2024年8月16日 (金曜日)

西海岸のアフロ・キューバン

台風が千葉県の太平洋東岸の沖を通過しつつある。今朝の始発から東海道新幹線が東京〜名古屋間で、地下鉄東西線は西船橋〜東洋長官が終日運転見合わせとかで、どんな暴風雨になるのかしら、と思って速報天気図などを見ていた。が、テレビの報道などは「大袈裟」の限り。千葉県北西部地方は暴風域にも入らず、強風域に入ってはいるが、そんなに大騒ぎするほどの強風は吹いていない。

雨は断続的にゲリラ豪雨っぽい強い雨が降るけど、まあこんなのはたまにあるので、平静そのもの。今まで台風が千葉県北西部地方を直撃〜上陸することもあったが、その時はこんなに大騒ぎしなかったので、今回は思いっきり違和感がある。何か、基準が変わったのかなあ。

Clare Fischer『Manteca!』(写真左)。1965年の作品。ちなみにパーソネルは、Clare Fischer (org), Ralph Peña (b), Nicholas "Cuco" Martinez (timbales), Adolfo "Chino" Valdes and Carlos Vidal (conga), Rudy Calzado (cencero and güiro) に、トランペット4本、トロンボーン2本、ベース・トロンボーン1本のホーン・セクションがバックに付いている。
 

Clare-fischermanteca  

 
ガレスピーの名曲「Manteca」、サンタマリアの作品でディー・ディー・ブリッジウォーターのカバーで有名な「Afro Blue」、アントニオ・カルロス・ジョビン作「Favela」など、ラテン・ジャズからボサノバの佳曲に、躍動感溢れるアフロ・キューバンなジャズ・アレンジを施した「アフロキューバン・ジャズ」盤。

フィッシャーの代表曲の1つ「モーニング」のメロー&ダンサンブルなアレンジに乗った演奏も、この盤の魅力の一つ。

フィッシャーのアレンジが効いている。バックに付いたホーン・セクションや、ラテンなパーカッションが、アフロ・キューバンな音世界をより濃厚なものにしている。そして、フィッシャーのアフロ・キューバンな雰囲気満載のアコピとオルガンが実に良い雰囲気を醸し出している。

フィッシャーのアレンジの才能とキーボーディストとしてのテクニックが全ての、内容の濃い、米国西海岸ジャズにおけるアフロ・キューバン。洒落てアーバンな雰囲気のアフロ・キューバンな雰囲気が実に魅力的。意外とハマると癖になるアフロ・キューバン盤です。
 
 

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2024年8月15日 (木曜日)

ボサノバ曲の米国西海岸ジャズ化

明日は台風7号が関東地方に再接近する予報。ここ千葉県北西部地方から見ると、東の太平洋上を北上するらしいので、吹き込みの強い暴風は避けられると思うので、ちょっと安心。逆に台風の強雨域が台風の西側に広がっていて、これがこの辺りにもかかってくる可能性があるので、大雨だけは細心の注意を払う必要はある。

ということで、明日は一日、台風通過の一日となるので、自宅に引き篭もりである。まあ、今年は猛暑日続きで、外出は控え気味なので、今さら引き篭もりも特別では無いのだが、エアコンをしっかり付けて、ジャズ盤鑑賞の一日になるだろうな。

Bud Shank and Clare Fischer『Bossa Nova Jazz Samba』(写真)。1962年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Bud Shank (as, fl), Clare Fischer (p), Larry Bunker (vib), Ralph Pena (b), Larry Bunker, Frank Guerrero, Milt Holland, Bob Neel (perc)。

このところの「引き篭もり」状態の日々の中で、よく聴くジャズが「ボサノバ・ジャズ」。ということで、今回の選盤は、米国西海岸ジャズの名アルト・サックス奏者であるバド・シャンクと、ピアニスト兼アレンジャーのクレア・フィッシャーによるボサノバ・ジャズ盤。いかにも米国西海岸ジャズらしい、ボサノバ・ジャズが展開されていて興味深い。

恐らく、クリア・フィッシャーのアレンジだと思うのだが、パーカッションを充実させて、ボサノバのリズムを産み出しつつ、演奏全体をボサノバ・ジャズらしい音作りに仕立て上げるというアレンジが成功している。
 

Bud-shank-and-clare-fischerbossa-nova-ja

 
楽器の選択を見ても、軽快で爽やかなフルートやヴァイブの音が良いアクセントになって、ボサノバな雰囲気を増幅している。

聴き手にしっかり訴求するアレンジ重視の「聴かせるジャズ」という、西海岸独特のジャズの音世界の中で、ボサノバ曲を取り込み、演奏するという、いかにも西海岸ジャズらしいボサノバ・ジャズが展開されている。

と言って、米国西海岸ジャズのメインとなっていたジャズマン達が、ボサノバ・ミュージックに迎合するということは全く無く、ボサノバ曲を選曲することで、ボサノバ独特のフレーズ展開を自家薬籠中のものとし、リズム&ビートはボサノバ志向ではあるが、根っこと響きは、あくまでジャズのリズム&ビート。

シャンクのアルト・サックスは、ボサノバ曲だからと言って、ゲッツの様に、何か特別な吹き回しをすること無く、通常の西海岸ジャズにおけるシャンクの吹き回しそのものでボサノバ曲を吹きまくっている。

クレア・フィッシャーのピアノは、硬質でスクエアにスイングする。どう聴いても、ボサノバに迎合しているとは思えない(笑)。

ボサノバ曲を題材にした米国西海岸ジャズ。そういう捉え方が、この盤に相応しい。演奏の内容、雰囲気を聴いていると、米国西海岸ジャズとボサノバ・ミュージックは相性が良いと感じる。西海岸ジャズの特徴である、聴き手にしっかり訴求するアレンジが、ボサノバ曲を上手く取り込んで、上手く西海岸ジャズ化している。
 
 

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2022年12月 5日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・255

ジャズの関連本などで紹介されていて、名前は知っているのだが、リーダー作をまともに聴いたことが少ないジャズマンに出会った。クレア・フィッシャー(Clare Fischer)である。

1928年10月22日ミシガン州デュランド生まれのピアニスト、アレンジャー。1962年のリーダー作『First Time Out』で高評価を得ている。メインストリーム・ジャズばかりでなく、ポップなラテン・ジャズやボサノバ・ジャズも演奏し、多くのリーダー作ををリリースしている。ちなみに、ハービー・ハンコックに大きな影響を与えたジャズマンの1人とされる。

1970年代以降、オーケストラのアレンジなども手掛けるようになり、R&Bやロック畑のチャカ・カーン、ポール・マッカートニー、セリーヌ・ディオン、そしてプリンス等、多くのR&Bやロック畑のアーティストとコラボしている。僕は、クレア・フィッシャーについては、こちらのR&Bやロック畑のアーティストとの協働の印象の方が強い。

Clare Fischer『Surging Ahead』(写真)。1963年の録音。米国ウエストコースト・ジャズのメイン・レーベルのひとつ「Pacific Jazz」からのリリース。ちなみにパーソネルは、Clare Fischer (p), Albert Stinson (b, #1-4), Colin Bailey (ds, #1-4), Ralph Pena (b, #5-7), Larry Bunker (b, #5-7), Gary Peacock (b, #8), Gene Stone (ds, #8)。

パーソネルはちょっと複雑だが、気にすることは無い。ベースとドラムのリズム隊は、リズム・キープにほぼ専念していて、担当が代わっても、大きく音が変化することは無い。このトリオ盤は、クレア・フィッシャーのピアノだけを前面に押し出した、クレア・フィッシャーのピアノだけを愛でる為にあるトリオ盤である。
 

Clare-fischersurging-ahead  

 
録音年は1963年だが、フィッシャーのピアノはオーソドックスなバップ・ピアノ。ところどころ、モードに展開するところやアブストラクトにブレイクダウンするところはあるが、概ね、伝統的なバップ・ピアノな弾き回すに終始している。しかし、これが意外と新鮮に響くのだからジャズは面白い。

演奏全体の雰囲気は、米国のウエストコースト・ジャズな雰囲気で、音はカラッと乾いていて、響きは流麗。しかし、ウエストコースト・ジャズ特有の「聴かせるアレンジ」「アーティスティックなアレンジ」の形跡はほどんど無く、どちらかと言えば、東海岸のバリバリ弾きまくるバップ・ピアノの雰囲気なのだ。収録曲8曲のうち、フィッシャーの自作曲は1曲のみ、他は小粋なスタンダード曲が選曲されていて、聴き心地がとても良い。

但し、テクニックのレベルは、フィッシャーは勿論のこと、リズム隊のメンバーも併せて高く、流麗な弾き回しはとても端正で爽快感がある。この辺は、ウエストコースト・ジャズの雰囲気。加えて、ファンクネスは希薄。爽快なウエストコースト・ジャズにおける「バップ・ピアノ」という感じがユニークに響く。

良い感じのピアノ・トリオ盤。爽快なウエストコースト・ジャズにおける「バップ・ピアノ」が聴き心地が良くて、聴き始めると、ついつい引き込まれて、一気にラストの「Without a Song」まで聴き切ってしまう。クレア・フィッシャーを体験するのに好適なトリオ盤です。
 
 

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   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

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   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
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2016年7月29日 (金曜日)

ボサノバのバド・シャンク 『Brasamba!』

梅雨が明けた。やっとのことで千葉県北西部地方は梅雨が明けた。梅雨が明けたら、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の特集の季節。「夏はボサノバ」。ボサノバ&サンバ・ジャズの特集。

今日はバド・シャンク(Bud Shank)。スタン・ゲッツよりも以前に、ジャズとブラジル音楽を融合させた先駆者としても名高いバド・ シャンク。ゲッツは商売上手。シャンクは商売下手。シャンクのボサノバ・ジャズは日本ではあまり知られず、逆に、ゲッツのボサノバ・ジャズは大ブームになった。

しかし、シャンクのボサノバ・ジャズには個性があり内容がある。ボサノバのエッセンスをしっかりと吸収しつつジャズに仕立て上げていく。ボサノバをジャズの様に演奏するのでは無く、ボサノバのエッセンスを取り込んだ純ジャズ。それが、シャンクの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」である。

その好例がこのアルバム。Bud Shank & Clare Fischer『Brasamba!』(写真左)。1963年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Bud Shank (as,fl), Ralph Pena (b), Joe Pass (g), Chuck Flores, Milt Holland (per), Clare Fischer (p), Larry Bunker (ds,vib)。

シャンク〜フィッシャーのコンビにジョー・パスが加わり3人名義で発表されたジャズ・ボサの好盤。このアルバムの基本はあくまでジャズである。ボサノバの要素はしっかりと取り込んではいるが、リズム&ビートの基本は「ジャズ」。
 

Brasamba

 
ムーディーな旋律はボサノバから拝借しているが、アドリブの展開はジャズそのもの。つまりは、バド・シャンクのボサノバ&サンバ・ジャズはあくまでジャズであり、ムーディーな旋律はあるが、演奏全体の雰囲気にはジャズの矜持が溢れている。

それぞれの収録曲も魅力的だ。「オルフェのサンバ」「小舟」といったボサノバの名曲、加えて「枯葉」などの有名ジャズ・スタンダード曲を収録。哀愁のメロディを持つクレア・フィッシャー作「Otem A Note」の雰囲気も良い。

このアルバムは、演奏と選曲とのバランスがほどよく取れた「ボサノバ・サンバ&ジャズ」の好盤です。聴き流しはもとより、真剣な聴き込みにも耐える内容は特筆もの。ジャズにしっかりと軸足を置いた「ボサノバ&サンバ・ジャズ」。

バド・シャンクは商売下手で、我が国では、スタン・ゲッツの様に、ボサノバ&サンバ・ジャズの担い手として、メジャーに扱われることは無かった。僕は、1990年代半ばまで、シャンクが、ボサノバ&サンバ・ジャズのように、ジャズとブラジル音楽を融合させた先駆者であったことを知らなかった。

トータルで35分程度の短時間のシステム盤ではあるが内容は濃い。シンプルで優しい、典型的なボサノバ&サンバ・ジャズである。自らのながら聴きにも良し、若い世代にとってのイージーリスニング・ジャズとしても良し。
 
 
 
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