2022年7月 5日 (火曜日)

ジョン・スコフィールドの凄み

ジョン・スコフィールド(John Scofield・愛称「ジョンスコ」)のギターがお気に入りである。初めて、ジョンスコを聴いたのが1979年。確か『John Scofield Live』だった。独特の捻れたエレギの音。間と音の伸びを活かした、音のスペースが絶妙なアドリブ展開。1回聴いただけで、ぞっこん、である。

当時のジャズ・ギターの世界の中でも、ジョンスコは、ジョン・アバークロンビーと双璧の「尖ってプログレッシヴ」なジャズ・ギタリストだった。

『John Scofield』(写真左)。2021年8月、ニューヨーク、カトナ、トップ・ストーリー・スタジオにての録音。キャリア初となるソロ・アルバムになる。ECMレーベルからのリリース。ECMレーベルからのリリースは、2020年の『スワロウ・テイルズ』に続き、本作が2枚目。

このジョンスコのソロ・パフォーマンス。独特の雰囲気が漂う、唯一無二な内容。リズム&ビートは、ジョンスコ好みのコードとリズムをループ・マシンに入れて、それを使用したもののみ。即興パフォーマンスのフレーズの流れの中に、ジョンスコ独特のグルーヴが存在する。

ジョンスコの強烈に個性的なエレギの音が、延々と流れる様に、浮遊する様に広がっていく。それでいて、決してマンネリに陥らない。常に新しいフレーズ、新しい響き、新しい音色が湧き出てきて、聴いていて、とても楽しめる。
 

John-scofield-solo-2022

 
この新盤に関するインタビューの中で、ジョンスコの印象的な言葉がある。「家で一人で演奏することで身についた繊細さがあると思う」。コロナ禍の影響が窺える。その中で「バンド演奏がなくなってしまって、弦楽器の美しさをピンポイントで表現するような、より繊細なアプローチに取って代わった」とある。

そのジョンスコの言葉通りのこの新盤の音世界。ジョンスコのエレギの個性はそのままに、とても繊細にフレーズを紡ぎ、とても繊細にピッキングの表情を変えていく。このテクニックの高さも特筆すべきもの。そして、捻れた独特のフレーズの中に、濃厚に横たわる歌心。

特に、この盤では、ジャズ・スタンダード曲が秀逸。数々のスタンダード曲を独自の解釈で演奏していて、これがどの曲も素晴らしい出来なのだ。「My Old Flame」では、ループ・マシンを止めて、ジョンスコのギターだけが鳴り響く。これが、また良い。それだけでは無い。ジョンスコ自身の作曲した楽曲も良好。ジョンスコのギターの個性と独自の解釈が冴えに冴える。

ジャズとは即興の音楽である。そんな言葉をこのジョンスコの新盤を聴いて、再認識する。ジョンスコはループ・マシーンと対話しながら「即興演奏の妙」を綿々と弾き進めていく。そして、その即興演奏のフレーズが常に新しい想像力に満ちている。ジョンスコのジャズ・ギタリストとして凄みを感じる。そんな新盤である。
 
 

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2022年6月11日 (土曜日)

イスラエル・ジャズらしい新盤

イスラエル・ジャズの特徴はと言えば、ネットを紐解くと「イスラエル、ジューイッシュ(ユダヤ)の哀愁を帯びたフレーズやメロディ、または近隣アラブ諸国〜北アフリカ地域の音楽的要素なども取り入れられており、結果生成された今までにないハイブリッドなジャズ・サウンドが特徴」とある。

そんな「イスラエル・ジャズ」。もともと若い頃から、米国以外の、エスニックもしくはアフリカンな「ワールド・ミュージック系」のジャズが好きで、イスラエル・ジャズが流行始めた1990年代後半頃から、機会があるにつけ、イスラエル・ジャズの盤を聴いてきた。特に、ECMレーベルからリリースされるイスラエル・ジャズの盤は、レーベル独特の深いエコーと相まって、その特徴が増幅され、聴き応えのあるものになっている。

Avishai Cohen『Naked Truth』(写真左)。2021年9月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p), Barak Mori (b), Ziv Ravitz (ds)。アヴィシャイ・コーエンは同姓同名で2人のジャズマンがいるが、この盤のリーダーは、トランペッターのアヴィシャイ・コーエン。全員イスラエル&テルアビブ出身のワンホーン・カルテットである。
 

Avishai-cohennaked-truth

 
全編、曲のタイトルに「Naked Truth」が振られていて、組曲風のアルバム構成になっている。演奏全体の雰囲気は、全曲、幽玄で哀愁感漲る、浮遊感と音の「間」が芳しい、ゆったりとした曲調。耽美的でリリカルなコーエンの「空間の拡がりと浮遊感溢れる」トランペットが、そんな哀愁感や音の陰りを的確に表現していく。このマイナー調の哀愁感とエスニック感が、全く以てイスラエル・ジャズそのものに感じる。

リズム隊のリズム&ビートは、ほとんどフリー・インプロヴィゼーションに近い、スインギーなビートとは全く無縁の自由度の高いもの。これが、コーエンの「空間の拡がりと浮遊感溢れる」トランペットに絡んで、少し憂いを帯びた薄暗い、空間の広がりと奥行きを感じさせる、独特な音世界を創り出している。これがこの盤の最大の個性。この盤はリズム&ビートでさえ幽玄であり、深遠であり、独特の浮遊感がある。

不思議な音の魅力が詰まったイスラエル・ジャズ盤である。浮遊感溢れる旋律の哀愁感、音の重なりは明らかにイスラエル・ジャズの雰囲気濃厚。アルバム全体の音の統一感も素晴らしい。スインギーなビートの効いたジャズとは全く対極にある、ほとんどフリーに近い、自由度の高いインプロビゼーション。実にイスラエル・ジャズらしい逸品であり、実にECMレーベルの盤らしい逸品である。
 
 

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2022年6月 9日 (木曜日)

北欧のピアノ・トリオの「今」

「ECM(Edition of Contemporary Music)」。創立者はマンフレート・アイヒャー。演奏家としての素養と録音技術の経験を基に、自らが選んだ「今日的」な音楽を記録し、世に問うべく、自らのレーベルを1969年に立ち上げる。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。

21世紀に入っても、ECMレーベルの活動は衰えることは無い。北欧系、東欧系、イスラエル系の有望なジャズマンを積極的に発掘し、ECMらしいニュー・ジャズをリリースし続けている。マンフレート・アイヒャーは今年で79歳。ECMの総帥プロデューサーとしてまだまだ盛んである。

Tord Gustavsen Trio『Opening』(写真左)。2021年10月、スイスにての録音。ちなみにパーソネルは、Tord Gustavsen (p, electronics), Steinar Raknes (b, electronics), Jarle Vespestad (ds)。リーダーのピアニスト、トルド・グスタフセンは、ノルウェー出身のジャズ・ピアニスト。ECMからのトリオ作品としては5作目になる。
 

Tord-gustavsen-trioopening

 
墨絵の様な、漂うが如き、芯の入った音の広がり。ゆったりとした展開のインタープレイ。そこに、ECMレーベル独特の「限りなく静謐で豊かなエコー」がかかる。静謐かつ深遠にて耽美的な、そして、どこか一筋の光が差し込んで来る様な音世界。マイナーな和音の重ね方が「北欧ジャズ風」。北欧ジャズ独特の「不思議な開放感」が心地良く耳に響く。

グスタフセンの内省的で耽美的なピアノが映える。広がりと間に重きを置いた、ゆったりとした弾きっぷりだが、しっかりとしたタッチで音を重ねる。ノルウェーの実力派ベーシスト、スタイナー・ラクネスが、変幻自在なベースで、演奏のベースラインを際立たせる。同じくノルウェー出身のヤール・ヴェスペスタの繊細なスティック捌きと硬軟自在なブラシワークが演奏全体のリズム&ビートをしっかりと支える。

叙情的でリリカルな旋律が淀みなく淡々と流れて行く、スイング・ジャズの対極にある演奏。時に出てくるマイナー調のゴスペルっぽい響きは北欧ジャズ独特の響き。この盤は、現代の北欧ジャズの「今」を、ECMレーベルのピアノ・トリオの「今」をじっくりと聴かせてくれる。
 
 

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2022年6月 4日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・98

最近、リッチー・バイラークのリーダー作をいろいろ聴き直していて、この盤をかけた時、このバイラークの初リーダー作であり、代表作の一枚について、当ブログで取り上げていないのに気がついた。いやはや驚いた。

Richard Beirach『Eon』(写真)。1974年11月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Richard Beirach (p), Frank Tusa (b), Jeff Williams (ds)。耽美的でリリカルで多弁なピアニスト、リッチー・バイラークの初リーダー作。

リッチー・バイラークはNY生まれ。当初、クラシック音楽とジャズの両方を学び始め、バークリー音楽大学に入学。1年後、彼はバークリーを離れ、マンハッタン音楽学校に移り、彼はマンハッタン音楽学校を音楽理論と作曲の修士号を取得して卒業した才人。確かに、バイラークのアレンジは「理詰め」の雰囲気が強い。

初リーダー作の冒頭に「Nardis」を収録したのが誤解のもと。「Nardis」は、耽美的でリリカルなバップ・ピアニストとされるビル・エヴァンスの十八番曲。我が国では、ビル・エヴァンスは「耽美的でリリカルな」ピアニストと誤解されることが多い。余りに短絡過ぎる評価だと思うが、その偉大なピアニストが十八番曲とした「Nardis」を弾くので、バイラークは今でも「耽美的でリリカルな」ピアニストと分類されることが多い。

が、この初リーダー作を隅々までしっかり聴き通すと、バイラークは単なる「耽美的でリリカルな」ピアニストに留まらず、とにかく「多弁」なピアニストであることが判る。この「多弁」がバイラークのピアノの最大の個性。
 

Richard-beiracheon

 
「耽美的でリリカルな」ピアニストの特徴として、「間」と「音の広がり」を活かしたインプロビゼーションが挙げられるが、バイラークはその反対。音符を敷き詰めた様に「多弁」なフレーズを弾きまくる。タッチは「耽美的でリリカル」。しかし弾きっぷりは「シーツ・オブ・サウンド」と言って良いくらい「多弁」。

しかし、その「多弁」な弾きっぷりが、テクニックが確かで端正、そして、タッチの響きが「耽美的でリリカル」なので、意外と五月蠅くない。特に速いフレーズにおける、バイラークのピアノのタッチと弾きっぷりは「クラシック・ピアノ」の雰囲気が色濃く反映されている。この弾きっぷりが五月蠅いならば、クラシック・ピアノの速いフレーズは全て「五月蠅い」ということになる。

バイラークは、単に「耽美的でリリカルで多弁なピアニスト」に留まらず、フリー&アヴァンギャルドな志向のピアノに走ったり、現代音楽風のピアノの様な無調の響きを醸し出したりするところが、チック&キース&ハービーなどの「新主流派世代」の括りのピアニストだと思う。故に、ニュー・ジャズが中心の、ECMレーベルのピアノ盤の中ではちょっと異質な雰囲気がする。

初リーダー作は、そのリーダーであるジャズマンの個性と特徴が如実に反映されている、というが、このバイラークの初リーダー作にもそれが言える。この盤を聴けば、バイラークのピアノが何たるか、をしっかり捉えることが出来る。バイラークの初リーダー作であり、代表作の一枚。名盤です。
 
 

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2022年5月31日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・235

欧州では、1970年代からの「ニュー・ジャズ」志向の音世界がしっかりと継承されていて、耽美的でリリカルなジャズ・ピアノについては、欧州で深化している。ピアニストの個性としては、現代音楽風、現代クラシック風の透明度の高い、硬質なタッチで、耽美的でリリカルなピアノを志向するタイプが多い、

Vijay Iyer『Uneasy』(写真左)。2019年12月、ニューヨーク州マウントバーノンの「OktavenAudioStudio」での録音。ちなみにパーソネルは、Vijay Iyer (p), Linda May Han Oh (b), Tyshawn Sorey (ds)。現代ジャズの哲人、ニューヨーク州アルバニー出身の中堅ピアニスト、ヴィジェイ・アイヤーのピアノ・トリオの新作になる。

Vijay Iyer(ヴィジェイ・アイヤー)は、1971年10月生まれ。今年で51歳の中堅ピアニスト。リーダー作は、1995年の初リーダー作以来、20枚以上を数える。2014年からはECMレーベルからのリリースに絞り、今回のトリオ新作もECMからのリリースになる。もともと、アイヤーのピアノは、耽美的でリリカルなピアノが個性なので、ECMレーベルの「音のカラー」にはピッタリのピアニストではある。

今回のトリオは、ベースにマレーシア出身のリンダ・メイ・ハン・オー(1984年生まれ)、ドラムスにニュージャージー出身のタイショーン・ソレイ(1980年生まれ)という国際色豊かなトリオ。この新作の録音まで、1年間、活動を共にしてきたとのこと。トリオ演奏の息はピッタリ。硬軟自在、変幻自在、緩急自在なトリオ演奏が素晴らしい。

この新作については、メインはアイヤーのピアノなのだが、アイヤーのピアノは耽美的でリリカルだが、その展開はダイナミックでメリハリがあるのが個性。このダイナミズム溢れる耽美的でリリカルなピアノで、様々な曲想の楽曲を自由自在に弾き回す。
 

Vijay-iyeruneasy

 
ファンクネスは極小、耽美的でリリカルであるがダイナミズム溢れる弾きっぷりは、どこかチック・コリアやミシェル・ペトルチアーニを彷彿とさせる。が、アイヤーの弾きっぷりは端正でクラシック・ピアノのマナーに通ずるものがあり、米国出身でありながら、欧州ジャズ・ピアノの志向を根強く踏襲しているようだ。

静謐な雰囲気からスタートし、段々に盛り上がっていく1曲目「Children Of Flint」。後半、アイヤーのダイナミックなピアノが炸裂する。耽美的でリリカルなピアノが印象的な、2曲目「Combat Breathing」。ゆったりとした演奏のビートを支えるのは、リンダのベース。リズムを色彩豊かにするのは、タイショーンのドラム。

3曲目「Night And Day」は、少しかかったような、スピード感溢れる演奏。トリオのテクニックの高さをビンビンに感じる。4曲目「Touba」は、地に足が着いたような、アーシーで力感溢れるピアノ。魅力的なベースライン、キャッチャーでどこかエスニックな雰囲気を醸し出すメロディーライン。素敵な演奏だ。冒頭からの4曲で、このトリオ演奏のレベルの高さと歌心溢れる流麗な演奏内容が聴いてとれる。

我が国ではどうにも知名度が低いィジェイ・アイヤーだが、国際的には、次世代のジャズ・ピアノを担う中堅ピアニストの1人として認知されている。今回のトリオ新作も実に濃い内容で、トリオ演奏のレベルも高い。不思議と繰り返し聴きたくなるピアノ・トリオの秀作です。
 
 

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2022年5月28日 (土曜日)

ECMの次世代を担うピアニスト

ピアノ・トリオについては、21世紀に入って、演奏志向の「二極化」が進んでいるのではなかろうか、と思っている。

米国では「ハードバップの現代版」である「ネオ・ハードバップ」志向のピアノ・トリオが主流。それもピアノの個性としては「総合力で勝負する」タイプが殆どを占める。強烈な個性というよりは、コードやモード、ファンキー、ソウルなどのジャズ演奏のトレンドを総合して、新しい響きのハードバップを演奏する志向が強い。

欧州では、1970年代からの「ニュー・ジャズ」志向の音世界がしっかりと継承されていて、耽美的でリリカルなジャズ・ピアノについては、欧州で深化している。ピアニストの個性としては、現代音楽風、現代クラシック風の透明度の高い、硬質なタッチで、耽美的でリリカルなピアノを志向するタイプが多い、というか、バップなピアノを志向するピアニストは少数派。

そんな耽美的でリリカルな「ニュー・ジャズ」志向のピアノ・トリオについては、欧州ジャズ・レーベルの老舗中の老舗、ECMレーベルに多く存在する。創立者のマンフレート・アイヒャーの音の志向が「西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた、アコースティックな表現を基本とした耽美的でリリカルな音」。ECMレーベルは1970年代から、ずっと耽美的でリリカルなジャズ・ピアノをコンスタントに制作している。
 

Vermillion

 
Kit Downes, Petter Eldh, James Maddren『Vermillion』(写真左)。2021年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Kit Downes (p), Petter Eldh (b), James Maddren (ds)。新盤のキャッチコピーが「次世代ECMを担う、注目の英国発のピアニストのピアノ・トリオ作品」。英国出身のピアニスト、今年36歳のキット・ダウンズをメインに、スウェーデン出身のベーシスト、ペッター・エルドと同じ英国人ドラマー、ジェームズ・マドレンとが組んだピアノ・トリオの新盤。

明らかにECMレーベルのピアノ・トリオの「今の音」が詰まった優秀盤。欧州で脈々と継承される、耽美的でリリカルな「ニュー・ジャズ」志向のピアノ・トリオの「今」がこのトリオ盤に宿っている。冒頭の「Minus Monks」を聴けば、そこは既に「耽美的かつリリカル」な音世界。どこかエスニック風でもあり、どこか牧歌的でもあり。どこか、チックやキースの香りがしたり、バイラークやキューンの響きがしたり。しかし、個性の基本はダウンズのオリジナル。

時折、幽玄な音世界を漂ったり、硬質な現代音楽的な無調のインタープレイに走ったり、時に、フリーのマナーも見え隠れする、ネオ・ハードバップとは対極に位置する耽美的でリリカルな「ニュー・ジャズ」志向のピアノ・トリオ。そこに、しっかりとECMエコーがかかって、耽美的でリリカルな音世界に拍車をかける。

実にECMレーベルらしい、ピアノ・トリオ盤である。さすがECMレーベル、まだまだ健在である。
 
 

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2022年4月21日 (木曜日)

シャイ・マエストロの最新盤

ジャズ・ピアノについては、長年、実力、人気共にトップの座に君臨していた、キース・ジャレット、チック・コリア、ハービー・ハンコックの3人のうち、チックは鬼籍に入り、キースは脳溢血により再起不能状態、ハービーは隠遁状態。次世代を担う存在、ブラッド・メルドーは元気だが、マーカス・ロバーツは目立たなくなり、ジェリ・アレンなどの女性ピアニスト達もちょっと地味な存在になりつつある。

しかし、最近の新盤を聴いていると、ブラッド・メルドーの世代を飛び越えて、20歳代〜30歳代の若手中心に、キース、チック、ハービーの世代の次々世代を担うジャズ・ピアニストが多く出てきている様だ。そんな有望株の中に、キースやチック、メルドーのフォロワーがいたりして、時代の移り変わりを感じる。僕等が若い頃は「(バド・)パウエル派」か「(ビル・)エヴァンス派」が主流だったなあ。

Shai Maestro『Human』(写真左)。2020年2月「Studios La Buissonne, Pernes-les-Fontaines」での録音。2021年1月、ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Shai Maestro (p), Philip Dizack (tp), Jorge Roeder (b), Ofri Nehemya (ds)。現在のイスラエルを代表するジャズ・ピアニストのシャイ・マエストロの、2年ぶりのリーダー作。シャイ・マエストロは、1987年、イスラエル生まれ。今年で35歳。キース・ジャレットからも賞賛される若手有望なピアニストである。
 

Human_shai-maestro

 
キースが賞賛するのも何となく判る。シャイ・マエストロのピアノは、どこかキースのピアノの雰囲気を持っている。耽美的でリリカルで端正な弾き回しなど、キースのフォロワーと言っても良いくらい。しかし、キースほどどっぷり入り込んだ様な流麗さでは無く、サッパリとした切れ味の良いタッチで、シンプルなリリカルさはシャイ・マエストロ独特の個性だろう。

シャイ・マエストロと、ドラムのオフリ・ネヘミヤはイスラエル出身。ベースのホルヘ・ローダーはペルー、トランペットのフィリップ・ディザックは米国と、多国籍なカルテット編成。叙情的で穏やかなメロディー、流麗で透明感溢れるタッチ、シャイ・マエストロのピアノに、語りかける様に、肉声の様なトランペットが絡む。ベース&ドラムのリズム隊も柔軟にフロントを支え、鼓舞する。現代の先端を行く、自由度とイマージネーションに溢れるインタープレイの数々。

イスラエル出身シャイ・マエストロだが、この盤での音はイスラエル色は薄い。それでも、この盤に詰まっているのは、現代のコンテンポラリーな純ジャズであり、伝統的なメインストリーム系のジャズを踏襲しつつ、新しい響きと要素を盛り込んだ、洗練された神秘的なサウンド。カルテットの一体感が素晴らしく、雑誌Jazz Lifeの「2021年度 Disc Grand Prix 年間グランプリ」に、この盤のタイトルが挙がるのも頷ける。
 
 

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2022年4月19日 (火曜日)

ECM盤を出した3人目の日本人

雑誌Jazz Lifeの「Disc Grand Prix 年間グランプリ」の記事を眺めていて、日本人女性がリーダーの盤を見つけた。しかも、 ECMレーベルからのリリースとある。え〜っ、ECMレーベルが日本人ジャズ・ミュージシャンをピックアップして、リーダー作を作らせたのか? 慌てて、ECMレーベルのカタログを見直してみたら、やっぱり「ありました」。

Ayumi Tanaka Trio『Subaqueous Silence』(写真左)。2019年6月、ノルウェーのオスロ「Nasjonal Jazzscene Victoria」での録音。リーダーは日本人の「田中鮎美」。邦題は「スベイクエアス・サイレンス − 水響く −」。

ちなみにパーソネルは、Ayumi Tanaka (p), Christian Meaas Svendsen (b), Per Oddvar Johansen (ds)。ノルウェーの優秀なリズム隊をバックに従えた、日本人女性ジャズ・ピアニストがリーダーの「ピアノ・トリオ」編成。

田中鮎美は、現在ノルウェー在住の日本人ピアニスト&作曲家。2011年にオスロに渡り、ノルウェー国立音楽院のジャズ・即興音楽科に入学、故ミシャ・アルペリンに師事。そして、2013年、ノルウェーの若手有望ベーシスト、Christian Meaas Svendsen、同じくノルウェーの中堅人気ドラマー、Per Oddvar Johansenに出会い、田中鮎美トリオを結成、2016年にアルバム『Memento』にてデビュー。本作はそれ以来5年ぶりとなる2枚目のリーダー作。
 

Subaqueous-silence_ayumi-tanaka

 
テンション張った、即興演奏がメインの演奏になる。静的なリズム&ビートを底に忍ばせながら、ハードバップやモーダルな演奏とは全く正反対の、現代クラシックの室内楽アンサンブルの様な、ピアノ、ベース、ドラム、それぞれが対等の立場に立った、フリーなインタープレイ。

ピアノ、ベース、ドラム、それぞれの音数は少ない。最小限の音で表現される音の浮遊感、音の響きの広がり、音と音との「間」を活かした即興演奏。決して無手勝流の、激情にまかせたフリーなインプロビゼーションとは異なる、透明度高く、音の広がりと浮遊感をメインとした、静的なフリーなインプロビゼーション。

まるで、日本の「水墨画」を見る様な音世界である。音と音との「間」を活かしたインタープレイは、「静寂」「侘び」「寂び」な音の響きを紡ぎ上げている。

今までにも、日本人による同様な音の浮遊感、音の響きの広がり、音と音との「間」を活かした即興演奏はあるにはあったが、今回の田中鮎美トリオによる「表現」は次元が違う。かなり高度なレベルの、実にアーティステックな「静的でフリーなインプロビゼーション」である。

ピアニストの菊地雅章、ドラマーの福盛進也に次いで、日本人でECMからリーダー作を発表する3人目となった「田中鮎美」。ECMレーベルの音作りのコンセプトである『沈黙の次に美しい音』 ”The Most Beautiful Sound Next To Silence” を具現化した、注目に値するアルバム『Subaqueous Silence』。リーダーの田中鮎美には、この盤だけの単発に終わること無く、定期的にリーダー作をリリースし続けて行くことを望みたい。
 
 

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2022年4月18日 (月曜日)

ECM発、ハルスマンの新盤

昨日ご紹介した Maciej Obara『Three Crowns』(写真左)。ECMレーベルのカタログを見ていたら、同じ様なオブジェのジャケ写のアルバムを見かけた。恐らく、どこかの美術館かどこかで撮影した同じ作者のオブジェを使い回したのではないか、と思いつつ、何故か強く惹かれたので、「ジャケ買い」第2弾として、この盤をチョイス。

Julia Hulsmann『Not Far From Here』(写真左)。2019年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Julia Hulsmann (p), Uli Kemoendorff (ts), Marc Muellbauer (b), Heinrich Kobberling (ds)。リーダーの Julia Hulsmann(ジュリア・ハルスマン)は、1968年、独ボン生まれの女性ジャズ・ピアニスト。繊細でリリカルなタッチ、耽美的で流麗なフレーズが個性。

このハルスマンのピアノが、ECMレーベルの音世界にバッチリ合っている。 ECM独特の深いエコーの中、漂うが如く、流れるが如く、それでいてタッチが明確で、フレーズの一音一音がクッキリと浮かび上がる。まさに「ECMレーベルの申し子」の様なピアノ。暫く聴いていて、ふと「Steve Kuhn(スティーヴ・キューン)」のピアノを想起したが、キューンのピアノよりも繊細で浮遊感があるのが独特の個性。
 

Not-far-from-here_julia-hulsmann

 
繊細でリリカルなタッチ、耽美的で流麗なフレーズが個性のピアノなので、浮遊感を活かした幽玄なフレーズが間延びしたりしそうだが、そこはこの盤、テナー・サックスが入ったカルテット編成の演奏なので、テーマ部の旋律がクッキリしていて、演奏全体にメリハリが付いていてバランスが良い。テナーが入ることによって、逆に、ハルスマンのピアノの個性が良い方向に作用している。

収録されたどの曲も、ハルスマンのピアノの特性を活かした、耽美的でリリカル、そして、どこかミステリアスな演奏がメイン。3曲目の「This Is Not America」は、デヴィッド・ボウイとパット・メセニー、ライル・メイズが共作した、映画「コードネームはファルコン」の主題歌。メロディアスで深みのある展開で、アルバム全体の演奏の中で、ちょっとユニークな内容になっている。

そして、この「This Is Not America」は、ラストで、ハルスマンのピアノ・ソロで再演されるのですが、これが絶品。ハルスマンのピアノの個性がこのピアノ・ソロに凝縮されて、聴き応えのある、滋味溢れるパフォーマンスに仕上がっている。現代のコンテンポラリーな純ジャズ、現代の欧州のニュー・ジャズとして、一聴の価値が十分にある好盤だと思料。
 
 

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2022年4月17日 (日曜日)

ECM発マチェイ・オバラの新盤

欧州ジャズ・レーベルの老舗レーベルの「ECM(Edition of Contemporary Music)」。1969年、マンフレート・アイヒャーにより創設。以降、米国ジャズの基本となったハードバップとは一線を画する、欧州ジャズの特質を明確に宿した、即興演奏を旨とした「ニュー・ジャズ」をメインに活動した。

限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音が特徴で、ファンクネス皆無、透明度が高く、演奏のテクニックが高度な演奏が繰り広げられる。即興演奏を旨とするが、決して、フリー・ジャズに偏らない。というか、意外とフリー・ジャズ、アバンギャルド・ジャズは少数派。即興演奏を旨とするが、基本的にリズム&ビートはキープした中での、モーダルな演奏、無調な演奏がメイン。

新人ジャズマン、有望ジャズマンの発掘も積極的。特に、欧州各国における代表的ジャズマンの発掘に長けている。そんなECMレーベル、21世紀に入ってもその活動は順調で、毎年、コンスタントに新盤を一定数リリースし続けている。カタログに入っているアルバムも相当数に登っていて、最近ではカタログ番号順に聴き進めることは諦めた。カタログを見て、これは、と思った盤を聴くことにしている。

Maciej Obara『Three Crowns』(写真左)。2019年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Maciej Obara (as), Dominik Wania (p), Ole Morten Vagan (b), Gard Nilssen (ds)。リーダーのアルト・サックスとピアノがポーランド、ベースとドラムがノルウェー出身の混成カルテット。

いかにも、ECMレーベルらしい音世界に思わず聴き入ってしまう。限りなく静謐で豊かなエコーをはじめ、半世紀以上続くECM独特の音世界なのだが、演奏するメンバーが個性的なので飽きることは無い。
 

Three-crowns_maciej-obara

 
この盤のリーダー、マチェイ・オバラのアルト・サックスの音だって、ちょっと聴けば「ヤン・ガルバレクか?」と思うが、暫く聴き進めると、ガルバレクよりも音が少し明るく丸く暖かく、フリー&アバンギャルドな演奏にも長けているところがオバラ独特の個性。

オバラ作が6曲、Henryk Mikolaj Grecki(ヘンリク・ミコワジ・ゴレツキ)作が2曲。冒頭の「Three Pieces in Old Style (Part 1)」は漂う様な、ECMらしい繊細なバラードで、あまりの静謐さに「これはちょっと」と思うが、2曲目の「Blue Skies for Andy」の哀愁感溢れる、アグレッシヴでモーダルな演奏に俄然、聴く気が湧いてくる。現代の即興演奏に重点を置いたモード・ジャズの典型的な演奏が良い。ラストの「Mr. S」はしっとりとしたメロディーがキャッチャーな、自由度の高いバラード演奏。

他、即興演奏に重点を置いた印象的なモード・ジャズをメインに、フリー・ジャズあり、アバンギャルド・ジャズあり、現代のコンテンポラリーな純ジャズの良いところがギッシリ詰まっている。ワニアのピアノはリリカル、バーガンのベースはテクニック優秀で重量感豊かでしなやか、ニッセンのドラムは柔軟かつ堅実。実に充実したカルテット演奏である。

タイトルの「Three Crowns」は、ポーランド南部のピエニィニ山脈のトルツェコロニー山脈の頂上にちなんだもの、とのこと。ジャケットも前衛的なECMらしいものでグッド。

実を言うと、僕はこのジャケットに惹かれてこの盤を聴くに至った、いわゆる「ジャケ買い」盤だった。しかし、聴いて感心することしきり、さすがECM、現代のコンテンポラリーな純ジャズのいいところを押し出してきた。現代の欧州ジャズの注目株である。
 

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