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2018年6月15日 (金曜日)

ECMでの「ジャズ・ファンク」

1970年代のECMレーベルのアルバムはどれを取っても「ECMの音」が詰まっていて面白い。欧州の香りのする、透明度の高い、エッジの立った音で、限りなく自由度の高いモーダルな演奏、限りなくフリーに近いニュー・ジャズな演奏。ファンクネスは限りなく抑制され、ファンクネスが漂っても限りなく乾いている。明らかに、米国ジャズに相対する「欧州のジャズ」の音世界。

Bennie Maupin『The Jewel In the Lotus』(写真左)。1974年の作品。ECMの1043番。ちなみにパーソネルは、Bennie Maupin (sax, fl, b-cl, vo, glockenspiel), Herbie Hancock (key, p), Buster Williams (b), Billy Hart, Freddie Waits (ds, marimba), Bill Summers (perc), Charles Sullivan (tp)。ダブル・ドラムのセプテット構成。

ジャケットが酷い。ECMらしからぬ酷さ。蓮の花の真ん中にモウピンの横顔。誰のデザインなのか。しかし、このジャケットのイメージを見れば、スピリチュアル・ジャズな内容なのか、と想像する。とくれば、自由度の高いブロウがメインのコッテコテのフリー・ジャズなのか、と思う。ECMだからこそ、それがあり得る。心してCDプレイヤーのスタートボタンを押す。
 

The_jewel_in_the_lotus  

 
フリー・ジャズな演奏がくるか、と身構えていたら肩すかしを食らう。淡いファンク的なビートの上での浮遊感溢れる「印象派の絵画の様な」演奏。ファンク的なビートでも乾いているから、粘ることは無い。爽やかなファンク。ひたすら浮遊する感じのフレーズが続いて「水彩画を見るが如く」である。フロントのモウピンのテナーが印象的なソロを吹きまくることも無い。 

ふとパーソネルを見れば、ハービー・ハンコックが参加している。ECMにハービー、違和感満載である(笑)。そう、この水彩画を見るが如くの管楽器とキーボードの音の重なりは、ハービーの「Speak Like a Child」であり、淡いファンク的なビートの上での浮遊感は「Mwandishiバンド」。欧州の、ECMレーベルでの「ジャズ・ファンク」である。

熱い混沌としたフリー・ジャズでは無い。自由度は限りなく高いが、しっかりと規律を持った、ジャズ・ファンク志向のニュー・ジャズ。浮遊感溢れるリードとブラスとのユニゾン、宝石のように美しく散らばる珠玉のピアノ、そして、メンバー全員による荘厳なアンサンブル。何となく最初は面食らうが、聴き進めるにつれ、とても美しいニュー・ジャズなフレーズに耳を奪われる。不思議な魅力を持った「異色のECM盤」である。

 
 

東日本大震災から7年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年5月30日 (水曜日)

パット・メセニーの正式初録音盤

パット・メセニー(Pat Metheny)のサイドメン参加のアルバムを聴き進めている。メセニーと言えば、今や、押しも押されぬ現代ジャズ・ギターのレジェンドである。1970年代以降の「ニュー・ジャズ」の範疇でのエレクトリック・ギターは第一人者のポジションを維持している。スインギーな4ビート・ジャズとは全く対極のニュージャズの寵児であるメセニー。

そんなメセニーについては、サイドメン参加に回った時のプレイの方が、メセニーのエレギの特性を強く感じることが出来るのでは無いか、という仮説の下に、パット・メセニーのサイドメン参加のアルバムを聴き始めた。これが、どうも当たりみたいで、サイドメンのプレイの方が、リーダーの音のイメージという「規制」がの下で個性を表出しなければならない、という条件下で、メセニーの個性が強くでるみたいなのだ。

Gary Burton Quintet with Eberhard Weber『Ring』(写真左)。1974年7月の録音。ECMの1051番。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Michael Goodrick (g), Pat Metheny (g, el-12-string g), Steve Swallow (b), Eberhard Weber (b), Bob Moses (ds, perc)。パット・メセニーが、録音アルバムに名を連ねた、最初の正式盤である。
 

Ring

 
メセニーの師匠格であるゲイリー・バートン。バートンの慧眼恐るべしである。1970年代前半、当時、ニュー・ジャズの推進者であたゲイリー・バートン。彼の音楽性に対して、パット・メセニーのエレギはピッタリの存在だったことがこの盤を聴いて良く判る。メロディアスでフォーキーなソロから、怜悧でクールなフリー・インプロビゼーションまで、メセニーの持つ「ギターの個性」が、このバートンのイメージする音世界にピッタリなのだ。

ダブル・ベースにダブル・ギター。編成からして規格外である。この盤でのメセニーのギターについても「規格外」。恐らく、当時、過去を振り返っても、聴いたことの無いエレギの音とインプロビゼーションだったと推察する。バートンのヴァイブのバックで、シャープにウネウネ蠢くエレギの音は明らかにメセニーである。

この頃のバートンの音世界は「クロスオーバー・ジャズの最後期」の音。メセニーはちょっと歪んで捻れたエレギをウネウネ弾きまくる。とは言え、メセニーの後の個性はまだまだ。とにかく、当時のトレンドのエレギを必死で弾いている、という面持ちが微笑ましい。音の個性の確立はもっと後になるが、その萌芽はこの盤でしっかりと感じ取れる。まだ、あまり個性が目立たない、貴重な若き日のメセニーのパフォーマンスである。

 
 

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2018年5月22日 (火曜日)

究極のヨーロピアン・カルテット

1970年代のキース・ジャレット。アメリカン・カルテットとヨーロピアン・カルテットの平行活動。この2つの対照的なカルテットの音が実に面白い。キースはどちらのカルテットでも、そのパフォーマンスは変わらない。結果として、テナー・マンの音の個性がバンド全体の音の個性を決定付けている。アメリカン・カルテットのテナーは「デューイ・レッドマン」。ヨーロピアン・カルテットのテナーは「ヤン・ガルバレク」。

素直でエモーショナルな、音的には明らかに欧州的でクール、ファンクネス皆無の流麗かつ透明度の高いガルバレクのテナーが、キースの「ヨーロピアン・カルテット」の音作りの鍵を握っている。ガルバレクのテナーの音がスッと入ってくるだけで、そのカルテットの演奏は「ヨーロピアン・カルテット」の音の雰囲気に包まれる。

これがキースにとって良かったのか、悪かったのか。ナルシストで自己顕示欲の強いキースである。自分より目立つ、バンドの音を決定付けるテナー・マンの存在。最初の頃は、キース自身はソロ・ピアノも平行してやっていたので、ソロ・パフォーマンスについては、テナーに一歩譲る余裕があったかもしれない。でも、テナー・マンの人気が上がってくると、ちょっとなあ、って気分になったんやないかなあ。
 

Sleeper

 
Keith Jarrett『Sleeper』(写真左)。1979年4月16日、東京は中野サンプラザでのライブ録音。改めてパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。所謂「ヨーロピアン・カルテット」な4人である。2012年7月、約33年の時を経て、突如、リリースされたライブ音源である。この音源、何故、お蔵入りしていたのか。暫くの間、不思議で仕方が無かった。

最近思うに、ガルバレクのテナーがあまりに素晴らしく、主従が逆転した様な演奏が多いことが原因ではないか、と睨んでいる。思わず「ヤン・ガルバレク・カルテット」かと思う位の内容。当時、キースはまだ34歳の若さ。この主従が逆転した様なカルテット演奏は、世に出したくなかったのかもしれない。それほどまでに、このライブ音源でのガルバレクのテナーは素晴らしい。ベースのダニエルソンも、ドラムのクリステンセンも、ガルバレクを鼓舞する様にビートを刻む。

ゴスペル風のアーシーな展開、モーダルで自由度の高い、時々フリーキーな演奏。素晴らしい内容である。演奏の整い方、楽曲の構成、想像性豊かなアドリブ・ソロ、どれをとっても、ヨーロピアン・カルテットの録音成果の中で、この『Sleeper』が頭1つ抜きん出ている。ヨーロピアン・カルテットの代表盤。ガルバレクが目立つ、これがまた、キースのヨーロピアン・カルテットの良き個性のひとつでもある。好ライブ盤である。愛でられたい。

 
 

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2018年5月18日 (金曜日)

ヨーロピアン4の集大成的な盤

キース・ジャレットの「ヨーロピアン・カルテット」を聴いている。ガルバレク、ダニエルソン、クリステンセンという北欧の新進と組んだ「ヨーロピアン・カルテット」。キースのピアノの美意識が最高に映える、硬質でクールでメロディアスな音世界。決して、勢いに任せているのでは無い、クールな熱気を帯びてフリーキーに展開する、自由度の高さ。

Keith Jarrett『Personal Mountains』(写真左)。1979年4月、中野サンプラザでの来日公演のライブ録音。ECMの1382番。改めてパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。所謂「ヨーロピアン・カルテット」な4人である。ちなみにこのライブ盤、1989年になってECM創立20周年の企画として、リリースされている。

この盤には、ヨーロピアン・カルテットの全てが詰まっている。ゴスペル基調のアーシーでファンキーな演奏から、自由度の高い、クールで硬質なフリー・ジャズな音世界、そして、ジャズの王道のひとつ、モーダルなジャズの自由な展開。アメリカン・カルテットでも、演奏されるスタイルを、このヨーロピアン・カルテットでも演奏する。
 

Personal_mountain  

 
熱気溢れる、時にきまぐれではあるが、熱くフリーキーな展開が得意な「アメリカン・カルテット」。比べて、硬質でクールでメロディアスな、あくまで冷静な「ヨーロピアン・カルテット」。どちらがキースのピアノとの相性が良いのか、どちらがキースのピアノを目立たせることが出来るのか。この答えが、このライブ盤に有るように感じている。

キースはその比較、ヨーロピアン・カルテットとアメリカン・カルテットとの比較をずっとしてきた様な気がするが、この盤を聴くと「ヨーロピアン・カルテット」の方がキースのピアノとの相性が良いように感じる。ECMらしい独創性と前衛性に富んではいるが、決して難解では無い、逆に、アメリカン・カルテットに比べて、ポップで穏やかで聴き易い。

ファンクネスが皆無な分、キースのピアノが持つ独特な旋律が一層映える。演奏全体の雰囲気も、アメリカン・カルテットに比べて、明らかに端正。感情に任せた破綻は全く無い。その内容の良さに、聴くたびに惚れ惚れする。このライブ音源は、録音されてから約10年、お蔵入りになっていた理由が良く判らない。ヨーロピアン・カルテットの集大成的なアルバムである。

 
 

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2018年5月17日 (木曜日)

ヨーロピアン・カルテットの本質

キースのヨーロピアン・カルテットを聴いている。ヨーロピアン・カルテットとは、キースがリーダーとなって、ECMレーベルをメインに録音したカルテットのこと。1970年代中盤〜後半を中心に、約6年の活動期間だった。2012年までは、公式アルバム数は「4枚」だったが、2012年に『Sleeper』が追加リリースされて「5枚」。

そんなキースのヨーロピアン・カルテットなのだが、相対する「アメリカン・カルテット」と好対照な演奏内容なのかしら、と思うのだが、意外と演奏のコンセプトは同じ。同じ演奏コンセプトを、ヨーロピアンなテナーとリズム・セクションでやるとどうなるか。逆に、アメリカンなテナーとリズム・セクションでやるとどうなるか、キースはそれぞれ比較していたような気がしている。

Keith Jarrett『Nude Ants』(写真左)。邦題『サンシャイン・ソング』。1979年5月、NYのヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音。ECMの1171/72番。LP2枚組のボリューミーな盤である。改めてパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。所謂「ヨーロピアン・カルテット」な4人である。
 

Nude_ants  

 
このライブ盤、演奏内容が面白い。ヨーロピアン・カルテットでありながら、ゴスペル・タッチのピアノをベースとした、米国ルーツ・ミュージックな、自由度の高い即興演奏がメインなのだ。ミッド・テンポでアーシーな演奏が心地良い。ガルバレクのサックスはあくまで「透明度溢れクール」。この盤での激しさはコントロールされた「激しさ」。アメリカン・カルテットの様な「気持ちの昂ぶりにまかせた激しさ」の微塵も無い。

加えて、ゴスペルタッチでアーシーな即興演奏でありながら、ファンクネスは皆無。ソリッドで硬質でクリアなリズム&ビートで、ゴスペル、カリプソな演奏を繰り広げる様は「爽快」。乾いたブルージーな旋律は明らかに「欧州的」。これぞ、ヨーロピアン・カルテットの演奏である、と言わんばかりの圧倒的パフォーマンス。

タイトルの「Nude Ants=裸のアリ」どういう意味かなあと思って調べてみたら、『Nude Ants』と収録曲「New Dance」の音が似ているところからつけられたタイトルとのこと(「ジャズ批評88キース・ジャレット大全集」より)。いわゆる言葉遊びですね。タイトルにはあまり意味が無いことが判りました。しかし、このライブ盤の演奏こそが、ヨーロピアン・カルテットの本質ではないか、と思っています。それほどまでに充実した内容のライブ盤です。

 
 

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2018年5月16日 (水曜日)

リピダルの先進的なエレ・ジャズ

暑くも無く寒くも無い。この5月の過ごしやすい季節は、ハードなジャズを聴くのに最適な季節である。まあ、今年の5月の意外と天気が悪く、天気が回復すると途端に夏日と暑くなる。過ごしやすい、というにはちょっと、という感じなのだが、それでも夏や冬の気候に比べたら、圧倒的に過ごしやすい。

この過ごしやすい季節によく聴くジャズのひとつが「ECMレーベル」のアルバム達。夏には暑さを我慢して聴くにはハードなフリー・ジャズや、真冬に聴くと更に寒さを感じる様な、静謐なニュー・ジャズなど、傾聴するに結構ハードな盤が多いレーベルである「ECMレーベル」。このレーベルのアルバムを聴くのは、過ごしやすい季節、初夏そして秋が一番なのだ。

Terje Rypdal『What Comes After』(写真左)。1973年8月の録音。ECMの1031番。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g, fl), Erik Niord Larsen (oboe, English horn), Barre Phillips (b), Sveinung Hovensjø (el-b), Jon Christensen (perc, organ)。ノルウェー出身のギタリスト兼作曲家、テリエ・リピダルのリーダー作である。リピダルのギターは、ジャズを中心にロックから現代音楽まで、その表現については幅が広い。
 

What_comes_after

 
特に、幽玄なフレーズを用いた「’ニュー・ジャズ」の音が得意で、ファンクネスは皆無であり、ブルージーな要素は微弱。そういう意味では、リピダルのギターは欧州独特のものだと言える。ギターのパッションな音色の特性を活かしたフリーな表現も得意としており、それまでの4ビート中心のジャズとは明らかに一線を画している。この盤では、そんなリピダルのギターを前面に押し出した「エレ・ジャズ」が展開される。

一聴すると「エレ・マイルス」かな、と感じるんだが、決定的な違いは「ファンクネスの有無」。あまりビートを強調しない、ファンクネス皆無な即興演奏をメインとした音世界は、独特なエコーも伴って、実にECMレーベルらしい。ジャズ、プログレ、クラシック、現代音楽と様々な音楽の要素を織り交ぜて、自由度の高いエレ・ジャズが展開される。今のジャズのトレンドで言うと、クールな「スピリチュアル・ジャズ」な雰囲気も濃厚。

ベースの音も生々しくて魅力的。この盤で聴かれるベースは、自由度が高く、ややサイケデリックな要素も見え隠れする、本場米国には無い、欧州独特、ECM独特のベースの音。リピダルの「エレ・ジャズ」の世界は他の「エレ・ジャズ」とは全く異なり、個性的である。そういう意味では、もう少し評価が高くても良いのではと思う。プログレッシブなエレ・ジャズの好盤。 

 
 

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2018年5月11日 (金曜日)

テナー・マンが音の鍵を握る

1970年代のキース・ジャレットの活動を振り返ってみると、とても面白い。代表的なのは、アメリカン・カルテットとヨーロピアン・カルテットの平行活動。なんで、こんな平行活動をしたのか、本人に訊いてみないと判らないのだが、正反対の演奏アプローチをしていて、比較して聴くと本当に面白い。

このアルバムは、音的には「ヨーロピアン・カルテット」。しかし、パーソネルを見ると面白いのは、ベーシストがアメリカン・カルテットと同じということ。それで、これだけ「ヨーロピアン・カルテット」な音が出るということは、カルテットの音の個性の鍵を握っているのは「テナー・マン」の個性ということになる。

そのアルバムとは、Keith Jarrett『Arbour Zena』(写真左)。邦題『ブルー・モーメント』(写真右)。全曲キース・ジャレットのオリジナル。オーケストラとの共演。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Charlie Haden (b) に、Stuttgart Radio Symphony Orchestraがバックに着く。
 

Arbour_zena  

 
聴けば聴くほど「ヨーロピアン・カルテット」なんだけど、ベースの粘りが「ヨーロピアン・カルテット」と違う。もともと「ヨーロピアン・カルテット」のベーシストは、パレ・ダニエルソン(Palle Danielsson)。この「ブルー・モーメント」のベーシストは、チャーリー・ヘイデン。もともとは「アメリカン・カルテット」のベーシストである。

面白いのは、キースもヘイデンも意識して奏法や音を変えている訳では無いこと。意外とアメリカン・カルテットでもヨーロピアン・カルテットでも同じ音を出している。それでいて、どうして「アメリカン・カルテット」と「ヨーロピアン・カルテット」とで正反対の、対照的な音が出るのか。鍵を握っているのは「テナー・マン」。「ヨーロピアン・カルテット」では、ヤン・ガルバレクである。

素直でエモーショナルな、音的には明らかに欧州的でクール、ファンクネス皆無の流麗かつ透明度の高いガルバレクのテナーが、キースの「ヨーロピアン・カルテット」の音作りの鍵を握っているのだ。ちなみに「アメリカン・カルテット」はデューイ・レッドマン。テナー・マンの音の個性がバンド全体の音の個性を決定付ける。この『ブルー・モーメント』は見事なまでの好例である。

 
 

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2018年5月10日 (木曜日)

ECMレーベル独自の音世界

「ネイチャー(自然)」な響きを持つジャズと言えば「ECMレーベル」である。ECMレーベルには、スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるアルバムが多数存在する。ジャズというか、即興演奏というか、現代音楽というか、環境音楽というか、ジャズと呼ぶには、いささか抵抗のあるアルバムも多々存在する。

Art Lande with Jan Garbarek『Red Lanta』(写真左)。1973年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Lande (p), Jan Garbarek (ss, bs, fl)。ピアノとサックス&フルートのデュオ演奏である。アート・ランディは、当時「キース、バイラークに次ぐ、EMCが発見した第三の俊英ピアニスト」との位置づけ。ヤン・ガルバレクは、ECMも看板テナー奏者。

アルバム・ジャケットからして「ネイチャー(自然)」を強く意識する雰囲気。ジャズに対して、こういうジャケットって、ECMレーベルだけだろうな。冒頭「Quintennaissance」で出てくる音は、ファンクネス皆無、一聴するとクラシックの様な、それでいて、仄かなオフビートのタッチ、リラックスしたライトなピアノ・ソロ。キース、バイラークに比べて、アクが無く、素直で流麗なタッチ。
 

Red_lanta  

 
まずはそこに、ガルバレクのフルートが絡む。ガルバレクのフルートは、素直でエモーショナルな、音的には明らかに欧州的な、ファンクネス皆無の流麗かつ透明度の高いフルート。曲によっては、ソプラノ・サックスで、はたまたバリトン・サックスで、ランディのリラックスしたライトなピアノに絡む。この「絡み」が絶妙で、聴き心地がとても良い。

クラシックの様に端正なランディのピアノ。しかし、それは即興演奏を旨としており、ファンクネス皆無であるが、ピアノのフレーズはジャズの香りが濃厚に漂う。決して重く無い、切迫感皆無、適度にリラックスしたミッド・テンポのシンプルな響きのピアノ。フリーでもなければスピリチュアルでも無い。一言で言うと「ネイチャー(自然)」な響き。

この盤はECMレーベルでしか為し得ない類の音世界を満載している。スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるアルバムの最右翼的な存在である。何もスイング4ビートだけがジャズの条件ではない。「ネイチャー(自然)」な響きを持つジャズもジャズ。ECMらしいジャズ盤として、長年、愛聴してきた盤である。

 
 

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2018年5月 7日 (月曜日)

ネイチャーな響きは「ECM」盤

「ネイチャー(自然)」な響きを持つジャズと言えば、欧州ジャズ、特に「ECMレーベル」の諸作を思い出す。ECMレーベルには、自由度の高い「ニュー・ジャズ」傾向の、スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるアルバムが多数存在する。

特に1970年代、1960年代からのメインストリーム・ジャズ、1960年代終わり頃から現れ出でたクロスオーバー・ジャズ、そして、1970年代半ばからのジャズ界最大のブームとなった、フュージョン・ジャズが渦巻く中で、ECMレーベルはそんなジャズ界のトレンドには我関せず、ECMレーベル独特の音世界を有した「ニュー・ジャズ」なアルバムをリリースし続けた。

そんなECMレーベルのアルバムの中に、メインの演奏トレンドとして存在する「ネイチャー(自然)」な響きを持つニュー・ジャズ。スイング感や4ビート感に全く依存しない、欧州独特のジャズの音世界。ECMレーベルの真骨頂とも言うべき音世界で、これに填まると、とことんである。実は私もこのECMレーベルの「ネイチャー(自然)」な響きを持つニュー・ジャズにゾッコンである。
 

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Eberhard Weber『The Colours of Chloë』(写真左)。1974年の作品。ECM1042番。ちなみにパーソネルは、Eberhard Weber (b, cello, ocarina, voice), Rainer Brüninghaus (p, syn), Peter Giger (ds), Ralf Hübner (ds,track 2), Ack van Rooyen (flh), Gisela Schäuble (voice), celli of the Südfunk Orchestra, Stuttgart。完全に欧州系ニュー・ジャズの担い手中心の布陣と見受けられる。ほどんど馴染みの無い名前ばかり。

ECMレーベルらしい音が詰まった好盤である。フォーキーでネイチャーな響きが芳しい、ファンクネス皆無の即興演奏。欧州ジャズ的な響き。ECM独特のエコーが美しい。そして、演奏の底をウェーバーのベースが支える。アルバム全体に、ジャズだけでは無い、ジャズ・ロックやプログレ、ミニマル・ミュージック、果ては環境音楽まで、様々な音の要素が渾然一体となって、独特の音世界を形成している。

「ネイチャー(自然)」な響きを持つジャズは、ECMの十八番。この『The Colours of Chloë』は、その代表的な一枚。ECMレーベルの音を感じるには最適な一枚でしょう。ジャケットもユニーク。ジャズ盤なのか現代音楽盤なのかプログレ盤なのか、一見、判断に苦しむ、絵画風のアート・ワークはウェーバーの妻マイヤによるもの。これも僕は以前より気に入っています。

 
 

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2018年5月 6日 (日曜日)

ネイチャー・ジャズの極みを聴く

昨日より「ネイチャー・ジャズ」の特集。1970年代に発生した「ニュー・ジャズ」の範疇の中で、スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるパフォーマンスが存在します。僕はこういうジャズを勝手に「ネイチャー・ジャズ」と呼んでいます。

そんなネイチャー・ジャズの最右翼は「パット・メセニー」。特に、1970年代〜80年代のPMGは、基本「ネイチャー・ジャズ」の響きが満載。そんな中、PMGでは無い、共同名義のアルバムがそんな「ネイチャー・ジャズ」の好盤の中で、ピカイチの存在のアルバムがある。

Pat Metheny & Lyle Mays『As Falls Wichita, so Falls Wichita Falls』(写真左)。邦題『ウィチタ・フォールズ』。1981年、ECMレーベルからのリリース。パットと盟友ライル・メイズとの共同名義のアルバムである。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (el/ac 6-and 12-string g, b), Lyle Mays (p, syn, el-org, autoharp), Naná Vasconcelos (berimbau, perc, ds, vo)。パットがギターとベースを掛け持ちする変則トリオ編成。
 

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アルバムの隅から隅まで「ネイチャー・ジャズ」の音世界で埋め尽くされている。パットとメイズが共存しているPMGよりも「ネイチャー・ジャズ」の雰囲気が色濃い。恐らく、パットとメイズの共通の音のイメージがこのアルバムに提示されているのであろう。スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるパフォーマンス。

郷愁を誘い、センチメンタルに傾き、スピリチュアルであり、クールでもある。目を閉じれば、様々な自然のシーンが脳裏に浮かび、思わず心が癒される。そんな「ネイチャー・ジャズ」な音世界。パットのギター、メイズのキーボードが、そんな音世界をイマージネーション豊かに表現していく。クールなエモーショナルで内省的な音世界。独特である。

ナナ・バスコンセロスのパーカッションが印象的かつ効果的。パットとメイズのデュオだけだと、自然独特の動きや躍動感が単調になるきらいがある。ここにバスコンセロスのパーカッションが絡むことによって、躍動感に奥行きとバリエーションが付加されて、演奏に深みが出る。これがこの「ネイチャー・ジャズ」盤の優れた所であり、聴きどころである。「ネイチャー・ジャズ」ここに極まれり、である。

  
  

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