2020年3月24日 (火曜日)

奇跡の様なベース1本のソロ盤

ECMレーベルのアルバムのカタログを眺めてみると、やはりニュー・ジャズと呼ばれる即興演奏(基本はモードかフリー)をメインにジャズ的アプローチを旨とした演奏が多い。従来のハードバップや、その深化形であるファンキー・ジャズやソウル・ジャズなど、大衆向けポップ志向のジャズは全く無い。

つまりは、ECMレーベルは商業主義から離れたところにあるレーベルで、米国のジャズ・レーベルとは一線を画している。逆に、このカタログで経営的に問題が無いのかどうか、心配になる。ジャズをアートとして捉え、マンフレート・アイヒャーが選んだ「今日的」な音楽を記録し、世に問う。1969年創立なので、レーベルとしての活動はもう50年にもなるのだから、経営は大丈夫なんだろう。

Gary Peacock『December Poems』(写真)。1977年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Gary Peacock (b), Jan Garbarek (ts, ss, tracks 2 & 4) 。パーソネルを見て判るように、2曲だけ、ガルバレクのサックスが入るが、基本はベーシスト、ゲイリー・ピーコックのベース1本のソロ盤である。おおよそ、商業主義にそぐったアルバムでは無い。
 
 
December-poems
 
 
ベーシストが基本的にソロ演奏だけでアルバムを一枚、成立させるのは至難の業である。ベースは低音がメインなので、旋律を奏でる場合、テクニックがイマイチだとメロディーラインが追いにくい。リズム&ビートだってそうだ。多重録音であれ、ベースが旋律楽器を担当するので、音質がかぶる。この「かぶり」を克服する必要がある。アコースティック・ベースという楽器の性格上、よっぽどのことが無いと成立しない。

が、この盤はベース1本でアルバムが成立している。ピーコックの類い希なる超絶技巧なベースがそれを可能にしている。とにかく凄まじいばかりの目眩くテクニックの数々。まるで、アコースティック・ベースが唄っているようだ。素晴らしいのは、アコースティック・ベースそのままで、弾き出される音のバリエーションが豊かなこと。ベース1本なのに、アルバムを聴き通して、全く飽きが来ない。

アコースティック・ベースが、これだけハイ・テクニックでアーティスティックに演奏されるなんて「驚き」である。その「驚き」の記録がここにある。さすが、ECMレーベルである。ベース1本のソロ盤を通常のカタログの中で、普通に何気なくリリースする。さすが、欧州ジャズ、ニュー・ジャズの老舗レーベルである。さすが、マンフレート・アイヒャーである。奇跡の様なベース1本のソロ盤がここにある。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

【更新しました】2020.03.02
  ★ まだまだロックキッズ ・・・・ クールで大人な『トリロジー』

【更新しました】2020.03.15
  ★ 青春のかけら達 ・・・・ チューリップ『魔法の黄色い靴』
 

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2020年2月10日 (月曜日)

ECM流フュージョン・ジャズ

先週の後半から、いきなり冷え込んだ。というか、凄く寒い。今年の冬は暖冬傾向だっただけに、この寒さは体に悪い。と思っていたら、いきなり体調を崩した。7年前に大病をして大手術の末、生還した訳だが、その時の後遺症が久々に出た。今日になってやっと回復した。それでもまだ寒い。これだけ寒い時のジャズは「ECMレコード」盤と決めている。

西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。凛とした無調のフレーズ。いわゆる「ニュー・ジャズ」である。ファンクネスは皆無、即興演奏という面が、ECMレコードのアルバムを「ジャズ」というジャンルに留めている。ECMの音のモットーは「the most beautiful sound next to silence」=「沈黙に次いで最も美しい音」。

Collin Walcott『Grazing Dreams』(写真左)。1977年2月、ノルウェーはオスロのTalent Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Collin Walcott (sitar, tabla), Don Cherry (tp, wood-fl, doussn' gouni), John Abercrombie (g, el-mandolin), Palle Danielsson (b), Dom Um Romão (perc, tambourine, berimbau)。
 
 
Grazing-dreams-1  
 
 
リーダーのコリン・ウォルコットは「シタール、タブラ」奏者。シタールはインドの伝統弦楽器、タブラはインドの伝統打楽器。これがリーダーの楽器である。それでジャズをやるのだ。いや〜ビックリである。ニュー・ジャズの旗手、ECMレコードの面目躍如。そして、周りを固めるのが、フリージャズ・トランペッターのドン・チェリー、捻れエレギのジョンアバ、北欧のベースの雄ダニエルソン、そして、ドラムは、ブラジルのドラマー、ドン・ウン・ホマォン。

インドど真ん中のウォルコット、東洋志向に転身しつつあったドン・チェリー、バリバリの西欧志向のアバークロンビーが絡み合う、無国籍の幻想的な浮遊感溢れるフレーズ。ホマォンのドラムとダニエルソンのベースがしっかりビートを刻む中、ウォルコットのシタールとタブラが独特の、唯一無二な音空間を創り出している。東洋志向に傾くフレーズをジョンアバの西洋志向のエレギが中和する。

いわゆる「異種格闘技」的ジャズ・セッション。ECM流の「フュージョン・ジャズ」。欧州ジャズのフュージョン(融合)の音世界。摩訶不思議な即興演奏。ECMレコードならでは、というか、ECMレコードでしか為し得ない「ニュー・ジャズ」。実験色が強い内容であるが、しっかりジャズしているから素晴らしい。
 
 
 
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2020年2月 8日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・78

ジャズ盤蒐集〜リスニングの楽しみ。過去の好盤のリイシューも楽しいが、やはり、今の新しいジャズ盤に耳を傾けるのも楽しい。今の新しいジャズに耳を傾けるということは「ジャズの今」を感じること。新盤で今を感じて、リイシューで過去を感じて、ジャズという音楽ジャンルの奥深さと歴史を理解する。ジャズ者の我々とっては、とても大切なことだと思っている。

Marc Copland Trio『And I Love Her』(写真左)。昨年10月のリリース。ちなみに、トリオを構成するのは、Marc Copland (p), Drew Gress (b), Joey Baron (ds)。リーダーのピアニスト、マーク・コープランドは、米国フィラデルフィア出身、1948年生まれなので、録音当時で71歳。大ベテランのジャズ・ピアニスト。

大ベテランのジャズ・ピアニストであり、リーダー作も1988年の初リーダー作以来、毎年1枚以上のペースで相当数を数える。いわゆる人気ピアニストであり、年齢的にもレジェンド・クラスであるにも関わらず、日本ではあまり名は知られていない。恐らく、日本のレコード会社にとって、あまり馴染みの無い海外レーベルからのリリースに偏っていたからでは無いか、と思っている。それにしても、そのキャリアに比して、あまりに日本では馴染みの無いピアニストである。
 
 
And-i-love-her-1  
 
 
マーク・コープランドのピアノと言えば「過剰なくらいに繊細でクール、耽美的表現の極致」が特徴。バップやファンキー、ソウルとは全く無縁。ファンクネスもほとんど感じ無い。例えば、ビル・エヴァンスの耽美的表現をさらに推し進めた、耽美的でクールで静的なピアノ。ダイナミックな展開は全く無い。まるで「カラフルで深遠な」墨絵を見る様な音世界。

冒頭の「Afro Blue」から、この「カラフルで深遠な」墨絵を見るような音世界が全開である。グレスのベースとバロンのドラムも、そんなコープランドのピアノにぴったりと寄り添うような、絶妙なサポートを聴かせてくれる。そして、タイトル曲、レノン&マッカートニーの「And I Love Her」が絶品。コープランドの耽美的なピアノがぴったりと填まる。原曲のフレーズの美しさを耽美的なピアノで、より明確に深遠に聴かせてくれる。

コープランドのピアノの音世界は、この「過剰なくらいに繊細でクール、耽美的表現の極致」に徹底されている。これが素晴らしい。時には、バップやファンキーに展開して欲しくもなるのだが、ここまで徹底していると、これはこれで「このままでもありやなあ」と思うから面白い。他のピアニストには無い「独創的な音世界」。これもジャズ・ピアノである。
 
 
 
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2020年2月 2日 (日曜日)

水墨画を見るような素敵なデュオ

以前に比べて、最近、ジャズの演奏フォーマットで「デュオ」が多くなったように感じる。デュオは楽器の組合せをよくよく考えなければならないこと、そして、デュオの演奏については、双方の演奏のテクニックが高くなければならないこと、そして、一番大切なのは、デュオのパートナーである演奏相手との相性である。

この3つの要素を充足するには、ジャズの充実度合いが鍵になる。1980年代に純ジャズ復古がなり、フュージョン〜スムース・ジャズの成熟度合いが高まり、21世紀に入って、ネオ・ハードバップが定着し、クールで耽美的な、新しいスピリチュアル・ジャズが現れ出でた。21世紀に入ってからのジャズの充実度合いは順調に高まっている。

Bill Frisell & Thomas Morgan『Epistrophy』(写真左)。ECM 2626番。2016年3月、NYヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音。改めてパーソネルは、 Bill Frisell (g), Thomas Morgan (b)。ビル・フリゼールは1951年生まれ。今年69歳の「変則ねじれギターのレジェンド」。トーマス・モーガンは1981年生まれ。今年39歳の中堅ペーシスト。菊地雅章との共演で僕はこのベーシストの名前を知った。
 
 
Epistrophy  
 
 
世代が異なりながらも(実際30歳の年齢差がある)、双方、盟友と任じている、ビル・フリゼールとトーマス・モーガン。ジャズの「音の志向」が合っていないとデュオ演奏は成立しない。この30歳という年齢差で「音の志向」が合うのか、という不安を感じるこの二人であるが、フリゼールが以前より、尖った自由度の高い、新しい響きのモード・ジャズを志向してきたので問題無い。

淡々としているが、音に深みと味わいがある。水墨画を見るような演奏。調性のフレーズと無調のフレーズが、有機的に結合し、硬軟自在、緩急自在のデュオ演奏が繰り広げられる。演奏のイメージが多岐に広がるので飽きがくることは無い。モーガンのスピリチュアルなベースに鼓舞されて、フリゼール独特の耽美的なモーダルな自由度の高いフレーズが美しく乱舞する。

2人の愛する米国ネイティヴな歌集「All in Fun」「Red River Valley」「ラストダンスは私に」、モンクの「Epistrophy」「Pannonica」など、癖のある選曲は実にユニーク。そして、ジョン・バリーの「ジェームズ・ボンドは二度死ぬ(ou Only Live Twice)」には思わず口元が緩む。カラフルなジャケットが、アルバムの音楽を的確にイメージしている。好盤です。
 
 
 
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2019年12月13日 (金曜日)

アジマスは英国のジャズ・トリオ

久々にECMレコードの聴き直しシリーズ。やっと1977年辺りまで来ている。この頃が、ECMレコードの最初の「充実期」で、ニュー・ジャズをメインに、キラ星の如く、好盤、佳作が目白押し。ECMレコードの音が、欧州ジャズのイメージをバッチリと固めた頃である。でも、我が国ではECMレコードのアルバムは、有名盤以外は入手し難かったなあ。

『Azimuth』(写真左)。1977年3月の録音。ECM 1099番。ちなみにパーソネルは、John Taylor (p,syn), Norma Winstone (vo), Kenny Wheeler (tp, flh)。メンバー3人ともイングランドの出身。珍しい「純英国」なメンバー構成。収録された全ての曲は「John Taylor & Norma Winstone」による。

さて改めて、アジマス(Azimuth)は、英国のジャズ・トリオ。トランペット奏者のケニー・ホイーラー、ボーカリストのノーマ・ウィンストン、ウィンストンの夫でピアニストのジョン・テイラーというトリオ構成。僕はこの「アジマス」については、存在は知っていたが、なんだかパチモンみたいな響きのバンド名なので、どうにも手を出さずにいた。
 
 
Azimuth-azimuth
 
 
しかし、アルバムと言うもの、まずは聴いてみるもので、このアジマスの奏でる音は、明らかにECMレコードがプッシュする「ニュー・ジャズ」である。クールなホイーラーのトランペットとテイラーのピアノ、そして、そこに流れるウィンストンの「女性スキャット」は、現代の「クールなスピリチュアル・ジャズ」に直結するもの。静的なエモーショナルは「ニュー・ジャズ」に相応しい。

そして、トランペットのケニー・ホイーラーが実に良い。クールでエモーショナルな、加えて耽美的で伸びの良いトランペットは実に聴き応えがある。このアジマスでのホイーラーのトランペットって、彼のベスト・プレイの1つに数えられても良い物だと思う。テクニックも確か、フレーズは流麗。明らかにこのトランペットは欧州ジャズのトランペットである。

実にECMレコードらしい「ニュー・ジャズ」なアルバムである。基本はモードだと思うんだが、飽きが来たり、ダレたところが無く、適度なテンションをずっと維持しつつ、音の広がりが芳しいニュー・ジャズな演奏に思わず聴き惚れる。こんなに優れたアルバムがなかなか、我が国では入手するのが難しかった。今の時代に感謝、である。
 
 
 
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2019年12月12日 (木曜日)

静的でエモーショナルなロイド

21世紀に入って、チャールズ・ロイドを再発見した。が、リリースはECMレーベル。どうも、チャールズ・ロイドとECMレーベルとが結びつかなくて、ECMレーベルにロイドの名前を発見した時は、僕は同姓同名の別人かと思った。しかし、ファースト・ネームの「Charles」は同名はありそうだが、「Lloyd」はどう考えても同姓は無いよな〜、ということで、やはり、ロイドの再発見である。

そして、やっとつい最近、再発見後のロイドの聴き直しを始めた。どうにも印象が曖昧になって、ECMレーベルのロイドの音世界がイメージ出来なくなっていた。メジャー・デビュー当時、1960年代後半のロイドは「コルトレーンのええとこ取り」。そのイメージが強くて、ECMレーベルでの「耽美的で静的でスピリチュアルな」ブロウがどうにも据わりが悪い。

Charles Lloyd『Notes from Big Sur』(写真左)。1991年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts), Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Ralph Peterson (ds)。ピアノのステンソンとベースのヨルミンはスウェーデン出身で、ドラムのピーターソンは米国出身。ロイドは米国出身なので、スウェーデンと米国の混成カルテットということになる。
 
 
Notes-from-big-sur-1
 
 
この盤に詰まっている音は「静的でエモーショナルな」音世界。全編、ロイドの淡々とクールで耽美的な、流麗でスピリチュアルなブロウが印象的。決して、ホットにエモーショナルになることは無い。当然、変にフリーに傾くことは無い。演奏のベースはモード。モード奏法の良さを最大限に活かして、悠然とした、耽美的で伸びの良いフレーズが心地良い。

バックのリズム・セクションも好調。ピアノのステンソンとベースのヨルミンがスウェーデン出身なので、出てくる音は明らかに北欧ジャズ。しかし、ドラムのピーターソンのドラムの音は米国東海岸ジャズ。当時の若きピーターソンのドラミングが北欧ジャズへの傾倒を緩和させていて、意外と国籍不明なリズム&ビートに落ち着いている。これがまた面白い。

水墨画の様なテナーの音が、時には幽玄に変化し、時には霧のように漂っていく。1960年代後半のロイドの「コルトレーンのええとこ取り」とは全く異なる、唯一無二なロイドの個性。これがロイドのテナーの本質なのか、と思わず感心する。こんなロイドの本質的な個性を引き出したECMレーベルは凄い。マンフレート・アイヒャー恐るべし、である。
 
 
 
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2019年12月 1日 (日曜日)

1990年代以降のロイドを聴く

チャールズ・ロイド(Charles Lloyd)。1960年代後半、突如、現れ出で、ジョン・コルトレーンの聴き易い部分をカヴァーして人気を博した。特に、コルトレーンのフリーキーな部分は「人種差別に抗議する怒り」として捉えられ、この「コルトレーンのフリーキーな演奏」を聴きやすくしたところが、フラワー・ムーヴメメント、ヒッピー・ムーヴメントの中でウケにウケた。

しかし、このコルトレーンの聴き易い、ええトコ取りをしたアプローチが胡散臭い。加えて、ロイド人気の半分以上は、バックのリズム・セクションの人気だった。このバックのリズム・セクションが、キース・ジャレットのピアノ、セシル・マクビーのベース、ジャック・デジョネットのドラムで、当時、それはもう新しい響きのモーダルなジャズで素晴らしいもの。このトリオの人気が意外と大きかった。

1970年代に入って、クロスオーバー・ジャズの波が押し寄せ、商業ロックが台頭し、メインストリーム・ジャズの人気が衰退していった。合わせてロイドの人気は下降し、遂には忘れられた人となった。1980年代は完全にロイドの名前は無かった。が、つい最近、といっても5年ほど前だが、ECMレーベルからリーダー作を出しているロイドに気がついた。調べれば、1989年から、ECMレーベルの下で、ロイドはリーダー作を連発していた。
 
 
Fish-out-of-water-charles-lloyd  
 
 
Charles Lloyd『Fish Out of Water』(写真左)。1989年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl), Bobo Stenson (p), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。バックのリズム・セクションは、スウェーデン出身2人、ノルウェー出身1人。チャールズ・ロイドのテナー&フルートのワンホーン・カルテット。リリースは、欧州ジャズの老舗レーベルのECM。

アルバムに詰まっている演奏の雰囲気は「欧州の純ジャズ」。バックのリズム・セクションが北欧メインなので、音の響きは北欧ジャズ。ロイドのテナーは北欧ジャズのスタンダードである「クリスタルな切れの良い」音よりも暖かでエッジが丸い。米国ジャズってほどでは無いのだが、クールな熱気をはらんだテナーは意外と個性的である。欧州のテナーマンには無い独特の個性。

1989年にロイドはこんなに魅力的なワンホーン・カルテット盤を出していたんですね。全く知らなかった。1960年代の胡散臭さ漂うリーダー作ばかりが我が国ではジャズ雑誌に載ってきたので、ロイドの1990年代の活躍は全く意識していなかった。全く以て不明を恥じるばかりである。そして、今、1990年代以降のロイドのリーダー作を聴き進めている。これが意外と楽しいのだ。
 
 
 
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2019年11月 8日 (金曜日)

異端なキースの初ソロ・ピアノ盤

先日、キースのソロ・ピアノ盤を久し振りに聴いて、思わず、キースのソロ・ピアノ盤の聴き直しを再開した。ピアノ・ソロ盤は鑑賞するのがちょっと面倒。強弱のメリハリが付いたピアノ・ソロをリスニングするので、家で聴くにはある程度のボリュームが必要になる。このボリュームが問題で、大きな音の部分にピークを合わせると、弱いタッチの部分が聞こえないし、弱いタッチに合わせると、大きな音の部分が耳に突き刺さる。ボリュームの微妙な調整が鍵になる。

野外で聴く時は、イヤホンの性能が大切になる。密閉度が高いと弱いタッチもよく聴こえるが、周囲の音が全く聴こえないので、とにかく危険だ。と言って、密閉度が低いとソロ・ピアノの細かいニュアンスが全く判らなくなる。それと聴く場所も選ぶ。僕は電車の中、朝夕早めに並んで、席に座って、ジャズを聴く。意外と電車の中って静かなんですよ。しかも最近のイヤホンの音も凄くよくなったので、通勤の往き帰りでもソロ・ピアの盤が聴ける様になった。

Keith Jarrett『Facing You』(写真左)。1971年11月10日の録音。キース初のソロ・ピアノ盤。ECMの1017番。オンマイクのデッドな音が、このキース初のソロ盤の前衛性を際立たせる。リズム&ビートが明確にゴスペルチックでジャジー。右手のフレーズは米国フォーキーなルーツ・ミュージックの響き。マイルス・デイビス・セプテットでのコンサート公演の翌日での録音。この音世界がキースの本質だと感じている。
 
 
Facing-you-keith-jarrett  
 
 
冒頭の「In Front」が強烈な印象。不規則に旋律に絡むリズム、仄かにゴスペルチックなビート、そして、無調が基本ではあるが、決して難解さを感じさせない、アーシーで浪漫溢れるフォーキーな旋律。クラシックの様に調性が取れた部分は殆ど無い。無調で前衛を感じる。左手のビートが無調の展開に「規律」をもたらす。そういう意味で、このピアノ・ソロは明らかにジャズ。

そして、半ば辺りで出てくる、キースの「唸り声」。既に初ソロ・ピアノ盤の冒頭の1曲で「唸っている」。但し、唸りのボリュームはできる限り絞り込まれている(笑)。この盤はまだ完全な即興演奏では無い。曲毎にしっかりとした起承転結がある。しかし、そこが良い。そこが聴き易い。そう言う意味で、このキースの初ソロ・ピアノ盤は、後のキースのソロ・ピアノ盤とは一線を画する盤ではある。

ECMレーベルの総帥、マンフレッド・アイヒャーの野望を感じる。欧州ジャズの前衛の担い手、ECMレーベルに必要なもの。他のレーベルに無い、ECMならではの演奏フォーマット。キースのソロ・ピアノは、ECM独特のエコーの映える。ECMにしか出来ないキースのソロ・ピアノ。アイヒャーとキースのコラボがとても良い形で音になっている。キースのソロ・ピアノとしては異端ではあるが、この初ソロ・ピアノ盤、僕の大のお気に入り盤である。
 
 
 
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2019年11月 7日 (木曜日)

キースの2016年のソロライブ盤

キース・ジャレットのアルバムはずっと、ほぼリアルタイムで聴いてきた。熱狂的な大ファンでは無いのだが、キースのピアノはやはり「隅に置けない」。新作がリリースされるとやはり気になる。気になるとやはり手に入れて聴きたくなる。そして、1990年代まではCDショップに走ってゲットである。2000年代になると、ネット・ショップで「ポチッ」とな、である(笑)。

Keith Jarrett『Munich 2016』(写真左)。今回のキースの新作。ピアノ・ソロの蔵出しである。タイトル通り、2016年7月16日にミュンヘンで行ったソロ・コンサートのライヴ録音2枚組。プロデュースはキース自身。ECMの本拠地ミュンヘンでのコンサートで、聴衆の反応もとても良い。キースのソロ・ライブ盤としても、その収録された雰囲気は上位に位置するもの。

キースは、2017年2月15日、NYカーネギーホールで一夜限りのコンサートを行って以降、一切コンサートを行っていない。CDのリリースは、2014年のソロ・コンサート・ツアーの演奏を再構成した『Creation』が最後。スタンダード・トリオについても、2014年11月30日のニュージャージー・パフォーミング・アーツ・センターでのライブ演奏が最後に活動を休止している。
 
 
Munich-2016  
 
 
この『Munich 2016』は、その『Creation』の約1年後、ミュンヘンでのコンサートの再現。現時点で、アルバムとして聴ける一番新しいキースのピアノ演奏で、今回のリリースは貴重である。コンサートの再現だけに、収録されたソロ演奏には、その雰囲気、その展開に一貫性があって、当時のキースのソロの状態がとても良く判る。

前衛音楽の様なフリーキーな即興演奏から、アーシーなリズム&ビートを伴ったアメリカン・フォーキーな演奏、モーダルで限りなく自由なスタンダード演奏まで、なかなかバリエーションに富んだ内容が聴いていて楽しい。「ソロ・コンサートは、私が作り上げたものではない独自のルールを持つ別世界のようなもの」とキースは言うが、この盤に詰まっている音は、キースの意志による、キースのソロ演奏そのもの。

誰が聴いてもキースである。こういう即興をベースとした、ジャズの要素とクラシックの要素、そして、現代音楽の要素をミックスしたソロ・ピアノは、キースの専売特許。というか、キースしか、こういうソロ・ピアノをやらない。その演奏の内容とトレンド、そして演奏の展開や取り回しはキースの個性そのもので、この新盤もキースの個性が全開。現在、キースは病気療養のために活動を休止している。早期の復帰、復活を望みたい。
 
 
 
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2019年10月17日 (木曜日)

繊細で印象的でスピリチュアル

このアルバムを聴く度に「これってジャズなんだろうか」と心から思う。リズム&ビートは無い。様々な音の洪水。パーッカッシヴな音、水の流れるような音、印象的でスピリチュアルなギターの響き。語りかける様なピアノの音。音の全てが即興演奏。

即興演奏をメインとしているので、ジャズと言えばジャズだが、音の響きとしては「現代音楽」の響きが蔓延していて、聴いていて「ジャズなのか」と思ってしまう。自然の音が蔓延する。ビート感は一切無い。心に響く様なパーカッションの音。この盤は「静的で繊細な」スピリチュアル・ジャズ。

Egberto Gismonti『Dança Das Cabeças』(写真)。邦題「輝く水」。ブラジルを代表するマルチ・インストゥルメンタリスト、エグベルト・ジスモンチの1976年録音のECMデビュー作。ちなみにパーソネルは、Egberto Gismonti (8-string g, p, wood fl, vo), Naná Vasconcelos (perc, berimbau, corpo, vo)。ジスモンチとヴァスコンセロスの即興演奏、そして多重録音。
 
 
Danca-das-cabecas  
 
 
ナナ・ヴァスコンセロスが「納得の参加」。繊細で印象的でスピリチュアルなパーカッションの音は、ナナ・ヴァスコンセロスの仕業。納得である。ジスモンチは、ギターとピアノ、フルートを担当する。これまた、繊細で印象的でスピリチュアルな音の響き。そうか、この盤の音は、静的で繊細なスピリチュアルな音なのだ。

即興演奏がLPの片面、約25分続く。ビートの無い、繊細で静的で印象的でスピリチュアルな音の世界。飽きるかなと思いきや、決して飽きない。25分、一気に聴き切ってしまう。繊細で静的な音の中に、仄かに漂う歌心。この歌心が漂う繊細で静的なフレーズが聴く者を決して飽きさせない。

欧州のニュー・ジャズの老舗、ECMレーベルからのリリースなので「ジャズ」と決めつけるのは野暮ってもんだ。しかし、この盤の繊細で静的なパーカッションは、ニュー・ジャズ的なビートを仄かに感じさせてくれる。全編、即興演奏。仄かに漂うビート。基本、この盤に詰まっている音は「ニュー・ジャズ」な音と解釈して良いだろう。30年以上聴き続けていますが、決して飽きません。好盤です。
 
 
 
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