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2017年9月22日 (金曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・64

ジャズ者の中で「そのジャズメンの絶頂期」の演奏しか聴かない、という方がいる。絶頂期のプレイこそがそのジャズメンの一番優れている演奏で、それ以外は「絶頂期に比べて劣る」演奏だから聴かないという。そもそも、素人と我々が何を持って、そのジャズメンの「絶頂期」を認定するのか、合点がいかぬ。

いわゆる、そのジャズメンの若かりし頃、若しくは歳を取って老いた頃の演奏は成熟していない、若しくは衰えた演奏なので、全く取るに足らない、ということになる。まあ、それはそれで1つの考え方なんだろうけど、僕は同意しかねるなあ。ジャズメンの若かりし頃、年老いた頃にも、それぞれに個性と良さがあると思っているので、僕はそのジャズメンの演奏人生の全てを聴くようにしている。

Barry Harrys『Barry Harrys In Spain』(写真左)。1991年12月5日、マドリッドでの録音。ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), Chuck Israels (b), Leroy Williams (ds)。リーダーのバリー・ハリスは、1929年生まれだから、62歳の時の演奏になる。リロイ・ウィリアムス、チャック・イスラエルのサポートが目を惹く。このピアノ・トリオ、絶対良いよ、と直感する。

バリー・ハリスと言えば、スタイルは「バップ・ピアニスト」。ビ・バップの演奏マナーをハードバップに活かした演奏が個性で、テクニック溢れる流麗な指捌きと簡潔なアドリブ・フレーズが個性。そういう意味では、絶頂期は『Barry Harris at the Jazz Workshop』の頃、1960年辺りになる。
 

Barry_harrys_in_spain_1

 
それではこの1991年、62歳でのパフォーマンス、『Barry Harrys In Spain』は取るに足らない盤なんだろうか。否、この1991年の『Barry Harrys In Spain』でのバリー・ハリスのパフォーマンスは、31歳の頃、1960年の絶頂期に匹敵する内容の濃さである。もちろん、1960年の頃に比べれば、指捌きやアドリブ・フレーズの閃きは劣る。しかし、それでも、この1991年の音は豊かで深い。

しかも、1960年の頃は優れたバップ・ピアニストだったハリスが、この盤ではモードな演奏にも手を染め、1960年の頃に比べて、個性の裾野が広がっている。これを「指捌きやアドリブ・フレーズの閃き」が絶頂期と比較して劣るから、と切り捨てるか。それはあまりに短絡的だろう。この盤でのバリー・ハリスのピアノは絶頂期に比べて豊かで深い。

バップ・ピアニストのハリスが 、ウェイン・ショーター作の「Sweet Pea」を演奏するなんて、思ってもみなかった。ここでは、バップ・ピアニストのハリスがモーダルなフレーズを難なく弾きこなしている。しかも、音の表現に深みがある。これは歳を取り、様々な経験を積むことにより獲得した「奥の深い」深みなんだろう。

良いピアノ・トリオ盤です。チャック・イスラエルのベース音が素敵に響き渡り、リロイ・ウィリアムスのアグレッシブなドラミングが演奏全体をグイグイ引っ張ります。晩年のハリスの演奏は絶頂期の頃と比較して、負けず劣らず「深み」のある演奏が個性です。これはこれで正統なハリスの演奏。晩年には晩年の良さがあります。

 
 

東日本大震災から6年6ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年9月21日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・63

今週は台風一過の夏の戻りから始まって、少し夏の様な蒸し暑い日があったが、徐々に秋の空気に入れ替わりつつあるのが実感出来るのが朝夕の涼しさ。特にここ千葉県北西部地方では、朝の空気がヒンヤリしてくる。このヒンヤリを感じると「ああ、そろそろ秋やなあ」と思うのだ。

とにかく今年の夏は天候不順で蒸し暑かった。僕はこの湿気が実に苦手で、もう今年はバテバテ。つい最近まで体調が著しく悪かった。が、この朝の涼しさを感じて、夏の上着を着て通勤出来る様になると、やっと音楽鑑賞の世界も気合いが入ってくる。気合いが入ってくると、ジャズではやはり得意の「ジャズ・ピアノ」盤のチョイスになる。

Bobby Timmons『In Person』(写真左)。1961年10月の録音。ファンキー・ジャズのブーム、真っ只中である。ちなみにパーソネルは、Bobby Timmons (p), Ron Carter (b), Albert Heath (ds)。ピアノ・トリオ編成なのだが、リーダーのティモンズはファンキーなピアニスト、ヒースはバップなドラマー、カーターは新主流派なベーシスト。3人の間に演奏スタイルや個性の共通点は無い。
 

Trio_in_person

 
ティモンズは「こってこてファンキー」なピアノが身上。例えば、ジャズ・メッセンジャーズ盤『Moanin"』での漆黒どファンキーなピアノは凄く印象に残る。最早オーバーファンク振り切れのファンキー・ピアノ。それがバップなドラムとモーダルなベースとくむのだ。どうなるのか。この盤を聴けば判るのだが、実に上品で格調の高い、当時の新しいジャズの響きを宿した「ファンキー・ピアノ」がこの盤に詰まっている。

別にティモンズの奏法が個性が変わった訳では無いのだが、新主流派でモーダルな響きとアプローチを基本とするロンのベースに、ヒースのドラムが上手く適応して、当時として新しいジャズの雰囲気、響きを醸し出す。そこにオーバーファンク気味のティモンズのファンキー・ピアノが融合する。するとまあ、実に格調の高い、当時の新しいジャズの響きを宿した「ファンキー・ジャズ」なピアノ・トリオの演奏が実に爽快で実に魅惑的である。

正装に身を包んだトリオの3人。そんなジャケット写真の雰囲気そのままの「実に格調の高い、当時の新しいジャズの響きを宿したファンキーな「ピアノ・トリオ」。特にスタンダード曲が聴きもの。格調高いファンキー・ジャズの雰囲気に身を包んだ、ちょっとユニークな、端正でオフビートなスタンダード曲が聴けます。僕はこの盤がお気に入りです。

 
 

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2017年9月20日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・59

Gary Burton=ゲイリー・バートンは、ヴィブラフォン奏者。1960年代後半、若かりし頃は、ヴァイブ引っさげ、尖ったジャズロックをガンガンやって、時々、アバンギャルドな雰囲気の硬派なジャズをやったり、とにかく尖ったヴァイブ奏者だった。1970年代は、ピアノのチック・コリアと組んで、ピアノとヴァイブのデュオ演奏で一世を風靡した。

が、バークリー音楽院で教鞭を執る立場にあったこと、かつ、1980年代になって、人間的に充実した落ち着きを身につけたのか、リーダーとしてバンド全体を上手くまとめながら、純ジャズ復古の波にも上手く乗りつつ、内容充実のメインストリームな純ジャズ盤をコンスタントにリリースするようになる。

僕はこのバートンのジャズメンとしての変遷をリアルタイムで体験してきて、コンテンポラリーな純ジャズの担い手として、バンドを通じて有望な若手を発掘するバンドリーダーとして活躍するバートンを頼もしく思ってきた。若い才能の発掘者として、コンテンポラリーな純ジャズの担い手として、もっとバートンは評価されて然るべきだと思っている。
 

Gary_burton_depature

 
Gary Burton & Friends『Departure』(写真左)。1996年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), John Scofield (g), John Patitucci (b), Fred Hersch (p), Peter Erskine (ds)。フレッド・ハーシュのピアノ・トリオをリズムセクションに、バートンのヴァイブとジョンスコのギターがフロントを張るクインテット構成。

とっても魅力的な、リラックスしたセッションが繰り広げられる。そんな中で、ジョンスコのギターが冴えまくっている。彼は特に、こういうスタンダードで純ジャズなセッションで、その実力を遺憾なく発揮するタイプなのだが、このバートンのリーダー作でも、そんなジョンスコがガンガンに弾きまくっている。

パティトゥッチのベースとアースキンのドラムが供給するリズム&ビートは安定の極み。ハーシュのピアノはリリカルで耽美的なフレーズを醸し出す。意外とこのリズム・セクションの今までに無い独特の個性が、このスタンダードなアルバムを惹き立てている様です。これもバートンのリーダーシップの成せる技。素敵なジャケット共々、お勧めの好盤です。

 
 

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2017年9月19日 (火曜日)

地域の拡がりとしての深化

世界的に見て、ジャズ人口って増えているんだろうか。少なくとも、ジャズの裾野は広がっている。基本的には米国中心だったジャズだが、欧州各国に渡り、日本にも中南米にも渡り、豪州にも渡り、もはやジャズは世界的な拡がりを持つ、クラシックに比肩する裾野の拡がりを持った音楽ジャンルになっている。

例えば、David Sanchez『The Departure』(写真左)。1993年11〜12月の録音。ちなみにパーソネルは、David Sanchez (sax), Tom Harrell (tp), Danilo Perez (p), Andy Gonzalez, Peter Washington (b), Leon Parker (ds), Milton Cardona (per)。サックス&トランペット2管フロントのパーカッション入りセクステット。

硬派なメインストリーム・ジャズである。胸の空くような、切れ味の良い自由度の高い演奏がてんこ盛りである。演奏に耳を傾けていると、そこはかとなく「中南米」な雰囲気が見え隠れする。明らかに米国や欧州、日本などのジャズとは雰囲気が違う。それもそのはず。リーダーのDavid Sanchez=デビッド・サンチェスはプエルトリコ出身のテナー奏者なのだ。 
 

David_sanchez_the_departure

 
このアルバム『The Departure』は、サンチェスのデビュー盤。ジャズは初リーダー作に、そのジャズメンの個性がはっきりと表れるというが、確かにこのアルバムを聴くと、他のジャズメンとは異なる個性がそこかしこに感じるのだ。僕にとってはまだまだ勉強しなければならないジャンルである「ラテン・アメリカの伝統音楽」な雰囲気が独特の個性である。

僕がジャズを聴き始めた頃、今から40年ほど前、メインストリームなジャズに、ラテン・アメリカの伝統音楽の要素が融合されるなんて、思ってもみなかった。明らかにジャズ表現のバリエーションが深化していると感じる。ジャズは世界的な地域の拡がりの中で、各国の伝統音楽と融合し、そのバリエーションを深化させている。

明らかに新しい響きのするメインストリーム・ジャズ。サンチェスのサックスが理知的で爽快。とても良く考えられたサックスの展開。もう一方のフロント、トム・ハレルのトランペットも良い音を出している。こういう硬派でメインストリームなジャズが、プエルトリコの優れたサックス奏者によって創造される。ジャズの国際化、地域の拡がりとしてのジャズの深化を目の当たりにする。そんな実感をひしひし感じる好盤である。

 
 

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2017年9月18日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・112

台風は関東から去った。台風一過の良い天気というのは簡単だが、北海道に到達しつつ勢力は衰えること無く、逆に発達したりしているので、北海道は予断を許さない。九州を中心に被害は大きかった。中学の頃に体験したが、水害って後始末が大変。災害に遭われた地域の方々にはお見舞い申し上げます。

さて、ジャズ盤紹介本を読んでいて、このテナー奏者の名前をすっかり忘れていたことに気がついた。Joe Van Enkhuizen=ジョー・ヴァン・エンキューゼン、和蘭のテナー奏者である。骨太で朗々とブラスを響かせながら吹き上げるテナーは実に聴き応えがあって、このテナーでミッドテンポからスローテンポの曲を朗々と吹かれると、もうドップリ聴き耳立てて、思わず聴き込んでしまう。

Horace Parlan, Joe Van Enkhuizen, Rufus Reid & Al Harewood『Joe Meets the Rhythm Section』(写真左)。入手が比較的し易くて、そんなジョー・ヴァン・エンキューゼンのテナーを堪能出来る盤である。ワンホーンのカルテット構成。カルテット4人が平等に4人名義のアルバムであるが、メインは、ホレス・パーランとジョー・ヴァン・エンキューゼン。
 

Joe_meets_the_rhythm_section

 
改めてパーソネルは、Horace Parlan (p), Joe Van Enkhuizen (ts), Rufus Reid (b), Al Harewood (ds)。1986年7月の録音。エンキューゼンのワン・ホーン、ホレス・パーランのピアノ・トリオがリズム・セクションを務める。ベースがルーファス、ドラムがヘアウッドなので、このリズム・セクションには間違いは無い。

やはり、聴きものは、エンキューゼンのテナー。ほんと良い音出している。和蘭のテナーマンなので、さすがにファンクネスは希薄。しかし、骨太で朗々とブラスを響かせながら吹き上げる中、仄かな色気が漂って、実に硬派で男気溢れる妖艶テナーである。このテナーで、小粋なミューシャンズ・チューンを中心に、鯔背に聴かせるのだから堪らない。

バックのホレス・パーランのピアノ・トリオも良好。エンキューゼンのテナーを盛り立てつつ、自らもちょっと捻りを効かせた、小粋なピアノ・トリオのパフォーマンスを聴かせてくれる。ジャズ盤紹介本などに全く出てこない盤ですが(ネットでは若干コメントされているのが心強い)良い内容の盤です。ダウンロード・サイトから比較的入手し易いので、一聴をお勧めします。

 
 

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2017年9月15日 (金曜日)

たった2つの楽器で奏でる音世界

涼しい。しかも湿度が低くなって、実に過ごしやすい夜である。これだけ、湿度が落ち着いて涼しくなると、ステレオから出てくる音も澄んでくる様に聴こえるのだから不思議だ。細かいニュアンスが判り易くなる様な気がして、この秋の気候になってくると、少人数のジャズに触手が伸びる様になる。

Joe Bonner『Suburban Fantasies』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Joe Bonner (p), Johnny Dyani (b)。1983年2月18日の録音。ジャケットのデザインも良い。スティープルチェイスからのリリース。アメリカ人ピアニストJoe Bonnerと南アフリカ人ベーシストJohnny Dyaniのデュオ盤。

Joe Bonner=ジョー・ボナー。あまりその名を聞くことが少ないピアニスト。このデュオ盤を聴けば、そのピアニストとしての個性が良く判る。剛直さとロマンチシズムを併せ持ち、ダイナミズムと繊細さが共存する、意外と他にありそうでないピアノ。
 

Suburban_fantasies

 
デュオの相方、ダラー・ブランドと活動していたベースのJohnny Dyani=ジョニー・ダイアニ。フォーキーでアーシーなピアニストの相棒だったダイアニ。腰の据わった重心の低いベースで、ボナーのピアノを支える。どっしりとしたアーシーなベース。ブンブンと重低音を振り撒きながら、リズム&ビートを供給していく。

ボナーのアドリブ・フレーズの基本は「ブルース」。しかし、くすんではいないし、粘ってもいない。フレーズの冴えと美しさ、そして切れ味は独特の個性。音もクッキリ、タッチも硬質。それでいてメロディアスな展開。スティープルチェイス的な音。欧州ジャズの音世界。

流麗なピアノの音色と重厚なベース。このたった2つの楽器で奏でる音世界が実に豊か。流麗な音の詰まったインプロビゼーション、そして、しっかりと「間」を活かした魅力的な「タメ」。硬軟自在、柔軟性溢れるデュオ演奏に思わず聴き惚れる。こんな、ほとんど無名のデュオ盤が転がっているのだから、ジャズは隅に置けない。

 
 

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2017年9月14日 (木曜日)

セルビアはベオグラードのジャズ

欧州を旅して思うのだが、訪れたどの国にもジャズがある。地元のエンタメ系の雑誌やお店の案内カードを見ていると、必ず、ジャズのライブ・ハウスの紹介がある。ということで、その国を訪れたら、必ず、その国のジャズを探し、その国のジャズを聴く。すると、それぞれ、国によってジャズの音が違うのだ。国毎の個性とでも言うのだろうか。これって、意外と面白い。

アップル・ミュージックなど、ダウンロード・サイトが充実してきたお陰で、様々な国のジャズを聴ける様になった。ネットの中でも、様々な国のジャズに関する情報が充実してきており、知識レベルの情報の入手も楽になった。良い時代になった。昔は、米国ジャズでも情報不足の感があって、情報を得るのに雑誌を読んだり、本を読んだり。大変でした。

Bojan Zulfikarpasic『Solobsession』(写真左)。今日聴いた欧州ジャズ。ピアニストである。2008年の作品。まず、リーダーの名前を何て呼んだら良いか、判らない(笑)。「Bojan Zulfikarpasic=ボヤン・ズルフィカルパシチ」と読むそうだ。ボヤンは判る。でも、セカンド・ネームが判らない。この名前からすると「北欧系」か、と思うが、冒頭の演奏を聴くと「違う」。

北欧系独特の響きの拡がりとクリスタル感が希薄。加えて、ファンクネスは皆無。タッチは骨太でそれでいて品の良い力強さ。流麗ではあるが無骨。そうすると、英国系若しくは仏蘭西系は無い。ましてや独系でも無い。ん〜、どこのジャズなん?
  

Bojan_zulfikarpasicsolobsession

 
実は、旧ユーゴスラビア、ベオグラード出身でフランスを舞台に活躍するジャズ・ピアニストとのこと。名前が長いので、通称「Bojan Z」で通しているらしい。なるほど、ベオグラードだから、今の国名で言うと「セルビア」。この盤に詰まっていろ音は「セルビア」のジャズ、東欧のジャズである。

この『Solobsession』は、ボヤンのソロ・ピアノ盤である。よって、ボヤンのピアノの個性が露わになる。ファンクネスは皆無。タッチは骨太でそれでいて品の良い力強さ。流麗ではあるが無骨。アドリブ・フレーズはどこかポップな雰囲気が親しみ易く、ピアノの響きを美しい。テクニックも優秀。緩急自在なインプロビゼーションで、アルバム全編を一気に聴き切ってしまう。

ピアノの特殊奏法を駆使した演奏、プログレの様な変拍子の演奏、フリーキーな展開をところどころ「チラ見せ」しつつ、どこかポップな響きのインプロビゼーションは今風のスピリチュアルな響き。今までにありそうで無かったピアノ・ソロで、一度填まると、暫く、病みつきになるほどの個性。

しかし、アルバム・ジャケットの雰囲気と「Bojan Zulfikarpasic」という姓名の文字の雰囲気から、これ「北欧ジャズ」系ね、と思ってしまうんだが、これがまあ、全く違うんですね。でも、タッチは骨太でそれでいて品の良い力強さ。流麗ではあるが無骨。アドリブ・フレーズはどこかポップな雰囲気が親しみ易い。と良い方に転んで、この盤の魅力にドップリと填まってしまいます。

 
 

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2017年9月13日 (水曜日)

ながら聴きのジャズも良い・26

真夏のあの「思い切り蒸し暑い」日はもう無い。今日も日中は30度くらいにはなったのだろうが、夕方、本業を終えて、本社ビルを出る頃には、東京は新宿も涼しい風が吹き抜けている。夜、家に帰り着いても、エアコンが恋しく無くなった。自然の風が吹き抜ける部屋で夕飯をいただく、このささやかな幸福感。9月の良い季節。

こういう涼しい宵には、軽快なフュージョン・ジャズで、ながら聴きしながら、本を読んだり、パソコンしたりが良い。耳当たりの良い、あんまり耽美的では無い、リズミカルで軽快、印象的な聴き心地の良いフレーズを伴ったフュージョン盤が良い。これがまあ、意外と沢山あるから、フュージョン・ジャズはやめられない(笑)。

Chet Atkins『Stay Tuned』(写真左)。1985年のリリース。ちょっと変わり種のフュージョン・ギター盤。そもそも、リーダーのChet Atkins=チェット・アトキンス自体がフュージョン・ジャズに似合わない。1924年生まれだから、存命していれば93歳。相当に昔の大レジェンドである。惜しくも2001年、77歳で鬼籍に入っている。

基本はカントリー・ギター。エルヴィス・プレスリーのバックでリズム・ギターを務めたりで、ロックンロールにも手を染め、ビートルズのジョージ・ハリソンのアイドル・ギタリストとしても知られる。各界のギタリストの共通のアイドルであり、ギターの神様的存在。あの現在、ギターの神様と呼ばれるジェフ・ベックが憧れたギタリストの一人なのだ。
 

Stay_tuned

 
ジャズ畑のギタリストでは無いんですよね。しかし、カントリーからロックンロールと適応力に優れたアトキンスが、フュージョン・ジャズに手を染めてリリースした名盤がこの『Stay Tuned』なんです。僕はこの盤をジャズ喫茶で聴かされた時、このカントリー・フレイバー満載の、爽快にスイングし、唄う様にアドリブを展開するギタリストが誰かさっぱり判りませんでした。

チェット・アトキンスですよ、とギタリストの名を明かされた時、にわかに信じられませんでした。チェット・アトキンスがフュージョンをやってたの? 驚きでした。でも、この盤、素晴らしく爽快。カントリー調、フォーク調と米国ルーツな音楽ジャンルの音がメイン、時に当時流行だったカリビアンなフレーズが滑り込んできたりする。

当時はフュージョン・ジャズのブーム末期。この盤、明らかにフュージョン・ジャズ盤です。楽曲毎にチェットとゲスト・ミュージシャンと共演といった企画盤で、ゲストの名前を並べてみたら、出てくる出てくる有名どころ。ベンソン、カールトン、クルー、ノップラー、ルカサーなどなど。ドラムには、ポーカロなんかも叩いていて、さしずめフュージョン・ジャズ・オールスターズといった風情。

そんな中、アトキンス御大は、全くひるむことなく弾きまくる弾きまくる。もう徹頭徹尾、爽快感満載です。初めて聴いた時、誰かに似ている、誰かに似ている、と思ってイライラしましたが、それもそのはず、今のレジェンド級のギタリスト、今の中堅ギタリストのお手本の様なギターなんですよね。似ているのでは無く、このアトキンスがギターが「元祖」でした。脱帽です。

 
 

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2017年9月12日 (火曜日)

ながら聴きのジャズも良い・25

久し振りに「天文関係」のジャケットに出会った。この3年ほど「天文関係」のジャケットを持ったジャズ盤を探しているのだが、見つかる時は、結構、立て続けに見つかるんだが、見つからない時は、とんと見つからない(笑)。もしかしたら、ジャズの世界では「天文関係」のジャケットは意外と少ないのかもしれへんなあ。

松本圭司『STARGAZER』(写真左)。STARGAZER=星を見つめる者(天文学者、占星術者)の意味。これは珍しい。タイトルからして「天文関係」ではないか。ジャケットはどこの星雲だろうか。明らかに「天文関係」。タイトルもジャケットも「天文関係」。今年8月のリリース。ちなみにパーソネルは、松本圭司 (p), 則竹裕之 (ds), 須藤満 (b)。

松本圭司とは誰か。彼のオフィシャルHPのプロフィールを見ると、「1992年、高校卒業後上京し、キーボーディスト、ピアニストとして活動を始める。1998年末よりT-SQUAREに参加。アルバム「T-SQUARE」に自作曲4曲提供。2003年に1stソロ盤「Life」をリリース」とある。おお、どっかで聞いた名前やと思った。
 

Stargazer

 
収録された曲名を見渡すと、何と無く「星」を連想させるタイトルばかり。アルバムの解説には「12星座をイメージして構成した通算6枚目のオリジナル・アルバム」とある。なるほど、曲名まで「天文関係」である。演奏全体の雰囲気は、最初、聴いていると、1980年代に一世を風靡した「ウィンダムヒル」みたいやなあ、とも思うし、いやいや「デイヴィッド・ベノワ」のフォロワーかとも思う。

そう、演奏全体の雰囲気は「スムース・ジャズ」。しかし、演奏全体に粘りが無く、サラッとシンプル。ファンクネスも希薄。いわゆる日本人独特のあっさりした、小粋な「スムース・ジャズ」である。スムース・ジャズではあるが、実にキャッチャーなフレーズがてんこ盛りで、聴いていて凄く心地良い。スムース・ジャズとはかくあるべし、という感じで、ほどよくアレンジされ、ほどよく気合いの入ったパフォーマンスで魅了する。

とにかく聴いていて心地良い。これぞ「ながら聴き」に最適なスムース・ジャズ。これだけ洗練され、ハイテクニックで優れたアレンジのスムース・ジャズが、日本人の手によって創作される時代が来るとはなあ。この松本圭司『STARGAZER』を聴きながら、何故か万感な想いがこみ上げてきて、ちょっと目頭が熱くなった。

 
 

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2017年9月11日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・89

今日は、昨日のコンサート明けの「お疲れ休み」。そうそう、昨日はとある中堅ミュージシャンのコンサートに参戦していて、ブログは急遽お休みしました。3時間20分超、立ちっぱなしのコンサートに参戦して、家に帰りついたのが22時過ぎ。さすがにブログは打てません(笑)。

さて、午前中はまだ良かったんですが、今日の午後は昨日のコンサートの疲れで、ずっと伏せっていました(笑)。そんな時はゆったりとした、聴いて耳当たりの良いジャズが良いですよね。さて、何が良いか。ピアノ・ソロはありきたりだし、ソロかデュオ盤が良いんでしょうが、ということで選んだ盤がこれ。

Courtney Pine『Song(The Ballad Book)』。2015年のリリース。ちなみにパーソネルは、Courtney Pine (b-cl), Zoe Rahman (p)。Courtney Pine=コートニー・パイン。1964年生まれのジャマイカ系イギリス人。サックス奏者。しかし、この盤では「バス・クラリネット」一本で吹きまくる。これが実にユニーク。
 

Courtney_pine_song

 
女流ジャズピアニスト最注目のゾーイ・ラーマンとのデュオ。ピアノとバス・クラリネットとのデュオ。バス・クラリネットと言えば「エリック・ドルフィー」が浮かぶが、僕の記憶の中では、他にこの組合せの盤を知らない。が、僕はこの盤を聴いて、心から感心した。バス・クラリネットのソロの音色は静的ではあるが「スピリチュアルでエモーショナル」。

バス・クラリネットの音がこんなに心地良いものと感じたのは久し振り。エリック・ドルフィー以来。しかも、ピアノとのデュオが実に合う。素早いフレーズには不向きな感じだが、ゆったりとしたフレーズには、本当に「その威力を発揮する」。ダニー・ハサウェイ、デューク・エリントン、サム・リバース、サド・ジョーンズ、ブライアン・マクナイトのヒット曲などを演奏していますが、どれもが「スピリチュアルでエモーショナル」。

この盤、とっても良いです。バス・クラリネットの音色がこんなに「スピリチュアルでエモーショナル」だとは思わなかった。そういう意味では、1960年代早々から、バス・クラリネットを吹いていたエリック・ドルフィーは先見の明があった。そして、バス・クラリネットの魅力を再発掘したコートニー・パインは素晴らしい。ジャズ者中堅〜ベテランの方々に、一度は聴いて欲しい好盤。

 
 

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