2023年3月16日 (木曜日)

ラヴァの硬派な「純ジャズ」

2日ほどお休みをいただきましたが、本日、ブログ再開です。

さて、久々にイタリアン・ジャズのお話しを。イタリアン・ジャズの至宝トランペッター、エンリコ・ラヴァである。1972年に初リーダー作をリリースしている。約50年間、イタリアン・ジャズの第一線を走ってきた。1939年の生まれなので、今年で84歳。イタリアン・ジャズのレジェンド中のレジェンドである。

Enrico Rava Quartet『Ah』(写真)。1979年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (tp), Franco D'Andrea (p), Giovanni Tommaso (b), Bruce Ditmas (ds)。エンリコ・ラヴァのトランペット1管がフロントの「ワンホーン・カルテット」な編成。ラヴァのトランペットの本質と個性がとても良く判る編成での演奏になる。

まず、ラヴァのトランペットの素姓の良さを強く感じる。輝く様にブリリアントなトランペットの響き。スッと伸びるロングトーン。切れ味の良い高速パッセージ。とにかくラヴァのトランペットの音は美しい。そして、流麗なアドリブ・フレーズを吹き切るテクニックの高さ。音の「質」は、米国ジャズのトランペットの様な「ファンクネス」は希薄。クラシック音楽の端正で粒立ちの良い響きを踏襲している様で、それが「欧州ジャズ」特有の「質」なんだろう。
 

Enrico-rava-quartetah

 
演奏の基本は「欧州モダン」。しかし、アドリブ展開に入ると、限りなく自由度の高いモーダルな展開から、フリーにスピリチュアルに大胆に展開し、アブストラクトにブレイクダウンする。と思いきや、統制の取れた構築力の高いアンサンブルで疾走する。1979年というフュージョン・ジャズ全盛時代に、こんなバリバリ硬派でモダンな「ニュー・ジャズ」が演奏されていいたとは。さすがにECMレーベルである。

イタリア出身のジョヴァンニ・トマッソのベース、米国出身のブルース・ディトマスのドラムもラヴァに負けずとも劣らない、限りなく自由度の高いモーダルな展開から、フリーにスピリチュアルに大胆に展開にガッチリ追従し、柔軟に応対する。このリズム隊のレベルの高さも、このラヴァ盤の内容充実に大いに貢献している。

実にECMらしい、欧州モダンらしいニュー・ジャズがてんこ盛り。実はこの盤、ECMレーベルからのリリースでありながら、プロデューサーがマンフレート・アイヒャーではなく、トーマス・ストウサンド(Thomas Stöwsand)で、その結果、ECMの「ニュー・ジャズ」というよりは、ECMレーベルの中では、ちょっと異色の「メンストリーム系の純ジャズ」の雰囲気が濃厚になっている。ガッシガシ硬派な欧州系の純ジャズです。
 
 

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2023年3月 5日 (日曜日)

ラヴァとハーシュのデュオ新盤

イタリア・ジャズも隆盛を維持して久しい。レジェンド級のベテランから、若手新人まで、コンスタントに好盤をリリースし続けている。聴き比べると意外と良く判るが、イタリア・ジャズにはイタリア・ジャズなりの独特の雰囲気があって「統一感」がある。マイナー調でクラシック風のモーダルなフレーズが個性的。

Enrico Rava & Fred Hersch『The Song Is You』(写真左)。2021年11月、スイスのルガーノでの録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (flgh), Fred Hersch (p)。イタリア・ジャズの至宝トランペッター、エンリコ・ラヴァと、リリカルで耽美的なピアノ詩人のフレッド・ハーシュ、2人のみの「デュオ演奏」。

エンリコ・ラヴァはイタリア・ジャズの至宝。1972年に初リーダー作をリリース、今年84歳、レジェンド級の大ベテランである。1975年にECMでの初リーダー作をリリース、1986年の『Volver』で一旦ECMを離れるが、2003年、『Easy Living』でECMにカムバック。以降、2〜3年に1枚のペースで、ECMからリーダー作をリリースしている。

ラヴァは、ピアニストとのデュオがお気に入りらしく、5〜6人の第一線級のジャズ・ピアニストとのデュオ・アルバムを録音している。ラヴァのトランペットは、イタリア・ジャズらしく、哀愁感漂うマイナー調をメインに、流麗でブリリアントで、端正なクラシック風のモーダルなフレーズが身上。

心ゆくまでトランペットを吹き上げるには、ベースやドラムのいないピアノとのデュオが一番なんだろう。ピアノは打楽器の要素も備えていて、リズム&ビートとベースラインはピアノ一台でまかおうと思えば、まかなえるのだ。今回は、ハーシュのリリカルで耽美的なピアノに合わせたのか、ラヴァは、音の丸い、柔らかで暖かな音色のフリューゲルホーンを吹いている。
 

Enrico-rava-fred-herschthe-song-is-you1  

 
フレッド・ハーシュは、米国オハイオ州シンシナティ生まれ。今年55歳の中堅ピアニスト。初リーダー作が1985年。結構な枚数のリーダー作をリリースしているが、所属レーベルは定着せず、マイナーレーベルからのリリースがほとんど。

また、1984年にHIVウイルスに感染、2008年にはウイルスが脳に転移し2ヶ月間の昏睡状態に陥っている。そんな大病の影響もあって、我が国には、ハーシュの情報はほとんど入って来なかった。

1990年代の終わりに、Palmettoレーベルにほぼ定着したが、それでも我が国で、ハーシュの名前が流通しだしたのは、つい最近のこと。今回、このラヴァとのデュオで、ECMレーベルでの初録音になる。

ハーシュのピアノは耽美的でリリカル。米国のピアニストでありながら、ファンクネスは限りなく希薄。どちらかといえば、欧州ジャズのピアノに近い響きを有していて、そういう点でも、今回のECMでの録音は、ハーシュのピアノの個性にピッタリである。

さて、アルバムの内容であるが、2人のオリジナル曲も良いが、やはり、アントニオ・カルロス・ジョビン、ジェローム・カーン&オスカー・ハマースタインII世、そして、セロニアス・モンクのスタンダード曲でのデュオ演奏が白眉。ECMレーベルの音作りに即した「リリカルで耽美的、透明度が高く、端正でスピリチュアルな」ニュー・ジャズ志向のデュオ演奏が素晴らしい。

ラヴァのリリカルで耽美的で流麗なニュー・ジャズ志向のフリューゲルホーンは意外に珍しいのでは無いか。でも、とても良い。どの曲でも、ラヴァのフリューゲルホーンは朗々と暖かく、ブリリアントに柔軟に鳴り響く。そして、ハーシュのピアノは、ラストの「Round Midnight」のソロ演奏に収束される。独り対位法をちりばめながら、鍵盤をフル活用して、ダイナミックに、モンクの名曲を弾き上げる。

近年で白眉の出来のフリューゲルホーンとピアノの「デュオ演奏」。即興演奏の妙もふんだんに聴くことが出来て、音の展開の美しいことこの上無い。良いアルバムです。
 
 

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2023年1月19日 (木曜日)

禅問答の様なピアノ・トリオ

ピーター・アースキン(Peter Erskine)と言えば、伝説のエレジャズ・バンド「Weather Report」の黄金期のドラマーなので、フュージョン・ジャズ畑のドラマーという先入観があるんだが、どうして、硬派なメインストリーム系の純ジャズで叩かせても、相当の腕前を持っていることが判る。

Peter Erskine featuring John Taylor and Palle Danielsson『Juni』(写真左)。1997年7月、オスロの「Rainbow Studio」での録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Peter Erskine (ds), John Taylor (p), Palle Danielsson (b)。ドラマーのピーター・アースキンがリーダーのピアノ・トリオ編成。

ピアノにジョン・テイラーが座る。ジョン・テイラーのピアノは昔から好きで、当ブログではあまり記事にしないが、ちょくちょくとその名を思い出しては聴いている「お気に入りのピアニスト」の一人である。そこにスウェーデン出身のベーシスト、パレ・ダニエルソンがいる。英国のピアニストと北欧のベーシスト、そして、アースキンは米国のドラマー。録音はECM。ということで、出てくる音は、ECM印の欧州ジャズ・トリオな音。
 

Peter-erskinefeaturing-john-taylorand-pa

 
水墨画を見る様なトリオ演奏である。「侘び寂び」を忍ばせつつ、硬質でクリスタルで深いエコーを伴って、幽玄な拡がりをもって、力強く漂う楽器の音。ビートをしっかり効かせた、限りなく自由度の高いモーダルな展開。禅問答の様な、集中してお互いの音に耳を傾けながら、打てば響く響いては打つ、一体感溢れる高度なインタープレイ。現代音楽に通じる前衛的なタッチでフリーの如く迫る即興演奏。

独特の響きを湛えたピアノ・トリオ演奏である。北欧ジャズ風ではあるが、北欧ジャズほど流麗でリリカルでは無い。ジョン・テイラーのタッチはどこかバップ、そして、前衛風。アースキンのドラムは柔軟度が高く、ポリリズミックなドラミングは変幻自在であり硬軟自在。ダニエルソンのベースは、しっかりと安定したビートを効かせて、バンド全体の自由度の高いインプロを破綻させることは無い。

「禅問答の様なトリオ」と形容されるこのピアノ・トリオ、その特徴と個性がこの盤に溢れている。現代ジャズにおける、ニュー・ジャズな響きを宿したピアノ・トリオとして「ピカイチ」の出来だろう。あまり話題に上らないピアノ・トリオだが、ECMで4枚のアルバムをリリースしていて、どれもが秀逸な出来。もっと注目されてもいいピアノ・トリオのパフォーマンスである。
 
 

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2023年1月16日 (月曜日)

チックの尖ってカッ飛んだ傑作

チックのピアノは「硬質で切れ味の良いエッジの立ったスピード感溢れるタッチ」で、現代音楽風の、前衛的な響きを宿したピアノの弾き回しが特徴。そんな尖ったタッチで、尖ってばかりでは無い、流麗でメロディアスなフレーズを弾いたり、スパニッシュ・フレーバーなフレーズを弾いたり、ロマンティシズムな弾き回しが堪らない。

そんなチックが、若かりし頃、最高に尖って、フリー一歩手前のガンガン自由度高い弾き回しでブイブイ言わせていた時期がある。そんな時期、チック率いるリズム・セクションの「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」の尖った2枚のリーダー作の2枚目がこの盤。

Chick Corea『A.R.C.』(写真)。1971年1月11ー13日の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p, key), Dave Holland (b), Barry Altschul (ds)。もちろん、このチック率いるトリオは「Circle(サークル)」のリズム・セクションそのもの。

この盤は、まだ駆け出しのECMレーベルからのリリース。チックの尖った現代音楽風の限りなく自由度の高いモーダルな演奏」に着目した、ECMも総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーの慧眼、恐るべしである。
 

Chick-corea-arc_1

 
チック率いるリズム・セクションの「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」の前作『The Song of Singing』にも増して、尖りに尖った、ぶち切れて、カッ飛んだチックのピアノが凄まじい。ECMエコーの録音に、チックの現代音楽風の、前衛的な響きを宿した硬質で尖ったタッチが心地良く響く。ホランドのベースは締まった低音でチックを支え、アルトシュルのドラムは、ど天然で自由なポリリズムでチックを鼓舞する。

そして、前作『The Song of Singing』のラストに収録されていた、ショーター作のモーダルな名曲「Nefertiti」が、この盤にも演奏されていて、しかも先頭に収録されている。これが凄い。本当にギリギリでフリーの手前、限りなく自由度の高いモーダルな「Nefertiti」が疾走する。

このECM盤の「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」には、流麗でメロディアスなフレーズ、スパニッシュ・フレーバーなフレーズなど、ロマンティシズムな弾き回しは皆無。ただただ、尖ってカッ飛んだ、現代音楽風の前衛的な響きを宿した、硬質で切れ味の良いエッジの立ったスピード感溢れる「インタープレイ」だけが疾走する。

アルバムのタイトルは、当時、チックが関わっていたサイエントロジーの用語である「Affinity, Reality, Communication(親和性、現実、コミュニケーション)」の略。よくよく見ると、タイトルからして、むっちゃ尖ってカッ飛んでいる(笑)。
 
 

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2023年1月 8日 (日曜日)

チックの「フリーへの最接近」3

チックがブラックストンと出会って結成した「Circle(サークル)」というクインテット。僕がジャズ者初心者の頃のジャズ盤紹介本では「チックがフリーに走って失敗したバンド」なんて書いていたが、よくよく聴くと失敗バンドなんてとんでもないと思う。まあ1年足らずで解散したバンドなので「失敗バンド」なイメージが湧くのだろうが、ジャズの世界では、そもそも長く続くパーマネントなバンドは数が少ない。

即興演奏をメインとするジャズである。メンバーを固定して、バンドの音志向を固定したら、マンネリに陥るリクスは高まるだろうし、ジャズマンも人間である、飽きも来るだろう。即興演奏をイマージネーション豊かにやるには、まず演奏を楽しく、モチベーション豊かであることが大切だと思うので、そういう意味で、そもそも長く続くパーマネントなバンドは数が少ないのだろう。

Circle『Paris Concert』(写真)。1971年2月21日、パリでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Anthony Braxton (reeds, perc), Dave Holland (b, cello), Barry Altschul (ds, perc)。アンソニー・ブラックストンが1管フロントのカルテット編成。

CDの時代になって、Ciecleの諸作はリイシューされる機会が僅少で、何とか入手出来る音源はこのライヴ盤しか無かった時期が長く続いた。このライヴ盤でチックの伝説のバンド「Circle(サークル)」を体験する訳だが、これがジャズ評論家の方々が言う「チックのフリー・ジャズ」として聴くと「???」。確かにところどころでフリー・ジャズっぽい展開はあるにはあるが、良く聴くとこれはフリー・ジャズじゃない。

フリー・ジャズって、①音階(キー)から、②コードあるいはコード進行から、③ハーモニーから、④リズムから、の束縛から逃れる、いわゆる「フリー」になって演奏するジャズ演奏の事。

このチックの「Circle(サークル)」サウンドって「限りなく自由度の高いモード・ジャズ」がメインで、フリー・ジャズに走る時は、どちらかといえば「前衛音楽のマナーを踏襲した即興演奏」で純粋なフリー・ジャズでは無いと感じている。
 

Circle-paris-concert

 
そして、ブラックストンのリード楽器だけが、フリー・ジャズの前提を踏襲していて、チック率いるリズム・セクションが奏でる「前衛音楽のマナーを踏襲した即興演奏」とは、全く噛み合わない。この噛み合わないところに「張りつめた様な緊張感を生んでいる」とされ、「スリリングな演奏」とされた訳だが、それはちょっと、聴き手側の勝手な解釈なんでは、と思ってしまう。

ブラックストンからすると「皆、フリー・ジャズやってよ」なんだろうし、チック率いるリズム・セクションからすると「あれれ、フリー・ジャズと前衛音楽って、似て非なるものやったんや〜」なんだったと思う。ブラックストンは現代音楽の影響を強く受けたフリー・ジャズなリード奏者とされるが、実は根っからのフリー・ジャズ志向のリード奏者だったことがこのライヴ盤を聴いていて良く判る。

恐らく、チックもブラックストンも「フリー・ジャズと前衛音楽って、根っこは同じ」と思ったんだろうし、お互い「現代音楽の影響を強く受けている」と思ったんだろうし、「Circle(サークル)」結成当初は「イケる」と感じていたんではないか、と思う。しかし、やってみて、限りなく自由度の高いモーダルな演奏と完全フリーな演奏との混在は想像以上に無理があった、ということが実際に判ったのだろう、と想像している。

そう解釈すれば、この『Paris Concert』というライヴ盤、チック率いるリズム・セクションの「限りなく自由度の高いモード・ジャズ」がメインで、モード・ジャズの自由度を最大限に追求して突き詰めていったら「前衛音楽のマナーを踏襲した即興演奏」に展開するのが一番当たりが良い、という演奏志向を前提としたインプロビゼーションの素晴らしさを心ゆくまで愛でることの出来る盤だということになる。

ブラックストンには悪いが、モード・ジャズを突き詰め、前衛音楽マナーのフリーな展開をバリバリ弾きまくる、若き尖ったチックは魅力的。そして、それに追従するホランドの重量感溢れるベースと、限りなく自由でポリリズミックなアルトシュルのドラムも実に良い。ということで、このライヴ盤は、チック率いる、尖ったリズム・セクションを愛でる盤、という結論になる。

何度も言うが、ブラックストンには悪いと思っている。ブラックストンは、この「Circle(サークル)」の後、優れた完全フリー・ジャズなリーダー作を何枚もリリースしているので、ブラックストンについては、こちらを聴いて、彼の優れた資質と個性を愛でている。
 
 

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2022年11月 4日 (金曜日)

ソロライヴ「ボルドーのキース」

2017年2月15日の米「カーネギーホール」でのコンサート以降、一切公演を行っていないキース・ジャレット。その後、2018年2月と5月、2度の脳卒中を起こし、左半身が麻痺。1年掛けてかなりリハビリしたものの、片手でしか演奏できず、キースいわく「両手演奏のピアノ曲を聴くと、非常にもどかしく感じる」。それから、3年が経過している。キースの状態はどうなんだろう。

最近、キースはNPRからのインタヴューを受けたらしく、現在はニュージャージー州北西部の自宅で静かにリハビリを続けていて、ピアノの前に座り、インプロヴィゼーション、スタンダード、ビバップを右手で弾いていると明かしているそうだ。復帰する、しないに関わらず、回復して欲しいと切に思う。

Keith Jarrett『Bordeaux Concert』(写真左)。2016年7月6日、フランスのボルドーでのライヴ録音。キース・ジャレットのソロ・パフォーマンスの記録。

キースの最後の欧州ツアーの最初に録音された『ブダペスト・コンサート』、その欧州ツアーの最後に録音された『ミュンヘン2016』は既にリリースされている。今回リリースされた『ボルドー・コンサート』は、同じ最後の欧州ツアーにおけるブダペストのコンサートから3日後、ミュンヘンのコンサートの10日前に録音された作品。

ブタペストでは、前半は「バルトークへの生涯の愛着にインスパイアされたソロ・パフォーマンス」、後半は「耽美的でメロディアスで躍動的でジャジーなパフォーマンス」で構成されていた。
 

Keith-jarrettbordeaux-concert

 
ミュンヘンでは、前衛音楽の様なフリーキーな即興演奏から、アーシーなリズム&ビートを伴ったアメリカン・フォーキーな演奏、モーダルで限りなく自由なスタンダード演奏まで、なかなかバリエーションに富んだ内容だった。
 
このボルドーでは、ブダペストやミュンヘンと同じく、往年の「長尺の演奏で、起伏のある抒情的なメロディアスな曲」とは異なる、短尺の曲が志向を変えて入れ替わり立ち替わり展開されるという構成は変わらない。

オープニングは抑えめな曲調で、現代音楽風の無調なインプロから始まるが、後半になるに従って、ブタペストの様な「耽美的でメロディアスで躍動的でジャジーなパフォーマンス」になって、特に「美しい曲想」のパフォーマンスが多い。前半は「現代音楽〜現代クラシック」の志向が強く、後半は「極上の耽美的で躍動的なジャズ」の志向が強くなる。

キースのソロ・パフォーマンスのショーケースの様な内容で、適度なテンションの中、切れ味の良い、ダイナミックかつ繊細な、極上なピアノ・ソロの連続に、これはこれで良いよな、と一気に13の即興演奏を聴き通してしまう。

最近のインタヴューで、同じツアーで既に発売されている2作(ブタペスト、ミュンヘン)と本作以外に、他に訪れてライヴ演奏をした、ウィーンとローマも発表したいとのこと。そちらのリリースも大いに期待したい。
 
 
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2022年9月 9日 (金曜日)

久し振りにフリー・ジャズです

やっと涼しくなってきた。最高気温が30度を切る日が2日続いて、夜になると涼しい北風が吹き込んでくる。日中はまだまだ湿度が高く、蒸し暑い体感はあるんだが、夜になると、いつの間にか、虫の鳴く声が聞こえてきて、いよいよ秋かな、という感じがする。「暑さ寒さも彼岸まで」というが、あと2週間ほどは、もう少しだけ、この日中の蒸し暑さを我慢する必要があるのかな。

Paul Bley, Evan Parker & Barre Phillips『Time Will Tell』(写真)。1994年1月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (p), Evan Parker (ts, ss), Barre Phillips (b)。ドラムレス、ピアノ、テナー、ベースの3者のフリー・インプロビゼーション。メンバー3人の名前が並列で並んでいるが、実質のリーダーは筆頭のボール・ブレイだろう。

涼しくなってきたので、久し振りにフリー・ジャズを聴く。酷暑の夏にはフリー・ジャズは無理だ。集中して聴いていると体温が上がって、汗がダラダラ流れてくる。涼しくなると、十分にスピーカーから出てくる音に集中することが出来る。フリー・ジャズの面白さは、集中して聴き耳を立てないと気がつかない。フリー・ジャズは「ながら」では無理がある。  
 

Paul-bleytime-will-tell

 
限りなく自由度を前面に押し出した、3者のインタープレイ。音はリリカルで耽美的。フレーズは緩やかなものが主で、ECM独特の深いエコーと相まって、漂うが如く、流れるが如く、広がるが如く、フリー・インプロビゼーションが展開される。透明度が高く、音数の少ない、音の「間」を十分に活かした演奏がメインで、当然、ファンクネスは皆無である。いわゆる「欧州ジャズ」のフリー・ジャズ。

ポール・ブレイのピアノが、この幽玄で墨絵の様なフリー・インプロビゼーションをリードしているようだ。演奏全体の雰囲気に、ブレイの美意識、ブレイの個性が色濃く反映されているように聴こえる。演奏のビートは、フィリップスのベースが担っている。このフィリップスのベースが、硬軟自在、変幻自在、緩急自在にビートをコントロールしていて見事。テナーのパーカーは、ブレイの美意識を十分理解して、ブレイのピアノにソッと寄り添う。

耽美的でリリカル、幽玄で音の「間」を活かした、透明度の高い、緩やかなパフォーマンスが主だが、中に、ちょっと明るい、ビートの効いたフリー・インプロビゼーションもあって、内容的にメリハリが効いていて、長尺のフリー・ジャズ盤だが、飽きは来ない。さすが、ECMレーベル、とても内容の濃い、聴き応えのあるフリー・ジャズをリリースして立派である。
 
 

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2022年9月 5日 (月曜日)

ECMだがジャジーなジョンアバ

ECMレーベルのモットーが「音作りのコンセプトは「The Most Beautiful Sound Next To Silence」(沈黙の次に美しい音)。わずかにリバーブのかかった深いエコーの音作り」。ジャズのフォーマットを踏襲しつつ、現代音楽的な内容を持つ、クリスタルな透明感、切れ味の良い、適度に自由なインプロビゼーション中心の佳作が多くリリースされている。

そんなECMレーベルを代表するギタリストとして、ジョン・アバークロンビー(愛称:ジョンアバ)がいる。ジョンアバは、自身のリーダー作の8割をECMレーベルに残している。ジョンアバの考えるジャズの音とECMの総帥プロデューサー、マンフレット・アイヒャーの求める音とがバッチリ合っていたんだろう。それほど、ジョンアバのギターは「ECMらしい」ギターである。

John Abercrombie『Arcade』(写真左)。ECMの1133番。 1978年12月の録音。ちなみにパーソネルは、John Abercrombie (g, el-mandolin), Richie Beirach (p), George Mraz (b), Peter Donald (ds)。リーダーのジョンアバのギターがフロントのカルテット編成。ECMではピアノレスの変則な編成がよくあるが、この盤は、リッチー・バイラークのピアノがしっかりと入っている。 
 

John-abercrombiearcade

 
ジャケットは中身の音を表す、というが、この盤はまさにそれ。透明感と浮遊感、静謐感と適度なテンション、漂う様な緩やかなビートに乗った、自由度の高いインタープレイ。とりわけ、ジョンアバの気持ち良く適度に捻れた、サスティーンが効いたロングトーンなフレーズが前面に出て、とても印象的に響き渡る。そして、バイラークのピアノ率いるリズム・セクションもそんなジョンアバを、硬軟自在、緩急自在なリズム&ビートでガッチリとサポートする。

この時点でのピアノのリッチー・バイラークは、まだ耽美的で透明感溢れるピアノを弾いていて、ジョンアバのギターにぴったりと寄り添う。ジョージ・ムラーツのベースも、淀みやブレの全く無い、強靱で柔軟なベースラインをバンド全体に供給する。このすこぶる安定したムラーツのベースが、この番の透明感と静謐感が溢れる、漂う様なビートをしっかりと支えている。

リバーブに包まれた静謐感と浮遊感が印象的な欧州ジャズ。ECMレーベルならではの「即興演奏を旨とするニュー・ジャズ」が、この盤に溢れている。ニュー・ジャズとは言え、ジョンアバのパフォーマンスは、ビートに乗り、即興もモーダルな展開がメインで、しっかりとジャズしている。この「ECMの看板ギタリストの1人でありながら、しっかりとジャズしている」ところが、僕がいつもジョンアバを聴いて、感じ入るところである。ジョンアバは「ジャズ」である。
 
 

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2022年9月 2日 (金曜日)

ジョンアバの個性が良く判る盤

ジョン・アバークロンビー(John Abercrombie)。出身地は米国ニューヨーク州ポートチェスター。ジャズ・ギタリストで、1944年12月生まれ。ジョン・アバークロンビー、長い名前である。僕は以前から「ジョンアバ」と呼んでいる。ウネウネした、気持ち良く適度に捻れたギターを弾くんだが、ジョンアバは、欧州ジャズっぽく、音が濡れている。

John Abercrombie『Characters』(写真)。1977年11月の録音。ECMの 1117番。パーソネルは、John Abercrombie (el-g, ac-gu, el-mandolin)。ジョン・アバークロンビーの、多重録音によるソロ・パフォーマンスの記録。使用楽器は、エレギ、アコギ、エレ・マンドリンとなっている。

この番はなかなか耳にするころが無かった盤。そもそも、日本のレコード会社が扱ってくれない。ECMレーベルの盤でも、人気盤は繰り返しリイシューされるのだが、人気の薄い、マニアックな盤については全くの「無視」。僕がこの盤を初めて耳にしたのは、21世紀に入って、ネット経由でECMの外盤CDが入手し易くなってからである。
 

John-abercrombiecharacters

 
ジョンアバのソロ盤なので、ジョンアバのギターの個性が良く判る。ただ、ソロ・パフォーマンスなので、リズム隊に身を任せ、触発され、自由に弾きまくる「ウネウネした、気持ち良く適度に捻れたギター」は封印している。このソロ盤では、素姓確かな、テクニック優秀、歌心溢れるフレーズ満載の「原点回帰な正統派のニュー・ジャズ志向のギター」を聴くことが出来る。

気持ち良くスルスルとギターを弾き回しているが、良く聴くと結構ハイ・テクニックなことをやっている。多彩な音の響きは、まさに「音の魔術師」。穏やかなトーンで、繊細なタッチのエレギ、さざ波の様に音が押し寄せるアコギ、エスニックに不思議な響きのマンドリン。ロングサスティーンによる独特の浮遊感溢れる、伸びのあるエレギの響きは、いかにも「ECMサウンド」。

ジョンアバの正統派ジャズ・ギタリストの一端を垣間見る様な、聴き応えのあるソロ盤である。ギターのソロがずっと続くので、しっかりと腰を据えて、スピーカーに対峙して、一気に聴き込む事が必要になるが、多彩な音を繰り出す「音の魔術師」ジョンアバである、意外と飽きずに聴き通すことが出来る。聴き終えて、ジョンアバは意外と伝統的なスタイルを重んじる、正統派なギタリストなんだなあ、と改めて思うのだ。
 
 

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2022年8月 6日 (土曜日)

ボーダーレスなジャズの一端

今年で設立53年を迎えた、ドイツの老舗ジャズ・レーベルECMからリリースされた、21世紀の注目アーティストをラインナップした「21世紀のECM」キャンペーンが展開されている。対象アルバムは全20タイトルなんだが、1990年以降に活動をスタートさせた注目アーティストをボーダーレスに選定している。これが意外に、21世紀の「今」のジャズのトレンドの大きな幾つかの切り口を示唆していて、実に興味深い。

その注目のアーティストの中に、ヴィジェイ・アイヤー(Vijay Iyer)がいる。アイヤーは、1971年10月米国生まれ。今年で51歳の中堅ピアニスト。リーダー作は、1995年の初リーダー作以来、20枚以上を数える。2014年からはECMレーベルからのリリースに絞っている。もともと、アイヤーのピアノは、耽美的でリリカルなピアノが個性なので、ECMレーベルの「音のカラー」にはピッタリのピアニストではある。

Vijay Iyer『Break Stuff』(写真左)。2014年6月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Vijay Iyer (p), Stephan Crump (b), Marcus Gilmore (ds)。スティーヴ・キューン、キース・ジャレットなどの「耽美的でリリカルで現代音楽風なジャズ・ピアノ」の系譜をしっかりと受け継いだヴィジェイ・アイヤーのトリオ盤。メンバー全員が米国出身のジャズマンで固められている。

最初、耽美的でリリカル、オリエンタルな雰囲気が仄かに漂う個性的なピアノ・トリオのパフォーマンスが印象的だった。てっきり、アイヤーはイスラエル〜東欧辺りの出身かな、と思ったんだが、米国出身だった。
 

Vijay-iyerbreak-stuff

 
ベースもドラムも米国出身。オール・アメリカンなピアノ・トリオなんだが、出てくる音は、米国ジャズから一番遠かった、ECMレーベルの代表的な音そのものの限りなく欧州的な耽美的でリリカルな音。

ファンクネスは皆無、スインギーな4ビートとは無縁。それでいて、ジャジーなリズム&ビートの下、目眩く即興演奏の数々。ほの暗く重厚なユッタリとした「Starlings」から始まり、ダイナミックな展開の「Chorale」など、アイヤーの自作曲はどれもが白眉の出来。

しかし、アイヤーのピアノの個性は、ミュージシャンズ・チューンなスタンダード曲で顕著になる。セロニアス・モンク作の「Work」は、幾何学模様的にフレーズがリリカルに展開し、コルトレーン作の「Countdown」は、耽美的でリリカルなフレーズでモーダルな展開を表現する。そして、アイヤーのピアノ・ソロで静謐に奏でるストレイホーン作の「Blood Count」は、アイヤーのピアノの個性の象徴的なソロ・パフォーマンスだ。

しかし、この耽美的でリリカルで現代音楽風のピアノ・トリオが、オール・アメリカンなピアノ・トリオで演奏されているのを知った時には、かなりビックリした。21世紀のジャズは「ボーダレスな時代になる」と思った。

そのボーダーレスなジャズが、ECMレーベルの下に集結しつつある。北欧、東欧、イスラエル、米国、日本などの「多国籍」なジャズが、ECMレーベルの音世界の下に集結している。そんなボーダーレスなジャズの一端が、このアイヤーのピアノ・トリオ盤で実感出来るのだ。
 
 

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