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2024年4月15日 (月曜日)

Bill Bruford 『Feels Good to Me』

ジャズを本格的に聴き出す前は「ロック小僧」だった。高校に入って、いきなりプログレッシブ・ロック(略して「プログレ」)に嵌った。EL&Pから始まって、イエス、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、フォーカス、ジェネシス、ムーディー・ブルース等々、クラブの先輩達とガッツリ聴きまくった。

このプログレ好き、バカテク+インスト中心の楽曲好きが昂じて、即興演奏がメインのインストの「ジャズ」に興味が移行した訳で、今でも自分では、プログレについては造詣が深いと思っている。

Bill Bruford『Feels Good to Me』(写真左)。1977年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Bruford (ds, perc), Allan Holdsworth (el-g), Dave Stewart (key), Jeff Berlin (b)。ゲストに、Kenny Wheeler (flh, on tracks 3, 7, 9), Annette Peacock(vo), John Goodsall (rhythm-g)。英国の人気プログレ・バンドのイエス、キング・クリムゾンのドラマーを歴任したビル・ブルーフォードの初ソロ・アルバムである。

プログレのドラマーがジャズをやるの、と訝しく思われる方もいるかと思うが、もともと英国の音楽シーンでは、ロックとジャズの境界が曖昧。ロック畑のミュージシャンがジャズをやったり、ジャズ畑のミュージシャンがロックをやったりして、特にプログレとクロスオーバー・ジャズ、ジャズ・ロックの境界線は他の国と比べて圧倒的に曖昧である。

このブルーフォードの『Feels Good to Me』も、聴けば判るが、プログレ・フレーヴァー満載の「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」である。決して、プログレでは無い。演奏の根っこは、あくまで「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」である。

ブルーフォードのドラミングに個性は、驚異の「変則拍子」ドラミング。プログレ・バンドのイエス、キング・クリムゾンの時代から、綿々と叩きまくっているブルーフォード独特の「変則拍子」。
 

Bill-brufordfeels-good-to-me

 
この「変則拍子」は他のジャズ・ドラマーには無い。基本的に2拍目4拍目の「裏」にスネアのアクセントがストンストンと入って、ブルーフォード独特のグルーヴ感を生み出す。これが意外と快感で病みつきになる。

冒頭の「Beelzebub」の変則拍子を聴くと「来た来た〜」と思わず嬉しくなる。全編に渡って、このブルーフォードの変則拍子ドラミングが独特のグルーヴ感を醸し出して、他のジャズ・ロックやクロスオーバー・ジャズに無い音世界を形成している。

そして、このブルーフォードの変則拍子ドラミングにバッチリ乗ってエレギを弾きまくるのが、ジャンルを跨いだ英国の奇才ギタリスト、アラン・ホールズワースである。このホールズワースのエレギが大活躍。このホールズワースの変態捻れギターが、この盤の音世界の「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」志向にしている。

ゲスト・ミュージシャンを見渡せば、ECMのニュー・ジャズ系トランペッターのケニー・ホイーラーがジャジーなトランペットを聴かせる反面、女性ボーカリストのアーネット・ピーコックが、いかにもプログレっぽい、怪しい雰囲気のイコライジングがかかったボーカルを聴かせてくれる。

アルバム全体の音志向は「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」だが、どこか英国カンタベリー・ミュージック風の音作りも見え隠れして、もしかしたらプログレ、なんて思ったりする瞬間があるから、この盤、聴いていてとても面白い。

演奏陣のテクニックも申し分なく、英国独特のロックとジャズの境界線が曖昧な、かなりハイレベルのクロスオーバー&ジャズ・ロックを確認することが出来る。そんな中で、ブルーフォードの驚異の「変則拍子」ドラミングだけが突出して目立っていて、この盤を凡百のクロスオーバー&ジャズ・ロック志向に留めていないところが素晴らしい。

演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第、というが、この盤でのブルーフォードのドラミングはその典型的な例の一つだろう。
 
 




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2024年4月14日 (日曜日)

クルセイダーズの『旋風に舞う』

クロスオーバー・ファンクに音楽性が変化した「クルセイダーズ」。『サザン・コンフォート』(1974年) から、徐々に米国南部の粘りのあるファンクネスが抜けて、洗練されたアーバンな雰囲気のファンクネスに変化、同時に、当時流行し始めていたフュージョン・ジャズにいち早く、適応していった時期が1970年代半ばの頃。そんな時期に、いよいよ、フュージョン・ファンクな音を整えたクルセイダーズの好盤がリリースされる。

The Crusaders 『Free as the Wind』(写真左)。1977年の作品。邦題『旋風に舞う』。ちなみにパーソネルは、Stix Hooper (ds, perc), Joe Sample (key), Wilton Felder (sax), Robert "Pops" Popwell (b) がメインのメンバー。ゲストに、ギターとして、Arthur Adams (track: B4), Dean Parks, Larry Carlton, Roland Bautista (tracks: B1, B3)、パーカッションとして、Paulinho Da Costa (perc, track: B1), Ralph MacDonald (special perc) が参加している。

オリジナル・メンバーのウェイン・ヘンダーソンが脱退し、グループにとっての「転換期」に制作されたアルバム。クルセイダーズの個性であった「米国南部の粘りのあるファンクネス」の雰囲気のおおよそを担っていた、ヘンダーソンのトロンボーンが抜けたのである。

ヘンダーソンのトロンボーンが抜けて、クルセイダーズ独特のファンクネスが、米国南部の粘りのある、ゴスペルチックな雰囲気を宿したファンクネスから、洗練されたアーバンな雰囲気のファンクネスに、明らかに変化している。
 

The-crusaders-free-as-the-wind

 
『サザン・コンフォート』(1974年) あたりから兆しが見え始めていた、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズへの傾倒。徐々にオリジナル・アルバムを重ねていって、この『旋風に舞う』では、ストリングスを配した洗練されたアレンジなど、当時流行のフュージョン・ジャズへの傾倒が明確になっている。もちろん、クルセイダーズ独特のファンクネスはしっかり保持されてはいるが、『サザン・コンフォート』あたりのファンクネスと比べると、グッと洗練されてアーバンな雰囲気が濃厚になったファンクネスに昇華されている。

同時にリズム&ビートも、ファンキーな雰囲気濃厚なものから、洗練された切れ味の良いファンキーなものに変化している。ファンクネスの雰囲気はあくまでクルセイダーズなんだが、とにかく「粘るファンキーなビート」から「シュッとしたファンキーなビート」に変化している。これは、ヘンダーソンが脱退した後、残ったオリジナル・メンバー3人が合意してのビートの変化だろう。

曲作りもアーバンで軽快、聴きやすくてキャッチなフレーズがメインで、ヘンダーソン脱退前の、米国南部の雰囲気漂う粘りのビート、ファンクネス濃厚でR&B志向のフレーズは跡形も無い。この大胆な音世界の変化は「面食らう」ほど。ヘンダーソン脱退前のクルセイダーズの音のファンは、ついていくのに大変だったろうな、と思う。

それでも、この『旋風に舞う』は、ビルボードのトップ・ソウル・アルバム・チャートで最高位8位を獲得。ヒットアルバムとなった。新しい音世界のクルセイダーズが受け入れられた、エポック・メイキングなアルバムでもあったのだ。
 
 

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2024年4月13日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・270

オスカー・ピーターソンは、ジャズを本格的に聴き始めた頃からの「お気に入りピアニスト」。「鍵盤の皇帝」と呼ばれるほどの超絶技巧とスイング感。高速フレーズをバリバリ弾きまくる。ドライブ感&グルーヴ感抜群。歌心溢れるバラード表現も秀逸。

『Con Alma: The Oscar Peterson Trio – Live in Lugano, 1964』(写真左)。1964年5月26日のライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Ed Thigpen (ds)。スイス南部にある都市ルガーノの「Teatro Apollo」で行ったコンサートの模様を収録した未発表音源。

「The Trio」=「黄金のトリオ」と表現された、ピーターソン=ブラウン=シグペンのピアノ・トリオ。この「黄金のトリオ」は、1959年から1965年まで行動を共にした訳ですが、この未発表のライヴ音源は、そのトリオの最終期、1964年のライヴ音源。トリオとして脂の乗り切った、円熟の極みにあったトリオの極上のパフォーマンスが記録されている。
 

Con-alma-the-oscar-peterson-trio-live-in

 
収録曲がなかなかで、冒頭の「Waltz for Debby」はビル・エヴァンスの十八番、4曲目の「Con Alma」はレイ・ブライアントの十八番なんだが、このライヴでは、ピーターソンならではのアレンジと弾き回しで、まるで弾き慣れたピーターソンの十八番の様に聴こえるから面白い。ベースのブラウンもドラムのシグペンも嬉々としてピーターソンのパフォーマンスをサポートする。

この頃のピーターソンの弾き回しは、ダイナミックでワイド・レンジで硬質タッチで超絶技巧な弾き回し。そんな弾き回しで、歌心溢れるバラードを展開し、小粋なスタンダード曲をキャッチーに、より魅力的に聴かせる。素晴らしいテクニック。恐らく、歴代のジャズ・ピアニストの中で、テクニックに関して、この時期のピーターソンがピカイチだろう。

上手すぎて面白くない、とか、バリバリ弾きまくる様を捉えて「侘び寂びがない」とか、スインギーなピアノを捉えて「スイングの権化」とか、なにかと「揶揄される」ピーターソンであるが、どうして、ピーターソンのピアノは、ジャズ・ピアノの歴史の中で、頂点に君臨する一人である。このライヴ音源を聴いて、改めてそう思う。
 
 

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2024年4月12日 (金曜日)

清々しいブレイクのドラミングです。

ジョナサン・ブレイク(Johnathan Blake)。1976年7月生まれ。今年で48歳。現代ジャズにおけるファースト・コール・ドラマーの一人。ブレイクのドラムは伝統的なハードバップ〜モード・ジャズのドラミングの継承。テクニックが高い分、彼のドラミングには幅と余裕があるが、叩きだすビートはポジティヴで「攻めのドラミング」である。

Johnathan Blake『Passage』(写真左)。2023年の作品。ブルーノート・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Johnathan Blake (ds, cymbals), Immanuel Wilkins (as), Joel Ross (vibes), David Virelles (p,key,Rhodes), Dezron Douglas (b)。

ドラマーのジョナサン・ブレイクがリーダー、アルト・サックスとヴァイブがフロントのクインテット編成。出て来る音は、正統派なネオ・ハードバップ & ネオ・モードなジャズ。ストイックでクールで硬派なパフォーマンスが展開される。

テンションを張り巡らして、切れ味の良いハイ・テクニックな演奏が爽快。正統派なネオ・ハードバップ & ネオ・モードなジャズに、ブレイクのドラミングが映えに映える。

さすがブルーノート・レコードでのリリース。パーソネルが「ふるっている」。それぞれが優秀な力のあるジャズマンばかりが集結。そんな精鋭部隊が、現代ジャズの最先端を行く「ネオ・ハードバップ & ネオ・モード」をやる。
 

Johnathan-blakepassage

 
テクニック素晴らしく迫力満点、伝統的なフォービートからフリー寄りの攻撃的なサウンドまで、これまでの硬派でストイックなジャズのトレンド&スタイルそれぞれに適応する。しかも、内容充実、聴きどころ満載なのだから、もうお腹いっぱい(笑)。

そんな伝統的なフォービートからフリー寄りの攻撃的なサウンドまで、全編に渡って、ジョナサン・ブレイクのドラミングが演奏の先頭に立ち、演奏をリードする。

演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第、というが、この盤でのブレイクのドラミングを聴いていると至極納得。全編に渡って、曲調&曲想によって、変幻自在、硬軟自在、緩急自在にドラミングの内容を変えつつ、バンド・サウンドを牽引するブレイクは見事。

奇をてらわない、バリバリ正統派なネオ・ハードバップ & ネオ・モードなジャズに真正面から取り組むブレイクのドラミングは清々しい。伝統的なジャズなので、過去のジャズと比較されることが多いと思うのだが、そんな心配は無用。現代ジャズの最先端の音とドラミングがこの盤に詰まっている。決して、過去を振り返っていないところが、これまた清々しい。好盤です。
 
 

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2024年4月11日 (木曜日)

ブライアン・ブレイドの初リーダー作

現代のファースト・コール・ドラマーの一人、アントニオ・サンチェスのリーダー作を聴いていて、他のファースト・コール・ドラマーのリーダー作を聴き直してみたくなった。まずは「ブライアン・ブレイド(Brian Blade)」。1970年生まれだから、今年54歳。ジャズ界では引っ張りだこのドラマーの一人である。

ブレイドのドラムは、多彩かつ大胆かつ繊細。非常に味のあるドラミングを披露してくれる。聴いていて惚れ惚れするくらい耳に心地良い、小粋なドラミング。シンバルをパルシヴに小刻みに刻んで、ビートの波を叩き出すのが最大の特徴。このブレイドのシンバル・ワークが秀逸。このシンバル・ワークをベースに、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミングを披露する。

『Brian Blade Fellowship』(写真左)。1998年の作品。ブルーノート・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ds), Melvin Butler (sax), Jon Cowherd (ac-p, el-p), Dave Easley (pedal steel g), Daniel Lanois (mando-g), Jeff Parker (ac-g, el-g), Christopher Thomas (ac-b), Myron Walden (as)。ブライアン・ブレイドの初リーダー作になる。

ブライアン・ブレイド・フェローシップ(以降、BBF)、1997年、ブライアン・ブレイドをリーダーとして結成されたバンド。楽器構成がユニークで、ペダル・スチール・ギターやマンドギター、ウーリッツァー・エレクトロニック・ピアノなどのジャズには珍しいエレ楽器も入れての8人編成。言い換えると「ブライアン・ブレイド・オクテット」である。
 

Brian-blade-fellowship
 

出てくる音は、コンテンポラリー・ジャズ、いわゆる「ニュー・ジャズ」である。即興演奏をメインに、それぞれの楽器がモーダルにフリーにスピリチュアルにインタープレイを展開しつつ、フュージョン、フォーク、ゴスペルな音要素をも包含して、21世紀に通じる「ニュー・ジャズ」を展開。様々な表現を反映して楽曲がバリエーション豊かに収録されている。

そんなバリエーション豊かな内容の楽曲の中で、ブライアン・ブレイドのドラミングは白眉の出来。「シンバルをパルシヴに小刻みに刻んで、ビートの波を叩き出し、このシンバル・ワークをベースに、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミング」というブレイドのドラミングの個性がこの盤の中に溢れている。

ブレイドの多彩なドラミングが推進エンジンとなって、様々なニュアンスの即興演奏&インタープレイが展開される。どの楽器も音は好調。4ビート・ジャズとは全く正反対の、エモーショナルでクールな「ニュー・ジャズ」志向のパフォーマンスは、このBBFの最大の個性。エレ楽器を包含しているが、このバンドの音はあくまで「純ジャズ」の範疇に軸足がしっかりある。

ジャズの世界で「初リーダー作」は、そのリーダーのジャズマンの個性が明確に出る、というが、このブレイドの初リーダー作はその例に漏れない。ブレイドのドラミングを理解する上で、必聴のリーダー作だと言える。21世紀の「ニュー・ジャズ」としても聴き応え十分。好盤です。
 
 

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2024年4月10日 (水曜日)

サンチェスの初リーダー作を聴く

昨日、アントニオ・サンチェス(Antonio Sánchez)の『Three Times Three』(2014年)を聴いて、彼は現代ジャズの先端を行くドラマーの一人だということを再認識。そういえば、まだ、当ブログで、彼の初リーダー作を記事にしていないことに気がついた。と言うことで、早急に彼の初リーダー作を聴き直してみた。

Antonio Sánchez 『Migration』(写真左)。2007年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Antonio Sanchez (ds), David Sanchez, Chris Potter (sax), Scott Colley (b), 特別ゲストとして、Pat Metheny (g), Chick Corea (p)。2002年にパット・メセニー・グループに招聘されて以来、メセニーとの共演の傍での初リーダー作。そのメセニーとチック・コリアが特別ゲストとして招かれている。

主役のサンチェスのドラミングの個性とスキルがはっきりと聴き取れる。スネアを中心にスネア・タムとをマシンガンの如く、高速で切れ味よく叩きまくる。どこか、トニー・ウイリアムスを彷彿とさせるところがあるのだが、トニーほどデジタルチックな叩きっぷりではない。サンチェスの高速ドラミングはウェーヴを生み出すような、抑揚のある叩きっぷり。このドラミングはとても個性的。以前のジャズ・ドラマーには無い個性である。
 

Antonio-sanchez-migration

 
演奏全体の雰囲気は、上質のネオ・ハードバップ & ネオ・モード。サックスの二人は一聴すれば、何となくコルトレーン風に聴こえるところはあるが、コルトレーンより、フレーズがシャープで活度が高く、爽快感があってアドリブのイマージネーションが豊か。二人ともしっかりとオリジナリティーを確保している。二人のサックス奏者は「コルトレーンのそっくりさん」では無い。

この二人のサックスのバックでのドラミングと、特別ゲストのチックのバック、メセニーのバック、それぞれでのドラミングは明らかに異なる。二人のサックス、チックのピアノ、メセニーのギター、それぞれの個性が活きるよう、それぞれのフロント楽器の推進力となるよう、サンチェスは、サンチェスの個性そのままに、ドラミングの内容を変えている。これは見事。サンチェスのドラミング・スキルの高さがよく判る。

上質のネオ・ハードバップ & ネオ・モードの演奏の中で、サンチェスのドラミングの個性をはっきり浮き上がらせ、特別ゲスト二人と共演することで、サンチェスのドラミング・スキルの高さを証明する。ジャズの世界で「初リーダー作」は、そのリーダーのジャズマンの個性が明確に出る、というが、このサンチェスの初リーダー作はその好例の一つ。サンチェスのドラミングを理解する上で、必聴のリーダー作だと言える。
 
 

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2024年4月 9日 (火曜日)

ドラマー、サンチェスの力量

現代の一流ドラマーの一人、アントニオ・サンチェス(Antonio Sanchez)。1971年11月1日生まれ。今年で53歳、バリバリの中堅ドラマー。2002年の作品『Speaking of Now』にて、パット・メセニー・グループ(PMG)に参加。初リーダー作は、2007年の『Migration』。これまで9枚のリーダー作をリリース。現在では、押しも押されぬ、現代のジャズ・ドラマーの代表格の一人になっている。

Antonio Sanchez 『Three Times Three』(写真左)。2013年10-12月の録音。トリオというフォーマットにこだわって制作した企画盤。CD2枚組の大作で、3種類のトリオ編成は、1)スタンダードなピアノ・トリオ、2)ギター入りのピアノレス・トリオ、3)テナー入りのピアノレス・トリオ の3種類。

スタンダードなピアノ・トリオのパーソネルは、Antonio Sánchez (ds), Matt Brewer (b), Brad Mehldau (p)。担当する楽曲は、1枚目の1曲目「Nar-this」、2曲目「Constellations」、3曲目「Big Dream」。

ギター入りのピアノレス・トリオのパーソネルは、Antonio Sánchez (ds), Christian McBride (b), John Scofield (g)。担当する楽曲は、2枚目の1曲目「Fall」、2曲目「Nook And Crannies」、3曲目「Rooney And Vinski」。

テナー入りのピアノレス・トリオのパーソネルは、Antonio Sánchez (ds), John Patitucci (b), Joe Lovano (ts)。担当する楽曲は、2枚目の4曲目「Leviathan」、5曲目「Firenze」、6曲目「Firenze」。
 

Antonio-sanchezthree-times-three

 
スタンダードなピアノ・トリオのピアノ担当は、ブラッド・メルドー。ベースがマット・ブルーワー。メルドーのピアノとサンチェスのドラム、さすが、超一流の演奏家同士、素晴らしいインタープレイを聴かせてくれる。そこに一回り若いブルーワーのベースが入るのだが、このブルーワーのベースが現代のネオ・ハードバップ、ネオ・モードを牽引するかの如き、柔軟で新しい感覚のベースで、インタープレイの底をガッチリと支えている。

ギター入りのピアノレス・トリオのギター担当は、ジョン・スコフィールド。ピアノレスが効いていて、ジョンスコのギターとサンチェスのドラムとが、ダイレクトにインタープレイの交歓をするところがスリリング。そこにダイレクトに絡むハイ・テクニックで骨太なマクブライドのベースが、これまたスリリング。

テナー入りのピアノレス・トリオのテナー担当は、ジョー・ロバーノ。こちらもピアノレスが効いていて、ロバーノが自由奔放にテナーを吹き上げる。そこに効果的にリズム&ビートを絡ませるサンチェスのドラミングは見事。そんな柔軟自在なインタープレイを整え前へ進める推進役のパティトゥッチのベー氏がこれまた見事。

3種類のトリオ演奏の中で、明らかにドラミングの内容を変えて、それぞれのトリオでの楽器、共演者の個性に対して、一番、効果的でバンド・メンバーそれぞれの個性が一番はえるドラミングをするサンチェスは素晴らしいの一言。

演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第、というが、このサンチェスの企画盤を聴いていて思わず納得。この企画盤、ドラマー、サンチェスの力量をしっかり確認できる好盤だと思います。ジャズ・ドラマーのリーダー作として白眉の出来です。
 
 

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2024年4月 8日 (月曜日)

コニッツの歌心と即興演奏の妙

Lee Konitz(リー・コニッツ)。1927年10月13日、米国シカゴ生まれ。2020年4月15日、米国NYにて逝去。享年92歳。コロナ感染が起因の合併症での逝去であった。トリスターノ門下生として「クール・ジャズ」推進の旗手の一人として活躍。その後、即興演奏の極みを求めて、様々な演奏フォーマットにチャレンジ。70年余の活動期間の中で、自らのスタイルを貫き通した「サックスの仙人」である。

Lee Konitz『Tenorlee』(写真)。1977年1月7日、7月24日、1978年3月23日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Lee Konitz (ts), Jimmy Rowles (p), Michael Moore (b)。「アルト・サックスの仙人」がリーダーの、ドラムレスの変則トリオ編成。コニッツの「即興演奏の可能性のチャレンジ」シリーズの一枚。

この時代のコニッツは、自由度の高い、硬軟自在、緩急自在のインプロビゼーションが素晴らしい時代。「即興演奏の可能性のチャレンジ」に没頭している割に、コニッツのサックスには、尖ったところ、鋭角立ったところがなく、音のエッジは切れ味が良いが、フレーズはあくまで流麗。即興演奏なのに、よくまあこれだけ流麗なフレーズを瞬間瞬間に吹けるなあ、と聴くたびに感心する。
 

Lee-konitztenorlee

 
ドラムレスのトリオ編成なので、リズム&ビートがドラムに規制されず、時にアルト・サックスが、時にピアノが、時にベースが、演奏の「リズム&ビート」を代わる代わる先導する。テナー、ピアノ、ベース、それぞれの楽器毎に醸し出される「リズム&ビート」は、そのニュアンスが異なるので、ドラムが一手に「リズム&ビート」を担う場合に比べて、即興演奏の幅と奥行きが広がる。

スタンダード曲がずらりと並ぶが、スタンダード曲を素材として、素晴らしい即興演奏が展開されている。特にコニッツのテナーが流麗でバリエーション豊かで素晴らしい吹き回し。恐らく、今回のコニッツはテナーを持っているので、演奏全体の雰囲気がユッタリと唄う様な感じになっていて良い感じ。コニッツの歌心と即興演奏のテクニックと閃きを感じ取るのに格好の内容になっている。

即興演奏の可能性にチャレンジしているのだが、いきなりフリー・ジャズに走らず、モダン・ジャズの伝統的な演奏形式の範囲内で演奏フォーマットの編成を変えたり、アルトとテナーを持ち替えたり、コニッツはイマージネーション豊かに「即興演奏の可能性のチャレンジ」を推し進める。「純ジャズ・冬の時代」の1970年代に、メインストリームど真ん中のコニッツの活躍。今から振り返ると「素晴らしい」の一言である。
 
 

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2024年4月 7日 (日曜日)

お蔵入りだった 『Loose Blues』

ビル・エヴァンスはジャズ界最高のピアニストの一人。活動期間は、初リーダー作が1956年。第一線で活躍の中、1980年9月に急死。約25年の活動期間だった。

約25年の第一線の活動期間の中で、ハードバップからモード・ジャズを自家薬籠のものとし、1970年代のクロスオーバー〜フュージョン・ジャズの時代にも、自らのスタイルを変えること無く、メインストリーム志向のビル・エヴァンス流の純ジャズなピアノを深化させた。

Bill Evans『Loose Blues』(写真左)。1962年8月21–22日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Zoot Sims (ts), Jim Hall (g), Ron Carter (b), Philly Joe Jones (ds)。ビル・エヴァンスがリーダー、ズートのテナー、ホールのギターがフロントのクインテット編成。ベースは、若き日のロン・カーターが担当している。

この盤の一ヶ月前に、同じクインテット編成(ズートの代わりにハバードのトランペット、ベースがヒース)での有名な録音に『Interplay』があるので、この有名盤の二番煎じか、と想像するのだが、聴いてみると、どちらかと言えば、『Loose Blues』の方が内容が充実している。ちなみに、この『Loose Blues』の音源は、『Interplay』の音源とは録音年月日が違うので、全くの別物である。

『Interplay』が先行してリリースされて、その1ヶ月後に同じクインテットの編成で『Loose Blues』が録音されて、当時のリヴァーサイド・レーベルとしては経営が苦しくなっていて、同傾向のアルバムを1〜2ヶ月のうちに2枚出しても売上げ貢献しない、との判断で、『Loose Blues』はお蔵入りしたのではないか、と思っている。
 

Bill-evansloose-blues

 
確かに、この『Loose Blues』は、1962年に録音〜お蔵入りして、1983年に我が国にて、単独のアルバム『Unknown Session』として、ようやく陽の目を見ている。米国では、マイルストーン・レーベルから『Loose Blues』のタイトルで再発されている。

さて、この『Loose Blues』の内容であるが、同時期録音の有名盤『Interplay』と比肩する、もしくは上回る充実度の高さである。まず、フロントを司る、ズートのテナー、ホールのギターが相性良く好調。とりわけ、ゆったりと余裕あるズートのテナーは、力感溢れ、歌心をしっかり宿したハードバップなテナーで、収録曲のどこ演奏でも「唄うが如く、語るが如く」で、リラックスして聴ける。

ズートのテナーが歌心をしっかり宿したハードバップなテナーなので、この盤でのフロントの相棒、ジム・ホールのギターは、いつになくプログレッシブでハードなアドリブ展開を披露する。「軟」のズートに「硬」のホール。このフロント楽器同士の対比、コントラストがなかなか良い。

ビル・エヴァンスのピアノを核とした、ロン+フィリージョーのリズム・セクションも適度に余裕ある、内容充実なバッキングを展開、フロントをユッタリ鼓舞し、リズム&ビートを要所要所でキッチリ締めて、なかなか聴き応えがある。テンションを張った、切れ味の良いリズム・セクションでは無いが、とても伴奏上手な、典型的なハードバップなリズム・セクション。これがまた良い。

ビル・エヴァンスのピアノとズートのテナーとの相性も良く、安心してリラックスして聴けるハードバップな佳作です。この後、ビル・エヴァンスは大手ジャズ・レーベルのヴァーヴ・レーベルに移籍、メインストリーム志向のビル・エヴァンス流の純ジャズなピアノを深化させていくことになる。
 
 

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2024年4月 6日 (土曜日)

これぞ、クルセイダーズの音世界

クルセイダーズは息の長いバンド。1961年にジャズ・クルセイダーズとしてアルバム『フリーダム・サウンド』でメジャー・デビュー。以降、R&Bやソウル・ミュージックの要素を取り込んだ、粘るビートの効いたファンキー・ジャズをメインとし活動。

そして、1971年にグループ名を「ザ・クルセイダーズ」に改名。エレ楽器メインのクロスオーバー志向のジャズ・ファンクに音楽性を変えながら、1970年代半ばには、フュージョン志向のジャズ・ファンクに到達。当時、フュージョン・ジャズの人気グループにのしあがった。

The Crusaders『Southern Comfort』(写真)。1974年の作品。ちなみにパーソネルは、Wayne Henderson (tb), Wilton Felder (b, sax), Joe Sample (key), Stix Hooper (ds), Larry Carlton (g)。

ラリー・カールトンが正式メンバーとなって初のアルバム。1973年に発表された通算7枚目。あまりの充実ぶりで、LP時代はLP 1枚では収まらず、LP2枚組の大作でリリースされている。

我が国では当時、知名度も人気はまだまだのバンドだったが、ビルボードの「US Top LPs & Tape」で31位、「US Soul LPs」で3位、「US Jazz LPs」でトップを獲得したヒット・アルバム。
 

The-crusaderssouthern-comfort

 
内容的には、R&Bやソウルと融合したファンキー・ジャズから、クロスオーバー志向な切れ味の良いジャズ・ファンク、そして、当時の近未来、ソフト&メロウなフュージョン思考のジャズ・ファンクまでを広範囲にサポートしている。

フェルダーのベースと、フーパーのドラムが醸し出す、クルセイダーズ独特の粘りのある、重量感溢れるファンキーなオフビートが、アルバム全曲の底に流れていて、この盤には、クルセイダーズらしさが満載。

ヘンダーソンとフェルダー2管のユニゾン&ハーモニーも実にファンキーでソウルフル。サンプルのエレピは「こってこて」ファンキーで流麗、そして、今回、正式加入したカールトンのエレギが、小粋でアーバンな雰囲気を濃厚にしている。

LP2枚組の後半の長尺の4曲は、クルセイダーズの音の歴史の中のピークの辺りをさし示してくれる、当時のクルセイダーズの充実度を示す力作揃いで、クロスオーバー志向のジャズ・ファンクの名演、そして、その先のフュージョン志向のジャズ・ファンクな演奏が展開されていて、聴き応え十分。

唯一無二の「アーバンな雰囲気を漂わせた、米国南部の雰囲気満載のジャズ・ファンク」集団、これぞクルセイダーズ、って感じの大作『Southern Comfort』。この盤をスタートラインとして、クルセイダーズは徐々に、ソフト&メロウな要素を取り込みつつ、クルセイダーズ独特のフュージョン色を強めていく。
 
 

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