夏の間、お休みしていたクロスオーバー&フュージョン・ジャズを再び聴き始めた。

Grover Washington, Jr.『Feels So Good』(写真)。1975年5月, 7月、Van Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、メイン・メンバーとして、Grover Washington Jr. (ss, ts), Bob James (key, arr), Eric Gale (g), Gary King, Louis Johnson (b), Steve Gadd, Jimmy Madison, Kenneth "Spider Webb" Rice (ds), Ralph MacDonald (perc), Sid Weinberg (oboe, English horn)。オーボエ&イングリッシュ・ホルンが入って、ベース、ドラムは曲によって使い分ける、セプテット編成(7人編成)。

そこに加わるブラス・セクションが、Alan Raph, Dave Taylor, Barry Rogers (tb), Randy Brecker, Jon Faddis, John Frosk and Bob Millikan (tp, flh)。これがなかなかのメンバーで編成されている。そして、スリングスが加わる、大掛かりな編成のフュージョン・ジャズ。

リーダーはサックス奏者のグローヴァー・ワシントン・ジュニア(以降、ワシントンJr. と略す)。1980年の大ヒット作『Winelight』が突出していて、他のリーダー作はあまり顧みられていない。しかし、初リーダー作『Inner City Blues』以降、なかなかの秀作をリリースし続けている。基本的に「駄盤」は無いのが、フュージョン・ジャズの寵児、ワシントンJr. の真骨頂。
 

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この盤は、ボブ・ジェームスが全面的にバックアップしている。プロデュースこそ、クリード・テイラーが担当しているが、アレンジ、そして、キーボード全般はボブ・ジェームスが担当。しかも、アレンジ、キーボード、共に、ボブ・ジェームスの最高のパフォーマンスがこの盤に詰まっている。

ワシントンJr. のサックスは、ボブ・ジェームスのアレンジとの相性が良い。ワシントンJr. の流麗で「ソフト&メロウ」なサックスをしっかり引き立てる、ボブ・ジェームスの「クールでパンチの効いた」アレンジ。リズム隊は、フュージョン・ジャズ系の独特な縦ノリ8ビートを叩きだして、演奏全体の「ソフト&メロウ」な雰囲気をグッと引き締めて、甘きに流れず、意外とダンディズム溢れるフュージョン・ジャズを展開している。

この盤では、これまでのリーダー作で、必ず数曲入っていたソウル、ポップスのカヴァー演奏が無くなって、メンバーのオリジナル曲で占められていること。リズム&ビートや音作りが、硬派ではあるが「ソフト&メロウ」にシフトしていること。ワシントンJr.にとって、イージーリスニングなエレ・ジャズから、フュージョン・ジャズへの移行期の秀作である。

kudu時代のワシントンJr. は、以前は入手し難い状態が続いたので、あまり話題にもならなかったし、注目もされなかった。が、今では、リイシューも完了し、気軽に聴くことが出来る環境にある。フュージョン・ジャズ者の方々は、このkudu時代のワシントンJr. の一聴をお勧めしたい。フュージョン・ジャズ時代前期の、なかなかの内容のパフォーマンスを聴くことが出来ます。
 
 
 
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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
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2020年5月14日 (木曜日)

爽やか軽やかなフュージョン

今日の千葉県北西部地方は、実に爽やかな一日だった。空は快晴、ちょっと強いが乾いた薫風が吹き抜ける。外を散歩しても、陽射しは強いが汗ばむことは無い。良い季節になりました。ステイホームのジャズ鑑賞も、いきおい、爽やかなフュージョン・ジャズのアルバムを探しては、CDプレイヤーのトレイに載せてしまいます。

Grover Washington, Jr.『Soulful Strut』(写真左)。1996年のリリース。パーソネルを見渡すと、名前の通ったフュージョン畑の名手達の名前は無い。1996年のフュージョン・ジャズの好盤である。さもありなん、と思う。ワシントン・ジュニアは1999年12月に逝去(享年56歳)しているので、逝去の僅か3年前の「白鳥の歌」、最後のオリジナル盤である。

タイトルの「Soulful Strut」、ニューヨーカーの歩き方で「気取って軽やかに歩く」とか」「魂むき出しで堂々と前に進んでいく」という感じらしい。当アルバムの冒頭を飾るのが、このタイトル曲「Soulful Strut」。「Soulful Strut」という題名としては、1968〜69年にヒットした、Young-Holt Unlimitedのインスト曲のカヴァーなんだが、爽やか軽やかに歩いて行く、って感じで、今の爽やかな季節にピッタリの雰囲気。
 
 
Soulful-strut  
 
 
R&B風の曲想に、キャッチーなブラスのリフが乗り、哀愁感溢れるピアノがフレーズを紡ぎ、グルーヴ感溢れるエレベとシンプルで適度にルーズなドラムがアーバンでソウルフルなビートを醸し出す。そして、ウォームだが切れ味の良い、唄うが如くのワシントン・ジュニアのアルト・サックスが印象的。この1曲だけでも、この盤は「買い」である。

ワシントン・ジュニアについては、1980年の『Winelight』ばかりが語られ、これしかないフュージョン・ジャズ野郎と思われがちですが、他にも内容のある好盤を多数リリースしています。この『Soulful Strut』も、そんな内容のある好盤の一枚。冒頭のタイトル曲がこの盤全体の雰囲気を決定付けていて、全編、爽やかで軽やかな、R&B基調のフュージョン・ジャズが満載です。

曲によって採用されている無機質な打込み系のリズム&ビートも気にならない、ソウルフルでウォーム、切れ味良くクールなワシントン・ジュニアのアルト・サックスが映えに映える。ワシントン・ジュニアのアルト・サックスの個性が良い方向に全開の好盤です。この3年後、56歳で逝去したのが実に惜しい。ジャズマンとしては成熟してこれから、と言う時に残念でなりませんでした。
 
 
 

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  ・『Another Page』 1983

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  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

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  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2019年3月15日 (金曜日)

ブルーノートの「純ジャズ復古」

ブルーノート・レーベルは、ジャズ界最大のジャズ・レーベル。ブルーノートのカタログには幾つかのシリーズがある。一番有名なのが、1500番台、4000番台など、カタログ番号を基本としたシリーズ。それから、カタログの分類記号を基本としたシリーズ。例えば「BN-LA」シリーズや「LT」シリーズがそれに当たる。どれもが好盤のオンパレードで、どのシリーズを聴いても、ジャズの醍醐味が味わえるところがブルーノート・レーベルの凄いところである。

そんなブルーノート・レーベルのシリーズの中で「85100」シリーズというのがある。1985年から1987年まで、僅か3年のシリーズで41枚の短期間のシリーズであった。しかし、このシリーズ、ちょうど1980年代半ばからの「純ジャズ復古」のムーヴメントの時代にリリースされたシリーズなのだ。どのアルバムも「純ジャズ復古」や「初期ネオ・ハードバップ」な雰囲気の演奏が詰まっていて、実は意外となかなか面白いシリーズなのだ。

Kenny Burrell & Grover Washington Jr.『Togethering』(写真左)。1984年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (ts, ss), Kenny Burrell (g), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。Blue Note 85100シリーズの BT 85106番。ワシントンJr.はこの録音の2年前に、アルバム『Winelight』でヒットを飛ばしている。
 

Togethering

 
ワシントンJr.のアルバム『Winelight』は、典型的なフュージョン・ジャズの好盤。ソフト&メロウな雰囲気と電気楽器を活用した8ビート主体の演奏は当時、受けに受けた。そんなフュージョン・ジャズのサックス奏者のワシントンJr.がフロントを担当するこのアルバム、僕は最初、フュージョン・ジャズのアルバムだと思った。が、聴いてみたら、新しい雰囲気のする、ライトなハードバップな演奏がギッシリ詰まっているではないか。

ロンのベースは往年のモードライクなベース。デジョネットのドラムは新しい感覚のポリリズム(この頃、デジョネットはキースと「スタンダーズ」を結成している)。ギターのバレルは明らかに新しい感覚のハードバップなギター。旧来のハードバップのギターをフュージョン・ジャズの手法で焼き直した雰囲気が聴いていて実に新しい。そして、ワシントンJr.のサックスも、聴き易いフュージョン・テナーの良い部分を踏襲した新しい感覚のハードバップなサックス。

全編に渡って、なかなか聴き応えのあるネオ・ハードバップな演奏です。これが1984年の録音。フュージョン・ジャズが衰退を始めて、純ジャズが見直され始めた頃。そんな微妙な時期に「純ジャズ復古」を先取りした様な、新しい感覚のハードバップな演奏。さすがブルーノート・レーベルだな、と感心することしきり。
 
 

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