2019年12月13日 (金曜日)

アジマスは英国のジャズ・トリオ

久々にECMレコードの聴き直しシリーズ。やっと1977年辺りまで来ている。この頃が、ECMレコードの最初の「充実期」で、ニュー・ジャズをメインに、キラ星の如く、好盤、佳作が目白押し。ECMレコードの音が、欧州ジャズのイメージをバッチリと固めた頃である。でも、我が国ではECMレコードのアルバムは、有名盤以外は入手し難かったなあ。

『Azimuth』(写真左)。1977年3月の録音。ECM 1099番。ちなみにパーソネルは、John Taylor (p,syn), Norma Winstone (vo), Kenny Wheeler (tp, flh)。メンバー3人ともイングランドの出身。珍しい「純英国」なメンバー構成。収録された全ての曲は「John Taylor & Norma Winstone」による。

さて改めて、アジマス(Azimuth)は、英国のジャズ・トリオ。トランペット奏者のケニー・ホイーラー、ボーカリストのノーマ・ウィンストン、ウィンストンの夫でピアニストのジョン・テイラーというトリオ構成。僕はこの「アジマス」については、存在は知っていたが、なんだかパチモンみたいな響きのバンド名なので、どうにも手を出さずにいた。
 
 
Azimuth-azimuth
 
 
しかし、アルバムと言うもの、まずは聴いてみるもので、このアジマスの奏でる音は、明らかにECMレコードがプッシュする「ニュー・ジャズ」である。クールなホイーラーのトランペットとテイラーのピアノ、そして、そこに流れるウィンストンの「女性スキャット」は、現代の「クールなスピリチュアル・ジャズ」に直結するもの。静的なエモーショナルは「ニュー・ジャズ」に相応しい。

そして、トランペットのケニー・ホイーラーが実に良い。クールでエモーショナルな、加えて耽美的で伸びの良いトランペットは実に聴き応えがある。このアジマスでのホイーラーのトランペットって、彼のベスト・プレイの1つに数えられても良い物だと思う。テクニックも確か、フレーズは流麗。明らかにこのトランペットは欧州ジャズのトランペットである。

実にECMレコードらしい「ニュー・ジャズ」なアルバムである。基本はモードだと思うんだが、飽きが来たり、ダレたところが無く、適度なテンションをずっと維持しつつ、音の広がりが芳しいニュー・ジャズな演奏に思わず聴き惚れる。こんなに優れたアルバムがなかなか、我が国では入手するのが難しかった。今の時代に感謝、である。
 
 
 
東日本大震災から8年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年12月12日 (木曜日)

静的でエモーショナルなロイド

21世紀に入って、チャールズ・ロイドを再発見した。が、リリースはECMレーベル。どうも、チャールズ・ロイドとECMレーベルとが結びつかなくて、ECMレーベルにロイドの名前を発見した時は、僕は同姓同名の別人かと思った。しかし、ファースト・ネームの「Charles」は同名はありそうだが、「Lloyd」はどう考えても同姓は無いよな〜、ということで、やはり、ロイドの再発見である。

そして、やっとつい最近、再発見後のロイドの聴き直しを始めた。どうにも印象が曖昧になって、ECMレーベルのロイドの音世界がイメージ出来なくなっていた。メジャー・デビュー当時、1960年代後半のロイドは「コルトレーンのええとこ取り」。そのイメージが強くて、ECMレーベルでの「耽美的で静的でスピリチュアルな」ブロウがどうにも据わりが悪い。

Charles Lloyd『Notes from Big Sur』(写真左)。1991年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts), Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Ralph Peterson (ds)。ピアノのステンソンとベースのヨルミンはスウェーデン出身で、ドラムのピーターソンは米国出身。ロイドは米国出身なので、スウェーデンと米国の混成カルテットということになる。
 
 
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この盤に詰まっている音は「静的でエモーショナルな」音世界。全編、ロイドの淡々とクールで耽美的な、流麗でスピリチュアルなブロウが印象的。決して、ホットにエモーショナルになることは無い。当然、変にフリーに傾くことは無い。演奏のベースはモード。モード奏法の良さを最大限に活かして、悠然とした、耽美的で伸びの良いフレーズが心地良い。

バックのリズム・セクションも好調。ピアノのステンソンとベースのヨルミンがスウェーデン出身なので、出てくる音は明らかに北欧ジャズ。しかし、ドラムのピーターソンのドラムの音は米国東海岸ジャズ。当時の若きピーターソンのドラミングが北欧ジャズへの傾倒を緩和させていて、意外と国籍不明なリズム&ビートに落ち着いている。これがまた面白い。

水墨画の様なテナーの音が、時には幽玄に変化し、時には霧のように漂っていく。1960年代後半のロイドの「コルトレーンのええとこ取り」とは全く異なる、唯一無二なロイドの個性。これがロイドのテナーの本質なのか、と思わず感心する。こんなロイドの本質的な個性を引き出したECMレーベルは凄い。マンフレート・アイヒャー恐るべし、である。
 
 
 
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2019年12月 1日 (日曜日)

1990年代以降のロイドを聴く

チャールズ・ロイド(Charles Lloyd)。1960年代後半、突如、現れ出で、ジョン・コルトレーンの聴き易い部分をカヴァーして人気を博した。特に、コルトレーンのフリーキーな部分は「人種差別に抗議する怒り」として捉えられ、この「コルトレーンのフリーキーな演奏」を聴きやすくしたところが、フラワー・ムーヴメメント、ヒッピー・ムーヴメントの中でウケにウケた。

しかし、このコルトレーンの聴き易い、ええトコ取りをしたアプローチが胡散臭い。加えて、ロイド人気の半分以上は、バックのリズム・セクションの人気だった。このバックのリズム・セクションが、キース・ジャレットのピアノ、セシル・マクビーのベース、ジャック・デジョネットのドラムで、当時、それはもう新しい響きのモーダルなジャズで素晴らしいもの。このトリオの人気が意外と大きかった。

1970年代に入って、クロスオーバー・ジャズの波が押し寄せ、商業ロックが台頭し、メインストリーム・ジャズの人気が衰退していった。合わせてロイドの人気は下降し、遂には忘れられた人となった。1980年代は完全にロイドの名前は無かった。が、つい最近、といっても5年ほど前だが、ECMレーベルからリーダー作を出しているロイドに気がついた。調べれば、1989年から、ECMレーベルの下で、ロイドはリーダー作を連発していた。
 
 
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Charles Lloyd『Fish Out of Water』(写真左)。1989年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl), Bobo Stenson (p), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。バックのリズム・セクションは、スウェーデン出身2人、ノルウェー出身1人。チャールズ・ロイドのテナー&フルートのワンホーン・カルテット。リリースは、欧州ジャズの老舗レーベルのECM。

アルバムに詰まっている演奏の雰囲気は「欧州の純ジャズ」。バックのリズム・セクションが北欧メインなので、音の響きは北欧ジャズ。ロイドのテナーは北欧ジャズのスタンダードである「クリスタルな切れの良い」音よりも暖かでエッジが丸い。米国ジャズってほどでは無いのだが、クールな熱気をはらんだテナーは意外と個性的である。欧州のテナーマンには無い独特の個性。

1989年にロイドはこんなに魅力的なワンホーン・カルテット盤を出していたんですね。全く知らなかった。1960年代の胡散臭さ漂うリーダー作ばかりが我が国ではジャズ雑誌に載ってきたので、ロイドの1990年代の活躍は全く意識していなかった。全く以て不明を恥じるばかりである。そして、今、1990年代以降のロイドのリーダー作を聴き進めている。これが意外と楽しいのだ。
 
 
 
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2019年11月 8日 (金曜日)

異端なキースの初ソロ・ピアノ盤

先日、キースのソロ・ピアノ盤を久し振りに聴いて、思わず、キースのソロ・ピアノ盤の聴き直しを再開した。ピアノ・ソロ盤は鑑賞するのがちょっと面倒。強弱のメリハリが付いたピアノ・ソロをリスニングするので、家で聴くにはある程度のボリュームが必要になる。このボリュームが問題で、大きな音の部分にピークを合わせると、弱いタッチの部分が聞こえないし、弱いタッチに合わせると、大きな音の部分が耳に突き刺さる。ボリュームの微妙な調整が鍵になる。

野外で聴く時は、イヤホンの性能が大切になる。密閉度が高いと弱いタッチもよく聴こえるが、周囲の音が全く聴こえないので、とにかく危険だ。と言って、密閉度が低いとソロ・ピアノの細かいニュアンスが全く判らなくなる。それと聴く場所も選ぶ。僕は電車の中、朝夕早めに並んで、席に座って、ジャズを聴く。意外と電車の中って静かなんですよ。しかも最近のイヤホンの音も凄くよくなったので、通勤の往き帰りでもソロ・ピアの盤が聴ける様になった。

Keith Jarrett『Facing You』(写真左)。1971年11月10日の録音。キース初のソロ・ピアノ盤。ECMの1017番。オンマイクのデッドな音が、このキース初のソロ盤の前衛性を際立たせる。リズム&ビートが明確にゴスペルチックでジャジー。右手のフレーズは米国フォーキーなルーツ・ミュージックの響き。マイルス・デイビス・セプテットでのコンサート公演の翌日での録音。この音世界がキースの本質だと感じている。
 
 
Facing-you-keith-jarrett  
 
 
冒頭の「In Front」が強烈な印象。不規則に旋律に絡むリズム、仄かにゴスペルチックなビート、そして、無調が基本ではあるが、決して難解さを感じさせない、アーシーで浪漫溢れるフォーキーな旋律。クラシックの様に調性が取れた部分は殆ど無い。無調で前衛を感じる。左手のビートが無調の展開に「規律」をもたらす。そういう意味で、このピアノ・ソロは明らかにジャズ。

そして、半ば辺りで出てくる、キースの「唸り声」。既に初ソロ・ピアノ盤の冒頭の1曲で「唸っている」。但し、唸りのボリュームはできる限り絞り込まれている(笑)。この盤はまだ完全な即興演奏では無い。曲毎にしっかりとした起承転結がある。しかし、そこが良い。そこが聴き易い。そう言う意味で、このキースの初ソロ・ピアノ盤は、後のキースのソロ・ピアノ盤とは一線を画する盤ではある。

ECMレーベルの総帥、マンフレッド・アイヒャーの野望を感じる。欧州ジャズの前衛の担い手、ECMレーベルに必要なもの。他のレーベルに無い、ECMならではの演奏フォーマット。キースのソロ・ピアノは、ECM独特のエコーの映える。ECMにしか出来ないキースのソロ・ピアノ。アイヒャーとキースのコラボがとても良い形で音になっている。キースのソロ・ピアノとしては異端ではあるが、この初ソロ・ピアノ盤、僕の大のお気に入り盤である。
 
 
 
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2019年11月 7日 (木曜日)

キースの2016年のソロライブ盤

キース・ジャレットのアルバムはずっと、ほぼリアルタイムで聴いてきた。熱狂的な大ファンでは無いのだが、キースのピアノはやはり「隅に置けない」。新作がリリースされるとやはり気になる。気になるとやはり手に入れて聴きたくなる。そして、1990年代まではCDショップに走ってゲットである。2000年代になると、ネット・ショップで「ポチッ」とな、である(笑)。

Keith Jarrett『Munich 2016』(写真左)。今回のキースの新作。ピアノ・ソロの蔵出しである。タイトル通り、2016年7月16日にミュンヘンで行ったソロ・コンサートのライヴ録音2枚組。プロデュースはキース自身。ECMの本拠地ミュンヘンでのコンサートで、聴衆の反応もとても良い。キースのソロ・ライブ盤としても、その収録された雰囲気は上位に位置するもの。

キースは、2017年2月15日、NYカーネギーホールで一夜限りのコンサートを行って以降、一切コンサートを行っていない。CDのリリースは、2014年のソロ・コンサート・ツアーの演奏を再構成した『Creation』が最後。スタンダード・トリオについても、2014年11月30日のニュージャージー・パフォーミング・アーツ・センターでのライブ演奏が最後に活動を休止している。
 
 
Munich-2016  
 
 
この『Munich 2016』は、その『Creation』の約1年後、ミュンヘンでのコンサートの再現。現時点で、アルバムとして聴ける一番新しいキースのピアノ演奏で、今回のリリースは貴重である。コンサートの再現だけに、収録されたソロ演奏には、その雰囲気、その展開に一貫性があって、当時のキースのソロの状態がとても良く判る。

前衛音楽の様なフリーキーな即興演奏から、アーシーなリズム&ビートを伴ったアメリカン・フォーキーな演奏、モーダルで限りなく自由なスタンダード演奏まで、なかなかバリエーションに富んだ内容が聴いていて楽しい。「ソロ・コンサートは、私が作り上げたものではない独自のルールを持つ別世界のようなもの」とキースは言うが、この盤に詰まっている音は、キースの意志による、キースのソロ演奏そのもの。

誰が聴いてもキースである。こういう即興をベースとした、ジャズの要素とクラシックの要素、そして、現代音楽の要素をミックスしたソロ・ピアノは、キースの専売特許。というか、キースしか、こういうソロ・ピアノをやらない。その演奏の内容とトレンド、そして演奏の展開や取り回しはキースの個性そのもので、この新盤もキースの個性が全開。現在、キースは病気療養のために活動を休止している。早期の復帰、復活を望みたい。
 
 
 
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2019年10月17日 (木曜日)

繊細で印象的でスピリチュアル

このアルバムを聴く度に「これってジャズなんだろうか」と心から思う。リズム&ビートは無い。様々な音の洪水。パーッカッシヴな音、水の流れるような音、印象的でスピリチュアルなギターの響き。語りかける様なピアノの音。音の全てが即興演奏。

即興演奏をメインとしているので、ジャズと言えばジャズだが、音の響きとしては「現代音楽」の響きが蔓延していて、聴いていて「ジャズなのか」と思ってしまう。自然の音が蔓延する。ビート感は一切無い。心に響く様なパーカッションの音。この盤は「静的で繊細な」スピリチュアル・ジャズ。

Egberto Gismonti『Dança Das Cabeças』(写真)。邦題「輝く水」。ブラジルを代表するマルチ・インストゥルメンタリスト、エグベルト・ジスモンチの1976年録音のECMデビュー作。ちなみにパーソネルは、Egberto Gismonti (8-string g, p, wood fl, vo), Naná Vasconcelos (perc, berimbau, corpo, vo)。ジスモンチとヴァスコンセロスの即興演奏、そして多重録音。
 
 
Danca-das-cabecas  
 
 
ナナ・ヴァスコンセロスが「納得の参加」。繊細で印象的でスピリチュアルなパーカッションの音は、ナナ・ヴァスコンセロスの仕業。納得である。ジスモンチは、ギターとピアノ、フルートを担当する。これまた、繊細で印象的でスピリチュアルな音の響き。そうか、この盤の音は、静的で繊細なスピリチュアルな音なのだ。

即興演奏がLPの片面、約25分続く。ビートの無い、繊細で静的で印象的でスピリチュアルな音の世界。飽きるかなと思いきや、決して飽きない。25分、一気に聴き切ってしまう。繊細で静的な音の中に、仄かに漂う歌心。この歌心が漂う繊細で静的なフレーズが聴く者を決して飽きさせない。

欧州のニュー・ジャズの老舗、ECMレーベルからのリリースなので「ジャズ」と決めつけるのは野暮ってもんだ。しかし、この盤の繊細で静的なパーカッションは、ニュー・ジャズ的なビートを仄かに感じさせてくれる。全編、即興演奏。仄かに漂うビート。基本、この盤に詰まっている音は「ニュー・ジャズ」な音と解釈して良いだろう。30年以上聴き続けていますが、決して飽きません。好盤です。
 
 
 
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2019年10月 1日 (火曜日)

ポール・ブレイの未発表ライヴ盤

キース・ジャレットが「スタンダーズ」を解散して5年になる。キースの「スタンダーズ」の様な、トリオを構成する達人3人による、切れ味良く高い透明度、そして、限りなく自由度の高いインタープレイをメインとした、ECMレコードらしい、ピアノ・トリオのアルバムが途絶えて5年になる。寂しいなあ、と思っていた矢先、こんなライブ盤がリリースされた。

Paul Bley Trio『When Will the Blues Leave』(写真左)。1960年代から親交の深い「盟友」三人による、1999年3月にスイスのルガーノ-トレヴァで録られていた未発表ライヴ音源。今年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (p), Gary Peacock (b), Paul Motian (ds)。達人レジェンド3人による限りなく自由度の高いインタープレイ。

ピアノ・トリオの「間を活かした」インプロビゼーションに最適な、ECM独特の深く透明度の高いエコーがタップリかかって、達人レジェンド3人による限りなく自由度の高いインタープレイの音を増幅し、それぞれの楽器の音をクッキリと浮かび上がらせる。特に、ECMレコードの創る音は、ピアノのポール・ブレイの音にピッタリ。
 
 
When-will-the-blues-leave-1  
 
 
ポール・ブレイのピアノは、透明感と清涼感に溢れ、クリスタルな響きのピンとエッジの立った硬質なタッチ。切れ味良く、しっかりとピアノが鳴っているなあ、と感じる、芯のしっかり入った、明確な音の響き。ああ、このピアノはECMレコード御用達のピアノの音だし、ECMレコード向きの音の響き。叩き出されるフレーズも、どこか「キースっぽい」、クラシック・ピアノの様な独特の響きを底に宿している。

ベースのピーコックのテクニックが素晴らしい。ほとんどフリーなんだが、しっかりと伝統のジャズの雰囲気をキープしたアコベ。アドリブ・フレーズは創造性に富んで、柔軟な弾きっぷり。ピーコックしか出せない自由なベースライン。モチアンのドラムも同様に創造性に富む。リズム&ビートをしっかりとキープしながら、自由度の高いドラミングを披露してくれる。モチアン唯一六のドラミング。

ピアノでリーダーのポール・ブレイは1932年、カナダはモントリオールの生まれ、2016年、84歳で逝去。ベーシストのゲイリー・ピーコックは1935年、米国アイダホ州生まれ、まだまだ現役。ドラムのポール・モチアンは1931年、米国ペンシルヴェニア州の生まれ、2011年、80歳にて逝去。トリオの3人中、2人が鬼籍に入っている。が、この残された音源の内容は素晴らしい。久々のECMレコードらしいピアノ・トリオ盤の出現である。
 
 
 
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2019年9月28日 (土曜日)

ECMの「イスラエル・ジャズ」盤

欧州ジャズの老舗レーベルと言えば「ECMレーベル」。1969年にマンフレート・アイヒャーが創立。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」。僕はジャズを聴き始めた学生時代、大変にお世話になったレーベルである。

Avishai Cohen & Yonathan Avishai『Playing The Room』(写真左)。ECMより、つい先日リリースの新盤。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p)。ベーシストではない、トランペッターのアヴィシャイ・コーエンとピアニスト、ヨナタン・アヴィシャイとのデュオ盤。デュオを構成する奏法のラスト・ネームを見ると、これは「イスラエル・ジャズ」であると期待する。

ECMらしい静的でクールな、即興ベースのデュオ。限りなく静謐で豊かなエコーがそのクールさを増幅する。このジャズは「ニュー・ジャズ」と呼んで良いだろう。スイング感は皆無、ファンクネスは皆無。しかし、測距句演奏をベースとしたデュオ演奏は明らかに「ジャズ」。底を流れるリズム&ビートは堅実なオフビート。自由であるが「フリー」では無い。限りなく自由度の高い「モーダル」なデュオ演奏。
 
 
Playing-the-room
 
 
全編に渡って、典型的な「イスラエル・ジャズ」の音が詰まっている。出てくるフレーズがちょっとユニークで、北欧的でありながら、どこかエスニックでどこか中東風な響きがする。自由度が高く、エコー豊かなアコースティックな響き。そこはかとない中近東の哀愁感を帯びたトーンが見え隠れする。今までのジャズには全く無い響き。特に、この番ではそんな「イスラエル・ジャズ」の個性をシンプルなデュオ演奏が際立たせる。

このデュオを構成する二人は同じ中学に通っていたそうだ。ティーンエイジャーの頃からテル・アヴィヴでともにジャズを探求してきて、音楽的にも30年以上ずっと長い交友関係を築いてきた、そんな濃いリレーションシップが、これだけの「あうん」の呼吸を生み出し、適度な緊張感溢れる演奏を実現し、僕達を最後まで飽きさせないのだろう。

ちなみに、このアルバムの演奏については、ほとんど一発録音だったそう。そういう面でも「イスラエル・ジャズ」のレベルは高い。最近、イスラエル・ジャズに遭遇する機会が多い。イスラエル・ジャズは、老舗本国の米国、欧州について、新たなジャズの聖地になる位の勢いでメジャーな存在になってきている。もはや、イスラエル発のジャズは無視出来ない存在になってきている。
 
 
 
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2019年8月14日 (水曜日)

実にECMらしいエレ・ジャズ

久し振りのECMレーベル。カタログ順の聴き直しも、はや66枚目。最近はCDの外国盤も入手し易くなったし、有料ダウンロード・サイトのジャズ盤のストックも充実度を増している。特に、ECMレーベルのカタログを Apple Musicに開放してくれたのは有り難かった。ECMレーベルの総帥マンフレート・アイヒャーに敬意を表したい。

Eberhard Weber『Yellow Fields』(写真左)。ECM1066番。1975年9月の録音。 ちなみにパーソネルは、Eberhard Weber (b), Charlie Mariano (ss, shehnai, nagaswaram), Rainer Brüninghaus (p, syn), Jon Christensen (ds)。いかにもECMレーベルらしいラインナップである。ドイツ出身が2人、米国出身が1人、ノルウェー出身が1人という多国籍構成。
 
リーダーのエバーハルト・ウェーバーはベーシスト。彼のリーダー作はどれもが当時の「ニュー・ジャズ」。いかにも欧州らしい、ゆったりとした音の広がりと堅実かつ印象的なリズム&ビートをベースに、ECMレーベルらしいエレクトリック・ジャズを展開してくれる。米国のエレクトリック・ジャズの様にファンクに傾倒することも無く、激情に走ることも無い。
 
  
Yellow-fields-eberhard-weber
 
 
淡々と穏やかで印象的なビートと透明度の高い音色で、様々な印象の音世界を創り出していく。全曲エバーハルト・ウェーバーの作曲なのも特徴。スタンダード曲などは絶対にやらない。さすがドイツ出身のジャズマンらしく、全体のサウンドは破綻が無く、まとまりがとても良い。非常にきっちりとしている。大阪弁で言うと「シュッとしている」(笑)。
 
ホーンの伸びのある音、素敵やなあ、と思って、誰かしらと名前を確かめてみたら、なんと「チャーリー・マリアーノ」。穐吉敏子さんの元夫君でもあったアルト・サックス奏者。この盤では、ソプラノ・サックスとインドのシェーナイというリード楽器、そして、ナーダスワラムという南インドの二重葦の管楽器を使用している。これが効果的。欧州らしい典雅で透明度の高いエレ・ジャズに、ワールド・ミュージック的なヒューマンな響きを添えている。
 
ウェーバーのベースも重心が低く、的確なベースラインと躍動的なビートを供給していて、実に聴き応えがある。クリステンセンのドラムは切れ味良く透明度の高いドラミング。そんなリズム隊をバックに、ブリューニングハウスのピアノとシンセが印象的に響く。そこに絡む、マリアーノの印象的なホーンの響き。実にECMレーベルらしい、実に欧州ジャズらしい「ニュー・エレジャズ」である。
 
 
 
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2019年7月12日 (金曜日)

この盤に詰まった「北欧の音」

正統なネオ・ハードバップやモード・ジャズを聴き続けていると、ふとECMレーベルの「ニュー・ジャズ」が聴きたくなる。もともと、19歳の頃、ジャズを本格的に聴いていこう、と決めた切っ掛けの1つが「ECMレーベルのアルバム」。それが原因なのか、ECMレーベルの音が無性に聴きたくなることがある。

Edward Vesala『Satu』(写真左)。1976年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Edward Vesala (ds), Tomasz Stańko (tp), Juhani Aaltonen (ss, ts, fl), Tomasz Szukalski (ss, ts), Knut Riisnæs (fl, ts), Palle Mikkelborg (flh, tp), Torbjørn Sunde (tb), Rolf Malm (b-cl), Terje Rypdal (g), Palle Danielsson (b)。総勢10名。いずれもECMレーベル御用達のジャズ・ミュージシャン達である。エンジニアはJan Erik Kongshaug。

リーダーはフィンランドのドラマー「エドワード・ヴェサラ」。この盤に詰まっている音は「北欧の音」。北欧の凛とした大地をイメージするような音世界。明らかに米国のジャズとは違う。ファンクネスは皆無、明確なオフビートも無い。緩急自在、変幻自在、無調のモード・ジャズ、そしてフリー・ジャズ。
 
 
Satu
 
 
リーダーだから当たり前と言えば当たり前なんだが、ヴェサラのドラムが良い。スケールが大きく、明確で力感のあるドラミング。ドラムの音が美しい。ドラムの表現力がダイナミックかつ繊細、そしてバリエーション豊か。連続して叩き出される緩急自在、変幻自在のドラミングは典雅ですらある。

そんなヴェサラの緩急自在でスリリングなドラムに、幽玄かつ伸びのあるエレギが絡み(これは聴けばリピダルだと直ぐに判る)、幻想的で感応的なフルートが絡む。ソリッドで堅実なベースが演奏の底をガッチリ支える。実にファンタスチックで柔軟なスピリチュアル・ジャズ。

大編成ならではの分厚い音ではあるが、耳に感じるのはクールな躍動感。民族音楽的なメロディや牧歌的な雰囲気も見え隠れして「北欧感」抜群。大音量でブワーッといくことは全く無く、繊細な音やきめ細かい音、印象的な音、官能的な音を絡ませ、組み合わせ、混ぜ合わせることで、独特の音世界を現出しています。好盤です。
 
 
 
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