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2017年11月17日 (金曜日)

爽やかに捻れ、悠然とモーダル

ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)は実にユニークなテナー・マン・インタビューなんかでは、真顔で「自分は宇宙と交信しながらテナーを吹いている」。宇宙との構成の成果が、ショーターの個性的なアドリブ・フレーズを生むということだ。彼のテナーは唯一無二。捻れたテナーなのだが、そのフレーズは、メインストリーム・ジャズど真ん中。モダン・ジャズの王道を行くテナーである。

確かに、初めて聴いた時、この人のテナーは唯一無二だと思った。テナーと言えば「コルトレーン」。コルトレーンは自由度を求めれば求めるほど、フリー・ジャズに、アバンギャルド・ジャズに傾倒し、一般のジャズ・ファンを失っていった。しかし、ショーターは違う。ショーターは自由度を求めれば求めるほど、爽やかに捻れ、悠然とモーダルに変化する。そして、一般のジャズ・ファンを惹き付ける。

Wayne Shorter『Adam's Apple』(写真左)。1966年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Reggie Workman (b), Joe Chambers (ds)。ジャズ界は「多様化」の時代。ショーターは新主流派と呼ばれる、新しい響きを宿したモーダルがメインの自由度の高いジャズ。
 

Adams_apple

 
ショーターのテナーのアドリブ・フレーズって、ほんとに「ユニーク」。他を寄せ付けない、フォローを許さない、思いっきり個性的な捻れ方。真似出来ない、予測が出来ない捻れ方をする。しかも、テナーの音色が豊か。太くてシャープで流麗。しかも余裕を噛ました悠然としたロングなアドリブも得意で、このショーターのテナーって、他のテナー・マンには決して真似が出来無い。

ピアノは、若き日のハービー・ハンコック。ワンフレーズ聴けば直ぐに「ハービーやなあ」と判るくらいに個性的なフレーズを叩き出している。本当に、この頃のハービーのピアノは「イカしている」。理知的で幾何学的、ほど良く抑制された、意外と高速なパッセージ。左手のブロックコード、右手の自由度の高い弾き回し。この頃のハービーって輝いている。 

レジー・ワークマンのベースが面白い。モーダルなフロントのアドリブ・フレーズには、こういうモーダルなベースと当てろ、というような、新主流派にとっての「教科書」の様なウォーキング・ベースに惚れ惚れする。このリズム隊が、アルバム全体を統制し、アルバム全体をコントロールする)。

純ジャズなショーターのテナーを愛でるに最適な一枚。ジャケットもブルーノート・レーベル独特のデザイン性の溢れた素晴らしいもの。内容も決して難しく無く、取っ付き易い。ジャズ者初心者の方々にも安心してお勧め出来る好盤です。

 
 

東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年11月16日 (木曜日)

円熟のロイ・ハーグローブである

ネットのジャズ盤紹介を読み直して「これは聴いてないぞ」盤の聴き直し。ネットのジャズ盤紹介のブログは、ジャズ評論家の方々が扱わない、本当に内容の良い「隠れ好盤」について語ってくれているので助かる。自分の耳でしっかり聴いて、自分の感じたことを赤裸々に書いてくれているので、本当に参考になる。

例えば、この盤などはネットのジャズ盤紹介のブログから教えて貰った。Roy Hargrove『Earfood』(写真左)。2008年の作品。レギュラー・クインテットでの純ジャズ盤。聴き込むうちにその素晴らしさがじわじわと沁みる。ちなみにパーソネルは、Justin Robinson (as, fl), Danton Boller (b), Montez Coleman (ds), Gerald Clayton (p), Roy Hargrove (tp,fgh)。

ロイ・ハーグローヴ(以降、略して「ロイハー」)のEmarcy移籍第一弾作品。このクインテット盤は「純ジャズ」追求盤。ロイハーのストレートなブロウ、精巧なフィンガリングを駆使して、流麗で歌心のあるトランペットが飛翔する。ちょっと抑え気味のブロウなので、最初聴いた時は「なんか地味やなあ」と思うんだが、聴き込む毎にその素晴らしさがじわじわジワジワ沁みてくる。ブリリアントで滑らかなトランペット。
 

Roy_hargroveearfood

 
ピアノのジェラルド・クレイトンが良い。聴いていて惚れ惚れする様な、艶があって音の抜けが良く、切れ味抜群なピアノは個性的。クレイトンは和蘭生まれ、南カリフォルニアア育ちで、ベーシストのジョン・クレイトンの息子。素性確かなジャズ・ピアノである。アドリブ・ソロに感心する。良く練れているというか、直感的な反応が良いというか、センスを感じる、理知的なフレーズを感じる。以降「要注目」ピアニストである。

アルト・サックスのジャスティン・ロビンソンは、ロイハーのトランペットと相性が良い。ユニゾン&ハーモニーなど、アンサンブルの響きが抜群である。前作からメンバーは一新されているのだが、アルトのロビンソンだけ残ったというのも頷ける。作り込み過ぎない、吹きすぎないシンプルなアドリブ・フレーズは印象に残る。また聴きたくなる。

ロイハーは、この盤をリリースした時が39歳。中堅トランペッターとして、ロイハーの円熟度合いをしっかり確認出来る、バリバリのハードバップ盤である。聴き込み度にじわじわ沁みてくる、噛めば噛むほど味が出る「スルメの様な」好盤である。ジャズ者の皆さん全般にお勧め。

 
 

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2017年11月15日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・92

昔のジャズ盤紹介本を読み返してみると、「この盤は聴いたことが無い」というものに出会う時がある。そもそも、縁が無かったのか、もともとジャズ盤紹介本に挙がることが殆ど無いのか、大体が「こんなアルバムあったんや」と感心する盤が大多数である。そして、聴いてみるとなかなかの内容の盤がほとんど。

3ヶ月ほど前に、このブログでご紹介した盤なんだが、例えばこの盤なんか、ジャズ盤紹介本に挙がっているのを見た時、「こんなアルバム見たこと無い」が最初の印象。内容の紹介文を読んで「こんなアルバムあったんや」と思わず唸る。

Stéphane Grappelli『Live In San Francisco』(写真左)。ジャズ・バイオリンの名手、ステファン・グラッペリの1982年7月7日、サンフランシスコでのライブ音源。

ステファン・グラッペリは、フランスのジャズ・ヴァイオリニスト。ジャズ・ヴァイオリニストの第一人者として、長年に渡って晩年まで第一線で活躍した。1908年生まれ、1997年に89歳にて逝去。このサンフランシスコでのライブ音源は1982年のものなので、グラッペリが74歳、晩年の演奏になる。
 

Stephane_grappelli_live_in_san_fran

 
選曲はスタンダード曲がメイン、これが良い。グラッペリのジャズ・ヴァイオリンの素性の良さとテクニックの確かさがグッと浮き出てくるのだ。まるで鼻歌を歌うが如く、軽快に爽快にアドリブを展開する。緩急自在、抑揚が効いていて、グラッペリのテクニックは「神業」である。74歳の演奏とは思えない。

ギターはグラッペリ・バンドで一躍有名になったギター・マン、若きマーティン・テイラーである。テイラーは1956年生まれなので、このライブの時点で弱冠26歳の若さ。26歳の若さなのに、意外と小粋なバッキングを繰り出すのだから、これまたビックリする。グラッペリとは48歳の差があるのだが、全く違和感が無い。優れたジャズメンの組合せとはそういうものなんだろう。

ジャズ・ヴァイオリンとは如何なるものか、この盤を聴けばその極上なパフォーマンスを体験することが出来る。素晴らしいライブ盤である。ちなみに、LPでの初出の時の盤(写真左)と、現在、CDでリイシューされている盤(写真右)とジャケットが大きく異なる。LP時代のジャケットの方がシンプルでジャズ盤らしい雰囲気。

 
 

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2017年11月14日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・66

今週は、昔のジャズ盤紹介本を読み直して「これは最近聴いてないぞ」盤の聴き直し。ジャズ本を読み返していると、僅かではありますが、好盤ではありながら暫く聴いていない盤を発掘します。これを聴き直すのが意外と面白い。しかし、コレクションに無い盤になると、意外と探すのが大変だったりする。でも、それが楽しかったりするのだ。

今日の「これは最近聴いてないぞ」盤は、John Hicks『Inc.1』(写真左)。1985年4月の録音。ちなみにパーソネルは、John Hicks (p), Walter Booker (b), Idris Muhanmmad (ds)。日本のDIWレーベルからリリースされた一枚。DIWって、あれっ、と思わず思ってしまう位にユニークな盤をリリースしたりしているので要注意レーベルである。

ジョン・ヒックスのピアノは、一言で言うと「疾走する木訥さと精悍さ」。モンクの様な独特の幾何学的なフレーズとマッコイの様なドライブ感溢れる弾き回しを足して2で割った様な個性。但し、テクニックには危うさが付きまとう。それでも、「疾走する木訥さと精悍さ」は唯一無二の個性で、聴き込むに付け、どんどん癖になる。
 

John_hicks_inc1

 
ヒックスのピアノはポジティブ。ワクワク、ウキウキ、楽しいな、って感じのアドリブ・フレーズ。とにかく軽快なのだ。「快速(快い速さ)」と表現するのがピッタリ。この軽さに懸念を示すジャズ者の方もいるが、この軽快さをどう捉えるかで、ヒックスのピアノに対する評価は変わるのだろう。

このトリオ盤、ベースとドラムのプッシュがこれまた心地良い。特に、ムハマッドのドラムが良好。要所要所でビシッと決まるシンバルが心地良い。ブッカーのベースも重心が低くて堅実。このベースとドラムの存在が、ヒックスの軽快なピアノを支え惹き立たせている。実に良好なピアノ・トリオである。

ジョン・ヒックスのピアノは「ありそうでない」唯一の個性。もう少し、日本で人気が出ても良いのだが、コアなファンはいるのだが、一般ウケが悪い。でも、この『Inc.1』を聴いていただいたら判るのだが、ジャズ者初心者の方々にも十分に楽しめる判り易さがある。そういう意味で、もっと広く聴いて欲しい「隠れ好盤」である。

なお、ジョン・ヒックスは、残念ながら、2006年5月に65歳という若さで鬼籍に入った。合掌。

 
 

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2017年11月10日 (金曜日)

これぞ、ファンキー・ジャズな盤

ファンキー・ジャズは、1950年代終盤から1960年代中盤にかけて流行ったジャズの演奏トレンドのひとつで、ハードバップのサブカテゴリー、若しくは後継のトレンドとされる。演奏の基本はメインストリーム・ジャズ。電気楽器はエレクトリック・ピアノ、若しくはオルガンのみ。ゴスペル的な要素が大幅に取り入れられ、これがファンクネスを強調する。

そんなファンキー・ジャズの代表盤の一枚が、Cannonball Adderley『Mercy, Mercy, Mercy(Live at 'the Club')』(写真左)。1966年10月、ロスのキャピトルでのスタジオ・ライブの音源。Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cor), Joe Zawinul (ac-p, el-p), Victor Gaskin (b), Roy McCurdy (ds)。アダレイ兄弟がフロントに座ったクインテット構成。

後に、Weather Reportを結成するジョー・ザヴィヌルがキーボード担当と音楽監督を兼任している。このザヴィヌルの存在が「キモ」で、このザヴィヌルの書いた曲がすべからく「こってこてのファンキー」。その代表作がタイトル曲の「Mercy, Mercy, Mercy」。もう、これでもか〜、という位の「オーバー・ファンク」な演奏。
 

Mercy_mercy_mercy

 
この「Mercy, Mercy, Mercy」の存在が、音が、このアルバムの雰囲気を決定付けている。教会の賛美歌の様な響き、ゴスペルのようなフレーズの「畳みかけるような繰り返し」。そこに、スタジオ・ライブならではの、タイミングの良い観客の掛け声と口笛。徐々に高揚していく繰り返しフレーズに、どんどん高まっていくファンクネス。

この徐々に高揚していくリフの繰り返しがファンキー・ジャズの「ミソ」で、この繰り返すリフがブルージーなコードであれば、その時点で「ファンクネス抜群」ってな感じになる。ビートはロックなビートの「エイト・ビート」。これがファンキー・ジャズ特有の粘りを伴って、まるで「うねり」のように耳に迫ってくる。迫力も満点である。

他の人達から「ファンキー・ジャズ」ってどんな音なのか、と問われた時、取り出すアルバムの一枚がこの『Mercy, Mercy, Mercy』。ファンキー・ジャズって、「純ジャズが全て」という様なシリアスなジャズ者の方々からすると、あまり評価の良くないジャンルですが、聴いていてノリが良く、聴いていて楽しいので、僕にとっては結構お気に入りです。音が楽しい、だから「音楽」。お後がよろしいようで(笑)。

 
 

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2017年11月 9日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・91

1970年代のジャズは意外と面白い。ハードバップ期を生き抜いた一流ジャズメン達が「えっ、こんな演奏していたん」と感心してしまう様なアルバムが結構ある。1970年代のジャズ、電気楽器の活用が当たり前になった時代。電気楽器を活かして、クロスオーバーからフュージョン・ジャズが流行る。

しかし、面白いのはクロスオーバーやフュージョン・ジャズでは無い。1970年代のメインストリーム・ジャズが面白い。当時、ジャズと言えば、クロスオーバーからフュージョン・ジャズがメイン。それでも、メンストリーム・ジャズは生き残る。ハードバップ時代を生き抜いて来た、今ではレジェンドと呼ばれる一流ジャズメンの中で、メインストリーム・ジャズに留まったジャズメンの沢山いる。

例えば、トミー・フラナガン(Tommy Franagan)。燻し銀ピアニスト、名盤請負人、などと呼ばれた、レジェンド級のピアニストである。フラナガンは、クロスオーバーからフュージョン・ジャズの時代にも、頑なにメインストリーム・ジャズを貫き通した。そんなフラナガン、面白い内容の盤がある。
 

Something_borrowed_something_blue

 
Tommy Franagan『Something Borrowed, Something Blue』(写真左)。1978年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p, el-p), Keter Betts (b), Jimmie Smith (ds)。演奏フォーマットは「ピアノ・トリオ」。フラナガンの十八番。フラナガンがメインの場合は「ピアノ・トリオ」に限る。フラガナンのピアノが映える。フロント楽器があると駄目だ。フラナガンは極上の伴奏に回ってしまう。

この盤の面白いところは、フラガナンが電気ピアノを弾いているところ。フラガナンがローズを弾いている。これが意外と「イケる」。2曲目「Good Bait」を聴けば判る。フラガナンの「間」でエレピを弾く。フラナガンならでは、のエレピに仕上がっているのが面白い。一流と呼ばれるジャズメンは何を弾いても一流なんですね。

勿論、残りの曲はアコピのトリオ演奏なんですが、これがまた素晴らしい。もともとフラガナンはバリバリのバップ・ピアノなんですが、この盤でのアコピは完璧に「バップ・ピアノ」。確かなタッチでバンバン弾いてます。よって、この盤、フラナガンがエレピとアコピを弾きまくっている、意外と珍しい盤です。好盤です。

 
 

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2017年11月 8日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・113

ジャズには、一流ジャズメン達がリーダーになって、気合いを入れて創作するアルバムもあるが、気心知れたジャズメン達が、ちょっと集まって、ジャムセッション風に録音して制作するアルバムもある。そして、意外に、この気心知れたジャズメン達がちょっと集まって録音したアルバムが、実に滋味に富んだ、実に心地良いモダン・ジャズなアルバムになっていたりするから面白い。

例えば、Paul Desmond『First Place Again』(写真)。1959年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Jim Hall (g), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。ピアノの代わりにギターが入ったカルテット構成。この構成とこのパーソネルを見るだけで、この盤に詰まっている音が期待出来る。

ポール・デスモンドは、デイブ・ブルーベックのカルテットに参加して人気のアルト奏者。そこに、ジャズ・ギターの名手ジム・ホールが加わり、ベースとドラムは、モダン・ジャズ・カルテットから、パーシー・ヒースとコニー・ケイが参加。いや〜、当時、人気の一流ジャズメンばかり、しかもバリバリの中堅。粋で渋い、聴くからにジャズらしい音を出す4人である。
 

First_place_again

 
選曲も渋くて、スタンダード曲かトラディショナル曲で占められる(CD再発の時にデスモンド作が入るがオリジナルLPには無い)。冒頭のコール・ポーター作の「I Get a Kick Out of You」や、ジョン・ルイス作の「Two Degrees East, Three Degrees West(2度東3度西)」など、聴いていて惚れ惚れする。典型的なモダン・ジャズ、典型的なハードバップである。

ここまで来ると、もう理屈やないなあ、と思ってしまう。優秀な一流ジャズメン達が、ちょっと集まって録音すると、きっと適度にリラックスした演奏になるんだろう、本当に和やかで優れた内容である。聴く側も適度にリラックスして、微笑みを湛えながら、ちょっと足でリズムを取りながら、首は左右に微かに触れてスイングする。そんな雰囲気の演奏が実に心地良い。

ポール・デスモンドのアルトが興味深い。ブルーベック・カルテットの時には、丸くて和やかで温和なアルトを吹いているのだが、ブルーベック・カルテットを離れて、一人で他流試合に参加した時には、結構、力強いアルトを吹く。どちらが彼の本質なのか、聴いていてとても興味深い。最初から最後まで、心地良いモダン・ジャズがてんこ盛り。隠れ好盤です。

 
 

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2017年11月 7日 (火曜日)

ザ・プレイヤーズの4thアルバム

「ザ・プレイヤーズ」という伝説のフュージョン・バンドがあった。このバンドは純日本のメンバー構成。ピアニスト兼作編曲家の鈴木宏昌のバンド「コルゲン・バンド」を前身とし、和製ウェザー・リポートの異名をと持つ。まあ、この異名はさておき、オリジナルのパーソネルは、鈴木宏昌 (key), 松木恒秀 (g), 岡沢章 (b), 渡嘉敷祐一 (ds), 穴井忠臣 (per), 山口真文 (ss, ts)。

そのザ・プレイヤーズの4thアルバムが、The Players『Space Travel』(写真)。1982年のリリース。サックスが、山口真文より、ボブ斎藤にメンバーチェンジ。数原 普(tp)と西山健治(tb)がホーンセクションとして参加し、音の厚みが増している。テクニック優秀、音は厚いが流麗。リズム・セクションは、メインストリーム・ジャズ寄りの切れ味の良いフュージョン風。

ウェイン・ショーターからの影響が顕著な山口真文のサックスが、フュージョン〜スムース・ジャズ系のボブ斎藤のサックスに変わっただけで、ザ・プレイヤーズの音世界はガラッと変わる。
 

Space_travel

 
ザビヌル主導のウェザー・リポートからコマーシャルな要素を差し引いた、硬派で実直でジャジーなウェザー・リポートな音、これがこの「ザ・プレイヤーズ」の音世界だったが、この『Space Travel』では、アーバンなフュージョン・ジャズな、硬派なスムース・ジャズな雰囲気の音世界にガラッと変わっている。

その確かな演奏力、演奏の構築力、そして、アドリブ・フレーズの爽快感。とにかく、硬派で実直真面目な、ファンクネス皆無な日本人のフュージョン・ジャズの特徴は変わらない。これだけ、ハイ・レベルのフュージョン・ジャズが日本人の手によって創作されたことに誇りを感じる。本場米国のフュージョン・ジャズのレベルに全くひけを取らない。

そんな好盤なのですが、2016年まで全くCD化されませんでした。理由がよく判らない。現在ではタワーレコードまたはソニー・ミュージック・ショップ限定で細々と販売されているみたいです。しかも価格は3,000円弱。高い。どうにもこうにも、いつ無くなるか、いつ廃盤になるか判りませんね。これだけの好盤が勿体ないことです。

 
 

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2017年11月 6日 (月曜日)

ファンキー・ジャズの隠れ好盤

ファンキー・ジャズは、ハードバップからの派生したサブ・ジャンル、若しくは、ハードバップ後継の演奏スタイルである。1950年代終盤から1960年代前半に、そのスタイルはほぼ確立されている。ブルースや教会音楽(ゴスペル)を基本にした展開が主で、ファンクネス溢れ、アーシーでブルージー、ややスピリチュアルな要素も見え隠れする音世界。

1960年代中盤にはファンキー・ジャズは成熟、1960年代後半には、R&Bとの融合が行われ「ソウル・ジャズ」とも呼ばれた。ソウル・ジャズになると、後続の「クロスオーバー・ジャズ」な要素が強く出てきて、純ジャズな要素は希薄になっていくのだが、ファンキー・ジャズの場合は、まだまだ純ジャズな要素もしっかりと残っていて、意外と聴き応えのある演奏が多い。

例えば、この盤などが好例だと思う。Johnny Griffin & Matthew Gee『Soul Groove』(写真左)。1963年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Griffin (ts), Matthew Gee (tb), "Big" John Patton (org - tracks 1, 5 & 8), Hank Jones (p, org - tracks 2-4, 6 & 7), Aaron Bell (b, tuba), Art Taylor (ds), Carlos "Patato" Valdes (cong, bong)。
 

Soul_groove1

 
リトル・ジャイアント・テナー、ジョニー・グリフィン(写真右)とマシュー・ジーのトロンボーン、2管フロントの好盤。グリフィンのテナーはもともとファンクネス濃厚なテナーなので、ファンキー・ジャズにしっかりとフィットする。マシューはテキサス出身の隠れ名手。テキサス・テナーならぬ「テキサス・トロンボーン」である(笑)。音感は力強く、ユーモラスな部分はほどほど、音色の基本は暖かく、じっくり和み系。

このグリフィンのファンクネス溢れる豪放磊落なテナーと力強くはあるが、基本的に暖かくジックリ和み系のマシューのトロンボーンの対比がこの盤の「ミソ」。そして、もう一つ、ハンク・ジョーンズの端正で暖かく和み系のオルガンと、ジョン・パットンの攻撃的で切れ味の良いオルガンとの対比もこの盤の「ミソ」。この2つの対比が、程良くブレンドされて、なかなか聴き応えのあるファンキージャズに仕上がっている。

ファンキー・ジャズの好盤とは言え、こってこてファンキーな演奏では無い。ちょっとサラッとした爽やかな雰囲気が漂うファンキー・ジャズに仕上がっていて、聴いていて実に聴き心地が良い。ジャズ盤紹介本などではほとんど見かけない盤なのだが、これがなかなかの雰囲気で、思わず、ニンマリとしてしまう。ファンキー・ジャズの隠れ好盤ですね。

 
 

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2017年11月 5日 (日曜日)

サイケデリック・ジャズの好盤

1960年代後半は、ジャズにとって激動の時代。ビートルズを筆頭としたロックの波に押され、ジャズはポピュラー音楽の中での人気に翳りが見え始め、多様化が進んで演奏スタイルは迷走状態。加えて、メインストリーム・ジャズの牽引者の一人、精神的支柱的存在のジョン・コルトレーンが逝去するという、ハプニングにも見舞われた。

そんな中、ポピュラー音楽の中での地位を確保し続けるべく、ジャズとロックの融合、いわゆる「クロスオーバー・ジャズ」へのシフトが始まりだしたのが、1960年代の終わり。当時、ロック界の演奏トレンドであった「サイケディック」な要素を取り込んで、サイケデリックなジャズ演奏も目立ってきた。今の穏健な「スピリチュアル・ジャズ」にも通じる、観念的で幻想的な音世界が特徴。

ジャズを聴きだした頃、ジャズ者初心者の頃は「何ていい加減なアプローチなんだ」なんて思ったりしたが、今の耳で聴くと、意外とテクニックもしっかりしていて、アレンジも工夫がみられ、意外と鑑賞に十分に耐えるアルバムが一定数あることに気がついた次第。ハードでシリアスなジャズの合間に聴く「サイケデリック・ジャズ」は意外と耳休めに丁度良い塩梅なのだ。

そんな「サイケデリック・ジャズ」の好盤の一枚が、Steve Marcus『Tomorrow Never Knows』(写真)。1968年のリリース。ちなみにパーソネルは、Steve Marcus (sax), Mike Nock (p), Larry Coryell (g), Bob Moses (ds), hris Hills (b)。 ラリー・コリエルがギターで参加、ドラムがボブ・モーゼス。当時のクロスオーバー・ジャズ寄りのメンバー構成。
 

Steve_marcus_tomorrow_never_knows

 
その昔、ジャズのプレーヤーがビートルズを演奏するということで話題になった盤らしい。そのビートルズの曲の1曲が、なんとジョンのサイケデリック・ロックの代表曲「Tomorrow Never Knows」である。聴く前は「え〜っ」と思ったんだが、聴いてみると、スティーブ・マーカスのサックスが適度にサイケデリックしていて、意外と「Tomorrow Never Knows」のジャズ化に成功している。

他の曲も同様で、恐らくテクニックがしっかりしているのだろう、サイケデリックなアドリブ展開にも破綻すること無く、なかなか聴き応えのある展開に持ち込んでいて立派である。少なくとも耳触りにはならない。十分に鑑賞に耐える、クロスオーバー・ジャズの先駆的な演奏内容に感心する。

バーズの「Eight Miles High」、ドノバンの「Mellow Yellow」、ハーマンズ・ハーミッツの「Listen People」、そしてビートルズの「Rain」と、当時のロックの人気曲をクロスオーバー・ジャズとしてアレンジし、まずまずの成果を収めている。サイケデリック・ジャズだからといって、敬遠するのは勿体ない。意外とリラックスして聴けるクロスオーバーなジャズ盤として楽しめます。

 
 

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