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2018年8月17日 (金曜日)

テテ・モントリューの初期の傑作

ジャズの聴き始めて40年。それでもまだまだ、聴き込んでいないジャズメンはいる。たまたま聴く機会に恵まれなかったケースがある。リーダー作がなかなか再発されなかったり、CD化されなかったりで、そもそもアルバムが流通していないケース。このピアニストは、リーダー作がなかなか再発されなかったことで、計画的に聴き直しを進めことが出来なかった。

このピアニストのアルバムもそんな中のひとつ。まず、リーダー作が流通してない。まとめて聴き直したいなあ、と長年思ってきてが、なかなかそうはならない。これはもう駄目かなあ、と半ば諦めかけていたら、ダウンロード・サイトで、この人のリーダー作を相当数、見ることが出来る様になった。喜ばしいことである。

Tete Montoliu『Piano for Nuria』(写真左)。1968年の録音。ちなみにパーソネルは、Peter Trunk (b), Albert Heath (ds), Tete Montoliu (p)。スペインが輩出した盲目の天才ピアニスト、テテ・モントリューのMPS盤。ほぼ、デビュー盤に近い。いわゆる「メジャー・デビュー」盤である。
 

Piano_for_nuria

 
テテのピアノは一聴すると、セロニアス・モンクに似ていると感じる。しかし、モンクに比べて、音の飛び方がノーマルで、安定したスイング感がある。タッチは太い。高速な手捌きは無いが、堅実な手捌きで安定感が抜群。テテは1933年生まれだから、この盤を録音した時は35歳。若手から中堅に差し掛かる、ピアニストとして充実した時期。さすが堅実で安定感のあるピアノである。

本作ではスタンダード・ナンバーを弾きまくっていて、テテのピアノの特徴が良く判るのも、この盤の良さである。スタンダード・ナンバーを弾くにつけ、テテはスインガーなピアノではなく、モードな香りが漂う、当時としてモダンな、新しい響きがメインのピアノであることが良く判る。

モンクっぽくてモンクでは無い。独特の音の飛び方をするアドリブ・フレーズも含めて、テテのピアノの個性が満載である。そういう意味で、この盤はテテの初期の傑作の一枚でしょう。ジャケットは地味ですが、ジャズ・ピアノ好きなジャズ者の方々については、避けて通れない、聴き体験必須のピアノ・トリオ盤です。

 
 

東日本大震災から7年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年8月16日 (木曜日)

仏のアコーディオン・ジャズです

ジャズは色々な楽器に適用する。というか、様々な楽器でジャズを演奏することが出来る。楽器であり、旋律を演奏することが出来れば、メイン楽器で活躍することが出来る。それほど、ジャズとは自由度の高い音楽ジャンルであり、応用力の高い音楽ジャンルである。つくづくそう思う。今回は「アコーディオン」。

ダニエル・ミル(Daniel Mille)。フランスのアコーディオン奏者である。ピアソラ作品集1993年アルバム『河岸にて』でデビュー。ジャズのアコーディオン奏者と言えば、僕は「リチャード・ガリアーノ」しか知らない。今回、このフランスのアコーディオン奏者を知った。そして、調べてみて、ジャズのアコーディオン奏者って、意外といる、ということが判った。

Daniel Mille『Après la pluie』(写真左)。2005年のリリース。ちなみにパーソネルは、Daniel Mille (accordion), Rémi Vignolo, Sylvain Romano (b), Isabelle Cordier (cello), Pascal Rey (ds, perc), Stéphane Belmondo (flh, fr-horn, tp),Eric Légnini (p), Catherine Pacheu (viola), Marc Aidinian, Véronique Ragu (vln)。
 

Apres_la_pluie  

 
パーソネルを見渡せば、ビオラやバイオリンの弦楽器を上手く活用した、ニュー・ジャズな編成。アルバムの音を聴けば、従来のスインギーなジャズの要素が全く無い、いわゆる、4ビートやファンクネスが皆無の、内省的でリリカルな演奏がギッシリと詰まっている。ミルのアコーディオンが哀愁を帯びた、リリカルな音色で内省的に旋律を奏でる。決して熱くない。クールで静的なアコーディオンの音色。

加えて、ステファン・ベルモンドのフリューゲル・ホーンの音色が味わい深い。ミルの哀愁を帯びた、リリカルで内省的なアコーディオンにぴったりと寄り添うように、フリューゲル・ホーン独特の柔らかく丸い音色で、リリカルに内省的に吹き上げる。このミルのアコーディオンとベルモンドのフリューゲル・ホーンの共演が見事。

リズムカルでハイテンポな楽曲は全く無い。冒頭の「Intro - Après la pluie...」から「L'ultimo Giorno」まで、静的で内省的でリリカルな演奏が続く。しかし、適度なテンションが張っていて、それぞれの楽器のテクニックが高く、硬軟自在、変幻自在な演奏が展開されるので、飽きることは決して無い。充実した欧州のニュー・ジャズ盤である。

 
 

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2018年8月15日 (水曜日)

ソフト&メロウなマンジョーネ

夏の思い出のフュージョン・ジャズ。1980年の夏だったかと思う。このアルバムは良く聴いた。時はフュージョン・ジャズの大ブームの後期。ソフト&メロウなフュージョン・ジャズが売れに売れていた。このアルバムもそう。今思えば、なんでこのアルバムが売れに売れたのか、良く判らないところがあるが、とにかく、このアルバムは、1980年の夏、僕達のヘビロテになっていた。

Chuck Mangione『Fun and Games』(写真左)。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chuck Mangione (flh,el-p), Grant Geissman (g), James Bradley, Jr. (ds,perc), Charles Meeks (b), Bill Reichenbach Jr. (tb),  Chris Vadala (fl,sax)。1977年の『Feels So Good』の大ヒットで一躍、有名ジャズメンの仲間入りをしたマンジョーネの佳作。

まずは冒頭の「Give It All You Got」。邦題は「栄光をめざして~1980ウインター・オリンピックのテーマ」。ABCスポーツで使われた、1980年のレイクプラシッド冬季五輪のテーマソング。当時、フュージョン・ジャズの寵児として有名ジャズメンであったマンジョーネ。ここでも良い演奏しています。特に、彼のトレードマークのフリューゲル・ホーンの音が柔らかくて優しい。
 

Fun_and_games  

 
2曲目以降の楽曲も、どれもが「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズの魅力溢れる演奏の数々。今の耳で聴いても、マンジョーネのフリューゲル・ホーンは柔らかで優しく優雅で、AORライクなバック演奏のアレンジと相まって、典型的なソフト&メロウなフュージョン・ジャズを展開している。やはり、この盤をソフト&メロウなフュージョン・ジャズの好盤としているのは、マンジョーネのフリューゲル・ホーン。

クリス・バダラのサックス&フルートも明確に「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズの音をしている。しかも、エモーショナルなブロウが心地良く、力感あるダンディズム溢れるテナーとフルートの調べは聴いていて惚れ惚れする。ここにマンジョーネのフリューゲル・ホーンが絡むのだ。何をどう演奏しても「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズに仕上がってしまう。

今ではあまり語られないマンジョーネの『Fun and Games』であるが、どうして、今の耳で聴いても、上質のフュージョン・ジャズで聴き応え十分。マンジョーネ以外、僕としては良く知らないメンバーばかりなんですが、結構、高度で内容のあるバック演奏で、今回、久し振りに聴き返したのですが、いや〜感心しました。しばらく、この盤、バーチャル音楽喫茶『松和』ではヘビロテですね。

 
 

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2018年8月14日 (火曜日)

ベンソンのブラコンAOR盤

ジャズの世界で「唄って弾きまくる」ギタリスト、と言えば、ジョージ・ベンソン(George Benson)である。デビューから暫くは、ウェス・モンゴメリーの後継として、先進的に弾きまくる純ジャズなギタリストだった。が、フュージョン・ジャズの大流行の波に乗り、もともと余芸だった「唄う」部分を前面に押し出し始めた。

そして「ソフト&メロウ」なAORの流行に乗って、「唄って弾きまくる」ギタリストとして、フュージョン・ジャズの代表的存在として売れに売れた。余芸とは言え、ベンソンのボーカルは一級品。弾きまくるギターは超一級品。その個性の組合せで奏でる「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズは強力な訴求力があった。

1980年代に入って、ベンソンは「唄って」の部分の割合を上げ始める。「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズから、ブラック・コンテンポラリー(ブラコン)へのシフトである。リーダー作を重ねる毎にボーカルの度合いを上げていった。それに比例して、ベンソンの人気は上がっていった。そして、このアルバムを聴いた時には「もはやベンソンはジャズには戻ってこないだろう」と思った。
 

2020

 
George Benson『20/20』(写真)。1985年1月のリリース。フュージョン・ジャズの大流行が終焉を迎え、スムース・ジャズへの変換と「純ジャズ復古の大号令」がかかった頃。ベンソンは、フュージョン・ジャズの斜陽に合わせて、ブラコンへのシフトを進めていった。そして、このアルバムでブラコンへのシフトを完遂する。

もはやこのアルバムはジャズでは無い。ジャズの要素を色濃く仕込んだブラコンである。それでも、ベンソンのボーカルはジャズ出身の正統なものであり、ジャズの耳にも違和感無く楽しめる内容になっているところが素敵である。特にボーカル・ナンバーがいすれも「白眉の出来」で、ギターについても、短いフレーズではあるが、ハッとするような切れ味の良いソロを弾いていて、なかなか楽しませてくれます。

ロバータ・フラック、パティ・オースティン、ジェイムス・テイラーら豪華なゲスト陣もなかなかの「聴きどころ」を提供してくれています。デジタル化の影響も最小限に留めていて録音もまずまず。この盤、ベンソンの代表盤の一枚に挙げてもよいくらい、充実した内容になっていると思います。

 
 

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2018年8月10日 (金曜日)

フリゼールの野心的なリーダー盤

ビル・フリゼール(Bill Frisell)のギターが好きだ。ビル・フリーゼルは1951年米国生まれのギタリスト。玄人筋では、現代の最高峰のギタリストの一人と評価されているが、こと我が国では全くといっていいほど人気が無い。しかし、この人のギターを聴くと、即興演奏としてのギターって、こういうのを言うんだろう、と強く思う。とにかく、即興性の高いギターが最大の個性である。

といって、この人のギターを「ジャズ・ギター」と定義して良いものか、とも思う。フリゼールのギターは自由度が高く、そのフレーズは適度に捻れ、牧歌的な長閑さが特徴。モード奏法の自由度を徹底的に高くしつつ、浮遊感が強くコードに縛られない柔軟なフレーズを展開する。そして、そのフレーズは、常識的に流麗なものでは全く無く、即興性高く適度に外れる。

僕はフリゼールのエレギを「ギターのモンク」と形容する。ジャズ・ピアノの奇才、セロニアス・モンク。彼のピアノをエレギに置き換えた様な、フリゼールの即興性に溢れ限りなく自由度の高いフレーズを、適度に外れた音で連発する。バックのビートは絶対に4ビートでは無い。フリゼールのエレギに合わせた、無ビートに近い自由度の高いビート。つまり、これが「ジャズ」と呼んで良いのか、とついつい考えてしまう。
 

Bill_frisell_this_land  

 
Bill Frisell『This Land』(写真左)。1992年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Frisell (g), Don Byron (cl, b-cl), Billy Drewes (as), Curtis Fowlkes (tb), Kermit Driscoll (el-b, ac-b), Joey Baron (ds)。フロントに、ドン・バイロンのクラリネット、カーティス・フォルクスのトロンボーンが目を引く。

アメリカン・ミュージックの歴史を辿る様な、米国ルーツ・ミュージックのオンパレード。カントリー、フォーク、ジャズ、ブルース、ラグタイムなど、米国ルーツ音楽の要素が要所要所に散りばめられている。エレギ、クラリネット、トロンボーン、アルト・サックスが絡みに絡んだ、ディキシーランド・ジャズの様な、自由度と即興性が限りなく高いアドリブ展開が凄まじい。

これを「ジャズ」と呼ぶか、という議論もあるだろう。しかし、この自由度と即興性の高さ、閃きと反応のアドリブの応酬。そして、様々な米国ルーツ音楽を取り込み融合する。これは広い意味で「ジャズ」だろう。ディキシーランド・ジャズの様な響き即興性はジャズの源を探る様でもあり、意外とこのアルバム、フリゼールにとって、意外と野心的なリーダー作ではないか、と思うのだ。

 
 

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2018年8月 9日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・103

ジャズの有名レーベルの盤をカタログ番号順に聴き進めて行くと、今まで、全く聴いたことが無かった盤に出会うことがある。思わず、こんなアルバムあったんや、なんて嬉しくなる。ジャズの有名レーベルの盤なんで、内容はそれなりにある。聴いてみて、そのパーソネルの組合せに感心したり、演奏されているスタイルに思いを馳せてみたり、興味津々である。

インパルス・レーベルの聴き直し、である。Chico Hamilton『Man from Two Worlds』(写真左)。カタログ番号A-59。1963年12月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl), Gabor Szabo (g), Albert Stinson (b), Chico Hamilton (ds) 。時は1963年。ハードバップ黄金時代は過ぎ去って、ハードバップを基本にジャズの多様化が始まった頃。この盤も例に漏れず、実に変わった盤である。

実は、今回、インパルス・レーベルの盤をカタログ順に聴き直していて、この盤の存在に初めて気がついた次第。今回、初めて聴いた。そもそも、リーダーのドラマー、チコ・ハミルトンのことを余り知らない。米国西海岸ジャズを代表するドラマーの一人ということは知っていたが、リーダー作は1950年代の数枚程度。今まで、僕にとって、リーダー作を聴く機会に恵まれないドラマーであった。
 

Man_from_two_worlds  

 
1950年代の米国西海岸ジャズの代表的ドラマーなので、あまり革新的なことはしないタイプと勝手に思っていたが、この盤を聴いて、その考え方は一気に変わった。まず音を聴いて、なんやこれ、と思ったのが「ギターの存在」。これは一度聴いたら、必ず覚えている。ガボール・ザボである。ガボール・ザボをギタリストに招聘している。

テナー・サックスとフルートの音も、これは誰だ、と思う。コルトレーンの様でコルトレーンでは無い。聴き易いコルトレーン。コルトレーンの良いところ、聴き易いところだけをピックアップした様なプレイ・スタイル。おお、これはもしや、チャールズ・ロイドではないか。当時はまだ駆け出しのロイドである。そんなロイドをフロント楽器に招聘している。

出てくる音は、新しい響きのするハードバップ。大衆受けを目指したファンキー・ジャズやソウル・ジャズの微塵も無い。硬派なメインストリームな純ジャズ路線。そこに、ザボのエスニック&なジプシー的な、不思議な響きのするギター、聴き易い、穏やかなスピリチュアルなテナー、それを支える柔軟かつ多彩なドラミング。加えて、この演奏、ピアノレス・カルテットである。野心的な純ジャズ路線極まりない、聴き応えのある盤である。

 
 

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2018年8月 8日 (水曜日)

この盤も「新しいクールな何か」

従来のジャジーなリズム&ビートからの脱却。新しいクールな響きのモーダルなフレーズ。ジャズではあるが、今までのジャズでは全く無い。ボイスやノイズをもジャズに取り込み、融合する。やっと、ジャズに「新しいクールな何か」が現れ出で始めた。明らかに「ジャズの進化」だと僕は感じている。

Christian Scott『Stretch Music (Introducing Elena Pinderhughes)』(写真左)もそんな「新しいクールな何か」の一枚である。2015年9月のリリース。この盤も明らかに従来のジャズとは全く異なり、スインギーな横乗りの4ビートや、パルシブでファンキーな8ビートの採用は全く無い。従来のジャズの基本要素だった「スインギーなオフ・ビート」は全く見向きもせず、最終的にビートを排除。拡がりと緩やかな抑揚をベースとしたビートが特徴。

この盤の音世界については、他のジャンルの音楽との「融合」がベース。フリー・ジャズから現代音楽の音の要素を取り込みもあつつ、新しい雰囲気のリズム&ビートは、明らかにR&Bからブラコンなど、ブラック・ミュージックのグルーヴ感濃厚。それでいて、ファンクネスは希薄。従来のジャズにあった「粘り」や「黒さ」の要素は見当たらない。スッキリと切れ味の良い、透明度溢れる柔らかなエコーが「拡がりと緩やかな抑揚をベースとしたビート」を増幅する。
 

Stretch_music  

 
とりわけ、クリスチャン・スコットのトランペットの音が素敵である。とても良く鳴り、エッジが丸く、音の芯が「優しい」。それでいて、音の伸びが良くて、ロング・トーンは「スーッ」と伸びる。テクニックは確かで、アドリブ・フレーズの淀みが無い。このトランペットが「新しいクールな何か」なフレーズを印象的に吹き進めていく。

彼の音は「陰鬱で憂鬱が見え隠れする」ダークなテイストが個性とされるが、この盤ではその従来のテイストは明らかに後退している。各曲の音がポジティブで外向的で、アーバンで夜の雰囲気が漂う穏やかなサウンドにどこか仄かな明るさを感じる。エレナ・ピンダーヒューズ(Elena Pinderhughes)のフルートもとても印象的。その他のメンバーについては、僕の知っているメンバーはいない。

それでも、このアルバムを通じて判るのは、この盤のバックバンドって、結構な力量の持ち主ばかりが参加していて、明らかに新しく、高テクニックなバッキングを供給している。そんなバッキングを得て、この盤では、クリスチャン・スコットはとても気持ち良く「新しいクールな何か」を包含した、新しいトランペットのフレーズを聴かせてくれるのだ。

 
 

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2018年8月 7日 (火曜日)

ジャズ・トレンドの分水嶺

1980年代のハードバップ回帰、いわゆる「ネオ・ハードバップ」のムーヴメントを捉えて、帝王マイルスは「昔のジャズを焼き直して、何が面白いのか」とバッサリ切り捨てたのを覚えている。「過去の音楽を再びやるなんて、俺には考えられない。常に自分がクールと思う新しい音を追求する」。この革新性こそ、ジャズなんだな、と心底感心したことを覚えている(俺の音をジャズと呼ぶな、と帝王に怒られそうだが・笑)。

確かに、1980年代の「純ジャズ復古」のムーブメント以来、過去の音のトレンドの焼き直し、深化はあったが、新しいクールな何か、がジャズに現れ出でたか、と問えば、答えは「ノー」。もはや、ジャズは深化はするが進化はしない、のでは無いかと思っていたら、この5年ほど前から、そんな「新しいクールな何か」がジャズに現れ出で始めた。

ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンを中心とするムーブメントである。ジャズがメインなんだが、R&B、ロック、ヒップホップ、レゲエ、ブルースまで様々なジャンルを融合、ボイスやノイズを新しいソロ楽器の様に扱い、ボーカルに意味を持たせて「スピリチュアル」な響きを前面に押し出す。そして、一番特徴的なのは「リズム&ビート」の扱い。従来のジャズの基本要素だった「スインギーなオフ・ビート」は全く見向きもせず、最終的にビートを排除。
 

Keyon_harrold_the_mugician  

 
これを僕は「リズム&ビートのモード化」と呼んでいるが、拡がりと緩やかな抑揚をベースとしたビートが特徴。その上に、緩やかで音を選び間を活かした、落ち着いたアドリブ・フレーズが展開される。今までのモダン・ジャズの「正反対」なアプローチの数々。2010年を越えて、やっと「新しいクールな何か」がジャズに現れ出で始めた。

Keyon Harrold『The Mugician』(写真左)。2017年10月のリリース。新世代のジャズ・トランペッター、キーヨン・ハロルドの最新アルバム。いや〜、クールである。まさに、「新しいクールな何か」がこのアルバムに詰まっている。ジャズがベースではあるが、リズム&ビートがジャズでは全く無い。全く新しいクールなリズム&ビート。全く新しい響きのモーダルなトランペット。

従来のジャジーなリズム&ビートからの脱却。新しいクールな響きのモーダルなフレーズ。ジャズではあるが、今までのジャズでは全く無い。ボイスやノイズをもジャズに取り込み、融合する。やっと、ジャズに「新しいクールな何か」が現れ出で始めた。従来のモダン・ジャズと、これからの「ネオ・モダン・ジャズ」。意外と2010年辺りが、ジャズのトレンドの分水嶺になっていくのかも知れない。

 
 

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2018年8月 6日 (月曜日)

The Chuck Rainey Coalition

チャック・レイニー(Chuck Rainey)。米国のベーシスト。セッション・ベーシストとして、ソウル、R&B、ジャズ、クロスオーバーを中心に幅広いジャンルで活躍。ボーダーレスなベースで、それぞれの音楽ジャンルに適したフレーズを弾き分ける。それでいて、音色と手癖はレイニーなれではのもので、セッション・ベーシストとしても、純粋にベーシスト単独としても優れた才能の持ち主であった。

Chuck Rainey『The Chuck Rainey Coalition』(写真左)。1972年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chuck Rainey (b), Bernard Purdie, Herb Lovelle, Jim Johnson, Ken Rice (ds), Billy Butler, Cornell Dupree, Eric Gale (g), Richard Tee (org,p), George Stubbs (p), Montego Joe, Specs Powell, Warren Smith (per), Trevor Lawrence (ts), Melvin Lastie (tp) 。

パーソネルはじっくり眺めると、後の「伝説のフュージョン・バンド」、スタッフの主要メンバーが名を連ねている(ドラムのスティーヴ・ガッド以外)。他のメンバーもクロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズの強者ばかりで、このアルバムのセッション、結構、充実していたんやろうなあ、と思う。本当に皆、楽しそうに演奏しているのが良く判る。
 

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録音年は1972年。クロスオーバー・ジャズが台頭していた頃。演奏のアレンジはまだ「もったり」していて、洗練されていない。切れ味も不足しているし、メリハリも弱い。それでも、レイニーのベースをメインに、演奏全体のグルーヴ感は、後のフュージョン・ジャズに直結するものだ。

楽曲とアドリブ・フレーズの「ソフト&メロウ感」も、後のフュージョン・ジャズを先取りした様な雰囲気。こういう演奏が1972年にリリースされていたことに驚く。鑑賞前提の演奏、ながら聴きをしながら演奏テクニックに興ずる。そんなフュージョン・ジャズのプロトタイプがこのアルバムの中に詰まっている。

それにしても、チャック・レイニーのベースはいつ聴いても「痺れる」。ピチカートのグルーヴ感、裏ビートを効果的に使った個性的なフレーズ、印象的なピッキング・ハーモニクス。どれもが、後のエレクトリック・ジャズにおけるエレベの先進的奏法を先取りしている。アルバムの演奏の内容は発展途上だが、後のフュージョン・ジャズの演奏の基本形が、このアルバムのセッションでほぼ固まっている。面白い盤である。

 
 

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2018年8月 5日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・102

まず、レオ・リチャードソン(Leo Richardson)という名を知らない。どうも英国ジャズのサックス奏者らしい。どうりで知らないはずだ。ジャケットの雰囲気を見ても、実にレトロっぽくて、リリース年が2017年。これは1970年代辺りの英国ジャズのリイシュー盤だと思った。

Leo Richardson『The Chase』(写真左)。2016年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Leo Richardson (ts), Rick Simpson (p), Mark Lewandowski (b), Ed Richardson (ds)。ラストの8曲目にのみ、 Alan Skidmore (ts) が、2曲目と4曲目にのみ、Quentin Collins (tp) が加わる。

レオ・リチャードソンは英国の若手テナーサックス奏者。これがデビューアルバムとのこと。1曲目の「Blues for Joe」を聴けばビックリする。どこから聴いても、正統なハードバップなジャズが思いっきり展開されている。しかし、録音が良い。ということで、この盤、実は最初聴いた時は、1970年代の隠れハードバップ盤だと思った。
 

Leo_richardson_the_chase

 
ストレート・アヘッドな純ジャズ一本のアルバム。テナーはテナーらしい音を出し、ピアノはモーダルに堅実なバッキングでフロントを支え、ベースはブンブン音を立て、ドラムは硬軟自在にポリリズムを叩き出す。1960年代中盤〜後半のモーダルなハードバップがこの盤に詰まっている。こんなアルバムが、新盤として2017年にリリースされた、という事実に驚く。

よくよく聴くと、アドリブ・フレーズや、バックのリズム&ビートに今風な雰囲気が漂っていて、どう考えても1960年代中盤〜後半には無かった響きがところどころに聴かれて、そこでやっとこの盤が、1970年代のハードバップ盤のリイシューで無いことに気がつく。気がついた時はビックリした。いわゆる「ネオ・ハードバップ」にまだ、これだけの「ジャズ表現の工夫の余地」が残っていたとは恐れ入った。ジャズは奥が深い。

プレイスタイルは、コンテンポラリーかつストレート・アヘッド。これが英国ジャズから生まれたことにまた驚く。英国と言えば、ジャズの正統なスタイルは「ビ・バップ」と言い切るほどの硬派なジャズ者の集まる国である。そこで生まれ出でた、この「ネオ・ハードバップ」盤。これが「格好良い」のだ。次作が楽しみ。こういう盤が新盤でリリースされるから、ジャズって奥が深くて面白い。

 
 

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